79 / 100

第79話 烈風吹き荒ぶ①

烈は入学に参列していた 笙は康太と榊原の姿を見つけると近寄り 「烈退院したの?」と問い掛けた 真矢も同時期入院していた 真矢の内出血と血腫になりつつある塊はオペにより取り除かれたが、今も入院していた 「ええ、退院しました」と榊原が答えると 「何時退院したんだ?」と問い掛けた 榊原は「つい先程です!」と答えた 笙は「え…退院したその足で来たのかい?」と聞くしかなかった 「そうです!烈は頑張りました 体力が一度リセットされ、乳飲み子以下になった体力を取り戻す為に血反吐を吐く訓練を受けました だからこそ、今こうしてこの場に立っていられるのです!」 そう答えた その時 入学生代表 飛鳥井烈君 前に出て言葉を!と案内が流れた 笙は「烈が入学生代表なんですね」と呟いた 確りとした足取りで烈は壇上に上がりマイクの前に立った 「今日の良き日に我等は桜林学園 初等科に入学出来ました 我等は誇り高き桜林の生徒として日々精進して参る事をここに誓います! 生徒代表 飛鳥井烈が此処に宣誓します!」 とまるで大人顔向けの言葉で宣誓した 笙は驚いた顔して「凄いね烈」と感想を述べた 康太は「この日の為にリハビリと並行して発音も直して慎一に訓練してもらい完璧に話せるように準備して来たからな」と内情を話した 格が違う と入学する父兄の殆どが想った事だろう その存在感と威圧感は子供の持つそれではなかった 康太は「烈は今 烈風吹き荒ぶ防風圏のど真ん中にいるからな、雰囲気も今までのモノじゃねぇ 子供と感じられねぇ存在は畏怖に映ったろうな」と感想を述べた 正にそうだった 子供の中に紛れ込んだ大人 そんな存在に匠ですら、近寄り難かった 入学式が終わると子供等は教室へと戻った 烈は一年A組だった 匠もA組だった 父兄は子供達の教室の後部に立って、子供達の様子を伺っていた 担任の長瀬が教室へと入って来ると匠が「きりつ!」と声を上げた すると生徒が立ち上がった すると匠が「礼!」と言い 長瀬が頷くと「着席!」と言い、生徒は着席した 長瀬父兄に「御入学おめでとうございます 今日 此時より彼等の学園生活は始まりを迎えました! 入学前にクラスの委員長を決めました 榊原匠君 立って下さい!」と言うと匠が立ち上がった 匠は立ち上がると「よろしくおねがいします」と言葉にした 長瀬は今後の事を話して、その日は解散となった 烈は両親の傍へとやって来ると、母の手を取った 母と父と共に学園の外に出て一緒に還る 笙は明日菜と共にその後を追った 笙は榊原に「クラス委員は烈の方が向いてるって想いませんか?」と心の声がただ漏れにそう言った 「烈は今 防風圏内に入っているので学校を休む日も出て来るので断ったのですよ 今後も烈は何かと動く為に休む日も出て来ますからね クラスを取り纏める存在が欠席ばかりじゃ始まりませんから辞退したのだと想います」 烈の存在感 威圧感 やはり何かやる前兆なのかと笙は想った 明日菜は烈が莫大な勝機を詠んで立っているのが伺えられた まるで何かをやる康太みたいに、烈の存在がまさにそれだと感じていた 康太は「今夜は入学祝いに烈の快気祝いだ!都合が着くなら飛鳥井に来いよ!」と言った 笙は「母さんはまだ退院出来ませんか?」と問い掛けた 「退院は無理だけど烈が入院してる時にオペして、傷の状態と相談して少しずつ烈と一緒に機能回復訓練をやってたからな、後少しで退院じゃねぇかな? 今夜は一時外泊で飛鳥井に来てくれる筈だからな 逢えると想うぜ!」 笙は見舞い行っていたのに全く知らなくて驚いていた 康太はそんな笙の胸の内を想い計って 「真矢さんは烈が血反吐を吐いても立ち向かう姿を、同時期にリハビリを始めたからずっと傍で一生と共に見ていたんだよ 痛くて泣くのを我慢して立ち向かう姿をずっと見ていたんだよ 烈は入院中のサポートを慎一ではなく一生を指名した それは優しく泣かせてくれる慎一じゃ駄目になると踏んで敢えて距離を保ってくれる一生を選択したんだ 真矢さんもそんな烈の姿に奮起して頑張ってリハビリを頑張った 女優である真矢さんが一部でも髪を剃るのは抵抗が会った筈だ だが頑張る烈を見て真矢さんも奮起したんだよ だからお前の顔を見ても弱音を吐かずに頑張ったんだよ 真矢さんにとってお前はな、気持ちの寄り処なんだよ! 清四郎との関係が悪化していた時、真矢さんを支えていたのは笙、お前なんだよ それは今も昔も変わりはねぇんだよ だからこそ、お前に弱音は吐けなかった お前が優しく寄り添ってくれたなら、歩けなくなるのが解っていたからな 烈が慎一じゃなく一生を選んだように 真矢さんもお前じゃなく夫を選んだんだよ 清四郎は妻を無言で支える だが役者である榊󠄀清四郎に支えられるならば、女優である榊原真矢にならねばならない! そんな想いがあったんだよ!」 康太の言葉に笙は胸が熱くなって泣きそうになった 明日菜が優しく笙の背を撫でる 康太は「夫婦仲が良いのは良いけどよぉ、もぉオレんちなんだよ! 家に入ってからやりやがれ!」と文句を垂れて飛鳥井の家の中へと入った 笙家族を一生達に託すと、康太は榊原と烈を連れて「オレ等は会社に出向くわ!」も言葉にした 一生は「会社の皆に顔見世か?」と問い掛けると 「そうだ、飛鳥井宗右衛門が転生者を皆に顔見世する時が来た」 「なら今夜は入学祝いと快気祝いだな それまでにやる事片付けて来るといい!」 「了解!オレの沢庵頼むな!」  「2枚ならな!」 「2枚か……」 康太は肩を落とした 忙しくて康太の体も少し煽りを受けて、久遠が目くじら立てで食事制限を発動したからだ 榊原は「さぁ行きますよ!」と言うと地下駐車場へのドアを開け階段を降りた 榊原の車の後部座席のドアを開けると烈を乗せて 助手席のドアを開けて康太を乗せた 運転席に座るとエンジンを掛けて車を走らせた 榊原は飛鳥井建設の正面玄関に車を停めると、康太と烈を下ろした 「僕は車を停めて来ます! 3階で待ってて下さい!」と謂うと車を走らせた 康太は烈を連れて正面玄関に立つと、自動ドアが開いて中へと足を踏み出した 受付嬢が二人を目にして立ち上がると 康太は「飛鳥井宗右衛門が転生者 烈だ!」と紹介した 烈は受付嬢をジッと見た後でニコッと笑い 「はじめまして!れつです」と挨拶した 受付嬢は「顔を覚えさせて戴きました!」と深々と頭を下げた そして入学式だったのか礼服なのを見て伺い 「御入学おめでとうございます」と言葉にした 烈はニコッと笑って「あいがとう!かむいのいもうと!」と言葉を述べた 受付嬢が一人倉沢淳美は「知っておいででしたか?」と言葉にした 烈は何も言わなかった 康太は烈と共にエレベーターへと進み、ボタンを押した すると直ぐにドアが開き、それに乗り込んだ エレベーターの中には榊原が乗っていて、烈は嬉しそうに「とうしゃん」と名を呼んだ 榊原は「受付嬢の顔見世は終わりましたか?」と問い掛けた 烈は元気に頷いた そのまま3階へ出向きエレベーターを降りた 3階に下りると栗田が驚いた顔で近付いて来た 「どうされたのですか?」 問い掛ける栗田に康太は「社員を集められよ! 3階 全社員、だ! 営業部 建築部 施工部 製図部総ての社員を此処に集められよ!」と言った 統括本部長の栗田は城田に伝達して即座に全社員を集めた 康太は「朝の忙しい時間にすまねぇな!」と前置をして 「飛鳥井宗右衛門が転生者 飛鳥井烈を皆に紹介する時が来た!」 烈は紹介されると姿勢を正し 「あすかいれつです!みなさま、おみしりおきを!」と言葉にした その姿は飛鳥井源右衛門を彷彿させる貫禄と威圧感があった 社員は皆……息を飲みその姿を視界に収めた 統括本部長代理の城田は「御入学おめでとうございます!」と言葉を送った すると烈はニコッと笑ってお子様の顔になり 「ありがとうにゃにょね!」と言った この日のために只管発声練習をして、練習を重ねた だから決める所はちゃんとした言葉で言えたが、素が出ればまだまだ初等科に入学したばかりのお子様だった 「しろた、みてぇ!」と桜林学園初等科の制服を見せた 「お似合いですよ!」 謂れ嬉しそうに笑う顔はどう見ても子供としか見えないのに… 底知れぬ力を持ち合わけているのは紛れもない現実だった 顔見世が終わると康太は 「解散してくれて構わねぇ! 朝の貴重な時間をありがとう!」と礼を述べた その間も烈は不敵に嗤い社員を視ていた 康太は烈に「此処は大丈夫か?」と問い掛けた すると嗄れた声で 「不安要素は含んでおるから時を早める為に儂が後で出るとしようぞ!」と答えた その声は嗄れた老人の様な声だった 「飛鳥井宗右衛門じゃ! 皆の者 以後お見知り置きを!」とご挨拶した 社員は皆……………呆然となっていた 栗田が大きく手を叩き 「さぁ仕事に戻れ! 現場に行くヤツはさっさと行きやがれ!」と発破をかけた 康太と榊原と烈は4階へと階段で上がった 4階は総務 人事 経理 人材育成部があった 4階に康太と榊原と烈が来ると、蒼太は近寄って来た 康太は蒼太に「陣内も呼べ!そしてこの階の総ての社員を此処に集めろ!」と指示を飛ばした すると蒼太は即座に動き陣内を呼び自ら社員を集めて整列させた 皆が揃うと康太は 「飛鳥井宗右衛門が転生者 飛鳥井烈だ! 今後は何かと烈が動く事もあるだろう だから顔見世をする!」 と社員に告げた 烈は不敵に嗤い立っていた お子様なのにやはり、お子様らしからぬ貫禄に社員は固唾を飲んで烈を見た 烈は胸を張ると「あすかいれつです いごおみしりおきを!」と挨拶した 蒼太は烈の姿と康太達の姿を見て、今日が桜林の初等科の入学式だったんだと実感した   だからこその顔見世なのだ、と知った 蒼太は姿勢を正すと「御入学おめでとうございます」と深々と頭を下げた 烈はそれを受け「ありがとうございます」と返した そして陣内を見て 「此処は上手く統制が取れておる 流石は飛鳥井蒼太じゃな! だが陣内、お主の所はダラダラ集まり過ぎじゃ! 統制が取れてはおらぬ証拠じゃ!」と嗄れた声でそう言った 手痛い一撃を喰らい陣内は「ならば宗右衛門殿、手伝って下さいよ!」と弱音を吐いた 「仕方ない奴よのぉ! なれば少し通って鍛え上げるかのぉ!」 と嗤う姿は………容赦のない迫力と威圧感が有った 社員達は気を引き締めた 陣内の所の社員は………あの御人が来るのか? それは勘弁だわ……と想った そして更なる精進を心に誓った その場の空気が変わる! 飛鳥井宗右衛門が齎す効果は最大限に生かされる事となり、社員に規律と秩序を植え付けた 榊原は「ならば次に行きましょう!」と、告げると康太達はその場を離れた 陣内の部署の社員達は 「統括本部長、我等は少し弛んでいたみたいです! 今日此時より我等は一層の精進を約束致します!」と言葉にして誓った 陣内はそんなに宗右衛門が怖いのかよ?と思って笑った 「烈は優しい子だぜ?」 烈は優しい子だとしても、宗右衛門はそうではない 目の前で烈が嗄れた声で喋り始めた……その姿は厳しく何事も許しはしない厳しさを含んでいた 断罪されるしかない厳しさに社員は瞠目する 「統括本部長、我等は貴方に着いて行きます!」 あんな恐ろしい鬼みたい子を優しい子だと言える貴方は……怒らせてはいけない存在なんですね ならば何処までも着いて行きますとも! それしかなかった 活気に満ちた社員達に陣内は苦笑した 康太と榊原は烈の歩幅に合わせてゆっくりと階段を上がって行った 5階に到着すると康太は榊原に「梓澤と武藤を呼んで来てくれ!」と頼んだ 榊原は梓澤と武藤を呼びに行くと、広報宣伝部のドアを開けて中へと入った 突然真贋が入って来て社員は唖然とした 広報宣伝部の統括本部長の水野が慌てて康太の前に出ると、榊原が梓澤と武藤を連れてやって来た 康太は水野に「社員を整列させろ!」と指示を出した すると水野は「皆 集まって下さい!」と指示を出した ダラダラとだらしなく集まる統制の取れてない姿に 宗右衛門は「ダメダメじゃな、この部署は!飛鳥井の部署の中で一番劣るか?情けない!」と嘆いた 社員は子供なのに嗄れた声に唖然として動きを止めた 榊原が「早く動きなさい!」と怒って皆を整列させた 康太は「飛鳥井宗右衛門の転生者を皆に知らしめる為に顔見世に来た! 飛鳥井宗右衛門が転生者 飛鳥井烈だ!」と紹介した 烈は嗄れた声で 「何をしに会社に来ておるのじゃ? 此処は幼稚園ではないぞ?仲良し小好しする場ではない!」と怒鳴った 社員は一斉に緊張して姿勢を正した 「水野、お主は何の為に此処におるのじゃ?」 「仕事をする為です!」 「ならば、いざと謂う時に動けぬ社員など切ってしまえ! それはお主の力量が足りぬから引き起こした罪だとその身に刻み込め!」 「はい!申し訳ありませんでした!宗右衛門殿!」 水野は身を引き締め言葉にした 久しぶりの緊張感だった 弛んでるのは感じていた だが皆が動いてくれてるから……と、弛んだ思いで納得していた 「水野!」 「はい!」 「謂う事を聞かぬ社員がいたら儂を呼べ! 切るに相応しい社員か儂が判断してやるからな!」 「その時が来ましたら頼みます! ですが、僕が………貴方に頼む時は最終手段にしとう御座います!」 「そうか、つまらぬな だが忘れるな、そこの社員を腐らせるも生かすも、総てはお主の采配次第だと謂う事を、な!」 痛い所を槍でスボズボ突かなくても良いじゃないか!と想う まさに自分が想っていた事だけど…… 水野は「はい!貴方の言葉を身に刻み精進したいと想います!」と宣言した 烈は一色を見るとニャッと嗤った 一色が出る間も与えず先制攻撃し、水野を奮い立たせた その手腕に一色は息を止めて魅入っていた すげぇな、この子供…… なりは子供だが、その背負うべき重荷は子供が背負っていい荷物でないのが伺えられた そして梓澤の方を見ると満面の笑みで 「あじゅさわ!いずつやのたくあん、少しあじがびみょうなのよ!」と抱き着いて甘えて言った 「え?微妙ってどう微妙なのですか?」 「えっとね、せいぞうこうていで、ちゃんとほしてないのよ だからあじのはいりかたが、イマイチなのよ」 「それは貴重なアドバイスありがとうございます」 「かあしゃんのたくあんだもん!  おいしいのがいいのよ!」 親思いな烈の言葉に社員は心を打たれていた 康太は溜息を着くと 「そう言う事だ 水野、此処で踏ん張れ! でねぇと上を舐めた社員は暴走して上を顧みなくなるぜ! 烈はそれを言いたかったんだ! 解るな水野!」 「解ってます ったくお子様なのにドキツい一発を見舞わされました 日頃僕が危惧していた事を詠まれて焦りました 烈君に、嫌 宗右衛門殿に謂われた言葉を胸に刻み精進して行こうと想います!」 「ならオレは何も言う事はねぇよ! だが忘れるな、宗右衛門の眼はオレと同等だと謂う事を! そして宗右衛門は人を視るに長けている その瞳はオレの上を逝く 宗右衛門はその為に飛鳥井に存在するのだからな!」 その為の存在…… 何とも重い言葉だった 梓澤は「烈君、近い内に微調整するから少し付き合ってくれるかな?」と問い掛けた 烈は「もちろんにゃにょよ!」と笑顔で答えた 榊原は「なら行きますか!社長、会長のどちらから行きますか?」と問い掛けた 烈は「じぃしゃん!」と答えた 「なら会長から行きますか」と言い広報宣伝部を後にした 烈が出て行った後 社員達は身動き一つ出来ずにいた 水野もどうしたものか?思案していると社員達は水野の元へと集まり 「どうもすみませんでした!」と謝罪した 弛んでるのは解っていた  何を言っても水野なら……と甘く見ていた部分もあった 行き過ぎていたら一色が出て正して行く、それで調和は取れてると想っていた 宗右衛門にそれを指摘され、社員達は冷水を浴びせられた想いだった 真っ裸にされた上に冷水をぶっ掛けられ…断罪されるかの様な冷徹な瞳を向けられ…… 自分達の愚かさを味わった 顔見世と謂う事は社員全体に顔を知らした上で、今後は烈が動くと謂う事なのだろう だったら今後も此の体たらくな部署は槍玉にされるのは目に見えていた 厳しい瞳が常に見張ってる 社員は皆 気を引き締めたに違いない 飛鳥井家真贋とはまた違う宗右衛門の存在は、社員に活気と規律を植え付け、更に躍進する活力を与えた 榊原と康太と烈は階段で6階まで上がった エレベーターだと6階は許可なければ止まらない 7階最上階へはエレベーターで行く事は出来た まずは会長室のドアを叩くと秘書の榮倉がドアを開けた ドアの前に康太と榊原と烈の姿を目にして、榮倉は何も言わずに三人を部屋に通し、自分は部屋を出て行った 清隆は「ご要件は何ですか?」と問い掛けた 康太は「飛鳥井宗右衛門の顔見世の為に伺った」と告げた 清隆は立ち上がると、烈に深々と頭を下げ 「宗右衛門の顔見世に伺われたのですね! 飛鳥井建設 会長として受け止めさせて貰いました!」と言葉にした 烈は清隆に「じぃしゃん!」と言い抱き着いた 清隆は目尻を下げて「烈、もう大丈夫なのですか?」と尋ねた 「もぉね、だいじょうびよ!」 清隆は烈の頭を撫で 「お昼はじぃちゃんと一緒に食べましょう!」と提案した 烈は嬉しそうに笑って「それいいにょ!」と言った 清隆は康太を見て「総て顔見世出来ましたか?」と問い掛けた 「後は瑛兄だけだな」 「そうですから、ならば隣に行って挨拶したら、じぃちゃんの所へ来るのですよ、烈」 「わかっちゃ! じぃしゃん だいしゅき!」 「じぃちゃんも大好きですよ!烈」 ニコニコ笑っていたが、康太が 「ならラスト行くか烈?」 と問い掛けると、烈は姿勢を正し顔を引き締めた 康太と榊原と烈は会長室を出て社長室へと向かった 社長室のドアを叩くと瑛太自ら出た 瑛太は「栗田が烈が来てると報告書を持って来てくれた時に言ってました」だから待っていたと種明かしした 康太は「飛鳥井宗右衛門が転生者 飛鳥井烈に御座います!とまぁ形式のご挨拶に来てるんだよ」と瑛太には言った 「顔見世ですか、ならば烈は飛鳥井建設で不動な立場に立たれたと謂う訳ですね!」 「まぁ今後は烈が会社の統制を計る事となる! そして飛鳥井の一族の統制も宗右衛門が転生者の烈が取る事になる その狼煙を上げる為にどデカイ嵐を巻き起こしてる最中だ! 嵐が収まられば一族を呼び寄せて、その力を知ら示める時が来たんだよ!」 「会長の所へはこの後に?」 「もう行った! 優先順位は会長だから規律を糺す者なれば順位は歴然だと謂う事だ」 「そうですか!烈、私にはなにもないないのですか?  栗田が誠見事な口上でしたと絶賛してました」 「えーちゃん、かたこりゅのしたいにょ?」 瑛太はたらーんとなった 「それは要りません……」 「でもいちおう、やっておくね! あすかい れつです!おごおみしりおきを! どう?えーちゃん かたこりゅよね?」 「そうですね、私は何時もの烈の方が良いです 体はもう大丈夫なのですか?」 「もうだいじょうびだけどね…… ごはんはたくさんたべたらだめなのね」 至極残念そうに烈が謂うから、瑛太は榊原を見た 「ご飯を食べられなかった時期が長すぎたのですよ! 烈は耀に気を送っていた間、あまり食べれずにいたので、退院したからって食べたいだけ食べれば胃の消化が追い付けず痛みだすと言われてるので制限中です」と説明した 瑛太は可哀想になり烈を抱き締めた お昼になり、瑛太は会長室へと向かうと、そこには玲香も京香も来ていた 玲香は烈を見ると深々と頭を下げた 烈は嬉しそうに笑うと「ばぁしゃん!」と抱き着いた 「顔見世は上手く行ったのかえ?」 「うん!せんしぇーこうげきしかけてきたにょよ」 「それは強烈に社員達を叩きのめしたであろうな!」と玲香は笑った 皆でお昼を取ると烈は携帯を取り出し 「ひょーろーきゅん いまひま?」と兵藤に電話を掛けた 「おっ!烈やんか!退院したのかよ?」 「そーなのよ!でね、たいいんしたひに、にゅうがくしきらったのよ!」 兵藤は言葉もなかった 気を取り直して「今は丁度空いてるぜ、どうしたいのよ?」と問い掛けた 「つきあって ほしいにょ!」 退院した日に入学式とはハードな生活してるのに、まだ動くって謂うのかよ? と想ったが 「で、今何処よ?」と問い掛けた  「じぃしゃんのへや」 「それは飛鳥井建設の会長室と謂う事かよ?」 「そーなのよ!」 「ならば、直ぐに行くわ!」 「ひょーろーきゅん おひるたべた?」 「まだ食ってねぇよ!」 「ならしゃいんしょくどーの、らんちめにゅーたのんどくね!」 「おっ!気が利くやんか!直ぐに行くわ!」 電話を切ると烈は父を見た 榊原は「ランチメニューは何が良いんですか?」と問い掛けた 「あじふらいていしゃくよ!」 抜かりない答えに康太は頷いた 榊原は会長室を出て食堂へと向かった ランチを手にして会長室に入ると、兵藤がソファーに座っていた 榊原は兵藤の前にランチを置いた 玲香がお茶を淹れ兵藤の前に置いた 兵藤は「何処へ逝く予定よ」と問い掛けた すると烈は名刺を渡して「ここにいくにょ!」と伝えた 名刺を見ると飛鳥井神威と書かれていた 「了解!」と言い兵藤は名刺を胸ポケットにしまった 「そのあと、おうがとしゅがとあうにょ!」 「アポは取ってるのかよ?」 「らいんちた!」 「ライン友達やったもんな、そう言えば」 「そーなのよ! おーがには、たんていのほくこくちょもらうにょね! しゅがには、きゃみまのしんぺんあらわせてるのにょよ!」 徹底的にやる姿勢が見えて兵藤は「了解!」と言葉にした 兵藤は烈を連れて飛鳥井を後にした 車に乗せて名刺の住所に向けて走る 烈は「ひょーろーきゅん……ごめんね」と謝った 兵藤は笑って「気にするな!」と言葉にした 「これからのことで…あやまっちぇるの」 「これからの事?」 「はてがくるっちぇるのよ………あくいにみちたこういは……きっと、ひょーろーきゅんをきずつけるにょ!」 「俺は傷ついたりしねぇよ! 何があっても傷付かねぇよ!  もし傷付く事があったとしても………それは定めだと俺は受け止める準備は出来ているんだよ あの日家族に向けられた言葉は……俺も含んでいたんだろ? 俺は何も謂わねぇよ、例え殺されたとしても何も言ったりしねぇ!」 兵藤は薄々何かを感じていた 烈は何も謂わなかった 兵藤の車は名刺の住所に到着した 兵藤は「俺は車の中にいた方が良いか?」と問い掛けた 烈は兵藤の手を握ると、一緒に弁護士事務所へと入って行った 事務所の中には飛鳥井神威一人で待ち構えていた 神威は立ち上がると「お待ちしてました」と言葉にした 事務所に招き入れて、烈が所望している書類を前に置く 烈はその書類を手にして中身を確かめ 「相賀には連絡を取ったのか?」 嗄れた声で尋ねると、神威は 「相賀と調整して悦郎さんの件でも被害届を出して立件出来る準備は出来ました 真矢さんの方も防犯カメラの映像が決め手となりまして立件の準備は出来てます 上間の妹は須賀さんに申し出で保護して貰いました」 「琢磨の方は?」 「労基に駆け込まれればヤバい労働状況でしたから、琢磨の弟に接触を取り兄を告発させる準備中です 仕掛けは満を持した時に発動されると想い、貴方が報道を操作して告発する時、全ては回り始めます! 後、上間の新居の建築屋は上間との癒着も大きく1億しない新居を3億と嘯き見積もりを持っていましたので、これは脇田誠一さんを通じて警告と勧告と法的処置もしてあります! 二度と建築家を名乗れぬ程の痛手を与えるだけの資料は揃えてあります!」 「なら此れより裏を確立する事にする 相賀と須賀にも書類を貰うけてから行くとするかのぉ! 東都日報の東城にはアポ入れといてくれたのか?」 「はい!この後、会社の方へ向かうと連絡を入れておきました」 「なら万端じゃな!」 宗右衛門が言うと神威は 「昔は素直で優しい子じゃったのに、何処で捻くれたのじゃ?」と問い掛けた 「永きに渡る飛鳥井の…いや、斯波から始まる転生にすっかり捻くれたのじゃ! 儂も最初は素直な天使の様なお子じゃった だがそれだと即座に消されて……魔界と同じ憂き目に遭うからな、耐えて賢く強くなろうとしたら、今の原型になったのじゃ! まぁお子の儂は素直で天使のようだと真矢と共演した時、褒めちぎっておったではないか!」 ガハハハっと烈が笑う 神威は「お主も大変な日々を送ったのだからな、少し位グレたとしても、大目に見る事にするか」と諦めて口にした そして兵藤に向き直ると「朱雀殿 やんちゃな子だが儂の大切な子じゃ……宜しく頼む」と頼んだ 朱雀は「大歳神……貴方何時も毘沙門天と屋台で飲みまくってる飲み仲間ですよね?」と毘沙門天の飲み仲間を思い浮かべた 毘沙門天に用事があるって連絡すると、ガードレール下の屋台におると呼ばれて行った その時、一緒に飲んでた呑兵衛 毘沙門天の仲間ではないか!と想った 神威は「あやつも儂も倭の国の護り神故、付き合いも長いのじゃ!」と笑って言った 烈は「ひょーろーきゅん いくの!」と急かすと、兵藤は大量の資料を渡され、烈を連れて神威の事務所を後にした 烈は相賀と須賀と中継地点で逢う約束をしたカフェへと向かった カフェに入ると既に相賀と須賀が待っていた 相賀は烈を見付けると「烈、退院したのですね」と嬉しそうに言った   「そーなのよ、でねきょうがにゅうかくしきらったのよ!」 烈が言うと兵藤が「その上飛鳥井建設で顔見世して来たんだよな!」と付け加えた 物凄いハードな日程を熟しているんですね、烈 と二人は思った 相賀と須賀は烈の前に 「頼まれていた者類です! 」と差し出した 「わるきゃったね、おーが、しゅがも」 烈が言うと須賀は 「我等は烈の役に立てて嬉しく想っています この先、何があろうと貴方の道は邪魔させません! どうぞ、このまま真っ直ぐにお進みださい」 と言葉にした 烈は書類を受け取ると立ち上がった 兵藤は莫大な書類を手して立ち上がった 相賀は兵藤にも「君も大変だと想いますが、烈の事を宜しく頼みますよ」と願いを託して言葉にする 兵藤は頷いて烈とカフェを出て行った 兵藤の車に乗り込むと烈は首から下げた携帯を持って電話を掛け始めた 「かぁしゃん、とうじょうまでことは、はこべたよ!」 『ならば、東城の方はオレも同席するわ!』 「あいがとう!かぁしゃん」 烈はそう言うと電話を切った 「おそうじしにゃいとにゃぁ~  どこからやるきゃなぁ~」 烈はそう言い何やら考えに耽っていた 兵藤は東都日報の近くに在る駐車場に車を停めると、烈と共に東都日報へと向かった 兵藤の車には相賀と須賀、神威が渡して来た莫大な量の資料があった 烈が持つには無理なので、兵藤が変わりに持って行くつもりだった 東都日報の正面玄関に逝くと、康太と榊原が待ち構えていた 烈は目配せすると、共に歩き社内へ入って行った 康太と榊原は烈の後ろに控えていた 受付に来ると烈は「ひょーろーきゅん おねがい」と言った 康太達は出る気は皆無な様だった? 兵藤は「アポを取っている飛鳥井烈です!」と受付嬢にそう言った すると受付嬢は来客名簿を見て 「お伺いしております!どうぞ!社内へ」と良い通してくれた 烈はエレベーターの前に立つと「いちばんうえよ!おちて!」と兵藤に頼んだ 兵藤は一番上のボタンを押した 最上階まで行きエレベーターを下りると、烈はまるで何度でも来ているかのように、淀みのない足取りで社長室へと向かいノックした すると社長室のドアは直ぐに開いた 東城は兵藤と烈が立っていて、その後ろに康太と榊原が何も言わずに立っているの姿を目にすると 「どうぞ!中へ」と部屋に招いれた ソファーに座ると烈は「きょうはきちょーなおじかんありがとうございましゅ!」と頭を下げた 東城は「飛鳥井神威殿と申される方から烈が訪ねてくるからお時間を作って下さい、と、申されました 私に用があるのは烈君ですか?」と尋ねた 烈は兵藤が手にする莫大な資料を東城の前に差し出した 大量の資料を目にして東城は「これは?」と尋ねた 烈は嗄れた声で 「この資料は後程目を通しておいて下され! さてと本題じゃ、貴殿には真実を伝えて欲しい 歪めて一人を悪に貶める事なく真実を伝えて欲しいと想い参ったのじゃ!」 と前置きをして、上間の総ての悪事を東城に話した そしてその資料はその悪事の裏付けと証拠 「人は悪人を見つけると、我先に其奴を悪者に陥れようとする! 我等はそれは望んではおらぬ! 上間だとて人の子だ……歪むに至るまでの過程がある それは悲惨な日々じゃったから歪んだ その中に上間の生い立ちも記した書類はある だが、だから許されるのか?と問われたら 儂は絶対に許しはせぬと申す! だからこその、真実を伝える使者になってくれぬか?と申しておるのじゃ!」 「即答は出来かねますが、貴方の意向に添うように持って行けたらと思う所存です」 「東城!」 「はい!」 「人は許されて先が在る それは真贋のお言葉じゃ! 儂もそう想う……だが許すにはあまりにも多くの者を傷付け過ぎた 命を落とした木葉だとて、このまま捨て置かれた現状は許せは出来ぬだろうて! だから裁かねばならぬ! 総てをリセットして【無】にならねば終わりはせぬ……上間にとっての悪夢をもう終わらせてやる時が来たのじゃ! それには歪まぬ真実を報道する存在がなくてはならぬ! 許されてもならぬ! だけど湾曲させ偽りを並べて息の根を止めるのもならぬのじゃ! 正しき道に引きずり出し、裁かねばならぬ! それが引きずり出す者の使命だと儂は想うからのぉ!」 重い言葉だった 烈は康太の方を見ると 「ぼくのほうは、それでおわりです かあしゃんは?」と問い掛けた 「オレは花柳悦郎の記者会見を開く為に来てるんだよ お前が裏を責めるからな、同時に表を責めねぇと合流した時、ズレは許されねぇからな!」 「なら、らいじょうぶね! ぼくはばぁたんのきしゃかいけんをひらく!」 「なら合同記者会見とするか?」 「そうね、それがさいぜんね」 そう答え烈はニコッと笑った 康太は花柳悦郎の記者会見を、烈は榊原真矢の記者会見を合同に開くと東城に話した そしてそれらは総て烈の果てにある絵図であり、確かな明日へ続ける礎だと説明した 東城は「記者会見の場は決まってるのですか?」と問い掛けた 「いや、それは東城が烈が持参した書類を目にして、どう動かれるかによる だから今は決めてはいねぇ!」と答えた あくまでも烈の果てにある先だと東城は想った 東城は資料を手にして「この書類全てに目を通すのです、少しお時間を下さい!」と言った 話はついたと判断すると烈は 「ひょーろーきゅん すこしつかれた」と言い甘えて抱き着いた 「おめぇは退院した日に入学式して その上会社で顔見世したりして動いてるんだから、疲れて当然だ 後は康太に任せとけ! 俺もちゃんと見届けてやるからな!」 「あいがとう、ひょーろーきゅん」 烈は疲れた顔をしていた まだまだ体力は前よりも戻ってはいなかった 本当に口惜しい気分だった 東城は「今枝を所望ですか?烈君?」と問い掛けた 「いまえだいじょうに、しんじつをつたえられるなら ほかでもかまわない……」 用意できるならばしてみろ!と言われたも同然だった 完敗だった 東城は「この書類を今枝を呼びまして検討させて貰います! 猶予は何日ですか?」と問い質した 「さいていでもみっか それいじょうはまてないから、ほかをもさくしないと、いけないから はやくうごかないと、すべてがておくれになるしかない」と答えた 康太は良い所を行くと感心した 「3日ですね、承知しました!」   「そしたらあらしがくるにょ! もうとめられなゃい、あらしがくるにょ!」 不敵に嗤うその顔は飛鳥井康太を彷彿させていた 烈は「にゃらかえるにょ!」と言い立ち上がった 兵藤も立ち上がると康太と榊原も立ち上がった そして社長室を出て行った 東都日報を後にすると烈は兵藤の車で飛鳥井に還ると言った 「ひょーろーきゅん」 「何だ?」 「ありがとう」 「礼は言わなくても大丈夫だ!」 「くまもと、いっしょにきてくれた うれちかったのね そしていまもたすけてくれた ほんとうにありがとなのね」 「協力出来る時なれば協力してやる だが俺も今、結構忙しいからな 掴まらなかったら済まねぇな!」 「ぜんぜんだいじょうぶよ!」 烈はそう言い、おそうじ、おそうじ!と歌っていた 飛鳥井の家の前に車を停めると兵藤は 「ほい、お前んちだ!」と言い烈を下ろすと車を走らせて行った 烈は門塀を開けて、玄関の前に立つと鍵を取り出すと、烈用の踏み台を引き出してガチャと回して開けた 踏み台を片付け、重いドアを開けるとそこには兄達が飛び出して烈を迎えてくれた 翔は「烈 大丈夫なの?」と心配した この一ヶ月 烈には逢えていなかったからだ 「ちょっとつかれたのね」 烈が言うと流生が烈の手を引き、洗面所で手洗いうがいをしてから応接間に連れて行った 音弥はやっと還って来た弟の姿に泣いていた 太陽も大空も泣いていた 烈は兄弟に囲まれ、知らないうちに眠りに落ちた 兄弟は烈の上にブランケットをかけると、烈の眠りを邪魔されない様に護っていた 烈が目を醒すとそこには、飛鳥井の家族が揃っていて、烈は客間に寝かされていた 目を醒すと康太が「起きたのかよ?」と声をかけた 「かぁしゃん……おにゃかへった」 起きてすぐの言葉がそれかよ!と康太は笑った 榊原は烈の頭を撫でて、お皿に少しずつ料理を取り分けて置いた すると烈はそれを食べ始めた 烈の好きな熱々のお茶を置いてやると、烈は美味しそうにお茶を飲んでいた そして少しお腹が膨れると、真矢の存在に気付いて「ばぁたん!」と呼んだ 「烈、体は大丈夫ですか?」 「ばぁたんは?ねぇちゅらくにゃい?」 「大丈夫よ、もうじき退院しても良いって謂われましたからね」 真矢の言葉を聞き烈は「かあしゃん!」と言った 康太は「やっぱし頃合いって事だ」って返した 「にゃら、いっきにいくよ!」 「おー!ドンドン行け!」  烈は真矢に抱き着くと「ばぁたん きしゃかいけんやるにょ!」と告げた 「え?記者会見ですか? 何を皆に公表するのですか?」 「かみまにやられてにゅういんちてたって!」 「え?そんなに大事にしなくても良いのよ」 「らめ!ばぁたんにてをだすやつゆるしゃにゃい!」 「烈……」 「かぁしゃんもきしゃかいけん やるからね いっちょにやるにょ!」 「え?康太も?」 真矢がそう言うと康太は「オレは烈とは別件ですが、加害者は同じなので、一緒にやっちまおうぜ!と烈と話をしました」と説明した、 烈は「はぁたんのきしゃかいけん、でるよ!」と謂うと真矢は 「烈が出るのですか?」と問い掛けた 康太は「詳しい話は明日にでもな!今夜は飲むぞ!義母さんは美味しいジュースでも飲んで下さい!」と言った 笙は瑛太に烈の入学式での話をした 物凄く貫禄があって威厳もあって近寄り難かったとボヤいた 瑛太は何も言わずに飲んでいた その夜は遅くまで皆の声が響き、楽しい時間は過ぎて行った 翌朝から烈は桜林学園の初等科に兄達とやっとこさ通える事に嬉しそうに桜林の制服を着ていた 烈は朝食を食べつつ慎一に 「しんいち、がっこうすこしやすむのよ」と伝えた 慎一は「動かれますか?」と問い掛けた 「そーなのよ!じかんがたりにゃいの」 やっと兄達と学校に通えるようになったのに……と慎一は想った 「何時から休むと連絡いれますか?」 「こんしゅうはやすみなのよ」 「解りました、電話を入れておきます」 「にーにといきたいんらけどな……」 「でもやらないと行けない事があるんですね!」 「かいしゃのとうせい いちぞくのとうせい ちつじょと、きりつ それらはそうえもんのしごとらから」 慎一は何も言わずに烈の頭を撫でた 朝食を取ると、有栖院栗栖がお迎えに来て、彼に連れられ桜林へと向う 栗栖は「烈、入学おめでとう!」と喜んで言葉をくれた 烈は「あいがとう、れもね……いそがしくてがっこうにいくひまないのよ!」とボヤいた 「そういえば君何かやってるもんね 気配からして違うし、膨大な勝機呼んでるでしょ?」 「よばないとまけちゃうからね」 「まぁ忙しくて学校休んでも僕の課題はちゃんとやるんだよ!」と言ってのけた 烈は嫌な顔をして「はい、やります」と答えた 桜林学園 初等科の前に車を停めると子供達は車から下りた 烈が車から降りると、あっちこっちから【烈くんおはよー!】と声がかかった 烈は同級生にも上級生にも人気があった それより人気があるのは兄達なのだが…… 飛鳥井の6兄弟が学園に入るだけで結構な人が集まっていた 烈はそんな姿を見て「刺客がいたなら一発でアウトだわな」と嗄れた声で言った 翔は驚いた瞳を烈に向けた 翔は常にそれを感じていたから……だ! 翔は母に言わねば!と心に誓った その日一年は学園になれる為に1時間ちょっとで帰宅となっていた 担任の長瀬は烈を呼び止めて 「少し話せないかな?」と言った 烈は頷き長瀬と生徒相談室へと向かった 「今週は休まれるとか? 何かありましたか?」 「やらないとだめなことあるのよ! らから、じかんがたらにゃいのよ」 「やらねばならない事………ですか?」 「そーなのよ!」 「それは学校を休んでやらねばならない事なんですか?」 烈は思案すると嗄れた声で 「儂は飛鳥井宗右衛門と申す 烈はその転生者故、やらねばならぬ事が在る! それは一族の為、家の為! この度は入学があったのに、その前に烈が嵐を呼んでしまった故に、学業に支障をきたしてしまった!謝罪をする!」 と話すと、烈は深々と頭を下げた 「お聞かせ願えますか?」 「もう総てが配置されたから話すとするのかのぉ」と言い今まで起こった事を話した つい昨日まで入院していた事、退院するまで結構大変だった事 その話は……子供の範疇を超えてて、長瀬は言葉もなかった 烈は子供の声になり 「しにかけてたから、それがいちばんていたかったのよ!」と何でもない様に言った 長瀬は「無茶はなさらないように!悠斗からも見張っててね父さん!と頼まれてますからね!」とド太い釘を刺した 烈は「ゆーのやつ!」と愚痴を溢した 長瀬は「休暇届は受理させて戴きます ですが、決して無理はなさらずに!」と言葉にした 烈は嗄れた声で「長瀬よ」と名を呼んた 「なんですか?宗右衛門殿」 「朝、学校に来てビックリした 何じゃ?あの人の群れは……あの中に刺客がいれば間違いなく我等はその手に掛かって息絶えるしかないわな!」 と何とかしろ!との意味を込めて言った そう言えば正門に群がる生徒の群れは、教師の間でも問題視されつつあった 「宗右衛門殿にはどの様に感じておられるのですか?」 「あの群れの中に悪意の塊が潜んでいたら?  それは飛鳥井だけの話には留まらぬ その刃が無差別に飛鳥井に知ら示める為に働いたら? 学園は防犯上の不手際を指摘されるだろう! そしてそれこそが、飛鳥井を狙ってる者の意図した揺動だとしたら? わしは今朝の馬鹿騒ぎが怖くて堪らなんだ! 平和ボケした中にも悪意はあるし殺意もあるのだと、子を預かる者なれば警戒は怠らぬ様に……と頼むだけじゃな!」 長瀬はそこまでの深読みは……学園長だけの見解かと想っていたし、教師陣もそう考えていた 度が過ぎたら注意すればいい、程度の考えだったから冷水を浴びせられた想いだった 「直ちに学園長と相談して動きたいと想います!」 「頼むぞ!その刃が兄達に向いたら儂は絶対に許しはせぬ!  そして烈に向くなれば……兄達は許しはせぬぞ! とだけ申しておく」 「承知しました、所で貴方はお呼びの車は来るのですか?」 「よんだからくるのよ!」 「ならば、それまで私といて下さい 貴方に何かあれば、大変な事になりますからね! お呼びは車ですか?」 「それなのよ」 「では、駐車場ですか?」  「すぐにでるからまえでとまるの!」 「では正面玄関にお願いします」 長瀬はそう言い、烈と共に正面玄関に移動した 暫くすると烈の前に真っ黒なホンダの車、ヴェゼルが停まった 助手席のドアを開けると、俳優顔負けのイケメンが運転席に座っていた 「よぉ、烈、待たせたな!」 「おちょいのよ!」 烈がボヤくとイケメンは「ごめんってば!」と謝った 「じゃせんせー!またね!」 そう言って烈はドアを開けて車に乗り込んだ 車を走らせると「この後どうするのよ?」と問い掛けた 「いえにかえってきがえなの!」 「んなら地下駐車場のドアを開けてもらってくれ!」 烈は愼一に電話して「しゃったー あけてぇ!」と頼み込んだ 愼一は「今開けます」と謂うとリモコンを操作してシャッターを開けた するの見た事のない黒の車が地下駐車場に入って来たから、愼一は驚いていた 来客用のスペースに車を停めるように指示して、車を停めて貰う すると烈は車から飛び出して、家の中へと入って行った 愼一は「あの、何方かお伺いしても宜しいですか?」と問い掛けた イケメンは車から降りると愼一の前に立ち 「三木竜馬だ!以後お見知り置きを!」と自己紹介した 年の頃なら20歳そこそこに見えた 「三木って事は繁雄の息子ですか?」 「ええ、顔は祖母に似てますが、父の息子に間違いありません!」 今まで名前しか聞こえて来なかった三木の息子が登場して来て、愼一は胸騒ぎを覚えていた 「烈とは何処でお知り合いに?」 「竜ヶ崎斎王の所で逢って3秒で鼻っ柱折られてケチョンケチョンに負かされて……父の前で泣いて謝らさせられて以来、俺は烈の為に動くと決めて今に至ります! 俺を貴方に合わせたと謂う事は、もう不動な立場になったので此れよりは連れ歩くつもりなのでしょう!」 何か凄い事になってて、慎一は脱力した 竜馬は「俺は貴方のお眼鏡には叶いませんか?」と問い掛けた 「いいえ、あまりにも凄い事になってて驚いたのですよ 宜しく竜馬、俺の事は慎一で構わないよ」 「慎一、頼みがあるんだけど、良いかな?」 「何ですか?」 「烈が絶賛してる慎一の料理が食べてみたいんだけど?」 「何時でも食べたいの作りますよ 今後は烈と共に帰り夕飯食べてけば良いんですよ!」 竜馬は慎一の手を握るとブンブン振って「ありがとう!」と礼を言った 「やっと俺も精進料理みたいな生活に終止符が打てるぜ!」 「精進料理?君は今何処に住んてるの?」 「飛鳥井の菩提寺の隣の寮 烈に押し込められました 生意気な奴は修行しろと、修行僧ばりの生活をしています でも近い内にこの近くに越して来ます 親父がマンションを買ってくれたので越せれます」 「君は今大学生?」 「俺はオックスフォード大学を3年で卒業して学位も博士課程も習得して、今は親父の政治塾と鷹司緑翠先生の元で基礎を叩き込まれている最中です! 年は今年21歳になります!」 「オックスフォードを3年でって凄い天才だね」 「堂嶋はハーバードを2年ですから、それよりは落ちます!」 いやいや、そんな事はないだろう……と慎一は想った 「君は君だから比べたりしたら駄目だよ」 慎一がそう言うと竜馬は感激した瞳を慎一に向けた 「烈が慎一なら絶対にそう言うって言ってくれた ………貴方に逢えて俺は感激してます!」 竜馬は体育会系の暑苦しさを孕んでい 見た目は今時のイケメンなのに…… 烈が着替えて地下駐車場に来ると 「りゅーま、ごはんたべさせもらう、よろし!」と言った 「良いんですか?烈!」 「たべたかったんらよね? しんいちおねがいね!」 と頼まれれば断る理由もないので、了承した 「嬉しいな!やっと食べれる!」 そうと決まればキッチンへ! 竜馬は烈を引き連れて飛鳥井の家の中へと入った そしてキッチンへと共に行くと、即座にテーブルに座りワクワクした顔でご飯を待っていた 用があってキッチンへ出向いた一生と聡一郎は見知らぬ存在に固まっていた 聡一郎は怪訝な顔で「何方ですか?」と問い掛けた

ともだちにシェアしよう!