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第80話 烈風吹き荒ぶ②

竜馬は振り返ると、一生と聡一郎の姿を確かめ立ち上がった 「初めまして、俺は三木竜馬に御座います 以後お見知りおきを!」と自己紹介した 一生が「何で烈と?」と疑問を投げ掛けると 「俺は烈の為にいる存在ですから! 烈の立場が確立されたのでしょ? だから烈は俺を表に出して連れ歩くつもりなんです!」 竜馬の姿を目にして、その底しれぬ力を一生も聡一郎も感じ取っていた 一生はだから【三木】は貴之が継ぐのか?と想った 三木の枠には留まらぬ気質に一生は理解した そして座ると慎一のご飯を美味しそうに食べ始めた 涙を零し「上手い!上手い!」と感激して謂う姿に聡一郎は「君……今まで何食べてたのさ?」と思わず問い掛けた 「飛鳥井の菩提寺の精進料理です! 俺は寺の弟子達と同じモノを食べてたので、この年でもぉカサカサですよ!」 と脂分のなさに、ついつい愚痴が溢れた 烈は竜馬の隣でヨーグルトを食べていた 一生は「食べれねぇのか?」と問い掛けた 「かじゅ、あさはもうたべてがっこういってのの!」と説明した 「ならこれから動くのか?」 「そーなのよ、そのためのりゅーまなのよ」 サラッと何でもない風に口にされた 竜馬はご飯を食べ終わると慎一に「美味しかったです!ありがとうございました!」と礼を言った 慎一は「今後は家に来て食べてると良い、連絡交換するかい!」と謂うと「お願いします!」と返って来た 聡一郎はこれは体育会系の暑苦しさか?と想ったが、悪い子ではないと想い連絡を交換した ついでにラインも交換し、今後は密なる連絡交換を約束した 「りゅーま いくにょ!」 「了解!でも顔見世なんですよ? 茶を飲む時間位下さいよ!」   「わっぱめが!」 と怒り竜馬の足を踏みつけた 「痛い……」 「いそがしいのよ! じかんたらにゃいのよ!」 「解りましたって、怒らないで下さいってば!」 「だめだめだとすてるきゃらね!」 「それは止めて下さいってば! 君に捨てられたら親父に泣いて許しを請うた意味がなくなるじゃないですか?」 烈はフンッとそっぽを向いた 「烈ぅ~!」 情けなく謂うイケメンに同情して 「俺等は何時でもお茶するから、烈と動いてやってくれ! 烈も許してやれよ!」  と執り成した ぱっと見冷たい感じのイケメンだった 近寄り難いイケメンだった だから一生も聡一郎も警戒していた ……が、イケメンな姿も形無しな姿に竜馬の人間らしさを感じていた 「ちかたにゃいにゃぁー! りゅーま いくじょ!」 「烈!何処までもお供します! では皆さんまた! 今後は表に出る許可を烈に貰いましたので、仲良くして貰えると嬉しいです!」 聡一郎は「宜しくね竜馬!」と好意的に言うと 一生も「これからは密に連絡を取り合おうぜ! そして一緒に飯でも酒でも飲もうぜ!」と友好的な言葉を投げ掛けた 烈と竜馬はキッチンを出て、飛鳥井の家から出て行った 一生は「めちゃくそイケメンですのに、中身は桃太郎ばりの忠犬ですがな!」と暑苦しいが忠犬な兵藤んちのワンコ桃太郎を思い浮かべて口にした 聡一郎も「ぱっと見、イケメン過ぎて近寄り難い感じすのるに、何ですか?あの人懐っこい感じは! あの顔は三木と言うより嫁に近いのですかね?」と不思議に想いながらも、概ね好意的に受け捉えていた   だが慎一は竜馬の持つ底知れぬ力に、凄い人間を従えて……ある意味康太と似てるなって感じていた だが顔を見せたと謂う事は、不動な存在なのだろう 康太は言った 烈はもう動かせる人間を動かしている、と。 そして烈にはそんな人間が既にいる、と。 彼もその一人なのだろう、と想った、 烈は車に乗ると竜馬に 「きしゃかいけんのひ、りゅーまはうしろでたってて!」と伝えた 「それは、俺に記者会見に出る烈の後ろに立ってろと謂う事なのか?」 「そーよ!りゅーまのかおをうるのよ!」 そう言い烈はニャッと笑った 竜馬は嫌な顔をした 親父に解っちゃうやんか!と想った  別に親父は怖くはない 母も父も何処にでもいる当たり前の両親としていてくれた ただ、竜馬がそんな安穏とした日々に嫌気が差して荒れていた そんな時、飛鳥井康太によって竜ヶ崎斎王に預けられ教えられた 勉強も無論、帝王学に世間の常識に人を使うと謂うリスクと立場 総てを竜ヶ崎斎王によって叩き込まれ、オックスフォード大学の入試を受けさせられ、受かると 「2年で帰りなさい!」と言われ放り出された その時 竜馬は15歳だった 反抗期位見逃してくれねぇのか?とヤケになった時もある だが、2年で帰らねぇと何言われるか解らねぇやんか!と只管勉強してしまくった だが3年掛かって斎王には「一年多すぎ!」と文句を言われ、康太には「正義より劣る」と謂われた やりクソになってた時、烈と出会った 竜馬18の時だった 烈、3歳の時だった 烈は腐っていた竜馬の鼻っ柱をへし折った 3歳のガキに負ける訳にはいかねぇ!と躍起になったが……負けてゲシゲシ踏み付けられた そして嗄れた声で 「竜馬、主は三木には留まりはせぬ力を持っておる だから真贋は外へ行かせた! お主は両親が親父が自分を切ったのだと思ったのだろ?」と告げられた 自分の考えをズバッと謂われ、装った殻をハンマーで叩き割られた 「お主はお主の道を逝け! それが真贋が、お前の両親に託された想いだと知るがいい! 人にはそれぞれ向いた道が在る お主の道は三木の名は役不足! 責めて責めて攻め抜いて世を正したいのなら、お主は己の道を逝くが良い! その為に用意されたお主だけの道だと気づくと良い!」 パラパラと殻が崩れ落ちる 眼の前が明るくなると…竜馬は泣いていた 後日、烈に付き添って貰い両親に逢うと、両親は泣いていた 母は子を思わな日はなかった…と苦しい胸の内を話してくれた 竜馬が初めて両親の想いを知り、己の足で立った瞬間だった それ以来 竜馬は烈を慕い、列の背負うべく荷物を自分も背負おうと共に行く事にしたのだった だが表に出ることは許されず、烈によって菩提寺に放り込まれ僧侶達の寮に入れられた 寺の坊主と同じ修行を受けて、鷹司緑翠と三木の塾の進藤に教えを請う日々が続いた そんな日々の中、腐りそうな時も烈の厳しい修行の日々を目にすれば、耐える事が出来て あんなに幼い烈が耐えているだから!と耐えられた 五通夜の儀式の時だって、固唾を呑んで見てるしか出来なかった だからこうして共に動けるのが嬉しくて堪ら 竜馬は初めて父 三木繁雄に頼み事をした 子供らしからぬ父の子供だった だか、今は父を尊敬し、父の歩く厳しさも知っている その上で父に頼み事をした 「親父頼みがある!」 三木の家に出向き頭を下げると、三木は嬉しそうに笑っていた 母も嬉しそうに笑っていた どれだけ自分が二人を泣かせていたのか……思い知った その上で頼みをした 父は「聞ける事なれば聞きましょう!」と言ってくれた 「俺は飛鳥井の菩提寺を出て、烈のもっと近くに行きてぇんだ! だから飛鳥井の近くにマンションを買って欲しい!」 借りて欲しいではなく、買って欲しいと言った 賃貸だと毎月の家賃を考えたら買って貰った方が安くつくからだ 「ならば月々の管理費はお前が払いなさい!」 母がそう言った 「解りました!ではお願いします」 竜馬がそう言うと三木はマンションの契約書を、竜馬に渡した   母親が「康太が言ってくると言っていたので用意をしてあります! お前はもう宗右衛門が引き継いだ事業を手伝って給料を得てるんでってね ならば、烈の足手纏いにならぬように精進なさいね!」と言った 「親父、母さん大好きだ!」 子供のような顔で謂われ、三木と妻は泣いた 三木は「お前は俺の親父の妻、お前に取ったら祖母と良く似た顔をしている! 稀代の大女優だった……祖母そっくりだからな」と竜馬の顔を見て言った 竜馬は父親の本音を聞いて 「俺は親父と母さんの子じゃないと想った時もある………何故なら俺だけ貴方達のDNAを感じられなかったからだ! 妹達は父さんに良く似て、弟達は母さんそっくりだ!ならば俺は? 養子かと思った日もある……家族の中で俺だけ浮いてる存在だと想っていた」と自分の本音も吐露した 三木と妻は驚いていた まさか養子だなんて思っていたなんて……… 謂われてみれば………子供の顔はどちらかに明らかに解る顔をしていた 竜馬は祖母に酷似した顔だった 美しく整った顔は稀代の名女優たるを知らしめた祖母によく似た顔をしていた 母は「何言ってるのよ聞けば済んだことを……貴方は私がお腹を痛めた子に決まってるじゃない!」と泣かれた 父は「お前はな、俺の母にそっくりなんだよ 三木敦夫が惚れて惚れて惚れ抜いた女性、それがお前の祖母なんだよ 俺の親父の妻だからお前と似てても当たり前だと想ってて疑問にすら想わなかった それがお前を苦しめていたなんて知らなかった 済まなかったな竜馬」と謝った 竜馬は慌てて止めに入った 「俺は二人の子供だから、それで良い!」と言った 親子関係が修復された瞬間だった 以来親の家にはよく行く様になった 兄弟達は最初は恐る恐る近付いていたが、今はどこにでもいる当たり前の兄弟として接していた そんな想いをした今だった 竜馬は烈を車に乗せると「何処へ行くのよ?」と問い掛けた 「きょうはね、きしゃかいけんかいじょうをさがすのよ! だからおーがんとこいくの! おーがんとこに、しゅがもじんのもいるのよ!」 「了解、相賀さんの事務所教えて下さい」 竜馬が言うと烈はナビに行き先を打ち込んだ ナビ通りに車を走らせると烈がニコニコと笑って 「おーが、わきゃるかな?」 「何がですか?」 「きだちのめいじょゆう ごだい ゆきの おもいらしちゃうかな?」 「ごだいゆきの? それは誰よ?」 「それはね、りゅーまのそぼよ!」 「有名なんですか?」 「めちゃくそゆうめいよ ぼくがまえにてんせいしたとき、めちゃくそさわがれてたのよ せいじゅんはじょゆうのだいめいしは、いまもごだいゆきのっていってもかごんじゃないからね」 「祖母はそんな有名な人でしたか?」 物静かで品の良い祖母は何時だって優しかった 小さい頃の想い出しかないからこそ、想うのかも知らない 「りゅーまのかおそっくりよ! れも、でびゅーとうじしかしらにゃいのよ そのあと、ろうすいでしんだからね」 言葉もなかった…… 気を取り直して 「俺か祖母に似てるのは、親父に聞きました 俺だけ祖母に似てるって…… 全部事後だったので……本当に、親父は語彙が足らない!と痛感しまし そして何より一番俺が理解できなかったのは…… 【三木】は一度安曇貴之に託すと謂われた時 そしてその後を生まれたばかりの弟の敦之に継がせるって言われ事だな 何で俺じゃないんだよ!ってヤケクソになってた時がある」 「それはね、しんがんがきめたのよ あつゆきがいちばん、そふのもつきしつににてるんらよ!」 「それは真贋から説明して貰いました 俺も納得してます、今は!ですけどね!」 「りゅーまはなにものにもとらわれちゃだめなのよ とらわれたら、うごけなくなるきゃら だからのびのびしたかんきょうをあたえらんだとおもうよ」 「でも烈は伸び伸びした環境じゃなく修行僧と同じ生活しろ!って寺に押し込めたじゃないですか!」 「それはね、きりつというたてしゃかいをしらせるためね てらはいっしゅのたてしゃかいだからね」 「イビられるし襲われそうになるし大変でした」 「ひとはむらがると、よわいのをひょうてきにしたがる そしてりゅーまのかおはうつくしいからな、しかたにゃいのよ! りゅーまには、ひとって どうやっていじめられるのか? とかたいけんしてもらいたかったのね」 「陰湿な苛めを身を持って体験させて貰いましたとも! 襲われそうになったと謂うオマケつきで、でしたけどね!」 「だからそのまえに、どうじょうできたえてやったん! なげとばすくらいは、じんないにきたえてもらったのよ!」 「ええ、稽古つけて貰いましたよ 貴方にもね、こんな小さいのに投げ飛ばされるとはね!」 烈は笑っていた 話してると相賀の事務所に到着した 竜馬は来賓スペースに車を停めると、烈と共に事務所の中へ入って行った 事務所の中へ入ると相賀、須賀、神野が待ち構えていた 3人は竜馬の顔を見ると、驚いていた 相賀は「五代雪乃……」とその顔を見て呟いた 須賀と神野は「絶対に売れそう!」と想った 烈は3人の前に座ると「ともにいく、みき りゅーま!よろちく!」と紹介した 竜馬は「三木竜馬です!竜の馬と書いてりょうまではなく、りゅうまと呼ばせる それは祖父三木敦夫のこだわりの名前だそうです!以後お見知り置きを!」と自己紹介した 相賀は烈に「彼とどう謂う関係なんだい?」と心配して問い掛けた 「りゅーまはぼくのためにいるそんざいれす!」とニコッと笑って言った 相賀は「五代雪乃にそっくりだ……あぁ雪乃が嫁いだ先は三木の家でしたね」と今更ながらに言葉にした 竜馬は困った顔をしていた 烈は「りゅーまはせいじかになるのよ! そのうつわは、みきにはおさまらないからそとにだした! だからいまは、いっしょにいられるけど、かおとなをうってちからをたくわえたらおどりでるのよ! そのじつりょくはだれにもまけにゃい! せーぎはりゅーまをみてあせり たかしはりゅーまをみてたいこうしんをもやす! たかゆきはりゅーまのそんざいにやっきになる よにんはせっさたくまして、このくにをはてへとつなぐそんざいなのよ!」 と、まるで世間話をしている様に軽く言った そして「じかんがにゃいのよ!」と焦った 携帯を取り出すとその場にいない母へ 「どうしてかぁしゃんいにゃいの!」と電話を入れた 『すまねぇ、烈 母ちゃんも準備で動いてるんだぜ!』 「まってりゅからね!」 『おー!進められる所まで進めとけ!』 そう言われて烈は電話を切ると姿勢を正した 「きしゃかいけんかいじょうはどうなりました?」 須賀が「直ぐに抑えれる場所だと100が限界でした!」と説明した 「ひゃくか……りゅーまのかおうれるかな?」 神野が「竜馬の顔を売り出す?それはどういう意味よ?」と問い掛けた 「りゅーまはね、やくしゃにはならないよ! かおをうるのはね、せいじかになるまでにありとあらゆるところで、なまえとかおをうるのよ!」 「その顔なれば、相賀の年代なれば五代雪乃を思い浮かべ  俺等より若い年代は容姿に見惚れる筈だろ?」 「れもね、それらとなかみないのよ!」 中身がない………それは容姿だけではないと言いたいのだろう 「りゅーまはね、おっくちゅほーどをさんねんでしゅうしかていまでとってるのよ!」 神野は「オックスフォード大学を3年で修士課程まで取ってるですか!それは天才じゃないですか!」驚愕混じりに言った 竜馬は嫌な顔をして 「堂嶋正義はハーバードを2年で卒業したそうです!だから俺は落ちると斎王にも康太にも謂われました!」 と現実を話した 桁の違う話に神野はクラクラして、須賀は苦笑した 須賀は康太も斎王も何故にそう言ったのか?理解が出来ていた 何も出来ぬものはない、己の力を過信したら、その方が怖いから戒めみたいに言ったのだろう かって怖いものなど、何一つないと自負して欺瞞に満ちた中にいた自分のように…… 須賀は「竜馬君、君はどの位の収容人員だと妥当だと想いますか?」と問い質した 竜馬は既に資料は読んでいたのか? 「真贋も出ての合同記者会見なのですよね? ならば、飛鳥井家真贋の存在に取材希望の人員は300収容が妥当だと想います!」 神野が「良く知っておいでですね!」と言うと 「その資料、作ったの俺ですから! 集めに集めた資料を渡して、つくるの!の一言で放り出しましたからね烈が!」と答えた 烈は知らん顔して「さんびゃく……どこらろ?」と思案していた そこへ康太と榊原が兵藤を連れて事務所にやって来た 康太は烈を見付けると「守備は?」と問い掛けた 「さんびゃく!」と答えた 康太は竜馬を見た 「記者会見場 300人収容の会場を考えて思考止めてます!」と答えた 康太は「300で足りるかよ?」と呟いた 烈は「そーよね!しゅうかんしくるよね てれびきょくもくるよね!するとかめらあるし、すぺーすたりにゃいよね!」と引っ掛かった点に気付き口にした 「何処でやるよ?烈」 「そこにゃのよ!」 「公会堂とか貸し切るか?」 「ひようはかあしゃんよ!」 「お前は出さねぇのかよ?」 「ぼくねちいさいから!」 「小さくても宗右衛門を継いだ今、儲かってるじゃねぇかよ?」 「れもね、かむいがかんりちてるから……だちてくれるか……」 烈は涙目になる 結構神威は怖いのだ 遥か昔 父に拳骨され怒られた時に味わった時の様に、今も存在は絶対なモノだった 「仕方ねぇな、ならばオレが用意してやるよ!」 康太が言うと竜馬が 「なら俺が!親父に生前贈与して貰ってきます!」と言った 康太は竜馬の頭をポコンっと叩いた 「オレが三木に泣かれるやんか!」 康太がボヤくと兵藤が「紹介してくれよ!」と言った 「顔合わせてるんやないのか?  緑翠んちでも進藤の教室でも!」 「顔は合わせているが、気軽に声を掛けられる存在じゃなかった!」 兵藤が言うと竜馬は「ひでぇな……何か何時も無視されてたのって嫌われてたのか?俺 知らず知らずに嫌われてたのか?」と落ち込んで言った 康太は「此方は三木繁雄の長男 三木竜馬だ 字は竜の馬と書いて、りょうまてなくりゅうまと呼ばせる!年は21歳オックスフォード大学を3年で卒業して今は人生経験を習得中で、烈の為にいる存在だ!」と紹介した 兵藤は竜馬の前に立つと手を差し出した 竜馬がその手を握ると、強く握り返し 「俺は兵藤貴史だ! 嫌ってた訳じゃねぇんだよ お前の顔は……そんな気軽に、やぁ!なんて声を掛けて良い感じじゃなかったからな……躊躇してたんだよ! 決して嫌っていた訳じゃない! 今後は仲良くして行こう!」と言った 竜馬は兵藤の手をブルンブルン振って 「嬉しいです!烈の大好きな兵藤君と仲良くなれるなんて光栄です!」と喜んだ 兵藤はその姿に桃太郎を重ね…… その人懐っこさにすっかり受け入れる状態となった 烈はその間も「さんびゃくにん!」と唸っていた 竜馬は「烈、元三木敦夫記念館に人を集めれば良いんですよ!」と提案した 三木敦夫が初めて政治家になった時に所有してたビルは今も残っているが、今は記念館は閉館していた 記念館は主に三木敦夫の写真や当時使っていたモノを展示していた  だが近年、三木敦夫記念館は収益すら上げられず、廃館を決めて全てのモノを撤去されてガラーンとしていた 近々取り壊し新しいビルを建てる予定だ そのビルは竜馬が祖父から相続した建物だった 所有権は竜馬にあるから発言した事だった 烈は竜馬を見て「さんびゃくはいる?」と問い掛けた 「楽勝だよ!烈 簡易の椅子を運び込めば記者会見は開ける そして何よりタダですよ!烈」 「ただ!それはいいにょ!」 烈はニコッと笑っていた 兵藤はその調子の良さに笑っていた  もう違和感はない 鷹司の政経塾でも進藤の塾でも常に顔を見た存在だった だが兵藤が知るタイプの存在ではないから、遠巻きに関わりを持たない様にして来た だがこんなに人懐っこい存在ならば、敬遠せずに話し掛ければ良かったと想った 整いすぎているのだ顔が! 黙って立っていれば、どのモデルより目立つだろう 観衆は見目のいい竜馬に釘付けになるだろう! 兵藤も近寄り難すぎて声すら掛けられなかった 同じ塾に通う者同士互いの情報交換はしたかったったが………いかんせん 正統派イケメンに近寄れる自身がなかったのだ 話は元三木敦夫記念館でやるとしたら………どう集める?と謂う話になった あれは立地だけなら国立競技場近くに在り、交通弁も良かった 只今は建て壊す前の為、何もかも取っ払われた感じだったから、中をどうするか?だった 話を詰めて行く 相賀は一度元三木敦夫記念館を見てみたいと言った ならばと、皆も賛同して移動する事に決めた 榊原の車に須賀と神野と須賀が乗り込み 竜馬の車に兵藤と烈が乗った 兵藤は「近くなのか?」と問い掛けた 「国立競技場の近くだよ貴史君 俺の事は呼び捨てて構わないよ」 「なら竜馬、いい車に乗ってるやんか」と答えた 「ここ車は斎王さんから卒業祝で貰いました」 「あぁ、斎王んちに修行に出されていたんだっけ?」 「ええ、俺は兄弟の中で全く似ていない子だったから捨てられたと想ってました」と突然竜馬は話しだした 烈が「ごだいゆきのににてるならな、りゅーまは」と言い笑った 「なら説明して欲しかったな…… 俺はずっと養子だと思ってた それか母さんの託卵……でもな母さん親父を愛しまくりだから、それはないなぁって、ならば養子しかないって!」 竜馬の切実な話を聞かされて兵藤は 「顔は似てなくても仕草や感じは三木に良く似てるよ!」 とちゃんと親子だと言って言ってくれた 竜馬は嬉しそうに笑うと 「烈の大好きな兵藤君が君のような人で良かった!」と言った 兵藤は「俺はお前を好敵手と認識したからな、今後は切磋琢磨して行くとしようぜ!」と友好を口にした 竜馬は「ライバルだね貴史君!俺も負けないよ!」と嬉しそうに言った 烈はそんな二人をよそに「おにゃかへったな」と呟き携帯を取り出しポチポチ何か打っていた 車は元三木敦夫記念館に到着した 榊原の車の方が早くに出たのに、駐車場に車は停まってなかった 暫くすると榊原の車が停まった 烈は車から降りると父と母が降りるのを待った 榊原は烈を見付けると抱き上げて 「お腹が減りましたか?」と尋ねた 「うん、すこしずつしからめらから、へるのもはやいのよ!」と伝えると榊原は笑って烈を下ろした そして車からビニール袋を取り出すと、カニパンを渡した 「ちゃんと消毒して食べるのですよ!」 カニパンを受け取ると「りゅーま、もつの!」とカニパンを持たせて肩から掛けてるポーチの中から消毒スプレーを取り出すと手を消毒した そして消毒スプレーをしまうとカニパンを受け取り食べ始めた カニパンは甘くてずっとモヨモヨと食べてると溶けて丁度良いのだ 皆が元三木敦夫記念館へ入って行くとガラーンとした大きなホールがあった 思ったよりも広くて康太は「広いな!」と呟いた 烈は母に近寄ると「すてーじできる?」と問い掛けた 幾つか間仕切りしてあるスペースを取っ払われた空間はかなりの広さがあった 下手したら300収容の公会堂よりも広さを感じていた 天井はかなり高く開放感があった 康太は「これだけ広いならかなりのスペース取れるな!」と思案する 「かあしゃん せっとはしろたにたのんでくんでもらうといいの!」   「城田?そんな知識あったのかよ?」 「しろたはひびべんきょうしてるのよ そしていま、ぶたいせつえいってほん、よんでるのよ しろたにあったとき、ぽけっとからでてた」 「なら動かすとするか、烈 お前が城田を動かしてセットを作らせろ! 費用は全面的にだしてやるからな!」 「にゃら、しろたと りさいくるいかないと! やすくあげるのよ!けちってあげるのよ! むだづかいはだめだと、かあしゃんうるさいからね!」 烈に謂われて康太はたらーんとなる 榊原はそんな康太の肩を抱き締めて慰めた 「かいけんじょうのはいごは、だんかのてーぶるにしいてる、てーぶるくろすでいいとして!」 良いのか?それ! 兵藤はそう思った 相賀も須賀も神野もそう思った いやいや駄目だろ?それは…… 兵藤は軽い頭痛を押さえて 「烈、プロに任せるなる、プロの意向に沿わねぇと、ちゃっちい会見になっちまうぞ! それはお前の本意じゃねぇだろ?」と何とか執り成した 「そうなの?」 「そうなんだ!だからな後はプロに任せようぜ! お前は真矢さんの為の記者会見を開くなら、どんな質問をされても良い様にシュミレーションを欠かせるな!そうだよな竜馬!」 唖然としていた竜馬が兵藤に謂われてハッとなり 「そうだよ!烈!記者会見の日何着てくのさ?」 「じゃーじ?」 「……それは止めとこうよ!」 「ならたいそうふく?」 「それも止めとこうよ!」 烈の言葉を聞いてて康太は居た堪れなくなって来た その昔、康太は常にジャージか体操服で過ごしていたからだ! ふるふる震える妻を宥めて榊原は 「会見の時の服は買います! 康太と烈と竜馬の分買うから心配無用です!」と答えた 「ぼく、じゃーじでらいじょうぶよ?」 この言葉で康太の堪忍袋の緒が切れた 「お前が良くてもオレが気にするんだよ! んとに、おめぇらはジャージ好きだよな! 週末には体操服着て掃除始めるし……勘弁してくれ!」 「きのうてきなのよ?」 康太が発狂する前に榊原が 「男子たる者身嗜みは必要不可欠と言いませんでしたか?」とトドメを刺した 烈はやっと黙った 兵藤は笑いを堪えるのが大変だった やはり康太の子だと兵藤は想った 血じゃない その魂を受け継いだ事により、親子として似るのだ その昔 ジャージばかり着ていた康太を思い浮かんて似た者親子だな、と笑いが止まらなかった 「チクショー貴史の癖に!」 難癖を付けて兵藤の背をゲシゲシ殴る 兵藤は笑っていた 構図は大体決まったな と一段落して一息着いてると、烈の電話が鳴り響いた 烈は通話ボタンを押して「はい!」と答えた 『飛鳥井烈君の携帯で間違いないですね、今枝です!』 その声を聞いて烈は「いまえら、まってたにょ!」と叫んでいた 『遅くなりました 社長の東城と協議を詰めた結果、総ては君の思い通りに進めるとの事でした 俺はどうしたら良いですか?』 「かいてほしいの!しんじつだけを! われらはだんざいするために、しんじつをおおやけにするわけではない ただ、だれかをわるものにせず、しんじつをかいてほしいのです!」 『解りました、今日はお時間ありますか?』 「あるのよ、でもいまでさきらから……」 烈が困っていると康太が電話を渡せと謂う仕草をした 烈は康太に携帯を渡した 「お電話変わりました、飛鳥井康太です 今枝か?今出先なんだよ!」 『何処にいるのかお聞きしても?』 「元三木敦夫記念館だ、国立競技場近くにあるけど、解るかな?」 『多分行けます、では15分位待ってて下さい』 そう言い今枝との会話を終えた 康太は烈の携帯を首に掛けた 「烈、今枝来てくれるって! そしたらじぃさん出しとけよ!」 「あれね、つかれるのよ かってにしゃべるから、ほんとうにいや!」 烈の文句に康太は苦笑した 暫くすると今枝がやって来た 今枝は烈を見付けると、傍に近寄った 「烈君、記事を書く上で確かめる為に来ました」 「なにをたしかめるにょ?」 「上間美鈴の過去……あれを書いたら同情が集まりますよ?」 烈は嗄れた声で「それがどうした!」と答えた 「同情するなら同情すれば良い! だが自体はそんなにお涙頂戴ではなかろうて! 母親が別れた父親に似た上間を嫌い、何も与えず妹と差別を付けて育てた 烈悪な環境下に置かれて、折檻と飢えた幼少期を過ごした過去があったのは事実だ 歪む過程は書かねばならぬ! あの化け物を生み出した過程は、事件の裏として報道する義務があるだろうて! そして公正に皆の目に触れさせ、事件を伝えて欲しい 上間美鈴がしでかした事 それにより追い詰められた者 命を落とした者 この狂気を止められるのは今枝浩二、お主しかおらぬ! どっちかに偏ったら、全ては終わる 何方にも公平で真実の眼を持つお主なら伝えてくれると信じておる! 上間を終わらせてやってくれ! この長きに渡る悪夢を止めてやってくれ! 全てを晒した時、上間は己の悪事を知るだろう そしたら精神病院に入れて己との対話をさせる 長い月日になるだろうがな、それは必要な日々となるだろう」 「貴方は…悔しくないのですか?」 「それが定めよ 人を裁くなれば公平でなくばならぬ! 上間の現在の罪だけ晒して悪人として魔女裁判をして、誰が喜ぶ? 悦郎だとて、これ以上の上間の事で苦しめられたくはないだろう! 悦郎も開放してやってくれ! 心を病んで一度は自分の人生を諦めた…… 悦郎にとっての悪夢と 上間にとっての悪夢も白日の下に晒す! その上で上間は間接的だが人を殺した罪を悔やむべきだ! 木葉にはまだまだ遣りたい事もあった 耀は幼く母を亡くす事もなかった 悔いなら残り過ぎておるのだ今枝! もっと早く危険を放つ星を詠んで動いていたなら……と儂だって悔いを残しておるじゃぞ!」 「この記事を世に放てば賛否両論 世の中は震撼します!」 「それで良いのじゃ! それが人と謂う生き物なのだからな! 総て書くが良い!今枝よ! 唯……僅か3歳で母親を失った耀は被害者じゃ! 批判など受けぬ様に頼む!」 烈は深々と頭を下げた   今枝は烈の頭を上げさせ 「宗右衛門殿、貴方は本当に康太同様、俺を使うのが上手いですね 貴方の想いに沿う様に書いてみせますとも!」 「3かご、きしゃかいけんするのね!」 「それに間に合わせて一気に世間に公表します!」 今枝はそれだけ伝えると還って行った 烈は慌てて「りゅーま たいへんよ!かいしゃにいくのよ!」と言った 「しろたいるかな?」と謂うと康太が 「オレが確保しておいてやる! だからお前は瑛兄んとこに行け!」 「りゅーま いくのよ!」 烈は焦って走り出した 遅いから抱き上げて竜馬が走ると 「かかえるにゃ!」と怒った それを見て榊原は笑った 学生時代 康太を抱えて走ると何時も怒っていた時の台詞だったから…… 「あんだよ?伊織…」 「君に良く似てるなって想って!」 榊原が言うと兵藤も「ジャージには笑ったわ! そう言えばおめぇは何時もジャージか体操服だったもんな」と笑って言った 「あれが一番動きやすて汚れても大丈夫なんだよ!」とヤケクソに言うと皆が笑っていた 康太は瑛太に電話を入れると  「瑛兄頼みがある!」と単刀直入に切り出した 『何ですか?』 「統括本部長補佐の城田、瑛兄の部屋で捕獲しといて! 烈が今から向かうから!」 『お安い御用です!では直ぐに捕獲します!』   瑛太は電話を切ると、秘書を呼び出し 「今直ぐ、統括本部長補佐の城田琢哉をこの部屋に呼んで下さい!」と命じた 秘書の西村沙織は「お安い御用だな!」と言い わざわざ3階まで下りて行き 「城田!社長が呼んでるぜ! 付いて来い!」と捕獲して連れて行った 城田の心中は穏やかではなかった ドキドキ 俺なにかした?と自問自答していた 社長室に通されソファーに座らせられる ったく生きた心地しなかった 社長室へ捕獲されて連れて来られてソファーに座らせても、瑛太は何も言わなかった 城田は意を決して「社長!何か俺に用があったんじゃないんですか?」と問い掛けた 瑛太は「私は君に何も用はありません!」と告げた え?なら何でも捕獲なんて…………と城田は焦った 「私には用はありませんが、烈が君に用があるようです!」と伝えると、城田はホッと胸を撫でおろした 東京からだから結構時間がかかり、やっとこそ烈が社長室に来る頃には1時間が過ぎていた 烈は社長室に入るなり「ごめんね、しろたおそくなって!」と謝った 「構いませんよ 捕獲された時はドキドキでしたが、ね! 何ですか?用は?」 「しろたね、ぶたいこうずとかのほん、よんでるよね?」 城田は目敏いなと想った 「ええ、読んてます」 「なら、きしゃかいけんのかいじょうのせってい、たのめにゃい?」 息を荒くして烈が問い掛ける 城田は話が見えて来なくて、仕方なく竜馬が説明した 一通り話を聞いて城田は「貴方は誰なんですか?」と問い掛けた 「俺は三木竜馬と申します! 顔見世をした烈が不動な存在になりましたから、表に出る事が許された烈の為に存在する者です!」 と答えた 瑛太も聞いてなくて「三木って事は茂雄んちの縁者か何かですか?」と問い掛けた 「俺は三木茂雄の長男に御座います!」 瑛太はまぢまぢと竜馬の顔を見た それを無視して竜馬は「記者会見場作れませんか?」と問い掛けた 城田は「規模は?」と問い掛けた 「300収容出来るスペースの会場ですが、いかんせん何もないのです」 「何もないとは?」 「建壊しが決まってるからです 建壊しが終わった後、更地にしてマンションとテナントが入ったビルが建ちます 飛鳥井建設にはその旨伝えてあるのですが?」と笑って言った 「元三木敦夫記念館の跡地に建設予定が有りましたね! 3社合同で取り掛かる手筈は付いてます」と瑛太は言った 「なので今は本当に何もないなです」 「そこは好き勝手に作り上げても大丈夫なのかな?」 「はい、好き勝手に作り上げて貰っても構いません!ですが………烈には関わらせないで下さい!」 「何故ですか?」 「会見場のバックを飾るのは、檀家のテーブルに敷いてある、テーブルクロスでいいにょね!なんて言っちゃう子ですから! 後、少しでも安く上げるのよ!ケチってあげるのよ!なんて言う子ですから!」 城田はたらーんとなった 幾らなんでも会見場のバックの背景を檀家のテーブルクロスにしちゃぁ駄目でしょ? 烈は「うるちゃいなぁ!りゅーまは!」と拗ねた 城田は目眩を覚えながらも「現場を見させてもらいたいのですが」と言った 竜馬は元三木敦夫記念館の住所の入った紙を城田に渡した 「来られる時にこの番号に電話をしたら管理者がドアを開けてくれます!」 「ならば構図を決めて作り上げたいと想います 猶予は何日ですか?」 「3日後には会見するので2日半です!」 「それって俺等に寝ずに働けってことじゃないですか!」とボヤいた 「あの……無理でしょうか?」   竜馬が問い掛けると城田は不敵に笑った 「烈は出来ない事を振ったりしません! 出来ると確信があるから、口にしたのでしょう! なれば、我等は頑張るだけです!」 「料金は真贋に、との事です」 竜馬が言うと瑛太が 「料金は会社が持ちましゃう! 資材置き場の資材、そして使えそうな人員を連れて行くと良いでしょう 但し、現場の主軸は駄目です! それ以外なら2日、死物狂いで頑張って貰いましょう!」 とニコッと笑って言った 竜馬はこの人悪どいわ……と想ったが口にはしなかった だって倍返しされそうで怖いから…… その日から記者会見場の設営が始まった 昼夜を問わず、城田は心血を注ぎ設営の指示を出した 思い通りに描かれて行く記者会見場に城田は大満足だった 今度イベント会場の設営も製図を引いみたいなと考えていた 2日目の夜遅く 記者会見場は完成した 作業員は息も絶え絶えに無事に終わらせられてホッとした 後は此処に椅子を運び込ませたら記者会見場となる その日、完成させる為に皆は頑張り成し遂げた 総ての気力も体力も使い果たし、皆 動くのも億劫な程に疲れて、その夜は現場に泊まり込事にした 記者会見場が完成した夜 鍵の閉まった記者会見場に、鍵を破壊して暴漢が押し入った 犯人達は数人いた、皆一様に顔を隠して皆金属バットを手にして会見場を無茶苦茶にするつもりなのが一目瞭然だった だがこの日 九頭竜遼一が応援の為泊まり込んでいて、暴漢を素手で倒し、無双状態になっていた 遼一に返り討ちにあい………ぶっ倒れた犯人を縛り上げて確保すると、警察を呼んだ 会見場設営現場に警察がやって来た ぱっと見遼一が暴漢と間違えられたが、連絡の入った弁護士の天宮が出て来て事実を訴え、暴漢者を逮捕させた それらの証拠として防犯カメラを提出した 暴漢の方は何も言えず逮捕されたのだった 取り調べの結果 その暴漢者は上間美鈴が雇った人間だと、警察で自供した 烈はそれを聞いて 「愚かよのぉ……」と嘆いた 黙っていたら同情されて更正の道もあったろうに……… 上間は自分の周りを嗅ぎ回る存在を素早く察知して、記者会見を開く事を耳にした そんな事はさせない!と手を回し人を使い捨ての駒にした 断罪されるべく朝陽は上り…… 一日の始まりを告げた 今枝の耳にも上間の指示で暴漢が飛鳥井が用意した会見場に押し入った事件は耳に入って来た 今枝は烈の悔しさが手に取るように解るから、悔しくて堪らなかった 朝一番に東都日報は上間に間関する記事を一斉に発表した 烈の意向に沿って、公平に書いた 人々の目に触れる……瞬間だった 真実が全て曝された……瞬間だった

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