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第82話 距離~ 粛清の時
烈が飛鳥井の家から消えて1週間経っていた
家族は何も聞かされていなくて、何故烈が突然消えたのか?解らなくて心配していた
翔は烈の果てを詠もうとしたが、どこを探しても、烈の居場所は解らなかった
瑛太や清隆、玲香は康太に烈は何処にいるのか?
何度も何度も康太に問い質した
だが康太は何も言わなかった
その日、瑛太は飛鳥井の家族や榊原の家族を集め、家族会議を開き、康太に烈が今 どうしてるのか?問い質すつもりだった
その場にも翔や流生達も同席した
慎一や一生、聡一郎や隼人達も何も知らされてなくて、何故烈が消えたのか?解らなくて烈を心配して同席した
兵藤に至っては全く知らない出来事で、あの日烈を家まで送って行って以来逢ってなくて、何故こうなったんだ!と家族会議に参加していた
竜馬も烈が消えてしまい、あの日神威の所へ送らず一緒にいたなら消えなかったのかな?と悔いていたから、家族会議に同席させてもらっていた
瑛太は康太に「康太は当然、烈の居場所は知ってるのですよね?」と単刀直入に問い質した
「………烈は家族に迷惑を掛けるから家から消えたんだよ
居場所は知ってるが……アイツは頑固だからな教えるなと謂われてるから、謂えない!」
「何としてでも説得して連れ戻して下さい!
一族総会は宗右衛門を欠いては成り立ちませんよ?」
「家に還らなくても一族総会は成り立つ!
飛鳥井から抜けなければ、何処にいようとも、宗右衛門としての役務は担える……そうだ」
康太の言葉に、瑛太は顔色を変えた
「烈はまだ初等科に入学したばかりの子供なのですよ?」
「家にいる方が兄達にも家族にも迷惑が掛かる
然るべき時まで身を隠し、その後の身の振り方はその時に考える……そうだ!」
「連れ帰って下さい!
記者会見の翌日……我等は烈に声さえ掛けられませんでした
烈の心痛や如何に……と、考えたばかりに……永遠に烈を……失ってしまうと謂うのですか?」
瑛太は顔を覆って涙を堪えていた
清四郎も悔いていた
あの日何故……烈に声を掛けずに行ってしまったのだろう……と。悔いていた
真矢は泣いていた
あの祖母想いの烈なれば……家族を想い身を隠していたとしても不思議ではないのだ…
あの日 烈を抱き締めてやれば良かった……
慎一はあの夜 烈を連れ帰った時、烈と話した事を家族に伝えた
「俺は記者会見の夜、烈に覚悟の上だったのですか?と問い掛けました
そしたら烈は……
『儂は何時の世も珍獣扱いされて来た
記憶も知識も人格もそのまま転生し、人の子に生まれるのだから、人と変わっていて当たり前の事なのじゃ……
それが如何に異質な事なのだと解っていても……
儂は転生者故、仕方がない事だと諦めて過ごした
昔はもっと酷い扱いを受けたものじゃ!
精神病に放り込まれ、二重人格とまで謂われた事もある
あだなは何時もジキルとハイドだった時もある
今世奇異な目で見られたとしても些細な事なのだ
真贋だとて同じじゃ
人と違えば我等は奇異な目で見られるしかないのじゃ!
総て覚悟の上でやった事じゃ気にするでない』と言ったのです
烈は総て覚悟の上だったと言った
俺は言葉もありませんでした
烈の覚悟はあまりにも壮絶すぎて俺は言葉を失い、烈に言葉を掛けられませんでした
烈に寄り添ってやれば良かった……熊本へ行かせてしまった時、後悔した
今度は二度と烈を一人で行かせないと誓った筈なのに……
なのにまた烈を逝かせてしまった………」
慎一はそう言い悔しそうに拳を握りしめた
一生と聡一郎は顔を見合わせ
「それを謂うならば、俺等も同罪だ!
烈が消えたあの日………」
一生はそう言い唇を噛み締めた
その後を聡一郎が続けた
「僕達は烈を家から出してしまったのですから!
なんの疑問も抱かずに……烈を見送ってしまったのですから!」
と聡一郎も悔いて言葉にした
清隆は静かに「康太、皆……悔いているのですよ?
話してはくれませんか?」と康太に訴えた
清四郎も泣き続ける妻を抱き締めて
「記者会見の夜………烈に背負わせてしまった荷物に……私はどうしたら良いか解らなくなってしまったんです
私は話し掛ける言葉もなくて、笙を呼び真矢と共に帰ってしまった
気持ちに整頓して烈に向き直ろう!と想っていた……
その矢先に烈が消えました
私は心の中を烈に見透かされてしまったみたいで……
そんな選択をさせてしまった自分が許せないのです!
だからお願いだ康太………烈に合わせてはくれないだろうか……頼む!」
清四郎は土下座せんばかりに康太に頼み込んだ
康太は榊原を見た
榊原は僕に振らないで下さい……とばかりに困った顔をして
「烈は一族総会には必ず出ます!
今は烈の都合で予定がつけられませんが、予定調整して必ずや出て来るので、その時烈に直談判すれば良いのです!」
と半ば投げ槍に言った
瑛太は「それは近い内に行われるのですか?」とやはり痛い所を突いて来る
答えられなくて榊原は黙った
玲香は「康太、話さねば徹夜でもお主等を説得して会社にも行かぬぞ!小奴らは!まぁ我もだけどな!」と一歩も引く姿勢がないと言った
康太は諦めて
「これは本当に話すのは烈の本意ではない……
だけど、聞くのか?」と家族や榊原の家族、そして仲間に問うた
一生は「元より聞く気しかない!」と謂うと、聡一郎が「烈の本意が何処にあろうが、我等は聞くと決めている!」と答えた
隼人も「勝手に家を出た子は一発ポコンっと叩くのだ!ポコンした後に抱き締めてやるのだ!だから話してくれ!康太!」と言った
家族もその言葉に頷いた
竜馬は泣きながら「俺から烈を取り上げないでくれ……頼みます!」と訴えた
康太は静かに話し始めた
「最初は烈は消える気はなかった
だか自分が齎した効果が何れ程のモノか、今世は詠めないと危惧していた
前に烈やオレが生まれた時代は、こんなデジタル社会ではなかったからな、予測が付かないでいた
あの時……烈は成田空港にいたんだよ
弁護士の飛鳥井神威と共に成田空港に出向いて、人を待っていた
その時、記者会見をテレビで見ていた子供がパニックを起こして、キャリーバッグを烈に投げ付け、烈は怪我を負った
その子供は……子供なのに老人みたいに喋る烈に恐怖を覚えたと謂う
漫画の世界みたいな事が現実に起こったのだから、恐怖を抱いたとしても……それは不思議な事じゃねぇ
だがキャリーバッグを人に向けて投げれば、怪我をすると謂う事が解らなかったお子様は、烈に化け物消えろ!と罵ってパニックになり只管烈に罵倒の言葉を投げ付け蹴落としたそうだ
駆け付けた警官に身柄を引き渡しても、子供は叫んでいたと謂う
神威が出て傷害罪と名誉毀損で届けを出したそうだ!
両親は被害届けを取り下げてくれ!と頼みに来たが神威は聞き届ける事なく児童相談者に通告した
そして両親には監督義務違反として慰謝料と治療費を請求したそうだ
それを受けて、烈は自分が齎す総てに兄達や家族に迷惑を掛ける事になる……と姿を消したんだ
それが烈が姿を消した全容だ
オレは止める事が出来なかった
それ程に烈の意志は固く強固な想いで決断した事なんだ……」
家族は………言葉もなかった
まさか、烈がそんな目に遭っていたとは…想像すら付かなかった
烈の存在こそが恐怖だと、世間が謂うならば、家族は烈を護らねばならなかったのだ!
康太を護って来た様に、烈も護らねばならなかった!
瑛太は「飛鳥井家総代として、烈の叔父として、我等は全力で持って烈を護らねばならなかったと後悔しております!
烈の事を危惧して対処せねばならなかった!
総代としての失態に御座います!
飛鳥井家真贋、烈の軌道修正をお願い致します!」と康太の前で深々と頭を下げた
康太は「瑛兄……」と呟いた
清隆は「烈は久遠先生の所に?」と問い掛けた
「烈は其処には入院していない!
直ぐに居場所の解る病院に入院などしていない」
「ならば……何処に?」
康太は黙ったまま答えなかった
流生が「烈 迎えに行くよ!何処にいても僕らは兄弟だから!
烈が泣いているなら抱き締めてあげたいの!」と訴えた
太陽も泣きながら「烈は僕の弟です!誰が何を言おうが烈は弟です!」と言い切った
大空も「烈、お腹減らしてないかな?」と言い烈の為に取っておいたカニパンを手にして泣いていた
音弥は「隼人、烈に聞こえるようにお歌歌って、ねぇその歌をテレビで流して……お願いよ隼人」と言い泣きながら頼んだ
翔は何も言わなかった
烈が戻って来た時に一族総会を開けるように日々準備をして、慎一に手伝って貰い資料を揃えていた
学校の方では心無い一部の生徒が「お前の弟化け物だったんだな?ならお前も化け物の血が流れてるのかよ?」と謂う生徒がいた
だが直ぐに先生の耳に入り、その子は謹慎となってしまっていた
何を言われても兄達は胸を張り、前を向いて立っていた
弟は化け物だなんて思ってはいないからた!
康太は「少し時間をくれ!
どの道 近い内に一族総会は開かねばならねぇんだからな!
そしたら烈は一族の前に出て来て、秩序と規律を植え付け一族の絶対的な存在となる
その時まで待ってくれねぇか?」と最大の譲歩を口にした
瑛太は「烈の怪我の具合で延期されていたのですか?」と問い掛けた
「違う、馬鹿な奴等が一族に放ってあった【鴉】に恐怖して、鴉ですらない人間を疑って消されそうになったんだよ!
事故に見せかけ巧妙に消そうとした形跡があった
一族の者は【鴉】の存在を知り脅威に想った
疑心暗鬼になった一族の者が己の保身に走り、互いを殺し合いせんばかりに愚かな行為を犯した
今粛清に当たっているから、それが片付かねば一族総会など出来ないのが現状なんだよ!」
総代をしてる瑛太の耳にも、その件は情報として流れて来ていた
瑛太は「だからこそ、今一族総会を開くべきなのではないでしょうか?」と訴えた
「一族総会は開く!
だがそれは今じゃねぇ!時期があるんだよ」
「ならばその一族総会には烈が出るのは確定していると謂う事なのですか?」
「そうだ!オレ等は何時の世も家の為だけに生きて来た!
今世もそれに変わる事はない!
飛鳥井の家の為、明日の飛鳥井の礎になり果てへと繋げる為に生きているんだからな!」
康太は言い切った
だがその言葉に清隆は酷く哀しい想いになった
「総ては家の為、明日の飛鳥井の礎になり果てへと繋げる為に生きている!と源右衛門は何時も何時も己を納得させる様に言葉にしてました
私はね康太、そんな父の言葉を聞く度に、辛そうに己を納得させている父を見る度に……そんな想いをして成り立つ家など滅び去ってしまえば良い………とさえ想っていました
そして今烈がそんな想いをして生きていくのなら……私はこんな家滅んでしまえばいいと思ってしまうのです……」
父の意外な言葉に康太は唖然として父を見た
多分……その場にいた全員がそう想ったろう
玲香は清隆を抱き締めた
「清隆‥‥清隆……」と抱き締めた手が震えていた
清隆は苦笑して
「私だって………そう想う時だってあります」と言葉にした
「父ちゃん……飛鳥井は続くぜ」
「知っています!」
「烈が血反吐を吐いて明日へ繋げたからな……
1000年先まで繋がるしかねぇんだよ」
「それでも!烈の犠牲の上に成り立つ事が許せなかったのです……父のボヤキ位大目に見なさい!」
「大目に見るさ、オレだって何度滅べば良いと想ったか解らねぇからな………逃げ出したい想いなら父ちゃんよりあるさ!
今世は我が子にそれをやらせねばならない……
自分がやった方が楽だっていうのによぉ!
烈がさっさと切り開きて行っちまうんだよ!
オレも伊織も本当にそれやっちゃうのぉ~!と驚きっぱなしだぜ!
ハラハラして腹立って……瑛兄がオレにハラハラしてた気持ちが本当に解ったぜ!
あんな破天荒な野郎、大人しくさせとく事が出来ねぇんだからな…」
康太のボヤキに瑛太は笑っていた
「私の気持ちが解るなんて……康太も大人になりましたね」
感慨無量で瑛太はハンカチで涙を拭っていた
康太は「本当に大人しくしてくれねぇかな?」とボヤいた
榊原は「君も変わらないでしょ?」と似た者親子だと言った
「オレはカニパンじゃ、大人しくならねぇよ!」
康太が言うと大空が母にカニパンを差し出した
封を破って母にカニパンを持たせる
榊原と同じ顔して……ニコッと笑われると、康太はカニパンをモヨモヨ食べるしかなかった
「(伊織と)同じ顔して………」
康太はボヤいてカニパンを食べるしかなかった
家族はそんな光景を見て笑っていた
だがそこに烈がいないのは全員が納得出来なかった
一生達もその想いは同じだった
一生が「烈は何時だってお茶飲んでるのに酒飲んでるみてぇに座ってねぇとな……」と謂うと聡一郎も
「そうです、お子様なのに貫禄があって、念写してる時はトイレ我慢してる風に唸ってて……」
と言い聡一郎は泣き出した
慎一は「久遠先生が烈の診察が出来なくて俺に文句の電話を入れて来るんです
烈の怪我が久遠先生に解ったら、何故俺に縫わせねぇ!と怒るじゃないですか!
押さえてる俺の身にもなって下さい!康太!」と文句を言った
康太は久遠が烈の事を心配しているのは解っていた
飛鳥井の家族の体調管理は総て担う覚悟で、あの病院に移って来たのだ
生半可な覚悟なんかじゃないのは解っていた
「ドスッとやって久遠の所へ連れて行くか?」
それしか思案がつかなくて、思わず謂う
それは流石に烈が可哀想過ぎて……
瑛太が「一族総会に必ずや出ると謂うのならば、今夜は引きます!」と譲歩した
家族や仲間は、うんうん!と頷いた
「烈が来るのはまだ少し掛かる
でも必ずや皆の前に出て、一族の者の指針となるだろう!
真贋のオレとは別の役割、秩序を一族に刻み絆を更に深める事だろう……だがそれをするには今の儘じゃ駄目だと謂う事だ 一族の者は更に振るいをかけられ目減りする
それとは別に飛鳥井へ戻す者も増やして行くだろう!その作業を烈はしてるんだよ!
明日の飛鳥井を絶対のモノにする!
我等はその想いで今を生きてるんだよ!」
聡一郎が「出て来る確証があれば我等はその時を待つだけだ!」と言った
一生も「その想いは家族も同じ!烈が皆の前に出て来る時を待つ!」と続け
慎一も「烈の巻き起こした台風もそろそろ通過する頃でしょう
吹き荒ぶ嵐が過ぎ去った時、烈の描く絵図が出来ていれば、烈は表舞台に躍り出て皆に粛清を与えて規律を植え付けるでしょう!
なれば翔、その日の準備をピッチを上げてやりましょう!」と決意を固めた
翔も「その日の為に出来る事は総てやるから!」と母を見て言った
皆が烈が出て来る日を待つと言った
だが兵藤だけがずっと訝しんだ顔をしていた
康太はそれを横目で確かめて、何も言わずにいた
瑛太は烈が出て来る日まで、烈の為になる事をしようと想っていた
それにはやはり飛鳥井で働き始めた竜馬を応援してやろう!と想った
竜馬は烈が消えたけど、烈が示したミッションを熟す為に飛鳥井で働いていた
10万円稼ぐのがこんなに大変だったのか?と今更ながらに働く大変さに身も心もすり減らし働いていた
烈に託されていた榊原は、まずは経理に竜馬を連れて行った
いきなり建設に入れるのは大変だから、まずは事務仕事から始めさせていた
頭の良い竜馬は一度説明されれば失敗せずに熟せていた
指導に当たった飛鳥井蒼太は事情は一切聞かされる事なく竜馬を預かってくれ、と頼まれた
その日から蒼太は竜馬に経理や事務作業を叩き込んでいた
使える男は即座に戦力になり、新年度予算を組む大変な時期に戦力を貰えて蒼太は感謝したい程だった
竜馬の噂は瑛太の所にまで上がって来ていた
瑛太は竜馬に「明日からは社長室へ出勤しなさい!君を鍛え上げてあげます!」と言った
榊原は「義兄さん、それだと烈の与えたミッションには程遠くなります!
なので、口出し無用でお願いします!」と言った
「でも最終的には副社長室に行くのでしょ?
ならば、そんな鬼の所へ行かなくて大丈夫です
私が竜馬を見て鍛えてあげますから!」
「義兄さんだって鬼じゃないですか?
何時から飛鳥井建設の社長が仏になったんですか?」
と、喧嘩を始めた
玲香は「ええぇぇい!煩いわ!同じ様なモノであろうが!お前等が仏になる日など未来永劫来る日はないわ!」と一蹴した
竜馬は笑っていた
家族の想いが嬉しくて笑っていた
烈を大切に想うからこそ、竜馬も大切にしてくれる
その夜は玲香に叱られて仕方なく終わる事にした
その日の家族会議は終了した
兵藤と竜馬は家へと還って行った
康太と榊原は寝室へ戻り、ベッドに入ると
「朱雀……気付いたかな?」と勘の良い男を想い口にした
榊原は「気付いたとしても、扱き使われるだけです………」と苦笑した
「だな……」
「寝ましょうか?
烈が動けば嵐は来ます
きっとお呼びが来るでしょうから……」
「だな、本当に大人しくしててくれねぇかな?」
「無理でしょ?烈ですから!
彼は生半可な想いで転生などしてません!」
「それは解るんだけどよぉ……」
尻拭いさせられる方はたまったものではない
時間を早め、総てを巻き込んで吹き荒ぶ嵐を呼ぶ
その嵐は総て白日の下に晒すまで吹き荒ぶ嵐は止まらない
「ならば、寝ましょう
体力は温存しておいた方が賢明なので大人しく寝ましょう!」
「だな……」
二人は抱き合って、眠りに落ちた
兵藤は家族会議の時から違和感を感じていて、家に帰ってからも、その違和感を考えていた
まず、我が子が消えて平静にいられる筈などない
だから居場所は当然知っているのだろう
そして怪我した烈の居場所を問われた時、直ぐに解る場所になどいない、と言った
それは遠くを指す
他の県か、国外?それはないか……だが漠然と遠くを指す
だが翔がどこを探してもいないの……と泣いていた
次代の真贋が探していない場所
それはこの世ではないと謂う事なのだろう……
兵藤は我が家の屋上から朱雀となり飛び立ち魔界へと向かった
時空の気流に乗り魔界へと向かう
まずは閻魔の邸宅の前で人の姿になると、閻魔を尋ねた
家の使用人に閻魔を尋ねると応接室にいると謂う
応接室に向かうと閻魔はまるで朱雀が来るのを解っていたみたいに待ち構えていた
「何の用で来られたのだ?朱雀よ!」
「烈、来てねぇか?」
「さぁ、烈は今は人の子
人の世におられるのではないのですか?」
「人の子だが、神としての力を持ってるだろ?」
「お主も人の事は謂えぬではないか!」
と、閻魔に返され朱雀は聞くのを諦めた
閻魔は端から答える気はないのが伺えられるからた!
閻魔の邸宅を出て黒龍の自宅を尋ねる
黒龍も朱雀が来るのが解っていたかの様に待ち構えていた
「烈、来てるだろ?」
「烈の、姿は見てねぇな!」
「本当にか?嘘ついてねぇだろうな!」
「おまえに嘘ついて、俺に何か得でもあるのか?」
「ねぇけど……絶対にいると確信してるんだ」
「ならいるんだろ?
俺は烈は知らねぇけど!」
これ以上の問答は無駄だと想い朱雀は黒龍の家を後にした
そして次は素戔嗚尊の所へ向かった
直接聞く方が早いと向かった
………が、そこに家はなかった
仕方なく朱雀は司録の所へ向かった
司録の家を尋ねると、彼女とイチャイチャしていた
額に怒りマークを浮かべて彼女を蹴散らし家から追い出した
「酷いな朱雀は……自分に彼女がいないからって僻みかい?」
と司録は酷い事を言った
「兵藤貴史には許嫁がいて政界に入れば結婚するから彼女がいねぇ訳じゃねぇんだよ!」
「それは政略結婚とか謂うヤツか?」
「俺にとって恋愛対象なんか男も女も然程の違いなどない!
だから僻みなんかしねぇんだよ!
その気になれば釣れねぇ相手なんかいないからな!
それにお前も死ぬ気で本気な相手なら俺などに蹴散らせなどしねぇだろ?」
そこまで言われたら司録は引くしかなかった
「で、要件は?」
「素戔嗚殿の家、何処にあるのよ?
何て前の家、空き地になってるんだよ!」
司録は朱雀に
「先の魔族大集会以降、素戔嗚殿の親族は血で血を洗う熾烈な諍いを繰り返し、取れるモノは総て奪ってやろう!と暴動を繰り返して挙げ句の果てに素戔嗚尊の家まで奪ったそうだ
素戔嗚殿はそんな親族を見て共に生きた剣を孫に託したそうだ!
奪われるなら苦しめたあやつに……と剣を送り総てを諦めその地を去った
建御雷神と転輪聖王は怒り一族の者を粛清しようと動いた
素戔嗚の一族と名乗る者と魔界に反旗を翻そうとする輩と手を結び、戦争ばりの戦いをしていた
だから素戔嗚殿の家の居場所は違うんだよ!」
と、説明してやった
朱雀は「全く知らなかった……」とボヤいた
「人の世に墜ちたお前は知らなくて当然だろ?
何もかも知ってたら我が主に張り合う輩と認識して排除してやるわ!」
と主馬鹿を炸裂して謂う司録に、朱雀は苦笑して
「ならば今の場所を教えてくれ!」と頼んだぞ
司録は住所を書いた石板を朱雀に渡した
石板を受け取ると朱雀は「邪魔したな!」と言い司録の家を後にした
そして目指すは素戔嗚尊の家へ!
朱雀は飛びまくって疲れてるのに素戔嗚尊の家へと向かった
素戔嗚尊の家に到着すると人の形になり、家へと近付いた
すると庭の方から楽しそうな声が聞こえた
だから朱雀は庭の方へ向かった
素戔嗚尊の家は古風な古民家の様な、日本古来の家屋だった
だから庭に面して縁側があり、縁側には3人が仲良く座っていた
素戔嗚尊を2倍にした様な存在に朱雀は目眩を覚えた
あの日熊本で逢ってなくば、素戔嗚尊が分身の術を使っているのかと誤解しそうな存在に目をやる
「大歳神、おめぇは人の世を護る神じゃなかったのか?」
ついついボヤきがでる
大歳神と呼ばれた男は笑っていた
素戔嗚尊を少し若くした様な顔で笑っていた
「閻魔殿に魔界で住む権利を授けて貰った
儂は息子の住む地に行き、見張っておる事に決めたのじゃ!
だから魔界の役に立つ事を約束し、この地に家を建て住むと決めたのじゃ!」
素戔嗚尊はニコニコと笑っていた
目尻を下げて幸せそうに笑っていた
その間で渋茶を飲んでる存在に目をやると
「ひょーろーきゅん!」と烈が笑っていた
頭には包帯を巻いてその姿は痛々しかった
「おめぇ、何で魔界に来てるんだよ」
「それは、魔界に反魂で生を成した存在を確かめる為じゃ!」と宗右衛門の声で答えた
熊本で烈が炎帝に問うていた事だった
「手心が加えられた世界など、誰も望んではおらぬ!
だから糺す必要があったのと、人の世で落ち着ける所は皆無だったからな、親父殿が素戔嗚殿に助けを求めたのじゃ!」
素戔嗚尊は「久方振りに我が息子と孫と過ごせ、我はとても幸せな時間を過ごせた
だが、そんな幸せな時間を過ごしてしまうと離れ難くてな……建御雷神が閻魔に口を利いて下され、と頼んだのじゃ!
そして我が息子に魔界で住む権利を下ったのじゃ!」と朱雀に説明した
「大歳神は何処に住む予定なのよ?」と朱雀は問い掛けた
「我が元住んでいた地に家を建てると建御雷神が申しておった
聖神も前の家は処分したから、その家に親子で住むそうじゃ!
我もその家に住んでも良いと申してくれたから、一緒に住む予定なのじゃ!
聖の神も聖神として正式に魔界へと戻る事を許可された
我は……一人寂しく朽ち果てると決めていた
なのに……こんなに近くに来てくれる家族がいたと……炎帝に感謝しておる………」
総てが適材適所配置された結果を見せつけられていた
烈は「儂は魔界の掃除が残っておるからな、まだ人の世には還れはせぬのじゃ!」と兵藤に言った
朱雀は「ならそれ、俺も協力して片付けてやるよ!」と言った
「なれば朱雀、お主には魔界の者を一同に集める故、魂を見抜いて即座に殲滅されよ!
朱雀が来たら全て動き出すと炎帝が申してくれたからな!
サクサク動くのじゃ!朱雀よ!」
その言葉に康太は兵藤が魔界に来るのを予測して、予定に組み込ませていた事を知る
今までの事は総て兵藤を動かす餌だった様なモノだと理解した
兵藤はヤケになって
「やりますよ!やりますとも!」と叫んだ
宇迦之御魂神が朱雀の横にお茶と茶菓子を置くと、朱雀も縁側に腰掛けお茶をする事にした
「所で皆さんこんな縁側で何してたんですか?」と問い掛けた
大歳神が「この数日寝る間を惜しんで動いていたから、一休みしておるのじゃ!」と答えた
「何をする気ですか?」
朱雀は薄ら寒いモノを感じて呟いた
烈が「それはもぉ」
大歳神が「共烈な」
宇迦之御魂神が「花火を」
素戔嗚尊が「打ち上げるしかあるまいて!」と言い笑った
3人は似た顔でガハハハっと笑った
流石と宇迦之御魂神はガハハハっとは笑えず苦笑していた
朱雀は「本当に良く似ておいでですね!」とボヤくと宇迦之御魂神が
「それは私一人似てないと申しておるのですか?」と哀しそうに問われて、朱雀はたらーんとなった
宇迦之御魂神は「冗談ですよ!私は母にソックリなので納得してるので大丈夫です!」と執り成した
朱雀は「うんじゃ!俺も動くとするわ!」とお茶を飲みながらじゃ締まりはないが……
魔界の夜空に輝く打ち上げ花火を上げる気満々でいた
烈は朱雀に「反魂で変えられた存在は魔族でも解るのですか??」とオリジナルの声で問い掛けた
「人なれば解る
だが魔族はどうだろ?
魔族の輪廻転生は朱雀が管理してはいないからな」
「なら誰が管理しているのですか?」
「それは閻魔だろ?」
「閻魔にはもう逢いました
魂の管理委員会が管理していると申してましたが、それを統括してるのは閻魔ではないそうです!」
朱雀は知ってて惚けた閻魔に、クソが!と胸の中で毒づいた
「なら炎帝か?」
「炎帝には関与出来ない領域だそうです」
「なら俺には解らねぇわ!」
「だから朱雀、ぶち壊すのです!
魂の管理委員会なんてあやふやな組織
ぶち壊して新しく作り変える必要があるんです
この数日、隠密に調べ上げましたが、組織委員会の連中はかなりセレブな生活をしている様です
明らかにこの魔界で異質な存在と言ってもいい!
そもそもそのお金、何処から出てるんですかね?」
「閻魔でも解らねぇって謂うのかよ?」
「そうです!」
「なら手心加えられても解らねぇわな!
そもそも輪廻転生は朱雀が仕事!
前からその組織には疑問があったんだよ!
朱雀が介入出来ぬ制度に納得がいかなかったんだよ!」
「瓦解させますよ!」
「元より承知!」
話がつくと烈は子供に戻り「かにぱん たべたいにゃ……」と言った
「帰ったら買ってやるよ!」
「それ、うれしいにょね」
「で、これからどう動くのよ?」
「じかんぎれにゃにょよ
ちかれてらめ……すこしまつの」
「おめぇはウルトラマンかよ!
時間切れって……何なんだよ?」
「ちをながしすぎたのよ
らから、ちゅかれやすいのよ」
「オリジナルの体に変えれねぇのか?」
「おりじなるのからだは……すてたのよ
こえはね、まえのこえがでるけど、からだはね、すてたのよ
らからおおきくはなれないのよ」
え?………捨てた?
朱雀は意味が解らなかった
素戔嗚尊が「烈は神の力も姿も捨てるつもりだっだ!
だが炎帝が過去に転生するなら神の力は必要だぜ!ぜってぇに持ってた方が良かったと後悔する事になるぜ!
後になって欲しいって謂ったって、捨てたらもう二度と手に入らねぇんだぜ?と謂うから力はそのままに人の世に墜ちた
だが姿は要らないと、捨てたのじゃ!
炎帝はならばお前が魔界に戻る時、大人のお前の姿のまま神に戻してやろう!と言ったからな
人の世の烈は小さいからな、魔界に来たとしても小さいのじゃ!
だから大きくはなれぬのじゃ!」と説明した
だから魔界でも烈は小さいままなのか……と朱雀は納得した
烈は「ひとのよにかえったら、やることあるにょよ、らからかたづけにゃいとね……」と多忙を口にした
「一族総会だっけ?」
「そーなのよ」
烈が言うと宇迦之御魂神は烈の前に薬湯を置いた
「元気になりたくば、飲みなさい!」
「まずいにょよ」
文句など謂わせない迫力で見張っていると、烈はその薬湯を不味そうに飲み干した
「早く元気になりなさい!
でなくば、解体してる最中にガス欠になりますよ?」
痛い所を突いて来るのは家系なのか……烈はグウの音も出なかった
その日から烈は朱雀と共に魔界の大掃除を始めた
「リミットは人の世の一ヶ月だ!
一ヶ月経てば烈は人の世に還り一族の大掃除を始める!
それが炎帝との約束だからな!」
と大歳神が朱雀に釘を刺した
朱雀は閻魔と黒龍に「烈の居場所知ってた癖に!」と文句を言った
閻魔は「私は聖神なら知ってました!因みに前の名前との違いは【の】が間にないのですよ!」と殴り倒したい気分にさせて、しれっと言ってのけた
黒龍は「俺は烈は、知らんと言っただけだ!
アレはもう聖神として魔界に存在しておる!
魔界の者に神の転生と知ら示た
前の神とは全く違う、だが必要な存在だから神に謂い転生させたのだ!と伝令を流した
烈は今炎帝の子として人の世には生まれ落ち実践と経験を積んでる最中なのだ!
だから子供でいても誰一人不思議には思わない
総ては炎帝の描く世界の一柱となった!」とゴリ押しの言い訳をした
コイツも何時か殴り飛ばしてやる!と朱雀は心に誓った
その日から馬車馬の様な忙しさが襲って来た
色々と調べ回って、尾行して、飛び回って
疲れ果てて素戔嗚尊の家の縁側で茶をして休む
あの日 素戔嗚尊達が縁側で茶をしてたのは遊んでいた訳では無いと身を持って味合わされた
そしてリミットの一ヶ月を目前にした日
魔界に康太と榊原がやって来た
烈を見ると「どうよ?守備は?」と問い掛けた
「かいたいさぎょうだけらよ!」と証拠を山の様に並べ立て説明した
「すげぇな……」と的確な資料に康太はその実力を確信した
そして素戔嗚尊と大歳神を見て
「んとに良く似ているよなぁ……」と感心して言った
すると朱雀が「俺なんか熊本で逢ってなきゃ分身の術で、もう一人出したのかと思ったからな!」とボヤいた
康太は笑って「叔父貴、息子と孫に囲まれてどうよ?」と問い掛けた
「我は幸せ過ぎて夢かと想った程じゃ……そして目を醒まして夢だったら消えたくなる程に幸せだと感じた
だから建御雷神に息子と孫と別れたくはないのだ……と訴えた
そしたら閻魔を使って魔界に残る術を導き出してくれた
炎帝に、もし素戔嗚尊が息子や孫と別れなく無いと謂って来たなら受け入れてくれ!と既に謂われてると謂われた
我等は魔界の役に立つと約束した
それが大歳神と聖神の帰還の約束だからの、必ずや役に立つと決めておる!
そしてこれが試験の第一段階だと受け取り腕を奮わせて貰ったわい!」
と素戔嗚尊は豪快に楽しそうに笑った
「ならば、オレ等も元の姿に戻るとするか!」
康太が謂うと、炎帝のパレスまで背が伸びて、魔界で見た炎帝に姿を変えた
榊原も青龍に姿を変えた
まぁ青龍の場合然程の変化はない
大歳神は炎帝に
「魔界に子供の姿でいるせいか、烈の傷の治りが悪いのだが……」と心配して言葉にする
青龍は烈の傷の具合を見て
「あと少し踏ん張れますか?
そしたら久遠先生の所へ連れて行きます!」と言った
烈の傷の具合はあまり良くはなかった
「とーしゃん」
「良く頑張りました!
この件を片付けたら飛鳥井の家へ還ります!」
青龍が言うと烈は下を向いて黙った
「まぁそれもこの件が終わらねば話にはなりませんね!」
炎帝は朱雀を見て「悪かったな、烈に付き合っわせて!」と声を掛けた
「烈は何で魔界にいたんだよ!」
誤魔化さずに話せ!と謂う朱雀に
「これが終わったら総て話すわ!」と謂うと
「絶対にだぞ!
俺は魔界に来て閻魔や黒龍に散々騙されて人間不信を発動しそうなんだ!」とボヤいた
「なら行くぜ!用意は良いか?」
炎帝が聞くと朱雀は炎を纏い「何時でも大丈夫だぜ!」と言った
素戔嗚尊は闘志の槍を握り締めて
「行くぞ!わっぱ等よ!」と豪快に笑った
大歳神は大きなマサカリを肩に担いでいた
炎帝は「マサカリかよ?」と思わず言った
大歳神は「儂は豊穣の神故、闘うのは天魔戦争の時以来!だが腕は鈍ってなどおらぬ!
それにこの武器は投げ飛ばしても、必ずや儂の手に戻って来るのじゃ!これで大量の敵は倒せると約束しよう!」と豪快に笑い武器を肩に担いだ
烈は小さいまま、その手に草薙剣を手にしていた
「さぁ、いくじょ!」と気合を入れた
宇迦之御魂神は静かに素戔嗚尊と大歳神の横に立ち、武器を構えていた
………掛け声はなかった
何かとスマートな宇迦之御魂神は、母親似なのか豪胆さはなく洗練された研ぎ澄まされた鋭さを持っていた
炎帝と青龍は苦笑して天馬と風馬を呼び出した
朱雀は空を飛び、素戔嗚尊と大歳神と宇迦之御魂神は愛馬を呼び出した
そして烈は「あるきゅん!くるにょ!」と叫ぶとパカパカとアルパカみたいな馬が物凄いスピードで走って来た
朱雀は「あんだよ?あの馬は!!」と驚いて謂う
本当にアルパカならばあんなに早くは走れないだろ?と想った
炎帝は「あれは突然変異種らしくてな、捨てる所を可哀想だと閻魔が烈にと、用意してくれた馬?なんだよ!」とヤケクソで説明した
「馬なのか?」
朱雀が突っ込むと青龍は「そこ、突っ込まない!」と注意した
話をしてると魂の管理委員会の建物が見えてきた
皆 その前に下りると、馬から降りた
魂の管理委員会の建物の前には閻魔が建御雷神と転輪聖王と閻魔の手下達が出入り口を封鎖して立っていた
炎帝「逃げた奴いねぇか?」と問い掛けた
転輪聖王は「まぁ多少逃げたとしても後で殲滅すれば大丈夫だろうが!」と笑い
素戔嗚尊を見て「お主……増殖したのか?」と想わず言った
熊本の話し合いの日、大歳神と烈は結界を張っていたからなのか?覗き見る事は出来なかった
素戔嗚尊は笑顔で「我が息子 大歳神じゃ!聖王!」と紹介した
こんなに似てるレベルじゃなく似てるとは……転輪聖王も言葉をなくした
炎帝の「突入!」と謂う声で出入り口両方から突入された
出口の方は四鬼と他の鬼達が一匹も逃しはせぬ!と見張っていて、ワハワラ出てくる奴を捕まえて、檻の中へ投げ入れた
檻には封印が施してあり、投げ入れられた奴は檻の中へ入るが、中へ入れられたら外へは逃げられない仕組みになっていた
急な銃撃に魂の管理委員会の役員達は、訳が解らずにいた
素戔嗚尊は職員達を薙ぎ倒して奥へとズンズン進んでいく
慌てて出て来た職員達は閻魔大魔王の姿を見て
「閻魔殿 乱心ですか?
こんな事をしてタダで済むと想わないで下さいね!」と捨て台詞を吐いた
だが炎帝は雑魚は捨て置いて奥へと進んだ
明らかに役員室ばりの贅を尽くした部屋のドアを開けると……ジジイな魔族が若い娘と真っ最中だった
「仕事中にしていい事してるんじゃねぇよ!」
と康太が言うと、素戔嗚尊が二人の首根っこを掴んで放り投げた!
最中だった二人は、唖然としている間に収監する檻に投げ入れこまれた
どの部屋を開けても、盛った役員は女や男を侍らせて夢中になっていた
大歳神と素戔嗚尊がせっせと振り飛ばし収監させる
大歳神は「烈に干からびた性器など見せるでないわ!
本当に教育に悪いではないか!」と怒り狂って投げ飛ばしまくっていた
役員室を一つ残らず確かめ、次は会長室
会長室のドアを開けると、一人の男が椅子に座って待ち構えていた
「なんですか?礼儀のなってない方達ですね」
そう言う男を無視して
「兄者、コイツ知ってるのかよ?」と問い掛けた
「全然知りません!
父さんはどうですか?」
「知らないな
何故こんな知らない奴らが魂の管理委員会などと、名乗ってるのだ?
こんな知らない奴らなれば、連携など出来る筈はないわな!」と建御雷神は吐き捨てた
何故誰も今まで異論も唱えなかったのか?
何故 魔界に存在しているのか?
閻魔ですら知らないと言ったのだ
そら恐ろしいと朱雀は想った
大歳神はマサカリをブーメランの様に投げ飛ばしまくって、建物も崩壊させて逝く
大歳神は「この造りだと地下室あるぞ!」と壊しながら言った
すると建御雷神が走って確かめに行った
転輪聖王も共に確かめに行き……魂の管理委員会の会長は起爆スイッチのボタンを押した
大歳神は「一斉に飛べ!」と檄を飛ばすと、マサカリを地面に突き刺した
そこからメリメリ地響きがして、建物が真っ二つに割れた
当然、爆発物も起爆する前に真っ二つに割れていた
大歳神が叫ぶと咄嗟に青龍は龍に姿を変えて、皆を助けて空へと逃げた
そして爆発しないのを確かめて地面に下りて人の姿になった
大歳神は呪文を唱え始めた
すると草木がニョキニョキ伸びて、地下にいた者達が根っこみたいな蔓に捕まえられ捕縛されて捕まっていた
「残念だったな!
朱雀!どうだ?この体は!」
大歳神は会長も捕縛して朱雀に問い掛けた
朱雀はフゥーっと息を吹きかけると、辺り一面が燃えた
大歳神は「温いな!」と魔界の寒さに思わす暖が取れ喜んでいた
烈も「そうね、ぬくいのね」とアルパカみたいな馬?に乗り、そう口にした
朱雀は苦笑しながらも輪廻の眼で会長を視た
すると体は中身のないマネキンみたいに、体の中身がスカスカで魔族を食い尽くして中に入ったのが伺えられた
「ソイツは反魂で生まれ寿命が尽きる前に魔族を殺して入れ替わりを計っているだけの傀儡だ!」
朱雀が言うと炎帝が始祖の御劔でその男を真っ二つにした
転生など許しはしない!
絶対に生まれ変わらせなどさせぬ!
そんな想いで会長を切り裂き、己の焔で焼き尽くした
炎帝は閻魔に「魂の管理委員会など不要!
何故出来たのか?出処も解らねぇ組織など不要だ!異論はねぇか?閻魔大魔王」と問い掛けた
閻魔は「異論など御座いません、ですが外に捕縛した者は……どうしましょうか?
一応事情聴取しといた方が良いですか?」と困った顔で聞かれた
「今頃息絶えているから事情聴取なんて無理だろ?
アイツ等は嫌がらせをしたいが為だけに創られた組織だと思う
当時の役人か何かを抱き込み強引にねじ込ませたんだろ?
そしてあたかもそれが当たり前の組織だと動いていた
オレの関係者には手を加えて、それ以外は疑問を持たせない様に仕事してたんだろ?
今世烈がいたからな公にされる事になった
でなきゃ、もっとしぶとく存在していたんだと想うと腹が立つな!」
康太が呟くと閻魔は根の深い話だな……と感じていた
大歳神は魂の管理委員会の建物を粉々に壊して、他に出入口はないか確かめていた
草木を操り地底まで潜り確かめる
炎帝はすげぇな……と感心していた
流石 豊穣の神
草木や生物を自由に操り、あっと言う間に魂の管理委員会の建物はなくなり、その場は妖精が好きそうな花々が育ち、森になり生命の神秘を目の当たりに見せつけられ、閻魔も建御雷神も転輪聖王も言葉もなかった
大歳神は「この地にこんな建物など、不要なのだろ?なればこの地は豊穣の祝福を与え、実りある地になるようにしてやろう!」と言った
祝福された地はみるみるうちに緑が茂り、花々が咲き誇った
何処からか妖精が飛んできて、花の蜜を啜り飛び交っていた
大歳神は「儂は倭の国の守り神でもあるからな、豊穣をもたらさねばならぬ宿命がある
だから魔界にずっとおる訳では無いが、呼ばれれば必ずや魔界に来て豊穣を約束しよう!
我は大地に愛されし神 大歳神であるからな!」と約束した
建御雷神は「力強い神を加えられて本当に儂は嬉しく思う!閻魔と炎帝が治める魔界が更なる善き地になるように願って止まぬ!」と言葉にした
転輪聖王は「宜しく大歳神!俺は人の世にもいるからな、今度は人の世で逢おうぜ!」と約束を口にした
大歳神は「人の世の名は、飛鳥井神威と申します
儂は倅の為にだけに人の世に墜ち、炎帝の傍へと転生した
それもこれも、見張っておらぬと安心出来ぬ息子故の事だ!以後お見し置きを!」と自己紹介した
烈は人に戻った朱雀の背に背負われて寝ていた
それを見て、全員で閻魔の邸宅へと向かった
閻魔の邸宅に逝くと、執務会議室へと向かった
皆を部屋に通して今後の対策を練る事にした
烈はその場に椅子を並べて寝させておいた
朱雀は執務会議室に入るなり
「魔界は朱雀を軽く見ておるのだと、ずっと思っていた
輪廻転生は朱雀が仕事、なのに魂の管理委員会なるモノが常に出張って来て、朱雀の仕事まで奪って行った
だか、全ての魂を俺に管理させろと言ってる訳じゃねぇ!
何の相談も一切朱雀にせぬ現状に違和感を感じていたんだよ
何度か魂の管理委員会なるモノを調べた事がある
だけど誰に頼んで調べてもらっても、何の報告も上がって来る事はなかった
そんな時、烈がおかしい!と疑問に投げかけた
あぁ、俺以外にも同じ事を考えるヤツがいたんだって、凄く嬉しかったな」
と一気に捲し立てる様に話した
閻魔は「今後の話をして宜しいですか?」と問い掛けた
朱雀は閻魔を睨み付け
「あぁ、しようぜ!今度は誤魔化しも嘘なく話し合いのテーブルに着いてくれるなら、だけどな!」と言い捨てた
閻魔と黒龍は困った顔をして
「約束しよう!朱雀を蔑ろにする様な話し合いはせぬと誓う!」
「俺も絶対に朱雀を蔑ろにしたりしない!
そもそも、蔑ろになどしていないぜ?
アレは悪かったから機嫌を直せよ!」
と執り成しの言葉を投げかけた
炎帝が「烈がいられる時間はそんなにねぇからな、サクサク決めやがれ! でねぇと置いてくぜ!」と脅しにも似た言葉を投げつけた
朱雀は姿勢を正すと
「魂の再生は公平でなくばならない!
どこの誰が会長なのか?
どこの誰が作ったのか?
そんな解らぬ組織ではなく、名簿を作って魂を管理する側の職員の教育をせねばならないと思うし、杜撰な行いは悔い改めねばならぬと思う!」と言葉に訴えた
その時、眠っていた筈の烈が
「魂を管理する側は常に会議して互いの仕事を把握しておかねばならない!
仕事中にエッチに興じる輩など二度と出してはならぬ!
社員の行動の把握、そして給料制にするならば、金額は必ず管理する部署が必要だと想う
今回、魂の管理委員会の役員が保有していた財産は没収して、その財産を元に組織委員会を発足して管理させれば良い!
とおもうにょよ!………じきゃんぎれら……」
閻魔は「それは良い案ですね、君が作った書類は詳細も緻密で確かで解りやすかったです
閻魔庁にいる職員達よりも精巧で緻密な書類でした!
素晴らしい、流石炎帝が生かした命だと感心しました!」と烈の手腕に感心して賛辞を述べてくれた
烈は「そんなことば、いらにゃいのね
それより、せいべつをかえられたこが、これからいきていくのに、ゆがめられたみらいをつぐなうぎむがあるのよ」と辛辣な事を述べた
閻魔は「全く言葉もありません!今後は二度とそんな事がない様に精進して行きますので、許してくれませんか?」と烈に問うた
烈は「こんごはゆがませにゃいでね
ぼくのねがいはそれだけです!」と答えた
そして再び寝入ると、閻魔は姿勢を正して役員を呼び寄せて協議に入った
朱雀の意見を軸に何度も何度も微調整して話し合う!
炎帝と青龍は寝てる烈を心配して
「オレらは人の世に還るわ!
烈を病院に連れて行きてぇしな!
大歳神はどうするのよ?」
「儂か?儂はもう少し親父殿と過ごし還るとする!
その頃には烈も元気になるだろうし、そしたら掃除だから儂も一族総会には参加する!
烈を助ける存在でいたいからな!見守ると決めておるのじゃ!」
「朱雀、おめぇが話し合いの軸になるんだから、妥協は絶対に許すな!解ったな?
話は何時でも出来る、お前が聞きたい事なれば総て話すと約束しよう!
だから手を抜かす納得がいく仕事をしろ!
解ったな?」
「了解!とことん話し合うと決めている!
それが魔界の明日に繋がると信じているからな!」
「ならな、オレは逝く! 兄者またな!」
「あぁ、炎帝よ、無理はするでないぞ!」
青龍が烈を抱き上げると、炎帝は後手をヒラヒラ振って、その場をあとにした
抱き上げた烈は少し熱を持っていた
榊原が「烈、少し熱がありますね」と謂うと
康太は「魔界の時間の流れは遅いからな、人の子の体でいる烈には傷が全く治らなかったのかもしれねぇな……」と本体を捨てた烈だからこそ、時の流れの遅い魔界では傷は治癒させられなかったのだと想った
榊原は「あぁ、烈は本体を捨てたのですね……」ならば終わらない傷を抱えているようなモノだろうと想った
榊原は崑崙山まで風馬に乗って駆けて行くと、崑崙山から時空を切って飛鳥井の病院の上目掛けて移動した
烈が横浜の地に戻ってきて一ヶ月過ぎていた
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