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第83話 帰還 決断 一族総会
久遠に烈を見せると、久遠は悪化した怪我に怒りまくっていた
そもそも何時の怪我かも久遠は知らなくて、怒りは倍増だった
康太は久遠に「家族に内緒で烈を入院させて貰いたい」と切り出すと、久遠は全て話せ!話さねば診ないからな!とまで言い出した
康太は合同記者会見からの話をした
記者会見で烈は宗右衛門の声で話をし、それを見ていた子供が成田空港で烈を見てパニックになりキャリーバッグを烈に投げ付けて怪我をした事
そして烈は兄達や家族の事を案じて距離を取る為に魔界に行っていた事全て話した
その上で「烈はまだ還る気はねぇから、入院するならば内密に頼む」と頼んだ
久遠は総て了承して烈を入院させた
そして榊原と康太に「絶対に病院には近付くな!」と言った
極秘にするなれば、気軽に逢いに来られては堪らないからだ!
烈の傷は化膿して悪化していた
その傷を洗浄して縫わずにテープで止めて治癒を促した
血を大量に失ったせいか、烈はまた貧血状態が伺えられたが、今度は薬と食事療法で治療を施した
傷が大分治った頃、約束の一ヶ月は等に過ぎていた
そろそろ出ねばならないと、烈は動く事を決めた
その頃、神威も魔界から戻って来て、精力的に情報を集めた
表に出て収集する役は神威が当たり、鴉からの情報を取り纏め、康太とは密に連絡取っていた
そしてそろそろ出るかな?と想った頃
烈の姿を見ないと相賀や須賀や神野が心配して、康太や仲間に連絡を取り出した
烈を見なくなって一ヶ月以上経っている……
戸浪は康太に連絡をしたが、大丈夫ですから!の一点張りの言葉ばかりで詳細は掴めなかった
安曇や堂嶋や三木も、そんな康太の様子に何かあると想い人を使って情報収集し始めたと神威が告げた
何処へ行くにも後を着けられ、見張られてると神威は言った
だから病院の方には今後は行く事は出来ない!
その代わり、まだ顔がバレてない裏方の人間の方に連絡をして、その者に変わりに病院の方に行ってもらう!と謂われた
「こまったわね……そろそろでるしかないのね
かむい、かあしゃんに、そーかいのにっていきいて!おねがいね!」
とメールした
『了解した!』
神威は康太に「一族総会の日程を頼むと烈が言ってました!」とメールした
即座に『了解した、こっちも、そろそろだと想って、予定を立てていたんだよ
一族総会は今週の日曜に開くとする! この後に一族の者に伝令を流すとする!』と返って来た
神威はその事を烈に伝えた
烈は「それまでになおすからね!」とメールをした
本当にそろそろ治して表に出て貰わねば、常にエージェントばりの人間が神威の事務所を張ってて、気が休まる日が来ないのだ
常に見られてる気がする
本当に勘弁して欲しくて、神威は辟易していた
まさか長い事生きてきて、プロの人間に身辺を探られ見張られる事になるなんて……
想ってもいなかったぜ!烈……
相賀や須賀、神野は何としてても烈の居場所を探していた
安曇達が放ったエージェントが、3人が烈を探していると伝えると、安曇は即座に連絡を取り
こちらの事情も話して情報交換しようと話をしてみたが、お互いさっぱり何も掴めていない風だった
康太と榊󠄀原は会社と家の往復だけで、動く素振りもない
子供達は学校へ行き塾やスイミングや教室へ通う以外は家から出ないでいた
瑛太達家族も然り、動きがサッパリないのだ
真矢と清四郎も笙も変わった行動は一切なくて、逆に不気味で勘繰るなと謂う方が無理だった
あの記者会見以降 動きがない
烈に至っては携帯さえ持っていないのか?今はずっと電波の届かない場所にいます……だった
そんな時、世間を騒がせるニュースが飛び込んで来た
何と、烈を怪我させたと謂う加害者家族がテレビに出て、我が子の正当性を訴えていたのだった
母親は『あんな化け物なんだから、息子がパニックになっても仕方がないじゃないですか!
テレビで見た化け物が目の前にいたら誰だってパニックになりますよ!
だから息子はビックリして、キャリーバッグを投げただけなのに……アイツらは警察に届けて息子を児童相談所に通報した!
そればかりか、慰謝料と治療費まで請求して、名誉毀損で訴えた!酷くありませんか?この現状はおかしいです!」と刹那に涙を流しながら、当事者の母親だと謂う人間がメディアに出て訴えた
見ていた視聴者は、母親の暴力を正当化しようとした態度に、逆に見ている人達から不愉快!とパッシングを受けていたと報道があった
そして何より子供を化け物呼ばわりする人間ならば、名誉毀損で訴えられて当然!と現実を投げ付けられた
神威は即座に動き、防犯カメラの映像を手に入れ、報道各社に提供すると、一方的な子供のヒスにも似たやり方に、どっちに比があるかは一目瞭然となった
当初の目的と違う!と母親は叫んでいたが、もう耳を貸す人間はいなかった
そのニュースで始めて烈が怪我させられた事を知った
理不尽な目に遭って怪我をした
そんな事を知れば、居ても立っても居られなかった…
我が子が怪我したと謂うのに、康太と榊󠄀原の動きは会社と自宅の往復ばかりで…
嘘なのか?あの烈を怪我させた子供のニュースは?と想った程だった
東都日報の今枝浩二も烈が怪我をしたと謂うニュースを耳にして、烈に連絡を取ろうとしたが、電話してもメールを送っても何の返答もなかった
それが逆に何かを勘繰っても当たり前にしか想えなかった
一日に大量に飛鳥井烈の事がネットに流れる
心無い中傷が多かったのに、あのニュースを見た後は、こんな理不尽が罷り通る世の中が怖い!と、何も罪のない人間がコナンばりに大人の声で喋ると謂うだけで何の罪が在ると謂うのか?
と、書かれるばかりで信憑性の在る書き込みは一切なかった
そもそも垂れ流し情報に手を加えて消して逝くならば康太が関わってると想うのだが、今回は本当に何の手も加える気はないのか?
どれだけの情報を見ても、康太の気配は探れなかった
だからこそ、烈がどうしてるのか?不安になっていた
そんな中、飛鳥井が一族総会を開くと謂う話をエージェントが掴んだ
その場には烈も出ると謂う
ならばその席に参加させて下さい!と相賀達は訴えた!
安曇や堂嶋も訴えたが、却下された
一族総会は一族の者以外は参加は許されない!と強固な拒否にあった
皆は引くしかなかった………
翔は一族総会の準備に余念がなかった
兄弟達も手伝い一族総会の会場の手伝いをする
烈に逢えるのだ
やっと烈の姿を見れるのだ
家族や兄弟達も浮足立っても仕方がない
そんな想いで迎える一族総会当日
烈の転生者の着物は神威の事務所のバイトが、飛鳥井建設に出向き、康太から貰い受けていた
その着物を神威に手伝って貰い着る
準備が整うと、神威は毘沙門天を呼び出した
「おーい!毘沙門天よ!暫し用がある出て来いや!」
何と言う呼び方……
だけど毘沙門天は姿を現した
「何か用かよ……って!烈じゃねぇかよ?
怪我は大丈夫なのか?」
毘沙門天は心配して烈に問い掛けた
烈の額には超大判のテープで固定されていた
毘沙門天はその傷を見て「酷かったのか?」と問い掛けた
烈が消えて一ヶ月以上経つのに、その傷は癒える事なくまだ残っているのだ軽い筈などないのだ
「らいじょうぶよ」
ニコッと笑って謂う烈を毘沙門天は何も言わずに抱き締めた
神威は毘沙門天に「菩提寺までつれて行け!神の道を通れば人目に付かず行けるであろうて!」と言った
毘沙門天は「お前さ軽く言ったね……」と嫌な顔をした
「お主と儂の仲ではないか!聞いてくれぬのか?」
「止めてくれよ!どんな仲だよ!
お前とは倭の国の守り神って謂う腐れ縁なだけじゃねぇか!」
「ほれ!サクサクゆかんか!」
トホホな気分で毘沙門天は神の道を開いた
神の道は古来の神が創った神道と言われる空間を行き来出来る道の事だった
大歳神も古来の神だから無論その道を通れるのだが、道を開くのは疲れる故に、毘沙門天を呼んだのだろう
この日の神威はビシッとスーツを着ていた
一族総会の前に疲れたくない気満々だった
毘沙門天はその道を通り二人を飛鳥井の菩提寺まで連れて行った
菩提寺の本殿広間に姿を現すと、既に来ていた康太と榊原が烈を抱き締めた
「烈、傷はどうよ?」
「かあしゃん もうらいじょうびよ」
「烈、今日は総会の後に話し合いを入れました」
「はい、わかってます、とうしゃん」
榊原も烈を抱き締めて離すと、烈は姿勢を正した
康太は神威に「神威、おめぇは既に烈と共に在る存在だから壇上からは下りられねぇぞ!」と言った
「それは嫌だな……顔を売るのは止めておきます
我等は姉の志津子を先頭に、後はひっそりを決め込みたいのです!」
神威がそう言うと康太は笑った
「なら仕方ねぇな、ひっそり参加してくれ!」
神威は目立たぬ様に気配を消して、一族の者の中へ消えた
壇上の席は真贋を中心に右側に次代の真贋 翔と転生者の烈が座った
真贋の左側に伴侶が座り瑛太が座った
後の家族は後ろに並べられた椅子に座った
「此れより一族総会を開きます!」
司会を務めるのは緑川一生
一生は最後まで責任を持つ為に司会を買って出たのだった
一生の開始の号令に一族の者は姿勢を正す
康太は立ち上がり一歩前に出ると、烈も立ち上がり母に並んだ
康太が「今回一族の者を集めたのは、飛鳥井宗右衛門が転生者 飛鳥井烈だ!
宗右衛門は今回何度も死ぬ目を体験された!
それでも果てへと繋ぐ為に動かれていた!」と前置きを話し本題を切り出した
それは宗右衛門である烈自ら話した
嗄れた声で烈は一族に絶対の姿を見せ付ける為に口を開いた
「飛鳥井一眞が長男 琢磨は先の報道で悪事を晒された事により一族から追放する!
美容室【R】は総て取り潰し、その資産は弟の蒼真が継ぐ事となる!
飛鳥井蒼真は飛鳥井に遺る!
だが一眞夫妻、琢磨は一族から追放とする!
追放した者は二度と飛鳥井へは戻れはせぬ!
それを此処に皆に知ら示る!」
宗右衛門の声は威厳があり、不正など絶対に許しはしない!と絶対の厳しさが在った
一族の者は固唾を飲んでそれを見るしかなかった
そして更に宗右衛門は続ける
「先頃 鴉と決めつけ一族で消し合いをした者がいた!
皆は誤解しておるが、この御時世だからの鴉は一族の者だと想うな!
お主らの会社の防犯カメラは何処にでも設置して在る事を忘れてはならぬ!
人を使うよりIT機器を駆使して見張る方が効率良く、映像付きで証拠など揃うわ!
今回馬鹿げた争いをした者、その者達も飛鳥井から追放する事とする!
今後は真贋の力は得られぬから、踏ん張って頑張るがよい!」
そう言い烈は追放する者の名を告げ、控えさせていた警備にこの場から連れ出せ!と命令した
絶対的な手腕だった
有無を言わせぬ迫力と威厳
子供だと想えぬ………その姿に皆は畏怖を覚えた
飛鳥井家真贋とはまた違う、絶対的な支配者然としていた
排除する者を出て行かせた後も烈は続けた
「一族はさらなる果てへと続かねばならぬ!
儂は1000年続く飛鳥井を築く為に、今こうして不穏分子を取り除いたのじゃ!
そして今回、一族を出て行った者の家族の中から資質が在る者を再び一族に加える事を此処に宣言する!
その者達は天賦の才を秘めておる者達じゃ!
その者に欠けた一族の商売を継がせる事とする!」
飛鳥井の掟 出て行った者は二度と再び飛鳥井には戻れぬ!
それを破る気か!と会場からは声が上がった
烈は不敵に笑うと
「戻す者は追放した者ではない!
その子孫だったり家族だった者じゃ!
家族や子孫に罪があると申すのか?」
と言い捨て続けた
「罪は本人に科す!
だから今回も飛鳥井一眞が次男 創真が残り、後の者は追放した!
先程、皆の者はそれに意義など申さなかった筈ではないのか?」
そう返されたら一族の者は何も言えなかった
だから先に一眞夫妻と琢磨を追放し、それを皆に知ら示め次男に継がせると言ったのだ
その時誰一人意義など唱えはしなかった
烈は一族に戻す者を壇上に上げ紹介を始めた
壇上に上がった十名程の者達はひと目見ただけで只者ではないオーラを放っていた
未来を生き抜く才を持ち合わせているのが伺えられる者達ばかりだった
皆は納得するしかなかった
そして最期に身まで凍る瞳で一族の者を見て
「鴉は人ではない
人であるかも知れぬ
だがそれは一族の者であったり
一族の者ではないかも知れぬ!
この御時世 それを生業にしておる者もいる
それを努々忘れるでない!
何がおろうとも、己の家業を護り通す想いがあれば、鴉の存在など取るにも足らぬ存在だろうが!
この戯け者が!
主らは一族の為に存在する事を忘れるでない!
後、今後の1000年を繋ぐ転生者になるべく者を紹介しようぞ!」
烈は二人が連れて来られるのを待つ
慎一が二人を連れて壇上に上がると
「この先の1000年を繋ぐ者となる
飛鳥井耀と飛鳥井レイだ!
レイモンドと謂うのは舌を噛む危険があるから、レイとした!」
二人は紹介されペコッと頭を下げた
耀と紹介された子はまだ3歳少し前、レイと紹介された子は2歳になるかならないか位の子供だった
「後 二人おるのだが、竜胆の転生者は未だ所在を掴めてはおらぬ!
東矢の転生は遅れて、まだ詠めぬ故、飛鳥井に還り次第皆には紹介しようぞ!
竜胆を抜かしたこの3名が果てへと続ける転生者となる!
それを此処に皆に知ら示るとしようぞ!」
と宗右衛門は此処に宣誓した
「儂の方からは以上じゃ!」
と言い烈は椅子に座った
慎一は耀とレイを壇上から下ろして世話をしていた
康太は「宗右衛門以上の話はオレにはねぇよ!」とボヤいた
そして「皆には辛い報告ばかりで済まなかった」と言い康太は頭を下げた
すると一族の者は「お辞めください真贋!」と謝罪は要らないと言った
「飛鳥井烈は宗右衛門の転生者で明日へと続ける為に今世は転生された!
そして見事に1000年続く果てへと繋がれた!
飛鳥井の明日はまだ滅びはせぬと宗右衛門は申された!
ならば我らはその言葉に続くしかない!
今回 烈は宗右衛門の姿をテレビで流した
不正は許さないと絶対的なその姿を皆に知ら示た
それにより……恐怖に想った子供が烈を傷付けた
飛鳥井烈の体に宗右衛門が共に在る姿は脅威か?
怪我をさせられねぇと行けねぇ事なのか?
オレは悔しくて仕方がなかった
皆に問う、宗右衛門が飛鳥井に必要だと想うか?
今回の事を受け、烈は家族や兄弟と距離を取って姿を消していた
下手したら二度と戻らぬ覚悟で身を隠していた
宗右衛門にとったら、果へと繋いだ今 飛鳥井に固執する理由はないと……消えるかも知れねぇ
オレは我が子をなくさねぇとならねぇのか?
皆は飛鳥井烈を護れるか此処に聞きたい!」
康太はそう言い席に座った
皆が声を張り上げ【宗右衛門がいねば成り立ちません!】と叫んだ
【宗右衛門、いや、飛鳥井烈、我等は貴方を必要とします!】と声が上がった
皆の総意の声に一生は動いた
「この投票用紙を配るので、皆の意見をお聞かせ下さい!」
と言い、聡一郎や隼人の手を借りて投票用紙を配った
皆はそれに記入して投票箱に入れた
即座に皆の前で開票し、皆の総意を一生は伝えた
「飛鳥井の一族は飛鳥井烈の存在を認め護ると投票した!
誰一人、異議を唱える事なく烈は認められた!」
一生はやっと遣り遂げられた……と想った
一族総会は飛鳥井烈を認め護ると決め、先の1000年に続くと誓い終えた
総会が終わると一族の者は還って行った
康太は烈に「控室を借りて家族と話し合おう!」と烈に言った
烈は「かにぱん ほちいにょ!」と小腹が空いたと訴えた
榊原は隅に置いてある鞄を探りカニパンを取り出し、烈に渡した
「あ、かにぱん!」
「烈の為に買っておきました
食べなさい!」
封を開けてカニパンをモヨモヨ食べる
ほんのり甘いミルクの味に烈は
「じゅっと……たべたかったにょ」と伝えた
控室には家族や榊󠄀原の家族が集まって、烈を見て安心していた
だが消えて一ヶ月経つのに、烈の額には大きなバンドエイドみたいなのが貼ってあった
かなり酷い怪我を負ったのが伺えられて、家族は胸が締め付けられた
康太は「烈は食ったままで構わねぇよな」と謂うと聡一郎が烈に紙パックのジュースを渡した
烈は嬉しそうに笑って「あいがとう!そーちゃん」と言った
聡一郎は烈の頭を撫でた
兄弟達は烈に抱き着きたくて仕方がなかった
だが話し合いだと謂われて大人しくその様子を伺っていた
烈は嬉しそうにカニパンを食べていた
康太は「烈、こんなに家族はお前を心配してるぞ?どうするのよ?」と問い掛けた
烈は困った顔をしていた
慎一が「烈、担任の長瀬先生から連日烈は何時登校してくるんだ!と連絡があるのです!
そろそろ答えを聞かせてくれませんか?」と切り出した
「がっこうはしきに、つうしんでってはなしはしてあるのよ
かむいがはなしてくれたのよ」
「それを長瀬は納得してません!」
「けがしてたからね、あと、ずっとひとのよにいなかったから……」
烈が言うと翔はやっぱり、と想った
あれだけ探っても烈の気配も星詠みも反応がなかったからだ
「で、どうするのですか?」
問い詰めようとする慎一に一生が
「おい、答えを今出させようとするなよ!」と止めた
慎一はやり過ぎたと想い黙った
想いが募り過ぎていたのだ
だから止まらなかった
清隆が静かに「皆が烈を家から出してしまったと悔いているのですよ?」と問い掛けた
烈は「ごめん……らけど、あのときは……きょりをとるしかなかったにょよ」と事情を話した
そして嗄れた声で
「儂の存在は飛鳥井や親しい者ならば、受け入れる事は出来たが、見知らぬ者には脅威に映るだろうからな、仕方ないと諦めておった
だが迷惑になるならば、距離を取るしかない、と思っておった時に、馬鹿げた小童に大きなバックを投げつけられ怪我をした
パニックになった小童は叫び続け罵倒を繰り返した
儂はそれを兄弟の前でやられたら、兄弟が傷付くと危惧した
だから距離を取ったのだ
まぁ怪我もあったしな、だから神威が父親に助けを求め魔界へと連れて逝かれたのじゃ
それからは魔界で過ごした
本体のない子供の体しかない儂には魔界で過ごすのは暫しキツくて怪我の治りが圧倒的に悪くなり苦い薬湯ばかり飲まされていたのじゃ
そして炎帝が魔界にいるなら掃除をしろ!と申したからな、儂は寝る間も惜しんで掃除をしておったのじゃ!
掃除が済んだから人の世に還り後は傷を治す為に入院しておったのじゃ!
それが全容じゃ!どうするかは烈が決める
儂ではなく、烈が決める
決めた以上は覆りはせぬ道へと逝く!
それが定めだからじゃ!
だから家族も覚悟がいるぞ!
烈を受け入れる、即ちそれは嵐を抱える事となる!
覚悟なくば烈は還りはせぬ!
その上でモノを申すがよい!
儂は消える、後は烈と協議をするがよい!」
と言い、宗右衛門は消えた
烈はカニパンをモヨモヨ食べていた
流生が「烈、還ろう!何があっても烈は僕達の弟だから!還ろう烈!」と言った
「にーに………」
音弥も「烈を探してる時、隼人に歌を歌わせたのよ!それを聞かせてあげるから還ろう!烈
烈は僕らの弟だよ!それはずっと変わらないんだよ!」と呼び掛けた
烈はカニパンを食べながら泣いていた
康太が烈からカニパンを取り上げる
「塩っ辛いカニパンになっちまうだろうが!」
「かあしゃん……」
太陽も「烈、僕達は誰か何と言おうと怯んだりしないよ!だって烈の兄さんだもん!」と言った
大空は烈のカニパンを手にして
「烈、お腹すいでない?
烈は何時もお腹減ってるから心配だったのよ」と言った
「にーに、かえりちゃいよ
にーに…じゅといたいよ……」
烈の本音が吐露される
翔は烈の傍まで行き烈を抱き締めた
「烈、還ろう……この一ヶ月本当に淋しかったよ」
「にーに……」
「僕達は誰に何を謂れようとも、何かをぶつけられようとも!
怯んだりしないし、烈のせいだなんて思わないよ!だから遠くへ行こうとしないで!」
烈は何度も頷いた
真矢は烈に近付くと、優しく抱き締めた
「烈、何処に行ってたの?
黙って消えちゃだめよ!
これで二度目よね?」
と笑顔だが、瞳が全く笑っていなかった
「ばぁたん きょわいって!」
「消えないで、私達は貴方を脅威だなんて想っていない!
だから今夜、私と清四郎は記者会見を開きます!
テレビで何度も何度も烈がキャリーバッグをぶつけられた映像が流れました
何も聞かされていない私達が、烈を心配しないと想いましたか?」
「ばぁたん……」
烈は真矢に抱き着いた
真矢は烈の頭を撫でて「隼人!」と言った
隼人は烈の頭をポコンっと叩いた
「はやちょー いたいにゃー」
烈が言うと隼人は烈を抱き締めた
「消える子には一発ポコンなのだ!
だけど、ポコンした後は抱き締めるのだ
そして今夜の記者会見はオレ様も出るのだ!」
と烈に告げた
「しなくて、らいじょうぶよ?」
「駄目なのだ、それだと馬鹿なヤツが出て来て烈を傷つけてしまうのだ!」
「はやちょ……」
清四郎は胸を張り「私は飛鳥井烈の祖父だからね!孫を傷付けられて黙っていたならば、男が廃ります!」と言った
「じぃたん……」
「烈は脅威なんかじゃありません!
定めに生きた子を脅威になど想いはしない!
そして総て話します!
烈は真矢が産んだ子で、飛鳥井家真贋の為だけに産んだ子だと世間に知らしめます!」
「らめらよ……それは……」
「其れ位の覚悟なくして、烈の祖父として生きては行けません!
飛鳥井の家族も会社を上げて声明を出しました
我等も此処で声を上げなくば、烈一人に重い荷物を背負わせてしまう事となる!
それはしたくないんだよ?烈」
「じぃたん……」
清四郎は烈を強く抱き締めた
「痩せましたね?」
「かにぱん なかったから……」
烈が言うと家族や仲間は一斉に笑い出した
康太は食べかけのカニパンを烈に渡した
再びモヨモヨとカニパンを食べる烈の姿に安心する
烈はカニパンを食べるのを止めて顔をあげると
「そういえば、おふろはいってにゃいのね」と言った
康太は「病院で入らなかったのかよ?」と聞いた
「からだはかんごふさん、ふいてくれたのよ
でもね、ちいさいからおふろはいれにゃかったのよ………でね、ひとのよじゃないところには、おふろにゃかったのよ」
「え?叔父貴んちお風呂なかったのかよ?」
「にゃんかね、かわでからだをながすんらけどね………ぼくむりらったのよ」
「早急に風呂を作れ!と伝えとくわ!」
「あんにゃに さむいにょに……かわよ」
烈は悲壮感たっぷりに呟いた
康太は慎一に「風呂に入れてやってくれ!
泡が立つまで洗ってやってくれ!」と頼んだ
「解りました、菩提寺の風呂場に行って洗った方が早いですから、洗ってきます!
丁度烈の着替えを持ってきてますから!」
と言い烈を小脇に抱えて連れ出した
烈が「もちゅにゃ!」と怒ったが少しでも早く風呂に入れたい慎一は聞かなかった
烈が風呂に行くと康太は「烈は還るだろ、だけどな二度とこんな事態にならねぇ様に手は打たねぇとな!」と言った
飛鳥井建設は声明を発表した
「此度は我が社の副社長の6男、飛鳥井烈が傷つけられ、大変遺憾な想いを致しております!
飛鳥井烈は飛鳥井宗右衛門が転生者
飛鳥井の一族でなくてはならぬ存在!
その様な存在に傷を付けられたのです
今後は宗右衛門の弁護士と我が社の顧問弁護士とで協議を重ね法的な処置を対処したいと想っております
関係各社の皆様には多大なご心配とご迷惑をお掛け致しました事を此処に謝罪致します
此処に声明として発信させて戴きます!
飛鳥井建設 会長 飛鳥井清隆
社長 飛鳥井瑛太」
会社を上げて烈が傷着けられぬ様に声明を出す事は異例中の異例な出来事だった
社員は皆 飛鳥井烈を護ると心に決めていた
どんな事を謂われようと、自分達は飛鳥井建設に就職して給料を貰っていてる身として、誇りに思っているのだから!
烈がお風呂に入りに行った頃
相賀、神野、須賀、そして竜馬が菩提寺に押し掛けて来ていた
菩提寺、本殿広間控室へと城之内に通されてやって来た
その場に烈の姿がなくて、竜馬は「あれ?烈は?」と泣きそうになり問い掛けた
玲香は竜馬の手を取ると、横に座らせ頭を撫でた
「暫し待つのじゃ竜馬」
「義母さん」
あれから竜馬は飛鳥井の家から離れようとしなかった
会社に仕事に行き、還れば飛鳥井に来て過ごすうちに、家族とはすっかり仲良しになっていた
暫くして烈が控室に戻って来ると、竜馬は烈に飛び付いて泣いた
「りゅーま いたいにょ……」
思いっ切り飛び付いた拍子に額の怪我を打ち、烈は痛みに訴えた
慎一は血が滲みかけた額の絆創膏を見て、竜馬を引き離した
「烈は怪我してるので、よく見てからにして下さい!」
慎一は烈の手当をした
「しんいち」
「何ですか?」
「ごめんね」
慎一は手当してる手を止めた
「烈……謝らなくて良いです」
「かむいといったときね、ほんとうにここにしんいちいたら、いいにょにとおもったのよ
かわよ…まふゆのさむさに……かわよ
しんいちにゃら、おゆわかしてくれたのにっておもってね、なけたのよ」
「俺ならば何処へ行こうとも、烈の為に暖かいお湯を沸かしてあげます!」
慎一は烈の傷に薬を塗って新しい絆創膏に変えた
烈は竜馬の頭を撫でた
「りゅーま、かいちゃではたらいてりゅ?」
「働いてます……ぶっちゃけ10万ずつ働くのなんて楽勝って思ってたんですがね、泣きたくなる程にキツかった
事務の責任者は鬼でした
そして建築の方は休憩ばかり取って楽でしたが、これでこんな高い単価のお金もらって良いのか?と感じました
そして今は副社長に鍛え上げられて息の根止められそうです」
竜馬が謂うと榊原を始め、瑛太も清隆も眉を顰めた
そして瑛太が「竜馬、建築の方は休憩ばかりだったとは?」と竜馬に問い掛けた
「言った通り少し仕事して、長い休憩ばかりで、あれは仕事にもならないでしょうね
下手したら休憩の方が多くて、何しに仕事やってるんだ?と感じました
事務やってた方が大変でした、飛鳥井蒼太怖かったです」
瑛太が「伊織」と名を呼ぶと、榊原も「ええ、時間を早めると謂うのはこの事なんですね!」と顔見世の日烈が言った不安要素を思い出し口にした
思案してると烈が「かむいんとこに、うらせんようではたらきゅひといるのよ
そのひとにさぐってもらうといいにょ!」とやはりカニパンをモヨモヨ食べながら言った
今度のカニパンは兄 大空がくれたパンだった
榊原が「ならば早めに連絡して動いて貰いましょう!」と謂うと瑛太も清隆も頷いた
竜馬が刺戟的過ぎて相賀達は出遅れたが、相賀が
「烈……あの日から逢えずにいたので心配してました」と泣きながら言った
「おーが ごめんね」
「元気ならば良いのです!
しかし腹が立つので我等も連盟で記者会見を開く事にしました!」
「おーが らめらよ」
烈が言うと今度は神野が
「許せない想いは一緒なんだよ!
お前がオムツ着けてる時から俺等は一緒にいたんだ!その烈が傷付けられ……黙っていられるか!」と興奮して泣きながら言った
須賀も「烈は少しだけオッサンが出るかも知れないけど、その他は変わらない子供なんです!
我等は烈を脅威になど思ってはいない
それは飛鳥井家真贋と知り合いだからとか、康太に忖度したからとかじゃなく、私は烈とお茶するの凄く楽しみでした!
しゅが、と慕ってくれるの凄く嬉しかったのです!
だからこそ! 我等はそれを伝えて声明を上げねば、この悲劇は再び繰り返される可能性がある!
そんな事は二度とさせはしない!その為の会見なのです!」と事情を話した
烈は泣いていた
カニパンをモヨモヨ食べながら泣いていた
康太は今日のカニパンは塩っ辛いだろうな……と想った
話が終わると烈は疲れたから還ると言った
慎一は子供達を乗せて先に還ると伝えると、子供達を駐車場へと連れて行き車に乗せた
車に乗ると流生は「お腹減ってない?」と聞いた
「だいじょうびよ!にーに
かにぱんたべたから!」
烈は車に揺られていると、うとうと寝ていた
飛鳥井の家に着くと、慎一は烈を抱き上げて家の中へ入って行った
応接間のソファーに寝させると、烈の猫がにゃーにゃー鳴きながら烈の上に乗った
翔が「駄目よ虎之助!」と言い追い払う
虎之助は少しいじけて、烈を感じたくて側に丸くなった
飛鳥井の家族や榊󠄀原の家族や竜馬達が還り、相賀達は記者会見の準備の為帰って行った
取り敢えず家族達は皆応接間に入って行った
竜馬は烈の前に座ると、猫と張り合い烈を抱き締めようとしていた
烈はパチっと目を開けると
「りゅーま なにかににてるおもってたら、とらたんだ!」と叫んだ
康太は烈の上に乗って甘える猫と、烈の前に座って烈を抱き締めようとしている竜馬を見て爆笑した
榊原はコロコロ転がらんばかり笑い転げる妻を取り敢えずソファーに座らせた
瑛太も清隆も玲香もぷるぷる震えていた
子供達もぷるぷる震えて笑っていた
笑ったら失礼よ!と想いつつも笑っちゃえていた
慎一は聡一郎に頼んで連れて来た耀とレイを連れて来て
「彼等はどうします?」と尋ねた
「ひかりはね、そぼたちとくらすのよ
らから、かじゅ きいてきてね」
「了解した、八重子のオペも終わって新しい家の方へ帰ってるから連れて行くわ」
「やえこがしぬまではめんどうみさせるのよ
それがふたりのしょくざいになるきゃら!」
「レイは?どうするのよ?」
「れいは、うちにいるのよ」
一生は言葉を失った
こんなにも似た顔をしてれば直ぐに解るからだ……
髪は銀髪に近い金髪で、瞳は海の色に近いブルー
美しいと謂う形容を言葉にするならば、まさにレイの為にある言葉だった
だが……この顔は……
一生は康太を見た
康太は「それが宗右衛門が決めた事だ、今更覆りはしない!」と言った
烈は嗄れた声で「容姿など些末な事よ」と何でもない風に言った
慎一が「耀は今夜は飛鳥井に泊めて明日送って行きましょう」と言った
耀は元々飛鳥井だったがレイはどうなっているのか?と家族は疑問に想っていた
清隆が「この子の戸籍はどうなっているのですか?」と尋ねた
「あすかい きらがようしにしてくれたのよ」
瑛太が「綺羅……また男前を味方につけましたか」とボヤいた
一生は「その綺羅って誰よ?」と問い掛けた
それに答えたのは清隆だった
「綺羅は綺麗の姉になります
あの姉妹は本当に男前なんです!」と言った
一生や聡一郎や隼人は綺麗を思い浮かべ、綺麗の姉ならばそれはそれは男前だろうな……と納得した
康太は「綺羅は、綺麗のその上を行く女だぜ!
うちの秘書と同じだよ、姿形は誰よりも美しく、ナイスボディーで、下手な女優よりも存在感があるんだが、その性格はオッサンで男前なんだよ
何でかな?俺の近くにはお淑やかやおなごがいねぇんだよな」とボヤいた
玲香は「お主には寡黙で鬼な旦那がおるであろうが!」と間髪入れず言うと、皆が笑った
真矢は「その綺羅と謂う方は?何時か合わせてくださるのですか?」と言った
「真矢さんは嫌と謂う程に逢ってるだろ?
新進気鋭のカメラマン 神城きらら
あれ、綺麗の姉の綺羅だからな!
研究命な綺麗とカメラ命の綺羅
まぁ顔だけなら綺麗も美人なんだけどな、如何せん男前すぎるんだよ、あの姉妹は!」
真矢は雑誌の撮影の時に撮ってくれたカメラマンを思い出していた
白のブラウスとジーンズと軽装だが、そんな姿だって魅力に魅せてしまう人間だと感じていた
あの美しいカメラマンが綺羅?
真矢は「どうして養子に?」と疑問を口にした
康太は榊原を見た
榊原は仕方なく「僕も知りません、烈がやった事なので、僕等は関与出来ないのです」と答えた
烈は「なまえだけなら、どんどんかしてやるさ!
それでなんおくのしゃっきんをせおったとしても、そうえもんになら、なんでもしてやる
っていってくれたのね 」と怠そうに答えた
康太は「レイの部屋、作らねぇとな
それと会社の託児所に頼んでおかねぇとな
母ちゃん、悪いが子育て手伝ってやってくれねぇか?」と頼み込んだ
玲香は「この家に住むと謂うならば、育てる手は沢山ある、心配するでない!
だがその子は飛鳥井のどのポジシャンに入るのじゃ?」と尋ねた
宗右衛門が嗄れた声で
「レイは稀代真贋のポジションを継がせるつもりじゃ!
耀は後一回の転生で終わる源右衛門のかわりとなるべく存在となり
東矢は儂のポジションを担う者となる
この3人は儂らが次の転生に入らぬから存在する者となる
それぞれが力を持つ者だ
何故ならば耀は神日本磐余彦天皇であられる
彼は己が死した後も倭の国を護り見守った御人
彼は真贋の側に生まれ落ちて来ると約束され、こうして姿を現して下さった
今後は飛鳥井の為に尽力して下さるとの事じゃ!」とサラッと説明した
そして家族が唖然としているうちに更に続ける
「そしてレイモンド·グランチェスタはニヴルヘイムと謂う神の転生者じゃ!
本当ならば飛鳥井の腹で生まれねばならぬ存在が少し狂って外で生を成してしまわれた!
だが定めは飛鳥井に組み込まれ先の1000年を繋げる者となる!
まぁ生まれは関係ない!
今世は人の世を体感され、慣れられる事に重きを置く
だから儂の傍で育て教えて行こうと考えてておるのじゃ!
質問はないか?ならば儂は疲れておるから消えるとしようかのぉ!」
と言い宗右衛門は姿を消した
物凄い爆弾級の現実だけ置いて…
宗右衛門は姿を消した
烈は「あすかいのためにそんざいするの
らから、みなでそだててほしいにょよ!
うまれるけいいとか、かんけいないからね
れいをきらわないであげてほしいにょ!」と訴えた
玲香は気を取り直して
「安心するがよい!飛鳥井の為に定めを持って生まれた子を邪険になどせぬ!
ただ、飛鳥井のどのポジションを継がせる子なのか問いたかっただけじゃ!
そうか、稀代の真贋のポジションを継がせるのじゃな
なれば、我等も頑張って育てねばならぬな!」
と子育てに燃えていた
真矢も「私達も協力するからね大丈夫よ!
しかしレイちゃんは美しい子ね…でも何処かで見た面影も在るのは見間違いじゃないのかしら?」と問い掛けた
「それはいえにゃいの!
ばぁたんがそれをかんじたなら、あたってるよとはいえるけど、いっちゃだめなの!
どのみち、どのはらでうまれようとも、さだめはかわらにゃいからね!」
とキッパリ言った
重い言葉だった
玲香は目を瞑り、やはりそうか……と想った
誰が親が?……見れば解る
だが烈が謂う通り、どの腹で生まれようとも定めならば覆りはしないのだ!
やはり嵐を呼ぶ男は家族の心に嵐を吹き荒れさせ
果てへと繋げた瞬間だった
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