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第86話 衝戟に
康太と榊原は八方塞がりの現実に歯噛みしたい想いをしている頃
烈は賢者ラルゴにあらゆる知識の限りを伝授して貰っていた
覚えの早い烈に教えるのが楽しみなラルゴは時間を忘れて烈に教えていた
ある程度の教えを実践で使える様になるまで、ラルゴは気長に烈に付き合ってくれていた
星詠みが出来なくとも占星術やホロスコープなど、天体の基本を叩き込まれていた
賢者ラルゴは「お前は教え甲斐のある生徒だ!今度長期の休みが取れたら知らせるが良い!
お主の為になる教えを授けてやろう!」と言い還って行った
烈はラルゴの教えを終えてからは、朱雀の仕事を手伝い、必死に片付けていた
魔界は今 右往左往の大騒ぎで出払ってて、当の朱雀も魔女討伐に駆り出されているのだろう
だからその代わりに緻密な書類を上げていく
そしてその合間に八仙とお茶して休憩する
そんな何時もの八仙とのティータイム
「なぁ八仙よ、魔界にだとて神の恵みの光があってもよいとは思わぬか?」と切り出した
あまりにも寒すぎるから、つくづく思わずにはいられなかったのだ
「神の恵みとは?何を指すのじゃ?」
「太陽石じゃなく、恵みの光と太陽の光
それが差さぬから寒くてかなわぬのじゃ!」
また面白い事を言うな……と八仙は想った
「ならばお主はどうしたらよいと思うのじゃ?」
「世界樹に天界の光を集めて、人の世の太陽の光と共に魔界で解き放てば良いと思うのじゃ!
あの樹はその為にあると、儂が魔界にいた時に樹が教えてくれた
なのに未だにその使い方はされてはおらぬ!
だから魔界は寒くて薄暗い世界にしかなれぬのじゃ!」
八仙は驚いた瞳をして「樹が教えてくれた?と申すのか?」と問い質した
「そうだ、魔界にいた時儂は一族の中に身の置き場なくて、良く世界樹の下にいた
その時から話し相手は世界樹だけだった
儂は最初妖精がいるのかと想った
だが魔界最後の夜に、樹は冥府の地底深くで闇を浄化していたニヴルヘイムだと教えてくれた
だから出来ぬ事はないのに、何故しないのだろうと不思議だったのじゃ」
「お主はニヴルヘイムと話したと申すのか?」
「世界樹の樹は魔界に絶望している儂に、何時だって声を掛けてくれた
そして星詠みの眼を……魔界を去る晩にくれたのじゃ……信じられない様な話だが……儂は確かにニヴルヘイムに眼を貰ったのじゃ」
八仙は言葉もなかった
「炎帝は……この事は知ってておるのか?」
「どうじゃろ?話した事もないからの、良く解らぬ……」
八仙は8人全部が出て来て、宗右衛門の瞳を凝視した
八仙は宗右衛門の瞳を色んな検知から見て調べ何度も何度も話し合っていた
そして8人の仙人が出した結論
「確かに炎帝は俺よりは劣るが宗右衛門の眼は魔界一だと申しておった
それは、その眼がニヴルヘイムの眼だと知っていたと謂う事なのじゃろう
なれば、お主の滞在中にガブリエルを呼ぶから、今話した事を伝えて魔界を照らす光を差して貰うが良い!」
そうして自分で仕事を増やした
だが烈は楽しくて仕方がなかった
知識は武器となる
少しでも魔界の役に立つ様にと想いは果てへと繋がれて行くのだった
烈が滞在中に約束通り天界からガブリエルが来てくれた
宗右衛門は八仙に話した話をガブリエルに話した
ガブリエルは天界にも届く世界樹に、そんな役割があったのか…と今更ながらに想った
神の扉の横に遥か昔から聳え立つ世界樹
世界の浄化の為だけに冥府の地下深く存在した神 ニヴルヘイム
その神が謂うのであれば、可能なのだろう、とガブリエルは想った
ガブリエルは「天界に戻り即座にやってみます!ですが人の世には創成期にいた神はもういない……どうするのですか?」と尋ねた
「天界から光が届けば、世界樹に光が集まり、その光は太陽の光、月の光、星の光を集めて魔界を照らし冥府を照らす、そしてニヴルヘイムのいた場所へと還る!それが世界樹の正しき使われ方なのじゃ!」
それが世界樹の正しき使われ方だと宗右衛門は謂った
ガブリエルはその言葉を受けて
「ならば正しき使われ方がされる様に尽力致します!」と約束して天界へ還って行った
烈が只管ガブリエルと対話して、朱雀の仕事をしつつ、賢者ラルゴから教えて貰った事を忘れない様におさらいしつつ過ごしていた頃
康太は榊原と兵藤と共に自衛隊の軍用飛行機の中にいた
揺れが激しくて吐きそうな気分を押さえつつ、我慢して乗る
「ケツ痛てぇし、吐きそうだし……」
と康太がボヤくと兵藤も
「んとにな、ルビアンカ連邦共和国の近くに差し掛かったら朱雀になって飛べって……
そりゃ飛ぶって言ったけどさ、飛行機から飛ぶのって……失敗出来ねぇじゃねぇかよ」
とボヤいた
榊原も「僕も飛び続けて腰が痛いです……」硬い鉄板みたいな椅子に座らされて、その時を待つ為だけに乗っていなきゃ駄目なのだから、本当に嫌になる……
その時「ルビアンカ連邦共和国近隣上空です!準備して下さい!」と告げられた
合図が出たら兵藤は朱雀になり、康太と榊原は朱雀の背に乗り移動するのだ
何か悪夢見そうな事を一発勝負でやらねばならないのだった
軍用飛行機のドアか開くと、物凄い風に飛ばそれそうになる
兵藤は飛行機から飛び降りて直ぐに朱雀に姿を変え、康太と榊原を背に乗せて飛んだ
飛行機から飛び降りる時、落ちたら死ぬやんか!と想いながら榊原と手を繋なぎ飛び移った
康太は無事朱雀の背に乗れて
「乗れなきゃ今頃死んでるやんか!」とボヤいた
榊原は康太を強く抱き締めた
炎帝と青龍に姿を変え、上空から下りる時を待つ
ルビアンカ連邦共和国 上空には四大悪魔の王子が一人 アマイモンが待ち構えていた
炎帝はその姿を見て「魔女の付近にはアマイモンが待機している、悪魔と契約した者は悪魔の手により打ち負かされるが定めだからな悪魔の力を弱めてもらうつもりだ!
そしてその一瞬でトドメを刺す!
チャンスは一度、それを逃せば魔女は再び力をつける!それは阻止せねばならぬ!」と発破をかけた
原始の書を用いて、創世記以降の神の力を弱めた
テスカトリポカは創世記以降の悪魔とも神とも謂われた存在
何方の力も弱まりつつあるのは確かだ
反魂も今となっては二度と儀式は行えない
また行ったとしても、原始の力が働いている今、その命は尽きてしまうだろう
そう原始の書を用いた呪文の上に連ねて呪文を唱えた時に【命の無断再生禁止】の呪文を唱えた
魂に細工してない反魂で生を成した者は息絶えて行ったが、細工してある魔女の様な奴は生きながらえた
だが前の様な力はない
トドメを刺すならば今なのだ
飛鳥井歴也が時間を早送りして作った道なのだから………
炎帝がその【時】を迎えていた頃
烈は人の世に還っていた
飛鳥井香里奈の情報を把握して、東矢の居場所を確かめて来た神威が、迎えに来たからだ
「東矢の施設の目星は着いた
後は保護者と話を付けて、と想ったがあの子は完全に親との接触を禁止にされているから、どうするか?考えねぇとならねぇぞ!」
烈は神威の話が意味が解らず
「親との接触を禁止とは?
何をしたらそうなるのじゃ?」と問い掛けた程だった
「香里奈は自分が妊娠してるのを知っていた
だが家族には言えず、妊娠を隠していた
そして腹がどうしょうもなく目立った時、家族は香里奈の妊娠を知った
その時は産ませるしか出来なくて産ませた
だが香里奈の精神が段々とおかしくなり、東矢に手を上げて折檻するようになったらしい……乳飲み子を躊躇なく肋が折れる程殴り、それをを見付けた母親が子供を助け出し救急車で運び込ませた
以来施設で過ごしているそうだ
だから母親は子供との接触を一切禁止にされている」
「なら養子としてしか引き取れぬと謂うのか?」
「その養子もな飛鳥井だと厳しいかもな……」
「それだと八方塞がりではないか……」
一難去ってまた一難
なんでこうも翻弄されるのか?
考え込む烈に神威は
「東矢の件はうちの事務所のスタッフが方法を探してるから、今は任せて竜胆に照準を合わせ動くしかなかろうて!」とまだ竜胆は助けてはおらぬぞ!と発破をかけた
其処へ毘沙門天が姿を現して
「蔵のある家、大体目星が着いたわ
どうするよ?」と問い掛けた
「いくにきまってるにょよ!」
烈とはそれが死命だとばかりに謂った
だが蔵の周りには結界が張ってあるのだ…
罠がない訳がないのだ
其処に竜胆がいるならば、罠だと解っていても行って助けねばならない
でないと明日の飛鳥井の果てが狂ってしまうからだ!
神威は「なら行こうぜ!そうだ一生と慎一が心配してたぜ?どうするよ?呼ぶか?」と問い掛けた
宗右衛門の声で烈は
「知らせずに行くのじゃ!
罠がある場所へ連れてなど行けぬ!」とキッパリ謂った
神威はそれを了承して二人で移動する事に決めた
二人で最善の方法を何パターンか話し合い、試行錯誤してその時を迎え撃つ為に衛星写真を駆使してシュミレーションを重ねた
烈は賢者ラルゴから教わった占星術やホロスコープを駆使して戦略を立てる
だがその総てで"それ”は出ていた
だが烈は果ての1000年先へと望みを託し、勝機を手繰り寄せていた
作戦の前に、神威は家の周りのを情報を集めていた
土蔵の在る家を、近隣住民から聞き回っていた調査員の話では
家主は【田端幹生】と謂う
ある日突然家から住人が消えたと想ったら、その日から住人に変わって住み出したと謂う
以来 近隣とは面識もなく挨拶もないと謂う
滅多と住人を見る事もなく、住んでるかさえ解らないと謂う
神威は昼間、その家を尋ねて行ったが、家主が出て来る事はなかった
無人なのか?と地底から家を探ったら人の気配はなく、草木を通してここ数日見晴らせていたら一日に一度家に来ているのが解った
調査員に跡を付けさせると、その男は駅近くのマンションに出入りして、そこに住んでいると謂う
あんな立派な家屋があると謂うのに、其処には住まずマンションに住んでいる
総てが不思議だった
調査員が家から出た男を捕まえて話をしようとすると………急に男は走り出し車道に飛び出しトラックに跳ねられ緊急搬送された
調査員はその男の家族を探ったが、男は一人でマンションに住んでいた様だと警察の報告で解ったと報告してくれた
宗右衛門は「あの家がもし爆発したとしたら、近隣に影響は出るのは必須
避難させる手段はないかのぉ……」と思案した
人を大量に避難させるには個人では限界があったからだ
神威も手立てが見付けられず、万策は尽きていた
烈は「とりあえず、きってみりゅ?」と言ってみた
万策尽きたら、取り敢えず切ってみるしかないと、其処へ辿り着く
仕掛けが無い筈はない、だが切ってみないと解らない
神威も「取り敢えず切ってみるか?」と謂った
二人は顔を見合わせて、頷いた
そうと決まれば話は早い
二人して蔵のある家へと向かった
見るからに大層な結界が貼ってあった
烈はその結界の前に立つと草薙剣を出した
そして一刀両断に断ち切る【時】を迎えていた
炎帝は魔女の姿を見付けるとアマイモンに指示して呪縛させ悪魔との契約を破棄させた
四大悪魔の王子であるアマイモンにはそれが出来ると謂った
前回はそれをしなかったから魔女の力が上回っていて引くしかなかった
だが今回は絶対に逃しはしない!
禍の神の傀儡で在る魔女を逃がせば、後がないのが解っているからだ!
だが魔女はジル・ド・レを取り込み、力を吸収して力を倍増とさせていた
炎帝と青龍の目の前でジル・ド・レが干からびてハラハラと崩れて砂のように崩れて行った
何としても負ける訳にはいかない!とジル・ド・レの力を吸収して力を付ける魔女の覚悟を知る
だが此方もそんな覚悟など、当の昔にしているのだ!
今度こそ負ける訳には行かないのだ!
アマイモンが魔女との契約を破棄させると、魔女の身体は炎に焼かれ、肉の焦げる匂いが充満した
魔女は炎に焼かれ笑っていた
【テスカトリポカ様は不滅じゃ!
この世の総てを手に入れるのも時間の問題!】
男とも女とも、人間とも悪魔とも獣とも付かぬ声で叫ぶ
炎帝は嗤って
「この世の総てを手に入れる?
そんな世迷い言、誰がさせるか!
それは創造主だとて同じ!
七色に輝く地球(ほし)を破滅に追い込んだ奴を誰がのさばらせるか!
もう蒼しか遺っちゃいねぇ!
だが創造主は約束してくれたぜ!
再び、地球(ほし)を創る、と!
七色に輝く地球(ほし)を再び創る、と!
次の地球(ほし)はお前の手が介入はさせねぇ!
そしてこの地球(ほし)もな!
魔女の眼を通して見てるんだろ?テスカトリポカ!」
と吐き捨てた
魔女は【誰がそんな事をさせるか!総てを滅ぼし闇夜に輝く銀河になるのだ!それには地球(ほし)など必要とはしない!】と叫んだ
炎帝は原始の力を編み込んだ創生の槍を手にすると、魔女目掛けて投げ飛ばした!
創生の槍が魔女の心臓を貫き、地面に刺さった
釘刺しにした炎帝が……
結界を打った斬った烈が……
衝戟に備えて構えた!
瞬間 大爆発を引き起こし、物凄い爆風に煽られた
爆風は総てのモノを吹き飛ばし、物凄い熱量を一気に吹き出した
街一つぶっ壊さん勢いの爆風に窓ガラスは吹き飛ばされ、建物はピシピシと亀裂が走り、ガラガラと音を立てて崩れて行った
青龍は龍になり吹き飛ばされる妻を戸愚呂を巻いて護り、吹き飛ぶ瓦礫や硝子に斬り付けられ逃げるしかなかった
大歳神は烈を護って衝戟を受けて飛んでいた
大地の護り神の大歳神は結界が切れた瞬間、大地の根を発動させ竜胆を確保していた
だが地上に出せば熱風と爆裂した瓦礫で怪我をするから、地下から出さぬまま離れた所へ飛ばした
烈も熱風で火傷を負い、瓦礫で顔やら体を怪我していた
炎帝と青龍も朱雀も満身創痍状態となった
そして何より………爆風で被害受けた街は、爆破地点から2キロ先まで瓦礫の山と化した
神威は毘沙門天に竜胆の確保をお願いして、烈と共に久遠の病院へと急いだ
全身血だらけの神威と烈が飛鳥井記念病院に姿を表したと同時に
康太と榊原と兵藤が血だらけで、時空を切り裂き、飛鳥井記念病院に姿を現した
病院スタッフが久遠を呼びに行くと、5人とも血だらけの姿を見て、怒りながら
「烈、良い度胸だ!先日の傷も癒えてねぇのに、もう新しい傷作りやがったのかよ!」と怒鳴った
烈は「ぎめん、せんせー」と謝った
康太と榊原と兵藤に向き直り
「貴方達も良い根性してやがる!
みっちり治すまで病院から出さねぇからな!」と宣言した
怪我人を怒鳴りながら引き摺りズンズン進む院長の姿に……患者等は恐怖を覚え、絶対に逆らってならないと心に誓ったのだった
烈は体に酷い火傷と瓦礫を突き刺しあっちこっち怪我をしていた
しかも運の悪い事にこの前怪我した所も瓦礫が突き刺さって血を流していた
だがそれよりも酷いのは神威だった
烈を庇った分背中に細かいのから大きいのまで様々は瓦礫や硝子が刺さっていたのだ
そして神威も熱風で火傷を負っていた
康太や榊原、兵藤も同様で瓦礫や硝子や建物残骸等を体に刺して火傷で皮膚は爛れていた
5人とも重症と謂う事で入院させた
三人部屋に烈、神威、兵藤が入り
二人部屋の個室に康太と榊原が入った
兵藤は同じ病室になった烈に
「どうしたのよ?烈
あんでまた怪我してんだよ」と問い掛けた
烈は気まずい顔をして
「りんろーさがしにいったにょよ
でもりんろーはけっかいのなか、だったのよ
ばんさくつきて、とりあえずけっかいをきってみりゅ?ってはなしになって、きったのよ!
そしたらばくはつして……やけどとけがしたの
かむいはぼくをかばったから、もっとひどいの……」
と説明した
「おめぇんとこも爆発したのか……俺の所も爆発して火傷と怪我したんだよ」
「……ぼくたち……けいさつもせいじかも、うごかせなかったから……きんりんじゅうみんはまきこまれたのよ……ばくはつするかな?とはおもってたけど、こんなにおおきいのだとおもってなかったのよ
だから、とりあえずきったのよ……」
取り敢えず切ったのよ………って烈の周りには誰もいなかったのか?
一生とかいたら、止めただろうに…‥
兵藤は「お前の周りには誰も誰もいなかったのかよ?」と問い掛けた
「かむい、いてくれたのよ」
「一生とか慎一はどうしたのよ?
かなり早い段階で、飛鳥井の家族に被害は行かないだろうって事で、家に戻ってるんじゃねぇのか?」
「それ、しらにゃいのよ
ぼく こんろさんにいたのよ」
「崑崙山、それはどうしてだよ?」
「ほしよみのばばにあってたのよ」
「それは誰よ?」
「ななつやまにいる、ほしよみのばばなのね」
「その時には一生達はいなかったのかよ?」
「そのときはいたのよ
そのあとにね、かえったのよ
ぼくはね、すざくのしごとしをしてたのね
あるていどかたづけて、えんまにあげておいたのよ
あとでかくにんするのよ!」
崑崙山で朱雀の仕事をしてくれていた事に、兵藤は言葉もなかった
神威は烈の話じゃ要点を得ないと想い、詳しく話をした
そしてやはり、この二人は親子なんだと実感した
神威も取り敢えず切ってみるか?で話は一致し切ったと謂うのだ
その場に一生だけでもいたら止めてくれただろうに………
そしたらこんな爆発に遭う事もなかったろうに……
烈の顔は相当酷い爆風だったのか?
軽いのはバンドエイドみたいなテープを貼ってあり、酷い傷はガーゼをあてテープで止めてあった
神威はパジャマを着れない程に上半身は包帯でぐるぐる巻だった
久遠が烈の保険証と神威の保険証を持って来い!
康太と榊原と兵藤の保険証も持って来い!と連絡を慎一に入れて、烈が怪我してる事を知った慎一は一生と共に病室にやって来た
康太と榊原の病室に顔を出すと、康太も榊原も包帯ぐるぐる巻だった
榊原は上半身は包帯ぐるぐる巻でパジャマを着れない様だった
一生と慎一はその悲惨な現状に言葉もなかった
一生は「烈も入院してるって言ってたけど、一緒だったのかよ?」と問い掛けた
「嫌、全然違う、オレはルビアンカ連邦共和国で、烈は千葉だったからな、全く別の場所で同時に大爆発を受けて怪我したんだよ!」
康太の言葉には一生は全く別の場所にいたのに、同時に爆発を受けて怪我したと謂うのか?
と言葉もなかった
取り敢えず康太と榊原の無事を確かめて、烈の病室へ向う
烈達の病室も悲惨な包帯ぐるぐる巻だった
烈は丸くなって寝ていた
その姿は包帯が巻いてあり痛々しかった
烈が寝てるから神威が事の経緯を話した
一生と慎一はニュースで千葉で大規模爆発が起きてたと騒がれていたニュースを今朝見ていた
まさかその千葉に烈がいた事に驚いていた
千葉とルビアンカ連邦共和国とで同時刻、巨大な爆発が起きたとテレビでは大騒ぎになっていた
原因を探る為に半径2キロ先まで規制線が張り巡らされている程の大騒ぎで、無差別テロが倭の国で起きたと騒がれていた
一生と慎一は烈から離れるべきではなかったと後悔した
自分達がいれば、取り敢えずで切ってみる?で切らせたりなどしなかったからだ……
慎一は「志津子さんにお願いして神威さんの保険証は確保しましたので、入院の手続きをして来ました」と話した
「儂も……こんなに酷い爆発に遭うとは思わなんだから……取り敢えず切ってみるか?って言っちまったんだ!」と後悔して言葉にした
一生と慎一は【取り敢えず切ってみるか?】で普通は切らんだろう!と想ったが似たもの親子と謂う事だろう……
多分その場に康太がいたとしても、取り敢えず切ってみるか?と謂うだろう……
だからこそ、こんな短絡的な奴の傍には思慮深い奴が必要だったのに……
悔いても悔いきれない想いを飲み込むしかなかった
慎一は家族達に「康太、伊織、烈、兵藤、神威が入院してます!」とラインした
即座に瑛太から電話が入り慎一は通路から外に出た
『慎一、康太達が入院したのですか?
しかも烈と神威まで……何があったのですか?
話して下さい!』
と言われ、慎一は詳しく話をした
二人は千葉とルビアンカ連邦共和国とで、同時刻に大爆発に遭い怪我と火傷を負った
榊原は妻を、神威は烈を、庇ったから怪我と火傷が酷い事を話した
就業近い事もあり、瑛太は清隆と玲香に連絡して直ぐに病院へとやって来た
康太と榊原の無事を確かめた後、烈の病室へと入り、神威と兵藤へ深々と頭を下げた
傍にいると謂う事はそれだけ危険と背中合わせとなるのだ
康太と烈の為に怪我をした神威と兵藤に申し訳ない想いで一杯になり謝罪するしか出来なかった
神威は「毘沙門天が竜胆を保護してくれた故、連れて参ったら、保護を頼む!
それと東矢は飛鳥井香里奈と謂うおなごの腹から出たが…育児放棄に遭い手が出せない故協力をお願いしたいのです……」と現状を打破すべく飛鳥井家総代に頼み込んだ
瑛太は「出来る限りの事は協力します!資料はありますか?」と了承した事を伝えると、資料は事務所のスタッフに届けさせます!と約束した
最低でも半月は入院が確定してるから、身動き取れない状態なれば、スタッフを総動員するしかないのだ
痛々しい姿で眠る烈に目を向けると瑛太は
「また傷が増えてしまいましたね」と言葉にした
兵藤は「悔しいな傍にいてやれれば、庇ってやれたのに…」と呟いた
清隆は「君も大概な怪我してるので、大人しく寝てるのですよ!」と釘を差した
兵藤は「はい!」と仕方なく言葉にした
動けば痛みに襲われ動けないのだ
仕方がない
榊原は妻を庇った分、怪我はもっと酷いのだ
神威も烈を庇った分酷い怪我を負っている
飛鳥井の家族が還って行くと、榊原の家族が病室にやって来た
心配そうな顔をして見舞いに訪れた
笙は酷い怪我をしている烈を見て、言葉もなかった
少し前の怪我したばかりだと謂うのに……
榊原の家族は康太や榊原、烈、神威、兵藤を心配しつつも還って行った
明日は沢山食べ物を買って来ますから!と約束して還って行った
その夜 寝静まった病室が眩い光に包まれ、兵藤は目を醒ました
すると大天使ガブリエルが烈のベッドの横にいた
想わず「ガブリエル?」と呟くと、ガブリエルは兵藤を目にして
「烈は神の力は在っても本体はないので、深い傷を癒やしに来ました
貴方達も神の力でしか治せぬ怪我は治癒します
でなくば、傷は治りませんからね!」
「烈、大丈夫なのか?」
「烈が切った結界には細工がしてあったのです
結界の破片が奥まで達したら息の根を止めるつもりだったのでしょうね
その破片で怪我したならば、治りはかなり悪くなるので、ルーンで癒やして治癒してます
この次大歳神を癒やして、次は貴方を癒やします」
「大歳神、平気そうな顔してたけど酷いんだな」
「凡人なれば痛みで気を失ってますよ
彼は強固な肉体があればこそ、踏ん張り破片の侵入をある程度防げたのでしょう」
ガブリエルは烈を癒やしの光に包み治癒していた
光の玉子の中に烈を入れると、大歳神を治癒してある程度治癒すると光の玉子の中へ入れた
次は兵藤だった
兵藤の傷も酷くてガブリエルは眉を顰めた
「大歳神もそうですが、熱風の中にも細工がしてあり神が負うであろう部分にダメージを受ける様に細工がしてあったんだと想います」
「めちゃくそ凄え爆発だったからな、耳はシーンっとなり、脳が何が起こったのか理解出来なくてパニックになった……その次は痛みに襲われ時空を切り裂き、この病院に来るしかなかった」
兵藤の治癒が終わり光の玉子の中へ入れると、ガブリエルは炎帝達を治癒して参ります、と告げた
兵藤は神威を見た
「起きてて大丈夫なのかよ?」と問い掛けた
「痛くて眠れぬから仕方あるまいて!
烈は爆発の瞬間 庇って抱き上げたが既にその時点で怪我をさせてしまっておった
顔の怪我は逃げる時についてしまった…
儂もまだまだじゃ!
もっと鍛えねばならぬ未熟者であるな……」
「そんなん鍛えても頭の理解がそれに追い付かねぇよ!
俺だって最初は何が起きたのか解らなかったんだからな!
解ってたら……あんな傷……負わせなかった
それよりも、取り敢えず切ってみる?ってのは今後は止めておけ!
あんたら親子は似すぎなんだよ!」
思考から行動まで良く似た親子だった
「倅は祖父を絶対的な憧れで尊敬していた
だから祖父の所へ行きたいと謂うのを止めなかった………魔界で頼れる者が誰もいぬ世界に身を置き、血で血を争う諍いが起きているなんて知らなかった
儂は孤立して歪まって逝く倅に何もしてやれなんだ
それだけが儂の後悔じゃった……
倅が、人の世に墜ちたと聞いた時、殴っても止めるべきだと後悔した
傍にいられれば………どれだけ悔やんでも……取り返しは着かない
だから儂は傍で見守ると決めたのじゃ……」
大歳神の悔いる想いは深い……
「気付けば手の中からすり抜けて堕ちて逝く……
そんな想いは出来たらしたくはねぇ!
聖の神の苦悩を想えば俺達だって悔いはある!
一番悔いてるのは素戔嗚殿だと想うから我等は何も言わねぇんだよ」
「親父殿は皆から愛されておるのじゃな」
「ソックリなおめぇも魔界では人気者になれる事間違いなしだぜ!」
「それは何か嫌かも……」
兵藤は笑って
「今度からやんちゃな倅を止めるなら、親子で決めるのは止めとけ!
誰か間に立てねぇとおめぇらは似た者親子だから最後は同じ地点に立つからよぉ!」と言った
悔いも後悔も想いも………全て飲み込み明日へ繋げる
そんな想いを抱き夜は更けて行った
ガブリエルは康太と榊原も治癒して光の玉子に入れ神の力を治癒した
ある程度治癒されると、ガブリエルは光の玉子を片付けて天界に還って行った
翌朝 翔 流生 音弥 太陽 大空 レイが烈の病室にやって来た
連れて来たのは玲香と京香だった
兄達は烈の怪我を見て泣いていた
また兄達を心配させたと烈は済まない想いで一杯だった
烈を心配して康太と榊原の見舞いをして、兄達は学校へ、レイは託児所に連れられて行った
烈は「りんろー どうなったにょ?あと、とーやは?」と問い掛けた
神威は「竜胆は毘沙門天に託した、東矢は事務所のヤツに託した!今は儂も満身創痍だからな、悪い烈!」と言葉にした
お互い満身創痍なのだ!
動けないのは解っていた
「ぼくのけーたいは?」
「爆風で飛ばされた、多分溶けて原型留めてねぇかもな」
ガーンと連絡手段のない烈は言葉を失っていた
兵藤も「俺も爆風で携帯飛んで行ってたな、今頃は溶けて跡形もねぇんだろうな……」と思い出し呟いた
その頃、康太も「オレの携帯!」と思い出し言った
榊原が「爆風で飛ばされた時にポケットの中のモノも飛ばされましたからね…溶けて跡形もありませんよ!
一度解約して新しくしましょうか?」と提案した
「だな、烈の携帯もその時作ってやれよ!
アイツも爆風で飛ばされて携帯なくしてるからな」
「ほぼ同時刻に爆発したのですか?」
「ほぼ、同時刻だな
オレも烈も衝戟に備えて踏ん張っていたからな
まさか爆風で吹っ飛ばされるなんて想ってもいなかった
まぁ烈の場合は取り敢えず切った結果だからな、仕方がねぇわな」
「あの親子は似た者親子ですからね
今度からは誰か間に入れて貰わねば、取り敢えず切ってみる?で頷く親子は危険です!」
榊原の言葉に康太は爆笑して痛みに襲われ蹲った
「笑わせるな伊織」
「別に笑わせてはいません!
現実を口にしただけです!」
「でもよぉ伊織、あの場に誰か入れるにしても叔父貴だと、同じ様に頷くだろうから危険だぜ!」
想わず脳裏に【取り敢えず切ってみるか?】で頷く3人の姿を想像して、榊原は笑いを止められなくて、痛みに襲われ蹲った
「康太……痛いです……」
「取り敢えずアイツ等の話は禁止だな」
榊原はうんうん!と頷いた
その日は見舞客がわんさか訪れた
慎一が烈が学校を休む事を連絡すると病院に担任の長瀬と学園長の神楽と副校長に昇格した佐野が見舞いにやって来た
隣の病室に康太と榊原が入院してると聞くと、やはり皆、一緒にいたのかと聞かれる
説明の必要のなさそうな人には何も言わず、説明が必要な人には詳細を話した
長瀬は額にピキッと青筋を立て
「退院したばかりで一ヶ月も消えてて、今度はまた入院とは!」と怒っていた
「ごめんね、せんせー」
「額の怪我、治ってなかったよね?」
なのに再び怪我したと謂うのか?
今度は怪我をもっと増やして火傷までプラスして!
長瀬は「早く治しなさい!そしてこれからは休まず登校しない!でないと落第させますからね!」とニコッと嗤って言った
怖くてチビりそうになり
「はい!わかりまちた!」と約束した
神楽は「長瀬……」と止めようとしたが、怖くて止められなかった
「また見舞いに来ます!」と言い三人は康太達の病室へと向かった
その後に東都日報の今枝が見舞いにやって来た
「烈君、日程まで立てて知らせに行ったのに、飛鳥井の家は無人で焦りました
そして逢いに来てみればこんな怪我をされて……」
と、少し恨み言が入って謂われれば、烈は困った顔しか出来なかった
「ごめんね、いまえら……」
「悪いと想うならその姿を撮らせて下さい」
包帯と絆創膏だらけの顔で良いのか?
と烈は想った
「烈君は千葉のあの大爆発の現場近くを通ってて被害に遭われたとか?」
「……けっかいきったら、だいばくはつしたのよ
ばくはつするとは、わかってたのね
でも、あんなにおおきいのだとは、わからなかったのよ」
今枝は言葉もなかった
「あの大爆発を起こしたのは貴方だと謂うのですか?」
「そうなのよ、あ!でもいったらつかまっちゃうの?ぼく?」
「君の様な子供がアレをやったのはボクです!と謂っても誰も信じませんよ!
俺は十分信じますけどね!
でもあの近くを通った瞬間 被害に遭ったと謂う事にしておきましょう!」
「そうだね、で、いつとるの?
ぼくねいま、からだがよわってて、そーえもんでないのよ」
「何時なら出ます?」
「わからにゃいのよ
でるだけのたいりょくないと、でられにゃいのよ」
「ならば今は怪我を治して下さい!
今の怪我は撮影しても大丈夫ですか?」
「かまわにゃいのよ」
今枝は烈の姿を数枚カメラで収めた
そして「少し治ったらラインして下さい」と謂うと烈は「けーたい、ねっぷうでふきとんでいったのよ!」と事情を話した
今枝は何と言っていいか……言葉を失った
「らから、だれかにたのむからね」
「はい、待ってます!」
そう言い今枝は還って行った
「ちかれたにゃー」と言い烈は丸くなり眠りに落ちた
神威も兵藤も烈の寝息を聞いてるうちに眠っていた
兵藤の母 美緒が病室を訪れたのは昼を少し過ぎた頃だった
「皆 寝ておるわ、昭一郎」
と謂うと兵藤の父 昭一郎が大きな荷物を手にしてやって来た
「烈も寝てますか?美緒」
「寝ておるな!」
「烈はカニパン好きと聞いたので買って来たのですが……」と残念そうに呟くと、烈がガバッと目を開け
「かにぱん!」と叫んだ
美緒は笑顔で「おぉっ!烈大丈夫かえ?」と問い掛けた
「みおたん、だいじょうびよ!」
「こんな怪我をして……」と美緒は烈の頭を撫でた
そこへ竜馬が烈が入院したと聞きやって来た
「烈!怪我したって慎一さんに聞いたんだけど!」と慌てて病室に入って来ると、美緒と昭一郎の存在に、来客中だと知り姿勢を正して立ち止まった
美緒は竜馬の顔を凝視していた
そして「五代雪乃……」と呟いた
烈は「りゅーま」と名を呼ぶと、竜馬は烈の傍に行きベッドの横に立った
「みおたん、りゅーまだよ
りゅーま じこしょーかい!」
烈に言われて竜馬は姿勢を正すと「三木竜馬です!以後お見知り置きを!」と言いペコッと挨拶した
「三木?繁雄の子か?
我は繁雄の子は全員知っておるが、この子は知らぬ!」
烈は竜馬の事を美緒に説明した
「りゅーまは、ずっとじぶんはは よぉーしだとおもっていたのね
でね、おやとはきやまりをとってたのよ
ししゅんきをむかえるときには、しんがんが、りゅーまのきしつをよみ、りゅうがさき さいおうにあずけてきょういくしたのよ
りゅーまは、ていおうがく せいじがくをたたきこまれ、おっくすふぉーどだいがくをさんねんで、がくいと しゅうしかていをとらせてそつぎょうさせたのよ
それでね、きこくしたのが、さんねんまえなのよ
だから、りゅーまのことしてしらないひとおおいのね
でね、さんねんまえに、りゅーまとあったのよ
めちゃくそなまいきでね、さんびょうでとびげりいれたのよ」
あまりな言葉に美緒は、何と言って良いのやら解らなくなっていた
竜馬は「烈と出逢って3秒で蹴り飛ばされ鼻っ柱を折られて以来、烈と共に過ごしています
先日、烈が顔見世をしたので、表に出て共に行動する事が許されました!」と嬉しそうに言った
表に出て、と謂う事はそれまでは姿を隠して過ごしていたと謂う訳なのだ
それでは美緒が知らずとも仕方がないと想った
美緒は「三木敦夫が生涯掛けて愛した存在 五代雪乃の姿形を受け継いだのは竜馬一人と謂う事か……そりゃ何の説明もされねば養子だと悩むのも当たり前じゃな」と納得した
「りゅーまはね、りゅうのうまとかかせて、りゅーま とよばせるにょよ!」
「なれば敦夫は我が孫に従兄弟の願いを託したのであるな!」
と感極まってハンカチで目頭を押さえて
竜馬はあまりにも詳しく話す美緒の姿に
「烈、誰なのですか?」と尋ねた
「もとは、みきのいちぞくのもの!
そして、みきあつおのせいさくひしょをしていたもの!
みおは、たまものきみによくにた、べっぴんさんなのよ!
いまは、ひょーろーきゅんのははうえなのよ!」
「え?貴史君のお母様?めちくちゃ若い!
嘘………こんな大きい子がいるお母さんに見えないです」
竜馬はしんじられない想いで呟いた
美緒は嬉しくなり竜馬の頭を撫でた
「お主は三木の器には収まらぬ子なのだな
謂われてみれば、お主は枠など必要とはせぬ大きさがあるのじゃな……」
と言った
昭一郎は烈にカニパンの封を破いて差し出すと、烈はカニパンを美味しそうに食べ始めた
モヨモヨと美味しそうに食べる
兵藤は母に「俺にも何かくれよ!美緒」と言った
昭一郎がカニパンを差し出すと「俺は烈じゃねぇよ!」と言いつつも、カニパンを食べ始めた
昭一郎は冗談のつもりだったが………カニパンを食べるとは想ってもいなかった
美緒は烈と我が息子との間に寝てる男に声を掛けた
「神威殿も怪我をされたのか?」
「はい、烈を庇い怪我をしました
美緒さんこそ……こんな所で逢うとは奇遇です!」
神威が答えると兵藤は「知り合いなのか?」と問い掛けた
「知り合いも何も、我の会社の顧問弁護士であるからな!
彼が志津子の弟だと紹介された時は、志津子が一人っ子じゃなかった事に驚いたわ」
烈は「かむいには、いもうともおとうといるのよ!」と言った
「志津子に聞いてビックリしたわいな!」
「おとーとはね、はいゆうの こうがみ えいじなのよ!しってる? 」と問い掛けた
「え!!武士の本鰹に出てた俳優ではないか!
志津子には何も聞いてはおらぬ!」
と地団駄踏みそうな勢いで悔しがった
神威は「今度……弟からサインを貰って来ます」と約束した
美緒は嬉しそうに笑って「それは嬉しいわいな」と言った
昭一郎は付き添いの慎一に、3人分のお土産のフルーツや烈のカニパンを託して、康太と榊原の部屋へもお見舞いに向かった
あまにも悲惨な怪我に美緒と昭一郎は言葉もなく
聡一郎にお土産のフルーツとプリンを託して還って行った
夜には安曇や堂嶋が康太と榊原、兵藤が入院したと聞き見舞いにやって来た
病室に入って兵藤がいなくて「貴史は一緒ではないのですか?」と尋ねた
榊原が「貴史は烈と同じ病室なんです」と答えた
堂嶋は眉を顰め「烈?…‥何故、あのお子様が?
また何かあったのか?」と心配して問い掛けた
康太は烈は千葉で、ルビアンカ連邦共和国にいる康太達と同時刻に爆発に遭い入院してるとに告げた
安曇達 政治家の耳にも千葉の爆発の事件は耳に入っていた
テロの可能席も視野に入れて規制線を引かせて、爆発物の残骸を探している
それに烈が関わっていたと謂うのか‥‥
言葉もなかった
怪我に触るからと、その日は早めに見舞いを切り上げて、烈の病室へと向かった
烈の病室には三木繁雄と竜馬が来ていた
堂嶋は三木に「烈のお見舞いか?」と声を掛けた
三木は「それもありますが、少し手を回して飛鳥井に入れねばならぬ子がいるので、神威殿を尋ねて来たのです!」と言った
「手を回して飛鳥井に入れねばならぬ子……ですか?
それは誰なのですか?」
堂嶋が問い掛けると烈が
「それはいえにゃい!」と言った
三木は「そう言う事ですので!」と言い、神威と詳細を詰めて打ち合わせしていた
安曇は「烈、大丈夫なのですか?」と問い掛けた
「いたいけどね、らいじょうびよ!」
「どうして……こんな怪我を……」
「ごめんね、かつや……ばくはつさせるきはなかったのよ…
みんないそがしかったから……そうだんできなくて、けっかいきっちゃったの
そしたらばくはつして……まきこんじゃったひといたのね……」
安曇は烈の頭を撫で
「皆 忙しかった時だったから誰にも話せなくて心細かったでしょう?
着歴あったのに、出られなくてすみませんでしたね烈」と謝った
「ひなんさせられたら、たすかったひといたのよね……」
「気にしなくても大丈夫です
誰も死んではいません!
原因不明の大爆発として処理されました
君が気に病む事はありません
ですが、話してくれませんか?
何故君はあの場所にいたのか?」
烈は一族の者が土蔵に囚われていた事
その土蔵には結界が張ってあり、細工はあると想ったが、早く一族の者を助けたくて結界を切った事
そしたら爆発して熱風に吹き飛ばされ瓦礫や硝子で怪我した事
全部話した
そしてそれら全部、康太が追っていた者がしてきた嫌がらせだと話した
嫌がらせにしては度が過ぎている
切らねばな入れぬ結界に細工して、切れば大爆発を引き起こす様に細工をする
ルビアンカ連邦共和国で炎帝が魔女を串刺しにした瞬間 大爆発が起こったと聞いた
まるで同じだと安曇も堂嶋も想った
堂嶋は「話してくれねぇか?俺の力が役に立つなら、力貸してぇんだ!」と言った
烈は「せーぎにたのむのらめって……かあしゃんいうから……」と答えた
「康太には俺から言っておく!
だから話せ!全部話せ!」
と言うと、神威が育児放棄にあった子がいて、飛鳥井に入れねば1000年続く果てが狂うのに、行政命令が出て近付けない事
竜胆は嫌がらせの為だけに囚われていたから戸籍がどうなっているか?解らない事などを全部話した
堂嶋は三木と顔を見合わせて
「今 養護施設に入ってるんだよな?」と言うと
「なら話はしやすいかも知れないな」と続けた
そして「竜胆は、戸籍がないとは?」と問い掛けた
戸籍がない者など存在して良い訳がないからだ!
神威が「事務所総出で聞き回っても何も出て来なかったのです
土蔵に閉じ込められた竜胆の転生者の戸籍が全く解らないのです!」と説明した
安曇は「ひょっとして、それも炎帝に対して嫌がらせをしたい者の仕業とかですか?」と問い掛けた
「それは解りません
ですが魔界は魂の管理委員会なる者の悪意で、転生に手を加えられた!
飛鳥井の礎になるべき子、竜胆、耀、東矢、レイ、彼等は過酷な日常を送らねばならぬ親元に下ろされ殺されかけた
歪んでおったのじゃ!
手が加えられ、歪ませられておった
儂と烈と炎帝達とで魔界に行ってぶっ潰したが、アレは傀儡と言っても過言ではない存在が、魂を好き勝手に管理しておった現実しかなかった!
何故あんな機関がのさばり権力を付けていたのか?腹が立って仕方がなかった出来事であった」
と吐き捨てた
安曇は「申し訳ないが、貴方は……誰なのか?名乗って戴けませんか?」と問い質した
「飛鳥井神威、飛鳥井の一族の者です」
「そうではなくて、魔界にそうそう行ける者はいませんから……」
「儂は倭の国の豊穣を司る神 大歳神と申す者じゃ!
素戔嗚尊を父に持つので、魔界に行ったとしても不思議ではあるまいて!」
「神であられましたか……」
「今は人の子で飛鳥井神威と申す者です
弁護士を生業にしております!
以後お見知り置きを!
で、竜胆だが、戸籍をなんとかせぬと、烈が詠み繋げた1000年続く飛鳥井の果てが狂うしかないのです!」
と説明した
堂嶋は烈に「烈、それは協力出来るかも知れねぇぞ!」と言葉にした
烈は泣きそうな顔して「それ、ほんとうにゃにょ?」と問い掛けた
「お前が築く果てが狂わねぇ様に俺達も手伝う!
だから無理するな、良いな」
烈は何度も何度も頷いた
安曇は「ならば、直ぐに動いてやってくれぬか?」と堂嶋と三木に言った
堂嶋は「神威さん、貴殿の事務所と連携は取れますか?」と問い掛けた
「はい、此処に連絡して下さればスタッフが対応出来ます!」
と言い机の引き出しから事務所のスタッフの名刺を取り出し渡した
安曇と堂嶋と三木が還って行くと、竜馬も還って行った
誰もいなくなると、毘沙門天が姿を現した
「大歳神、おめぇさ、あの土蔵に二人いるの解っていたのか?」と単刀直入に問い掛けた
「あぁ……たが、一人は要るがもう一人は要らぬとは謂う事は出来なかった…だから二人助けた」
烈は理解不能で、何を言われているか?解らなかった
「りんろー ふえてたの?」
細胞を分離してもう一人増やしたのか?
と、烈は想った
毘沙門天は「竜胆が増えてたんじゃねぇ!もう一人いたって事を言ってるんだよ!」と怒ってた吐き出した
「どこの、だれ?
ふえてるって、なんで?」
理解不能で、烈はう〜ん……う〜ん……と唸りだした
そしてバタッと倒れると熱を出して寝込んだ
看護師が体温を測りに来て、熱が上がっているのを確かめると、氷嚢を持って来て烈を冷やした
そして久遠を呼び出して、熱が上がっている事を伝えた
久遠は「何かされたか?」と毘沙門天を目にして問い掛けた
毘沙門天は「烈の探していた子が蓋を開けたら二人いたと伝えたら……唸ってぶっ倒れた」と伝えた
「それは倒れるわ!
暫く烈を安静にさせろ!解ったな!」
と釘を差して処置をすると病室から出て行った
その日烈は目覚める事はなかった
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