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第87話 増えたら困るのよ①

烈の熱は中々下がらなくて、一人用の個室に移された 神威は仕方なく毘沙門天が保護した子を事務所のスタップに預けた その日から烈の面会は出来なくなった その話を康太と榊原が聞いたのは、翌日だった 神威が毘沙門天に頼んで炎帝に現状を話してくれ!と頼まれて毘沙門天が康太と榊原の病室へと向かった 毘沙門天は康太の顔を見るなり「すまなった!」と深々と頭を下げ謝罪した 康太は「全部話してくれ!」と言った あの日、烈が とりあえずきってみりゅ?と言い結界を切った日 爆発が起きて神威も烈も爆風に煽られ飛ばされた 大歳神は根を操り地底から竜胆を助ける為に触手を伸ばして土蔵の中の人間を助け、熱風で怪我をしない様に地底に潜り込ませ、遠くへ飛ばした 毘沙門天は大歳神に謂われた場所へと竜胆を引き取りに行った そしたら………子供は二人いて、どっちが竜胆か解ったが、違う方を捨てて置けれず連れ帰ったと伝えた その話を烈に話したら、急に唸り出して熱を出して倒れた、と全容を話した 榊原はそんな話を聞かされたら熱を出して当たり前だと想った 榊原は康太の顔を見て「どうします?飛鳥井でレイ、東矢に続き竜胆ともう一人は無理ですよ?」と言葉にした 竜胆だって無理だから清四郎に託そうと想った程だ 「逢ってみねぇと何とも言えねぇな……何らかの意図があったから、その子も囚われていたんだろうからな……」と言った 「東矢とレイは烈が連れ歩くのですか?」 「レイはまずは人の世に慣れねぇとならねぇからな、連れ歩くだろ? 東矢は家族の愛を知らなかった子だから、飛鳥井家で育て教えるのが得策だと想った 竜胆は菩提寺で育てれば良いとオレは想う だから一人増えても菩提寺に行かせれば大丈夫だろ? それか一族の者に成人まで託す事も出来る オレが樋口陵介や他の者を一族の者に託して育てさせた様に、もう一人の子を一族の者に託して育てさせるのも可能だ 何とでもなるんだよ、増えちまえば! だが親がいたら別の話になるからな 他人の子をどうこう出来ねぇから、烈は熱を出したんだろ?」 「僕が言ってるのはそうじゃありません…… 東矢……会社に連れて歩くなら榮倉は東矢を目にしますよ? 今の名前は知りませんが…目にすれば彼女は解りますよ?」 「烈は何度も榮倉に逢ってるから、榮倉が誰を愛していたか………は理解している もし逢えば……と思った日もある だが榮倉ならば、それを許すと判断したんだろ? オレがレイを隠して育てようとした様に、東矢を隠して育てるのか?と言われたら……お前はどう答える?伊織」 「……っ!!痛い所を突いて来ますか?」 「それは仕方ねぇよ 烈の眼は特別製だかんな……オレ程じゃなくても、視えちまうんだから仕方ねぇだろ?」 「君は何時もそう言いますね? 聖神の瞳はそんなに特別製なのですか? それは創造神が与えたとか?謂う話ですか?」 「烈が何故あんなに母親に逆らってまでレイを表に出そうとしたか、解るか伊織 オレは隠して育てるつもりだった 一族の者に頼んで育てさせるつもりだった だか烈はそれよりも先に手を打ち、表に引き摺り出した それはな伊織、レイがニヴルヘイムだったからなんだよ」 「え?………烈はそれを星詠みで知ったのですか? 君とは魂を結んでるのに、烈に関しては解らない事が多いです」 「烈は……いや、聖神は祖父に憧れて魔界へやって来た神だった? 優しくて優秀で一族の中でも一、二を争う実力者だった だが、そんな優れ者だったから仲間外れにされ居場所がなかったんだよ だから何時も聖神は世界樹の樹の下に行き、涙を拭っていた そんな時、世界樹に話し掛けられた その日から、聖神は世界樹の樹の下に行き、樹と話をする日々を送った 世界樹の樹の下は安らげる場所だった そんな時 聖神に唯一人愛した人が出来た 心許せる人がいた……永遠を誓う人がいた 聖神はそれだけで生きていけると世界樹に報告して、樹も喜んで祝福した なのに、無理やり引き裂かれ、愛した人は他の神の妻となった その日からは、復讐に燃えて聖神は世界樹の樹の下に逝かなくなった そしておまえも知ってる復讐を遂げようとした だが失敗して裁きが下った 人の世に堕ちると決まった晩 聖神は世界樹の樹の下に行ったんだよ、お別れを言う為に……… その時ニヴルヘイムは聖神に眼を渡した 聖神はニヴルヘイムに眼を貰ったんだよ 苦しい時 辛い時 死にたい程に苦渋を飲んだ日 聖神を支えたのはニヴルヘイムなんだよ だから烈は何としてもレイを探して、傍で育てると決めていたんだ」 榊原は全く知らない話だった 憎悪に燃える暗い瞳をしていた聖神しか知らなかった まさか宗右衛門が聖神だったなんて、知ったのは今世だった 「哀しい話ですね……僕が聖神を見た時、彼は憎悪に燃える暗い瞳をしていた 僕が知る聖神はそれだけです……彼が不幸でなくて良かった…今はそう思えます」 「だからな、一人や二人増えても飛鳥井は困らねぇんだよ 烈にそれを教えてやりてぇのにな……」 「僕達は満身創痍で動けませんからね」 榊原はそう言い、病室にいた一生を見た 康太も「そうだよな、オレ等は満身創痍だもんな!」と言い一生を見た 一生は「解った!烈の病室へ行き話してくるよ!」と言い病室を出て行った 一生は康太の話を聞いて、烈が何故あんなに強固に強引な遣り方でレイを飛鳥井の家に入れたのか?そしてレイを大切にするかを知った 聖神の唯一無二の想いだったんだろう…… 一生は烈の病室を尋ねた 静かな部屋に烈は寝ていた 熱は下がり、元の病室にあと少しで戻せると聞いた 一生は烈の髪を撫でた すると烈は「かじゅ?」と名を呼んだ 「大丈夫か?熱は下がったな」 「ぎょめん……しんぱいかけたにょ!」 「康太が一人や二人、増えても大丈夫だって、伝えてくれって謂われたから来たんだよ」と伝えた 「にゃんでふえるかにゃぁ…… ひとりふえて、ふたりふえて、さんにんふえてしたら……どうしようっておもったら、ねつでたにゃよ」 「それは考え過ぎだ烈 そんなに増えたら俺らの体は持たねぇだろ?」 「そーにゃのよ!」 「大丈夫だ!烈 おめぇの母ちゃんはそんなに軟じゃねぇし、飛鳥井の家族も軟じゃねぇ!」 「かじゅ……」 「なんだ?」 「ぼくは……つみをつくったのね よくわかってるにょよ! れいをひょーろーきゅんにあわせたくにゃい……っておもったよね」 「…っ……少しは想ったな 何の知らせもなく突然……だったからな でも俺等はレイを軽視などしてない! レイはレイの生きる場所が在る! 最初はアイツ……自分そっくりのレイ見たらどうするかな?と心配はした! だがそれがレイを蔑ろにして良い理由になんかなりはしないって解ってる 榮倉だって、きっと解ってる 今は幸せだって笑ってみせるさ榮倉ならば!」 「かじゅ……」 「定めだ烈! お前が宗右衛門にしかなれねぇように! アイツ等は飛鳥井の礎に組み込まれた1000年続く果てを刻まねぇとならねぇんだろ? ならば愛して育てて逝かねぇとな!」 「ありがとう……かじゅ!」 「今後は何かする時とか、考え込む前に俺等に話せよ! お前一人で抱え込むな!」 烈はうん!と頷いた 一生は烈の酷くなった額に目をやり、痛々しくてつい……言葉にした 怪我が治りきらないのに魔界に行き悪化させ、今度は瓦礫や硝子と熱風で更に酷い状態になっているからだ 「しかし、その額の傷……痕が遺りそうだな あんまし酷いなら後で手術して消した方が良いかもな 恋人が出来た時とか、気になるだろうし消してもらう方向で話しといた方が良いか?」 「らいじょうびよ!かじゅ ぼくはえいえんに、ひとはあいさないから……」 烈の口からそんな言葉が出て来るなんて…… 一生には理解出来なくて 「烈…今決めねぇでも大丈夫だ! そのうち好きな人とか出来る筈だ」と慰める言葉しか出て来なかった 「ぼくはみらいえごうひとりでいいにょ!」 「烈……」 「ぜんせも、じゅっとひとりらった こんごも、じゅっとひとりらから!」 「そんな哀しい事を言うなよ烈」 「かじゅきめたことらから……」 そう言われてしまえば、何も言えない 一生は言葉なく烈の病室を後にした 哀しくて哀しくて一生は堪らなかった 未来永劫一人でいいなんて言わないでくれ…… そう想った そう想ったら涙が止まらなかった 烈の病室に行ったまま戻らぬ一生を探しに来た慎一は、一生が泣く姿を見て、康太の病室へと連れ帰った 一生は烈の哀しい想いを話した 「未来永劫一人でいいなんて……謂われたら何も言えなかった」 康太は「宗右衛門は何時の世も独身だった」と話した 「ずっと……誰とも添い遂げなかったのか? 転生して……ずっと一人だったのか?」 「そうだ!幾度転生しても宗右衛門は誰も娶らなかった……アイツは妻と子を苦しめた贖罪を一人で背負い、誰も愛さねぇと決めたんだ オレは誰かを愛して哀しい人生は終わらせたくないと想ってるし、そう訴えた事もある だけど、アイツは頑固で聞き届ける事はなかった」 「俺は絶対にアイツを結婚させてやる! 今世も来世魔界に還っても! 魔界に還れば建御雷神辺りに話を振って大きくさせれば嫌でも見合いとかしねぇとならなくしてやる! 一人でいいなんて……謂わせねぇよ!」 一生は泣きながら、そう言った 康太は笑って何も謂わなかった 入院して一週間経つと少しは体力も着いてきて、宗右衛門を出せる様になって来た 烈が一人の個室の間に、今枝がやって来た 慎一に頼んで呼んで貰ったのだ 撮影の機材を持って来てくれ!と頼んでもらった 撮影は病室でやるしかないと判断し来てもらったのだった 今枝は撮影の機材を持って一人でやって来た 病室に顔を出した今枝はまだ生々しく痛々しい傷が遺る烈の姿を目にして 「まだ治ってませんね、大丈夫なんですか?」と尋ねた 「そーえもん でるから、だいしょぶよ」 そう言う事ではないんだけど……と今枝は苦笑した 烈は宗右衛門に変わると 「それでは始めようとするかのぉ!」と言った 今枝はカメラを回して撮影を始めた 質問形式でそれに答えてもらう、そんな感じの撮影だった 【貴方は誰なのか?詳しくお話下さい!】 「儂は飛鳥井宗右衛門、斯波の時代から続く転生者じゃから初代からの名で宗右衛門と呼ばれておる! 幾度転生しようとも、宗右衛門の役割は在る為転生を続けておる者じゃ!」 【貴方の飛鳥井の家での役割をお話下さい】 「儂は飛鳥井の一族の秩序や統制を図る者! 儂が決めた理りは誰にも覆しは出来ぬ! 秩序と統制を図るは宗右衛門が務め! その為に儂は今世も此処におるのじゃ!」 【酷い怪我を負われていますね? この前も理不尽な怪我をされた あの時貴方はどう思いましたか? 貴方の想いをお話下さい】 「何時の世も人と違った者を目にすれば、人は騒ぎ出す! 昔はもっと酷い扱いをされ人として扱われなかった 石をぶつけられたり、罵られたりなんて日常茶飯時じゃった 時代が進むと二重人格者と異端な扱いをされたりもした 学友は儂をジキルとハイドと呼び敬遠した 幾度転生しようとも、楽な世界ではなかった だが儂はそれは当たり前じゃと想う だから怪我をしても誰も恨みなどせぬ! そして何も想いなどせぬ! 仕方がない事じゃからな………」 【今回もまた酷い怪我をされている それは何故なのですか?】 「儂は今 明日の飛鳥井を築く為に動いておる あの日は一族の者が、あの傍におるとの話を聞いたから向かっておったのじゃ! そしたらあの爆発じゃったから、儂はまだ、一族の者を見ておらぬ こんな怪我を負って……動けぬからな…‥見ておらぬのじゃ! そしてこんな怪我を負ったから烈は学校へは行けてはおら………」 【こんな怪我をしてまで…まだ貴方は一族の為に、動くのですか?】 「それが儂が転生した意味であるからな 例えこの命潰えようとも完遂させると決めておる! 楽な道じゃないのは承知じゃ! 怪我をしようとも! この命盗られようとも! 儂は明日の飛鳥井の礎となり消えると決めておる! それが儂の定めだからな!」 【貴方の今の想いを……お聞かせ下さい】 「烈はまだ初等科に上がったばかりの子供じゃ! だが転生者故に険しい道を逝かねばならぬ 本当ならも少し大きくなって行えれば良かった じゃが時は待ってはくれぬ故、動かねばならなくなってしまった 動けば止まらぬ定めの果てへと逝く どれだけ怪我をしようとも、命がある限りは果てへと逝くしかない 本当なら学業を優先すべきじゃった 烈はまだ子供じゃ、子供として生きる時間を奪って、やらねばならぬ…… それだけが……悔しくて堪らぬ それでも烈は儂として生きておる 飛鳥井宗右衛門の転生者として生きておる! 飛鳥井が明日へと続く為に果てを紡いで生きて逝く そんな烈に罪が在ると申すのか? と、儂は問い質したい だから取材を受けたのじゃ! それが儂の想いと烈の想いじゃ!」 今枝はあまりに重い言葉に質問を出せずにいた 沈黙が続く 【最後に何か申される事はありますか?】 「何時の世も飛鳥井は目の敵にされる 真贋がおるから楽勝の様に想われておる そんな筈有る訳なかろうが!と儂は言いたい 真贋だとて血反吐を吐いて明日へと繋げておるのじゃ! 儂はまだ、真贋の様に矢面に立ってはおらぬ! それは真贋が飛鳥井の総てを背負って立たれておるからじゃ! 儂と真贋は何時の世もワンセットで転生して参った 真贋が表を、儂が裏を、護って今世も生を受けた だから、それだけの仕事はせねばならぬのじゃ! 儂からはそれだけじゃ!」 【今日は本当にありがとうございました! 俺は貴方を子供の時から知っています 子供の癖にやけに貫禄と威厳を備えている子だな と想って来ました それもその筈ですね 貴方はその時も今も、飛鳥井の果てを背負っていたのですから…… 今後も貴方を追わせて下さい】 烈はニコッと笑って頷いた その顔は宗右衛門ではなく、烈の笑顔だった 【烈君 君から何かありますか?】 「ながしぇせんせー けがはまだかかります! らから、たいりょうのしゅくだいとかだいは、かんべんしてくらさい! ばぁしゃん、じぃしゃん、ばぁたん、じぃたん ごめんね、けがばっかして なかせてごめんね れもだいすきだから! かあしゃん とうしゃん にーにたち だいすきよ! えーちゃん きょーか しんぱいさせてぎょめんね、れもだいすきだから! ひょーろーきゅん、かじゅ、そーちゃん、しんいちくん、はやちょ!りゅーま、だいすきだから! ぼくからはこれだけです!」 ニコッと笑って終わりを告げる 今枝は撮影を終わらせた 「烈君、この撮影は今から編集して明日の夜6時の特番で流します!それで良いですか?」 「はい!いいです」 では失礼します!と言い今枝は還って行った 撮影が終わると久遠が「二人部屋に戻すぜ!」と言った 「ひとりへったにょ?」 「あぁ、兵藤貴史が退院した」 「ひょーろーきゅん たいいんしたのね」 「神威も後少しだ! お前の両親も父さん以外は退院して良いレベルだ!」 「ぼくは?」 「お前はまだ掛かるな 火傷、中々治りが悪いし、治癒力低いのか傷が開きそうだからな、もう少し入院しておけ!」 「ぼくはね、ばぁたんのおなかにいるとき、いちどしんだのよ それでふたたびてんせいしたのね だから、ばぁたんのふたんがおおきかったのよ そのえいきょうにゃのかな? きずがなかなか なおらないのよ」 「それはまたコアな話をするな そう言えば何年か前真矢さんは一度子宮外妊娠をしたな… お前はその時の記憶があるのか?」 「あるのね、でもねそんなにいきられなかったから……いまはね、うれしいのね」 久遠は転生者と謂うのは、生を成した時からの記憶を持つ者だと聞いてはいたが、何処か絵空事の様に想っていた 久遠は烈の頭を撫でると、二人部屋へと移した 病室に行くと兵藤は退院して、神威もあんなに酷かったのに退院は近いと言われているらしい 大きな怪我さえ治れば後は時間に任せて、通院しつつ治療するしかないのだ 兵藤の怪我は酷かったが、空に飛んでた分比較的に治療は早く、通院レベルになったから退院したのだ 康太はもう退院しても大丈夫な程に治っているが、榊原がまだ火傷の治療が残っていて入院していた 来週中には退院しても大丈夫そうと聞き、烈はまた一人で入院生活か………と想っていた 翌日 夜の6時のニュースの時間枠で、烈のインタビューが流れると飛鳥井の家族や兵藤は慎一から伝えられた 兵藤は飛鳥井の家で家族と皆で、そのインタビューを見る為に飛鳥井に来ていた 榊原の家族も飛鳥井の家に集まり、そのニュースを一緒に見ると決めていた そして家族を集めて見ていた夜6時から始まるニュース ニュースキャスターは特番を告げた 「今日は先の記者会見で話題を集めた飛鳥井烈さんのインタビューを流します 何故彼はインタビューに応えたのか? それを見た後、我等は答えを出さねばなりません そんな想いで私も見させて貰いました それでは、飛鳥井烈さんのインタビューをどうぞ!」 そして流れるインタビュー 質問形式で返答するインタビューとなっていた 今枝が質問すると宗右衛門は答えていた そして最後は烈が家族に大好きだと言うと、家族は目頭を押さえて泣いていた その映像は康太と榊原もPCの画面で見ていた 付き添っている慎一や一生も、そのニュースを見ていた 宗右衛門のインタビューが終わると烈の言葉で答えた 烈の担任の長瀬は相当宿題と課題を与えのだろう··可哀想になった そして烈は飛鳥井の祖父母、榊原の祖父母達に心配掛けた事を詫び、大好きだと言った そして父と母と兄達が好きだと言った 瑛太と京香にも心配をかけた詫びと大好きだよの言葉 兵藤や一生や聡一郎、隼人、慎一に大好きだと言ってくれた 玲香や清隆は涙を流していた 真矢は耐えきれず清四郎と抱き合い泣いていた 京香は静かに泣いていて、瑛太が涙を拭った 兵藤も烈の想いが痛くて、レイを膝の上に乗せて撫でると涙を拭った 翔、流生、音弥、太陽、大空の、にーに達は烈を想い抱き締めてあげたくなった 会いに行こう! そして抱き締めてやろう!と、想った 病室で時を同じくしてニュースを見ていた一生や聡一郎、隼人、慎一も烈の思いが嬉しくて泣いていた 聡一郎と隼人は前日に一生から烈が未来永劫一人でいいと言った話を聞き、泣いていたから余計泣けて泣けて仕方がなかった 康太と榊原も我が子の想いが嬉しくもあり哀しかった その日 インタビューを見た家族達は烈の病室へ見舞いに行った 烈は家族や兄達に抱き締められニコニコ笑っていた その顔はめちゃくそ幸せそうだった 烈のインタビューは物凄い反響を呼んだ まだ6歳の子が背負っていい人生の重荷ではない …………と、インタビューを見た者は想った事だろう 家の為に、生きる そんな人間が理解できない者達からは、そんな家出れば良いのに!家に縛り付けられているとか何時代なんだよ!   とテレビ局側への書き込みは凄かった だが威風堂々とした烈の姿に、真矢と共演した時の儚さや脆さはなく、覚悟を決めた姿に胸を打たれ応援してます!とのメッセージが大量に届いた 母親世代からも応援してるから!と大量にメッセージが届けられた 団塊の世代は家の為に生きている烈の姿に、今も尚続けられ繋がれて逝く理りと時代と共に受け継がれる仕来りと家の重責を感じていた 昔はそうして受け継がれて来たモノだった それが何時しか個別な世帯が増えて、親や祖父母達との同居はなくなり絆を薄めて行った 懐かしくもあり、厳しかった時代を垣間見た気分だった そして皆が定めを持って生きている烈は、何も悪い事なんてしていない なのに大人の様に喋っただけで迫害されるのは筋が違うだろう!と答えを出していた 烈を糾弾しようとした記者に非難の目が注がれ 烈を傷付けた子供や家族にも非難の目は注がれた 烈が入院して3週間と少し 神威も退院して良い事となった 榊原も通院レベルまで治癒し、残りは烈だけとなった 烈の額の怪我は相変わらず良くなる事はなかった 久遠は烈だけ入院させておくのは可哀想と判断して、烈の退院も決めた その代わり後一週間は毎日消毒に来る事!との事だった それを受け入れるなら退院させてやる!との交換条件を出され、烈は受け入れ退院となった 今回も一ヶ月近く入院して、学校にやっと通える事となった 烈が飛鳥井の家に帰ると、神威が竜胆ともう一人の子を連れて飛鳥井の家にやって来た その場には真矢と清四郎もいた 榊原は既に清四郎に竜胆を預ける事を諦めていた 神威は堂嶋正義や三木繁雄の力を借りてしらべたと謂う  報告によると、もう一人の子は出生届も出してなくて名前もないと謂う 前の家の住人の愛人の子だと謂う事は解ったが…… 家の主は愛人を土蔵に閉じ込め飼っていたらしい 一日に一度、食事を運ばれ土蔵に備え付けられた水道とトイレだけある空間で愛人は飼われ子を産んだ 愛人は逃げ出したくても土蔵の中から出る事は出来ず諦めて暮らしていたらしい 我が子だけは何としても育てるつもりだったのか、自分は食べずとも我が子には食べさせていた様だったと子供が言っていた そしてある日突然、男は何処からか子供を連れて来て育てろ!と言い、愛人に竜胆を引き渡したらしい だが男はその日以降は来る事はなく、次の日から別の人間がご飯を届けに来る様になった そして竜胆が来て暫くして愛人は静かに息を引き取った 愛人の遺体はご飯を持って来る男が何処かへ持って行ったと謂う 康太は「土蔵に閉じ込められて飼われていたと謂うなら、その子は戸籍なんかねぇだろ?」と胸糞悪い事をやってた男に吐き気を覚え言った 人を飼う なんて下烈な男なんだ と想い吐き気がした そして冷静になり整頓する ある日突然 竜胆を連れて来た? ならばそれ以前は竜胆は何処で過ごしたのだ? 「竜胆は何処からか連れて来られんだよ? そして誰の腹から生まれ出たんだよ?」 「それは不明です 竜胆本人もそれ以前の記憶は何故か無くしていると謂う!」 記憶がない それは飛鳥井に転生する者に取って致命的な打撃となる 烈は冷たい瞳で竜胆を視ていた 康太は「竜胆、お前生まれて来た意味解っているのか?」と話し掛けた 竜胆は困った顔をして首を振った それから色々と問い掛けてみたが、何を聞いても首を振るばかりで埒が明かない もう一人の子はずっと黙っていた 康太は神威に「その情報はこの子達に聞いた訳じゃねぇのか?」と問い質した 「トラックに跳ねられた男の部屋に資料が残ってたんです 俺ではそこまでは踏み込めなかったけど、正義さん達の協力を得られたので、家に踏み込めたのです!それで解った事が総てです 子供は何を聞いても話してはくれませんでした」 竜胆ともう一人の子は人形の様に座っていた 何も言わずに座っていた 突然、烈が手に草薙剣を出すと、踏ん張って構えた 一生は慌てて「おいおい!どうしたんだよ?」と止めようとした 烈は「とりあえずきるにょ!」と言い、慎一が烈の剣を取り上げようとした だが烈は微動だにせず嗤っていた 剣を向けられた竜胆はオロオロとし、愛人の子は顔色一つ変えなかった 真矢が「烈、お辞めなさい!」とビシッと言った 烈は草薙剣をしまった 怒った真矢はチビる程に怖いのだ 康太は「どうだったよ?宗右衛門」と尋ねた 「竜胆はこっちじゃ!愛人か産んだ方の子が竜胆じゃ! 土蔵に飼われておったおなごが、飛鳥井の者だった……こうも果てを狂わされようもはな!」 「ならこっちの子は傀儡か?」 「違う、その子は土蔵の持ち主の別の愛人の子で戸籍はない 土蔵の持ち主じゃった男は好色家で色んな所に愛人を隠し持つ男じゃった だが、釣ったおなごには餌も与えず飼い殺しにして、子を生めば見向きもせず次に行く だが人の物になるのは許せず飼い殺しにする そんな奴じゃった その子もその男の被害者じゃ」 「車に引かれた男が土蔵の持ち主じゃねぇのかよ?」 「土蔵の持ち主は既にこの世におりはせぬ…… ある日突然、家族で消えておる トラックに跳ねられた男は、誰とも知らぬ奴にお金を貰い動いておっただけじゃ そして命令通り子供を一人増やし、その子に竜胆の気配を纏わせ【その時】の為だけに用意しておっただけの子じゃ 竜胆の気配の強い者をあの爆撃で、助けたとしたら、本物の竜胆は………と謂う筋書きでも書いておったのじゃろう」 「あの場に大歳神がいればこそ二人助けられたと謂う訳か………」 康太はクソっと胸糞悪い出来事に、腹が立って仕方がなかった 何処までも人の命を弄びやがって! 榊原は怒り狂う康太の想いが解るから、優しく抱き締めて落ち着かせた 榊原は神威に「二人共戸籍はないのですか?」と尋ねた 「多分……無戸籍です 正義さんが警察の上層部の方に掛け合って下さり、調べて下さったのですが、竜胆もその子も何処の誰の子さえ解りません」 康太は思案する、そしてさっき宗右衛門が言った言葉を思い出し 「さっき竜胆は飛鳥井のおなごの腹からって言ったやんか それ誰か解るか?」 「それは遺体を調べれば出るじゃろう その遺体は多分………あの現場の近くにある山に捨てておるからな、探したら出て来ぬかのぉ… それと土蔵の持ち主の男の身辺を洗った方がよいぞ! 何人ものおなごが監禁されておるからのぉ… 金にあかせて女を作り監禁しておった」 榊原は「それなら正式に土蔵の持ち主を探さねばなりませんね」と出口の見えない話に身元を明かして逝かなければ、何も見えないと想った 康太は「唐沢を動かして探しさせてみるか? で、土蔵の持ち主の家族は何処に行ったのよ?」と宗右衛門に問い掛けた 「それは儂でも視えぬ、真贋 お主も視えぬであろうて!」 「だな、突然に忽然とって……何かの教団じゃ……あ!ソイツらの息の掛かった奴らなら簡単じゃねぇかよ!」 康太は携帯を取り出すと即座にその事を話して、動いてもらう算談をした 烈は竜胆に「もう話してもよいぞ、記憶はあるのじゃろ?竜胆よ!」と声を掛けたた 竜胆と呼ばれた子供はニャッと嗤うと 「流石じゃな宗右衛門!」と大人の声で言った 「やはり腑抜けておらぬか確かめておったか! 儂は腑抜けてなどおらぬわ! この戯け者が!」と怒った 竜胆は笑って「今世もキツい生活をしておいでですな!宗右衛門 その傷を見れば貴方が如何に大変な生活をされて来たか解ります そして貴方の星を詠めば、大変な道程だったと伺えれます!」と言った 「竜胆、取り敢えず話すがよい」 「俺は腹の中にいる記憶もあります 母は土蔵で飼われ暮らすしかない日々に絶望しか感じていなかった 俺を産み、その苦労は増えて行くばかりだった 真冬に水で手洗いで洗濯し、数少ない服を洗い、冷たい水で、体を拭く トイレはあってもそれは大人のドッポん便所と謂うヤツで子供が使うには死ぬ程に怖かった しかも土蔵の持ち主の男は食事は一日に一回、それも母の分しか持って来ないから、母は俺に食べさせていたから日々弱って行った その子が増えてからは、更に悲惨で食べ物がなかった そしたら母は何時しか息絶えて……苦しい日々を死んで終わらせた それが総てだ、そしてその子は自分の名も字も言葉を話す事も出来ずにいた それが総てだよ宗右衛門」 「果てが狂ってしまっていたのじゃ! 済まなかった竜胆! こんな苦しい目に合わせて本当に済まなかった……」 宗右衛門は立ち上がり、竜胆に謝罪した 康太も榊原も竜胆に謝罪した 竜胆は「で、俺はどうしたら良いですか?」と問い掛けた 康太が「何処で過ごしたい?竜胆」と問い掛けた それには何も答えなかった 玲香が「ならば、お主は我が育てようぞ!竜胆!」と言った 竜胆は驚いた瞳で玲香を見た 「我は飛鳥井玲香! 我は飛鳥井の女、歪んでしまった過去があるのならば、それは正さねばならぬ! お主を育てさせてはくれぬか?竜胆」 「多分俺は……その子と同様、生活と謂うモノをして来た事がない それ故、神威の事務所の人間には多大な迷惑を掛けた だから……俺は菩提寺で生活するしかないと想う」 何も知らず育った竜胆には、普通に生活すると謂う事が解らなすぎて困っていた まるで浦島太郎ばりにデジタル化された世界が解らなかった そして竜胆はやはり同じ時を過ごした子を見捨てられない自分を知っていた 「この子は何処へ行きますか? 文字も解らぬ何も解らぬ、この子を見捨てる事は出来ない」 宗右衛門は「菩提寺のクソ坊主は修行が足らぬからな、お主らが行ったら餌にしかならぬわ!」と言い捨てた 竜胆は訳が解らず「餌とは?宗右衛門?」と問い返した 宗右衛門は竜胆の耳元でゴニョゴニョと話して聞かせた 竜胆の顔色は悪くなり…… 「菩提寺は嫌かな?」と言った 仕方がないと宗右衛門は親に反旗を翻すしかないとばかりに言うしかなかった 「なれば儂はこの家を出て行くとしようかのぉ! 神威、儂ら5人で住めそうな家を探すのじゃ!」と言い離れずとも済む方法を口にする 「儂はな真贋、レイを引き取る時にお主に反対されたら家を出るつもりじゃった」 と爆弾発言 覚悟の瞳を見せて一歩も引かぬ意志を見せる 康太は「そんなの百も承知だ!」と返しボヤく 「おめぇは本当に頑固だな! そこの親父同様、叔父貴同様、頑固者で、気に入らねばテコでも動かねぇ! 毘沙門天がずっと言ってた頑固者の旧友ってお前だろ?」 図らずとも振られ神威は苦笑した 「腐れ縁じゃからの!」 「んとによぉ!叔父貴と同じ顔しやがって!」 康太はボヤく 「仕方なかろうて……それは八つ当たりであろうが!炎帝よ!」 「八つ当たりもしたくなるだろうが!」 「わっぱらは儂が引き取ってもよい!」 「宗右衛門をこの家から出したら一族の統制は誰が取るんだよ! この家からで出たら安徽しやがるだろうが!」 烈は知らん顔していた レイは不安そうな顔で烈を見るから、烈はギュッとレイを抱き締めた 一生が「東矢も来るんだよな?この家に?」と現実に引き戻す 神威は「繁雄さん達のお陰で東矢も近いうちに施設から出られる様になりました 戸籍は飛鳥井香里奈の母親に移して飛鳥井の名を継続させたので、近いうちに飛鳥井美麗の戸籍に入れるつもりです!」と経緯を話した 慎一は「飛鳥井美麗?誰ですか?」と問い掛けた 康太が「綺麗の妹だ!長女が綺羅、次女が綺麗、三女が美麗の三姉妹だ!」と答えた 清隆は「美麗……生きてたのですか?」と酷い事をサラッと言った 瑛太も「アマゾンの秘境で息絶えたと想っていました」と更に酷い事をサラッと謂う 玲香は「この前御園座で見たわいな!」と謂うと家族は【ええええええ!!!】と驚いた 康太は「美麗は今女優してるかんな!」と言った 真矢は「もしかして葦名美麗?」と問い掛けた 榊原は「あぁ、彼女も相賀の事務所でしたね」と言った 聡一郎は「元全日本新体操選手で 日本代表で先のオリンピックに出て金メダル獲得した後、女優に転身したのでしたね」と知り得る情報を口にした 玲香は「破天荒な奴でな、高校の時アマゾン制覇してやるって途絶えて消息不明だったと想ったが女優をしておるのかえ?」と今更ながらに想う 話がズレたから神威は「東矢はどうしますか?」と話を元に戻した 宗右衛門は「儂は榮倉にも合わせしまうからのぉ!家を出るしかあるまいて! 隠して育てる気は皆無じゃからのぉ!」と先手をぶっ込んだ 宗右衛門は家族を睨みつけ 「転生者を隠して育てる考えこそ、失礼だと想え !」と一喝した まさにそうだった 家の為に生まれて来た者を蔑ろにする行為だった 榊原は宗右衛門に深々と頭を下げた 一生も立ち上がると宗右衛門に深々と頭を下げた 榊原は「お許しを!宗右衛門」と謝罪した 一生も「俺等は蔑ろにしたり軽視したりしてねぇつもりだった…… だがレイを貴史が見たら………とか 東矢を永倉が見たら………と考えたのは………事実だ そうだよな、家の為に転生したのに隠そうなんて失礼極まりねぇ行為だよな 済まなかった宗右衛門!」と謝罪した 「飛鳥井の名を断ち切らねば、宗右衛門として関わる事は約束しようぞ! それならば儂が何処で誰と住もうが文句はないであろうが!」 一歩も引く気はない!との気迫が物語る 頑固な子はこのまま話を持って行ってしまうのが解る それだと飛鳥井の家族は烈と共にいられなくなる…… そして何より康太の為に産んだのに……康太と榊原、兄弟から離れてしまう 真矢は「烈!話にもならないじゃい!それじゃ!」と怒った メラメラ怒りのオーラを背負って謂われたら………チビるしかない そして……本当にチビッた 烈は泣きながら「ばぁたん こわい……ちびった」と泣き出した 康太は聡一郎に「着替え手伝ってやってくれ!」と言った 烈はグスンと泣きながら応接間を出て行った 真矢はクスッと笑って 「失礼ね烈、そんなチビる程怖くないでしょ?」とサラッと言った 一生は「あれでチビるなってのは無理やろが……」と呟くと真矢はニコッと笑って 「何かしら?一生!」と問い掛けられた 「いや、なんでもないです! それよりも、この二人どうしますか? 烈はあぁなったら引かないし、人の痛い所を突いて来ますからね どの道折れるしかない、ならば我等は最善を考えねばならない!」 一生が言うと慎一が 「ならば俺が面倒見ます! レイと東矢の部屋はあるのですよね? なら俺の部屋はかなり広いから、一部屋を竜胆とこの子の部屋にしても良い程の広さだ 少し大きくなるまで俺が隣の部屋に住まわせて面倒見ます それよりも竜胆とこの子の名前を決めねばなりません! 東矢は今何と言う名前なんですか?」 と神威に問い掛けた 神威は困った顔をして 「東矢の転生者の名は亜久真、当て字でこう書きます」と言いメモ用紙を出して【亜、久、真】と書いた 「改名させねばならないので、名前は3人分必要となります!」 母親は我が子が悪魔にしか見えなかったのか? 言葉もなかった 育児放棄されて育ったと謂うのだ ろくな環境ではなかったのだろう…… 家族皆、その名前で東矢の生まれた状況を知った 応接間に戻っできた烈がソファーに座ると、宗右衛門の声で 「レイは兵藤貴史の子じゃ!」とレイの素性を話しだした 「貴史が一方的に用無しになったから切った後妊娠が発覚した その時には貴史はアメリカにすらおらず、妊娠が解ると厳しかった家庭で育った彼女は家族から絶縁された 誰も頼れぬ者もおらず日々腹がデカくなり、彼女は行政に助けを求め我が子を産んだ  だが子を産んでから少しずつ少しずつ彼女の心は壊れて行ったのじゃ 心が壊れた彼女は何かに付けてレイに八つ当たりをした 育児放棄されたレイは親の暴力と飢えに苦しめられる日々を送るしかなかった 子は親は選べぬ…… だが転生者は親を選べた筈じゃ…‥‥ なのにレイも東矢も竜胆も耀も悪意の元に生まれるしかなかった 東矢の母親の香里奈は東矢を身籠った時高校に入ったばかりじゃった おぼこな香里奈は調子の良い男に騙されて孕んだ だが香里奈が妊娠すると男は逃げた 香里奈は誰にも相談出来ず日々腹は大きくなり 母親が知った時には臨月近くで生むしかなかった そんな母親の元に生まれたのじゃ…… 母親は子を憎んだ 悪魔に見えたのじゃろう…… だから名を亜久真とした 東矢は育児放棄の上に肋を折る暴力を受けていた 泣き止まぬ子に香里奈の母親が見に行くと、土気色した東矢がいて、香里奈の母親は慌てて救急車を呼び病院に緊急搬送したそうじゃ それにより児童相談所に送致され、あまりに酷い育児放棄に裁判所は接触禁止命令を出したそうじゃ! 親の愛を知らぬ 人の優しさも温もりも知らぬ 誰も教えなかったから言葉も知らぬ レイも東矢も竜胆も耀も過ごした日々は短いのに死んだ方が楽な日々しか送られては来なかった だから人の温もりを感じる場で育てたい それは儂の我が儘なのは解っておる…… 解っておるが……飛鳥井の礎に入れる者を孤独にしておきなくはないのじゃ! なれば儂は傍にいて一緒にいたいと想うのじゃ レイには返せぬ恩も在る 儂はレイの魂に励まされ生きて来た時があるのじゃ レイの存在だけが儂の唯一じゃった だから今世は傍にいたいのじゃ……儂の我が儘じゃ!」 耐えきれなくなり宗右衛門は顔を覆い涙を流した 言葉もなく静かに泣いていた きっと遥か昔から、そうして声を殺して泣いていたのだろう…… 真矢は優しく烈を抱き締めた 兄弟達も優しく烈を抱き締めた 流生が「烈が出るなら僕も出るよ!ずっと一緒にいようね!」と言った 翔も「僕も一緒だよ!飛鳥井から抜けなきゃ僕も真贋だから……」と続け 音弥は「皆でいられれば、何処にいても大丈夫だから!」と言った 太陽は「烈……僕も一緒だよ」と言った 大空も泣きながら「離れたくないよ烈、ずっと入院してて淋しかったのに離れたくなんかない…」と言った だが兄達は知っていた 自分達は子供であまりにも無力だと知っていたから……共にいたいと訴える事しか出来なかった たから強く強く烈を抱き締めた 想いは同じだから! 烈が出ると謂うならば自分達も共に逝くと決めていた 離れ離れにはならない!絶対に離れない! そう決めていた 康太は両手を上げた 「降参だ烈!兄弟まで味方につけたらオレは負けるしかねぇやんか!」 「かぁしゃん……」 「オレもな烈、今世の転生者は本当に居場所は解らねぇわ 解っても過酷すぎるわで、腹立っているんだよ 過酷な生活を送った者を邪険にする訳ねぇだろうが! お前が相談すればオレは相談に乗った筈だ! 竜胆ももう一人の子を見捨てられねぇのは解る だから最善策を話し合うぜ! そして名前を考えてやらねぇと! 名無しと亜久真じゃあまりにも酷すぎるからな!」 烈は頷いた レイは泣きながら烈に抱き着いていた 康太はレイを抱き上げて「引き離したりしねぇよ!おめぇは烈の唯一の存在だからな!」と言い頭を撫でた そして話し合う 最善策を話し合う そして何か気配を察して 烈は笑って「なぁ真贋」と話し掛けた 「何だ?宗右衛門」 「やっぱこれは左之助のせいじゃと想うんじゃが?」と言った 康太は笑って「だよな、やっぱし左之助のせいだよな!総ての元凶は左之助だよな!」とノリで話した 「左之助のせいじゃな!」 「だよ!左之助のせいに決まってる!」 二人して左之助のせいだと言って責任転嫁をしていた 「二人して俺がいるの解ってて難癖謂うの、止めて下さいよ!」と声がして、家族は慌てて声がした方を向いた

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