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第88話 増えたら困るのよ②
一斉に家族やその場にいる者に見られ、困った顔をして
「やだな、栗栖が謝りに行け!って煩いから来たんですよ!」と言った
康太はその男の後ろに大魔神みたいに控えた有栖院栗栖を見た
「よぉ、栗栖 父ちゃんと散歩か?」
康太が言うと宗右衛門は
「止めておけ栗栖、連れ歩くなら嵐を呼ばぬ男にするのじゃ!」と言った
栗栖は男を肘で突くと「謝罪!」と冷たく言った
「真贋、宗右衛門、そしてそこにおるのは竜胆ではないか!」
栗栖の蹴りが入る
「申し訳なかった!俺だって悪気が……痛いって栗栖!」
と泣き言を言い
「本当に許してくれ!真贋、宗右衛門
でなくば、俺は麻莉亜にも逢えねぇし、麻莉亜は烈の方が可愛いとまで申して、烈を傷付ける者は許さないからね!と許してくれないのだ!」と謝罪した
康太は「左之助の癖に!」と吐き捨て
宗右衛門は「この未熟者めが!」と怒った
そして宗右衛門は栗栖に「許してやれ!栗栖」と言った
「宗右衛門は許されるのですか?この男を!
この男のせいで怪我したのに!」
まぁ歴也だけのせいじゃないけど………
「何時の世もお主の父親は嵐を呼ぶ
儂の嵐など可愛い程にな、ドデカイのをぶっ込んで来る!
それも定め、諦めるのじゃ栗栖
我等は何時も左之助には苦しめられた!
まぁ仕方がないとは想うが、麻莉亜を苦しめるのは話は別じゃ!」
「そーだよ!な!宗右衛門!
麻莉亜が許してもオレ等は許さねぇもんな!」
二人が言うと歴也はくしゅんと萎れた
栗栖は笑っていた
「ほら、許してもらうまで旅に出たら駄目だからね!」
栗栖が言うと歴也は「もう旅には出ない」と言った
「俺は麻莉亜とお前達の傍にいたい」
本音を吐露する歴也
宗右衛門は「天変地異が来るぞ!真贋」と言い
康太は「だな、今世は本当に珍しいもん見れたな!」と笑って言った
歴也は「麻莉亜は烈が大人になったら結婚したいから、俺とは再婚しないと言った」と悲しそうに言った
宗右衛門は困った顔をして
「歴也、それは麻莉亜の逃げの常套句であろう!
儂は未来永劫、誰とも結婚はせぬと決めておる!
それは転生して来たお主が一番良く知っておるのではないか?
何時の世も儂は誰も娶りはせなんだ!
今後も儂は誰も愛しはさぬと決めておる!」と話した
歴也は確かに誰とも結婚したのを見た事ないと想った
「宗右衛門……今世もお一人で終わらせると申すのか?」
「気にするでない!
儂は人には恵まれて過ごしておる
遥か昔が嘘のように……な」
「宗右衛門……」
烈は立ち上がると歴也の脛を消し飛ばした
「お主はフラフラ何処かへ行くから信用が0なのじゃ!
旅には出ぬと申すならば、定職に付き居住まいを構え、そこに根を生やし本気を見せてみるが良い!
そしたら少しは麻莉亜に口添えをしてやろう!」
歴也は脛をさすさすして
「宗右衛門が謂う事全部やる!」
「なれば儂が竜馬とともに立ち上げる会社の代表取締役になれ!
絶対に潰すでないそ!解ったな!」
歴也はウンウン!と頷いた
宗右衛門は「麻莉亜の傍に置け!戸籍は3年様子を見て入れさせろ!」と言った
栗栖は「永遠に入れなくても大丈夫だよ!」と皮肉に言った
烈は栗栖に屈めと合図をすると、栗栖は烈の目の高さまで屈んだ
「強がらずともよい!
お主は優しい子じゃから母を哀しませたくなくて強がるのじゃろ?
なれば、もう大丈夫じゃ!
歴也は腹を括って傍におると決めたのじゃ!
この男は嘘は謂わぬ!
遥か昔から嘘は一度も着いた事はない
だからもう離れぬと決めたのならば、この男は梃子でも動かぬだろう!」と言い栗栖の頭を撫でた
「宗右衛門……」
「よゐこじゃ、よゐこじゃ!」
烈に撫でられ気が張ってた想いが緩む
栗栖は、泣いていた
玲香と真矢が栗栖を優しく抱き締めて涙を拭いてやった
歴也は「竜胆、お前何処にいたのよ?」と話し掛けた
康太は歴也に「飛鳥井の果てが歪んでたんだよ!」と話をした
宗右衛門は「と謂う事じゃからな、まだ話し合いはあるからの、お主達は還るがよい!」と言い栗栖と歴也を還した
清隆が「彼があの風雲児ですか?」と黙ってみていて何となく事情は察した
瑛太も「初めて顔を見ました」と言い黙った
歴也に話し合いを邪魔され気落ちする
神威は「で、東矢は引き取っても大丈夫ですか?」と問い掛けた
康太は「あぁ、引き取ってくれ!手が足りなきゃ天宮使っても良いからさ、頼むな神威!」と言った
神威は天宮より少しだけ年上で、大学の先輩だと謂う事が、天宮に用があって逢った時話したら解った
神威と謂う珍しい名を天宮は覚えていて、今も付き合いがある先輩弁護士だと話してくれた
神威は「承知した!名前を3人分考えておいて下さい!
東矢は手続きすれば直ぐに引き取れますが、竜胆ともう一人は戸籍がないので、戸籍を作る作業をせねばなりません
なので少し時間が掛かります」と現状を話した
「今 竜胆の母ちゃんの遺体探させてる!
瑛兄の方からも一族の者に還らぬ娘はいねぇか聞いてもらう事にするわ!
そしてもう一人は土蔵の持ち主を探って見つけ出すしかねぇな」
何にしても一筋縄ではいってくれもなかった
神威は「では手続きに入ります!」と言い還って行った
榊原は「名前、どうしますか?」と言った
康太が「3人分か、考えるしかねぇからな考えるわ!」と言い思案する
字画や画数に拘って名を考える
そんな中 烈はソファーに丸くなり眠っていた
流生が烈にブランケットを掛けてやる
そして隣に座るレイを抱き締めた
翔は竜胆に「お腹減ってませんか?」と問い掛けた
竜胆は子供の声で「へってる」と言った
慎一が「何か作ってきます」と謂って応接間を出て行った
竜胆は翔を目にして「次代の真贋か?」と大人の声で問い掛けた
「そうです!」
「俺は貴方をサポートする為に生まれました!
そして今世は来世転生されない現真贋と宗右衛門と源右衛門の転生者との顔合わせの為に生まれて来たのです」と告げた
翔は「詳しい話は宗右衛門がしてくれます!
そしてその時、顔見世もしてくれます!」と答えた
「宗右衛門の隣にいる子、ただの子供じゃないだろ?」
竜胆はレイを見て言葉にした
翔はそれに対して何も謂わなかった
康太も何も謂わなかった
榊原は「烈を起こしますか?」と問い掛けた
康太は「だな!」と答えた
榊原はキッチンに行きカニパンを手にして戻ると
「今 起きねばカニパンはあげませんよ!」と言った
烈はパチッと目を開け「カニパン!」と叫んだ
榊原はカニパンを手にして「竜胆に来世の礎となる転生者を紹介なさい!」と脅す様に言った
烈はうんうん!と頷いた
榊原はカニパンを烈に渡した
烈はカニパンを食べつつ宗右衛門の声で
「竜胆、東矢が揃ってからでも良くないか?」と問い掛けた
竜胆は一歩も引かず「今世は顔見世の為だけに転生したんだよ!で、その子は?」と謂う
「この子は飛鳥井レイ、正式な和名はまだ付けてはおらぬ!
この子の魂はニヴルヘイムと謂う神の転生者
そして飛鳥井家稀代の真贋として組み込まれし子となる!」
「元は神か……じゃねぇと稀代の真贋は受け継げねぇわな!
宜しくレイ、新しい名は解らねぇけど、転生前から俺は【竜胆】として生まれて来た者だ」
竜胆は手を差し出すとレイはその手を取った
「よろしきゅ」
たどたどしい日本語で答える
宗右衛門は「レイはレイモンドと謂うが烈が舌を噛んだからな短くしたのじゃ!
どうじゃ?稀代の真贋はお前の御眼鏡に適ったのか?」と問い質す
「その力は現真贋に継ぐ力と見受けた!
今後は絆を深め、明日へと繋げ協力すると誓う!」
「後二人は今度合わさよう!
耀と謂う子は神日本磐余彦天皇の転生者じゃ!
ずっと倭の国を護られて来たが、もう黙っておるのは嫌じゃと飛鳥井へと転生された子じゃ
だがこの子も死にそうになり、儂も死にそうになり迎え入れられた子じゃ
今は祖父母に預けてあるが、祖母のその命は数年とは持たぬ
そしたらどうするか考えようと想う
その子は後一年で転生者から抜ける源右衛門を継ぐ転生者となる
そしてもう一人、東矢と謂う真贋の為に命を落とした男がおる
その者の転生者が儂のポジションを継がせる者となる!
故に傍にいて今世は教えねばならぬ!」
と来世以降、飛鳥井の礎になる子の説明をした
竜胆は「宗右衛門は来世の転生はねぇのかよ?」と問い掛けた
「儂は来世は転生はせぬ!
大体飛鳥井の転生者は稀代の真贋を除けば1000年で次へと変わる
時代に対応出来ぬからな
竜胆、お主も後2回か3回で転生を終える、次を継がせる覚悟はしておかねばならぬぞ!」
「解ってるよ宗右衛門
だけど、俺が転生していた時代と違い過ぎて生活に慣れるのに時間が掛かりそうなんだ!
まだ先の話は想像も出来ねぇから」
「であろうな、だからこそ、入れ替えを図らねばならぬのじゃ、時代に乗れぬ転生者では困るからな!
高々百年と高を括れぬ時代の流れであるからな
アナログからデジタルに移行した転生者が必要となるのじゃ!
お主は真贋が誰か教育係を遣わしてくれるであろうて!
まぁ何にせよ名前を付けて飛鳥井に入らねば、始まらぬからな!」
「そうなんだよな……後、頼みが一つある」
「お主の母じゃった人の事か?」
「そうだ、奴隷かペットの様に飼われ死しても野に放たれるのでは、あまりも酷い……
せめてその亡骸だけでも救ってはやれぬか?」
「真贋が人を動かしておるじゃろ?
遺体が見付かるのも時間の問題であろうて!
そして総代が一族の者に行方不明だったおなごはおらぬか?尋ねてくれるであろ!」
宗右衛門が話すと瑛太は立ち上がり竜胆の前に行き、深々と頭を下げた
「飛鳥井家総代をしております、飛鳥井瑛太に御座います!
一族の者は今世半分以下にふるいにかけられ落とされました故、追放された者の縁者なれば上がっては来ません!
ですが、今の一族の者に問いかけて見ますのでお待ち下さい!」
と言い応接間を出て行った
竜胆ともう一人の子は不安げな瞳をして、ソファーに座っていた
康太は飛鳥井綺麗に電話を入れた
「おっ!オレだ!」
『おぉぉ!康太どうしたのじゃ?』
「あのさ、無の状態の子に生活全般教えられる機関ってねぇかな?」
『生活全般とは?何を指すのじゃ?』
「だから歯磨きから水洗トイレの使い方
今の時代に合った生活様式全般教えられて来なかった子に、赤ん坊の様に生活を教える所を指す」
『それは厳しいな、託児所だとて乳飲み子は扱わぬからな!我の機関も生活様式全般は教えるのは無理じゃ!
誰なのじゃ?その子は?』
「竜胆と、同じ所に閉じ込められていた子だ
年もな幾つになるかいつ産まれたのかさえ、サッパリ解らねぇ!」
『竜胆だと!何故竜胆がそんなに冷遇されて生まれておるのじゃ!』
綺麗は叫んだ!
其れ程の異常事態だと謂う事だった
「この家で生活させるのは容易いが、その生活を送る知識もねぇとなるとな、教えねぇと駄目だからな………」
『知能指数は?測ったのか?』
「まだ手付かずだ!」
『なれば、知能指数を測定してみないとならぬな!
知能指数とかは協力出来るが、生活事態を教えるのはうちの施設では無理じゃな!
すまぬな、康太!』
「嫌、こっちこそ、悪かったな!」
康太はそう言い電話を切った
榊原は「人を雇いますか?」と問い掛けた
それしかないかと思案する
慎一が「それよりも風呂に入れるので久遠先生の所へ連れて行くのが先です!
二人はご飯も少ししか食べれないじゃないですか!」と怒った
慎一がご飯を作って持って来てみれば、少し食べて後は食べられないと謂う
ずっとその分量しか食べてないからだと謂う
慎一は竜胆ともう一人を自分の部屋に連れて行き風呂に入れた
暖かな湯の出るお風呂に入った事がないのか?
「おろってあったかいんだね」と竜胆が言った
慎一は土蔵の中では水でって話を聞いていたから、胸が傷んだ
竜胆ともう一人の体は肋が浮き出て、腹が出て戦時中の欠食児童並みに痩せていた
体を拭いて髪を乾かし烈の服を持って来て着せてやる
窶れた体に烈の服はブカブカだったが、それしかないから、取り敢えず着せた
慎一は二人を連れて応接間にやって来ると
「保険証はどうしたら良いですかね?」と言った
榊原は「これから戸籍を取るから出来たら見せるとしか言えませんね」と言った
烈も一緒に病院に行こうとしたら、レイが離れ難く手を繋いでいたから一緒に向かう事にした
慎一は病院へと向かい久遠に事情を話すと、義泰が出て来て「転生者の竜胆か?見つかったのか?」と声を掛けてきた
義泰も飛鳥井の一族の為総会には顔を出していた
慎一が酷い状況で生活して来た事を話した
二人を診断していた久遠が「栄養失調だな、二人共!少し入院して様子を見る」と言った
慎一は入院中の面倒をどうするか?悩んだ
烈は久遠に傷の消毒をされていた
ずっと上の空な烈に久遠は
「どうしたんだよ?烈」と尋ねた
「りんどーね、ずっととじこめられてせいかつしてたから……ふうつのせいかつがわからにゃいのよ」と言った
義泰は「閉じ込められて?生まれてからずっとか?」と問い掛けた
「そうなのよ、このまえたすけたのよ
そしたらひとりふえてるし、もぉねめちゃくちゃなのよ」
「ならば転生者は全て揃ったのか?」
「そうらけど、なまえもこせきもないのよ
あとね、あくまなんてなまえつけられてて…かえないとだめなのよ」
「酷いな、今世が一番歪んだ中で転生させられた、と謂うのか?」
「そうなのよ!どうしたらいいにょかな?」
烈が言うと久遠が「取り敢えず栄養失調をなんとかしねぇと、疾患抱える事になるからな!」と言った
慎一は取り敢えず入院手続きをした
二人部屋に入院させ治療に取り掛かった
栄養失調だから二人の腕に点滴を指すと、あまりの痛さに叫んで泣いた
「宗右衛門、百年前はこんな痛いモノはなかったではないか!」と情けない声で訴えた
「いまはあるのよ
ぼくだってこのまえうってたのよ
りんどーなおすのよ!
でないとはやじにしちゃうのよ!」
「それは嫌だけど、痛いってば!」
竜胆は泣き言を謂うがもう一人は何も謂わなかった
烈は困る
意思疎通が出来る気がしないからだ……
久遠は烈の隣にいるレイに目をやると
「この子も食ってるのかよ?」と問い掛けた
「れいもね、いくじほうきされてたから、あんましたべにゃいのよ」
「入院させるか?」
「ふえるかもしれにゃいのよ
とうやきたら、いくじほうきされてたから、もやしみたいかも……」
「来たら連れて来い!
そしたら纏めて診てやるからな!」
「せんせーおねがいね」
久遠はレイの健康状態を気にして診察していた
義泰は慎一と真剣に話していた
「一族者の中で教師をやっていたが、今年定年退職して悠々自適に過している者がいます
その者に少しの間面倒を見てもらった方が賢明だと想う
何も知らない者がいきなり生活を始めろ!と謂われてもそれは土台無理な話だろうて!」
「頼めますか?」
「飛鳥井の礎になる者なれば、一族の者は骨身を惜しまず動く
もう一人の子も何も言わぬが話は通じておるか解らぬからな
様子を見て教えるとしよう!
なれば病室よりも一眞夫妻が過した部屋で面倒を見るとしよう!
食える様にならねばな!
譲、この子達は上のマンションで明日からは面倒を見る事とする!」
義泰が言うと久遠は「それは構わねぇが、当分は点滴を続けるからな!
それと、予防接種受けてねぇだろ?
少し体調良くなったら予防接種しねぇとな!
レイもしてねぇんだろ?」と問い掛けた
「れいはあめりかにいたから、わからにゃいのよ」
「なら日本語解らねぇのか?」
「いまはべんきょうしてるから、すこしわかるのね」
アメリカから養子に迎えたと謂うのか?
久遠は言葉もなかった
「レイの栄養状態も良くねぇからな
明日から通院してもらうが、良いか?」
烈は頷いた
義泰は竜胆ともう一人の子を連れて行った
慎一は烈とレイを連れて飛鳥井へと還った
「ねぇしんいちくん」
「何です?烈」
「もうひとりのこ、ことばわかってるのかな?
みみ、きこえないのかにゃ?」
「え?まさか……でも有り得ますね
烈は何でそう思ったのですか?」
「いしのそつう、とれにゃいのね
じーっとみてるだけらから……」
「それも義泰先生に頼んておきます!」
烈は頷いた
飛鳥井の家に帰ると、皆が応接間にいた
竜胆ともう一人がいないから、どうしたのか?問い掛けると、慎一が事情を話した
康太は烈に「名前、どうするよ?」と問い掛けた
「それ、こまってるにょね」
「ならオレが付けて大丈夫か?」
「おねがいしましゅ!
なんかね、つかれたから ねるね」
烈はそう言いレイを連れて自分の部屋に行ってしまった
榊原は「また熱出してませんかね?」と心配して言った
康太は「出てるかもな……アイツには荷が重いからな……こうも果てを狂わされてしまってたら、オレだって果てが詠めねぇよ」と現実を口にした
「命名どうします?」
「取り敢えず神威に名前を決めて伝えねぇと困るだろうからな!」
康太も困った顔をしていた
「行き成り3人だからな……簡単には行かねぇな
それより竜胆と一緒に助けられた子耳が聞こえねぇのか?
意思の疎通が出来ねぇみてぇだな?」と言う
慎一が「それ、烈も言ってました……そうか、飛鳥井に来たてのレイがそうでした
この子言葉話せるのかな?と想いました
レイは言葉が解らなかったのですが、あの子はどうなんでしょう?
耳が聞こえないか、言葉の意味が解らないか?
どっちかでしょうね」と予想を口にした
取り敢えず、明日の飛鳥井の礎となる子供は揃った
一人増えたけど……
慎一が烈の部屋を見に行くと、烈はやはり熱を出していた
慎一が氷嚢と冷えピタを貼ると、烈は目を醒ました
「しんいちくん……」
「熱出ましたか?」
「ぎょめん……にゃんか……かんがえてたら‥…ねつでたにょ…」
「一人で悩まないで下さい!」
「ん、しんいちくん ありがとう」
「今は眠りなさい!
明日熱があるなら病院に行きましょう」
烈は頷いた
康太は竜胆を【凛】りん、もう一人の子を【律】りつ、そして東矢が【椋】りょう、とする
と半紙に墨ですって命名した紙を出して示した
3人とも名前が決まった瞬間だった
飛鳥井の家に東矢の転生者 椋が連れられて来た
東矢もまた痩せ細り栄養状態も悪く、後肋を折った後も気になるのから入院させた
それから更に3か月後 やっと凛と律の戸籍が出来た
竜胆は飛鳥井 凛となった瞬間だった
もう一人の子は喋れないのでも、耳が聞こえないのでもなかった
喋ったら殴られるから、ずっと黙っていただけの事だった
勉強や話す事は竜胆が土蔵の中で、教えていたと謂うからそこまで遅れてはいなかった
律と名前を付けられ呼ばれるのが嬉しかったのか?
律はずっと泣いていた
名前を書いた紙を大切に胸に懐き泣いていた
凛と律は入院している間に知能指数を調べられた
そして飛鳥井の一族の者の中で教師をしている者が生活全般から勉強まで教えた
凛は100年前はこんな勉強しなかったのにぃ…と四苦八苦した
律は凛が教えていた事もあって、理解力はあった
だが話せば折檻される世界が長すぎて、人の顔色を見たり、極力自分を押し殺してしまう傾向があった
東矢の転生者 椋が病院を退院すると凛や律を家に呼び出して話し合いが行われた
その場に真矢と清四郎も参加させて欲しいと申し出て参加する事となった
康太は凛に「今の時代の生活には慣れたのかよ?」と問い掛けた
凛は「はい、なんとかなってましゅ!」と答えた
「ならどうするよ?
お前は竜胆としての役割がある!」
「はい、それより紹介しては下さらぬか?」
と凛は竜胆の声で、問い掛けた
その場には東矢の転生者 椋もいたからだ!
宗右衛門が「儂の後を継がせる椋だ!」と謂うと、椋が凛の顔をじっと見て
「宜しく、俺は東矢と謂う者でした
今世からは飛鳥井の礎に入り明日を繋ぐ者として転生致しました!
飛鳥井 椋と申します!」と東矢の声で、自己紹介した
竜胆は東矢を見て「気に入った!俺はこの二人と明日を繋ぐ事を約束しよう!」と言った
烈はホッとして肩の力を抜いた
気難しい竜胆は人を嫌う
自分より力量のない者には共に逝く事すら拒否る
だから心配したが、顔見世は成功した
気が張っていた烈は気絶したように倒れた
榊原は烈の体を抱き締め
「良く頑張りました!
これで君が繋いだ1000年先まで繋がれましたね!」と言い、烈を寝かせた
レイが心配そうに烈に寄り添う
猫の虎之助が烈をペロペロ舐める
話が落ち着くと清四郎は「この二人は私が引き取ろう!」と申し出た
榊原は「父さん…」と呟いた
約束を守ろうとしてくれてるのが嬉しかったのだ
瑛太が「清四郎さん……無理なさらずとも良いです
この二人が増えた所で我が家は何も変わりません!」とやんわりと言った
真矢が「竜胆と謂う子を引き取ってくれ!と前に話がありましたの
その時が来たら、その子を見て決めてくれと謂われました!
だから見ていたのです!」と覚悟を決めた瞳で言った
榊原は両親に「あの時とは状況も違います……なのであの話は無効で構いません!」と言った
清四郎が「律は人をよく見てるね、きっとそう言う生活をずっとして来たからなんだね
私達もそうだったから解るんだよ伊織
人の顔色ばかり見て生きて来た幼少期があったから、役者として生きて来られたのかも知れない
ならば律を連れ歩き役者として育ててみたいと想ったんだ
あの頃の私と真矢がそこにいるみたいに、見てると苦しいんだよ」と言葉にした
育児放棄された子の中には、人の顔色ばかり見て不機嫌にならないように息を潜めて生きていく子が顕著に出る子も多い
それが最善策だから……
真矢は「私と清四郎とで、律を役者として育ててみたいの
貴方がなりたがったモノに何でもなれるのよって教えてあげたいの」と言った
康太が「なれば律だけでもお願いします!」と言った
真矢が「凛は?」と問い返した
「凛は本人に任せます!
凛が何処で住もうともオレ等は何も言いません
でもこうも果てを狂わされているのなら、此方も万全な構えをせねばならぬ!
凛には竜胆の役割を果たす義務がある!
その為に早めて転生させたのですから、その為に動かねばならぬ存在なのですから!
だから竜胆、それだけ覚えておけば、おまえは何処で住みたいか?選んで良い!」
「真贋、解ってます!
俺には【竜胆】としてやらねばならない事がある
そして今世は真贋の子の為に骨身を惜しまぬ事を誓おう!
それが明日の飛鳥井の為になると宗右衛門が申したからな!
なので俺はこの家で過ごすとする!
その方が今後、真贋の子の為に動けるごととなるので!」
答えが出て、適材適所配置された瞬間だった
「所で竜胆、おめぇ幾つになるのよ
律や椋達より少し大きいよな?おめぇ」
「それは解りません!
俺はカレンダーすらない世界にいましたから…解れと謂うのが酷な話です
生まれた日も解りませんから!
あの爆破で見つかった日を誕生日として、医者の見立てで年齢を計算して3歳と判断されたのですから、一応、律やレイや椋達と同級生と謂う事にしてもらいました!」
「なら律もその日が誕生日か?」
「律は誕生日覚えています
あまり喋らないけど、1歳半になるまでは母親に普通に育てられ俺より生活全般詳しかったです
母親も割り出され母の戸籍から志津子さんの戸籍に入り一応飛鳥井を名乗ってるのです」
「母親は?生きてるのかよ?」
「母親は他界したみたいです
母親が他界した後は他の愛人の所へ押し込まれ、そして俺と年が似てるから選ばれて土蔵に入れられたって言ってました」
盥回しにされ挙げ句竜胆の気を纏わせ駒とされた
何とも憐れな話だった
清四郎は「私はまだ烈を連れ歩くと決めてる
なので烈と律を連れて行くつもりです」と宣言した
康太は「烈は少し無理やろ?」と言った
あの会見で悪目立ちした事を誰よりも理解している烈が、清四郎や真矢と共に逝くとは想えなかったからだ……
真矢は「何故?私も今後も烈と共に行きたいわ!」と言った
烈は仕方ないと想い宗右衛門を出した
「それは土台無理な話となる!
烈は今後は宗右衛門としての役割が大きくなるからのぉ!
当面は学業優先で休まず逝かねばならぬ
長瀬が落第が嫌なら休まず通え!と脅しておるし、そうなると時間が足りぬからな
もう共に逝く事は出来ぬのじゃ!」と何とか切り抜ける事を言った
だがそんなんで引く清四郎と真矢ではなかった
真矢は「宗右衛門、烈の子供の時間を邪魔しないで!烈はまだ子供なのですよ?
祖父母と共に逝くのを嫌がらないのは子供のうちだけなのですよ!」と言った
烈が榊原を見る!
榊原は仕方なく「母さん、大人な僕は今も貴方とお出掛けしてもよいと想ってます!」と言うしかなかった
「伊織!」
怒った母は今も怖い
「はい!」
「黙らっしゃい!」
「はい……」
仕方なく康太が「義母さん、烈がまたチビリますって!」と言うしかなかった
「例え烈がチビろうとも、私も清四郎も引きません!
なので烈、また一緒に行ましょうね!」
と謂われたら「はい……」と謂うしかなかった
康太は「話は着いたな、レイと凛と椋は飛鳥井に残りオレの子との絆を結び果てへと繋ぐ礎となれ!
律は真矢さんちに行って違う道を逝くが良い!
それで異論はねぇな!」と家族や仲間全員に問い質した
皆 異論はなかった
清四郎は凛に「律の事が気になるのなら、私の家に来なさい!
律は取り敢えず客間に寝させますが、康太に律と凛の部屋を作って貰いますから!
何時でも来ると良いです!
椋もレイも君達もです!
何時でも好きな時に来なさい!」と言った
凛、椋、レイは頷いた
こうして見ると3人はもう軌道修正された己の道を歩んでいた
明日の飛鳥井の礎になるべく、決められた道を歩み始めているのを理解出来た
慎一が「ならば凛は俺の部屋で生活させましょう
と謂うかレイは烈の部屋で布団を敷いて寝てますが、狭いのでレイも椋も俺の部屋で面倒見ます
菩提寺へ修行に行くのも全員なので、マイクロバスを買わねば乗せられません!なので購入して下さい!」と提案と要望を口にした
康太は「伊織、全員乗せられるマイクロバス買ってくれよ!」と言った
「解りました、今夜お強請りしてくれたら買ってあげます!」と悪どい顔をして言った
康太は「なら頑張るかな?」と笑っていた
新婚な二人の会話に家族は安堵する
この二人はこうでなくては心配になるのだ
この夜 康太は榊原にサービスする為に頑張っていた
榊原の肉棒を舐めて陰嚢を揉む
榊原の鬼頭の鈴口はぱっくり口を開き精液を垂らしていた
それをチョロチョロと舐められ、榊原はイキそうになるのを我慢していた
妻にサービスしてくれたらマイクロバスを買ってあげます!と言った手前、サービスしてくれてる妻を止める訳には行かなかったからだ……
指が陰囊の奥の筋をなぞり、射精を促してやんわりと揉まれる
伊織の性器は血管が浮き立って凄い事になっていた
「康太……あぁっ……君に触らせて……」
「サービスしてって言ったやんか」
「なら君のアナルに精液をかけさせて……」
榊原はそう言うと康太を抱き締めてキスをした
榊原の舌が康太の口腔に侵入すると、康太の舌を絡め縺れて吸う
喘ぎさえ閉じ込めて、榊原は己の肉棒を康太の穴に擦り付けた
少し挿れ出し入れされると、康太は榊原に縋り付き、自分の性器を榊原の腹に擦り付けた
執拗な接吻から逃れて、喘ぐ
「ねっ……ね……挿れてっ……」
「かけさせてくれるんじゃないんですか?」
「射精したいなら、オレの中で……」
「ならこのまま押し込んで良いですか?」
「来てっ……早くっ……」
榊原は一気に康太の中へ挿入した
衝撃が康太を襲う
何度挿れても挿入時の衝撃は大きい
雁首が開いたままなら、尚更だった
中へ入ってしまえば、開いた雁首で擦って貰いたくて中が扇動する
榊原の肉棒に絡み付き、早く……と促す
榊原は夢中になり腰をグラインドさせた
ぬちゅぬちゅ ぐちゅぐちゅ と卑猥な音が部屋中に充満する
キスを強請って榊原の背を掻き抱く
だが長くは続かない
喘ぎが漏れて息を吐きださねば酸欠になりそうだから…
康太の唇が離れると榊原は康太の乳首を吸って、カリッと齧った
その痛みに快感が上乗せされ……康太はイッてしまった
榊原も康太の中に熱い飛沫を飛ばした
はぁはぁと洗い息遣いが聞こえる
だか休む暇もなく榊原の肉棒を康太の腸壁が蠢いて育てて逝く
「君の中、止まりませんね」
「知らねぇよ…ぁ…大きくするなよ……まだ休ませろ……」
「君の中が僕を育ててるんですよ?」
「あぁん……また来るっ……」
ゆらゆらと腰をくねらせ快感を求める
榊原を焚き付けて止まなくするのは、康太の方だって事を本人は知らない
「君の中、赤く熟れて美味しく畝っているんでしょうね
まるで柘榴の様に……熟して汁を溢して誘うんでしょうね」
まだ余裕がある榊原が憎らしかった
だから思いっ切り締め付け腰を揺する
榊原は思わずイキそうになり、その悪戯な腰を押さえつけた
「僕をイカせたら、君と同じにイケませんよ?
そしたら君の中に僕のカタチをしたディルドでも、挿入しましょうかね?」
「やだっ…伊織じゃなきゃ嫌っ……」
榊原は康太に口吻けた
「愛いしてます奥さん」
「オレも愛いしてる伊織」
軽い口吻けが互いを求め深くなる
榊原は注挿を早めた
尽きぬ欲望に駆られて互いを求める
榊原はゴロンと転がると、康太を上に乗せ下から突き上げた
自分の体重でより深く榊原の肉棒を食い込ませ、仰け反った
「あぁっ……伊織…‥深いって‥‥…」
「好きでしょ?君の好きな所でしよ?」
康太の好きな所を榊原のカリで擦り上げる
もう何も考えられず髪を振り乱し、快感に耐えて自分で乳首を摘んで弄っていた
手が自分の性器に伸びるのを、榊原が止める
「僕のだけでイッて……」
そう言い繋目を指でなぞり、指を挿れる
「裂けるって……あぁっ…やだ動かさないでっ」
「君を傷付けたりしません
もぉ柔らかい君が指だって好んで飲み込んでいるんですよ」
「伊織っ…伊織……イクっ………イッちゃう……」
「イッていいですよ、2回目に突く時にイッて!」
大きく康太を突き上げると、2回目で二人は同時にイッた
この夜はかなり執拗に愛されサービスし、康太はヘロヘロになった
止まらない榊原は何度も何度と康太を求め、康太の中へ熱い飛沫を飛ばした
榊原は欲望の総てを康太の中へ注ぎ込むと、胸の上に康太を抱き上げて、静かに抱き締めた
ピタッと重なる肌が静かに熱を冷まし、息を落ち着け始める
榊原は「明日、マイクロバス見に行きましょうね!」と謂うと康太は指一本動かすのが億劫で、コクッと頷いた
物凄く疲れて、康太はそのまま眠りに落ちた
榊原は眠った康太を浴室に連れて行き、精液を掻き出し、中も外も綺麗に洗った
そしてソファーに康太を寝かせてベッドのシーツを変えると、二人で懐き合い眠りに落ちた
次の日機嫌の良い榊原がマイクロバスを康太と慎一を連れて見に行き購入した
これで迎え入れる準備万端となった
一度に3人の子供が増えたのだ
飛鳥井はてんてこ舞いの生活を送る事となった
知能指数を測定して、栗栖がその子に合った勉強を教えた
そして久遠に謂われ予防接種も受けた
予防接種は一度も受けてなくて、保育所に入れる前に受けねばならぬ予防接種を受けさせた
一度に3人の予防接種をする
全員泣くから宥めながら健康診断と予防接種を受けさせるしかなかった
予防接種を済ませ、栄養失調の治療をする
目まぐるしく慌ただしい日々を家族で協力して治療に当たっていた
育児放棄された子供達は日々少しずつ食欲が増えて、標準体重になって来ていた時、康太は次代の転生者を一族の者に顔見世する事を決めた
一族の者への顔見世は忙しい日々を鑑みて、Zoomの飛鳥井の一族の者が有するキーナンバーで見られるネット回線で配信される事となった
総代の瑛太が「今日は総て配置された者を紹介致します!
次代の真贋と転生者を此処に紹介する事となりました!」と言い全員の顔を映し出した
「紹介するのは、【次代の真贋】 【宗右衛門の転生者】 【竜胆の転生者】 【稀代の真贋を継ぐ者】 【宗右衛門を継ぐ者】となります!」
とテロップを出して自己紹介して逝く
翔が「次代の真贋の飛鳥井翔です」と謂うと
烈が宗右衛門の声で「宗右衛門を引き継ぐ飛鳥井烈じゃ!」と貫禄の自己紹介をした
竜胆も負けずと「竜胆を継ぐ者 飛鳥井凛だ!」と言い
レイは先日 菩提寺で覚醒の義を行い、覚醒した声で「稀代の真贋を継ぐ者 飛鳥井レイです」と立派に言い切った
そして東矢が「宗右衛門を継ぐ者 飛鳥井椋です!」と自己紹介した
稀代の現真贋が顔を出して
「飛鳥井の1000年続く果てを宗右衛門が築かれた!
我等の転生は今世で終わるが、時代のニーズに沿った転生者が次代へと繋ぐ!
飛鳥井は終わらない!
飛鳥井宗右衛門が1000年続く果てへと繋がれたからだ!
以後、この者達は明日の飛鳥井の礎となり転生を繰り返される事となる!
今世は顔見世の為に転生されたのだ!
此処に一族の者に顔見世する事とする!」
と宣言した
宣言したした果てはもう変えられない
総てが軌道に乗り1000年続く果てへと踏み出した瞬間だった
「来年の新年からは全員が皆の前に並ぶ事となる
以後 お見知り置きを!」
そう言い康太は深々と頭を下げた
「後一人 次の転生で終わりを迎える源右衛門を継ぐ者も今世は誕生された
この者は今は静かな時を送らせたい故、顔見世は来年の年始にするもりだ!
一応頭の端に入れておいてくれると助かる
これで次代を担う転生者の顔見世を終わる!」
次代の転生者の顔見世配信は滞りなく終わりを迎えられた
後日談
竜胆の母となった人は土蔵の近くの山で白骨遺体となって発見された
一族の者の問い掛け調べを進めると、大学に入った年に方不明になった娘じゃないかと、名乗り出た一族の者がいた
名乗り出た者と白骨遺体で見つかった者とで、DNA鑑定をした結果、親子である確率99.99%で間違いなしとの結果が出た
家族はやっと還って来た我が子の遺体を引き取り荼毘に付し墓に入れた
そして竜胆を継ぐ者が孫であると知ると
「陰ながら見守らせて戴きます!」と祖父母と名乗る人が言った
竜胆はやっと母である人が安らかに眠れると安心した
土蔵の持ち主は依然と発見出来ず、出来過ぎた話にキナ臭さを感じずにはいられなかった
律と名付けられた子の母も既に無縁仏に入れられた後で、遺骨は既に撒かれてどれか解らぬ状態だと謂われた
後味の悪い感覚だけ遺し、転生者の捜索は無事終える事となった
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