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第93話 【R&R】創り出す世界

東神奈川のビルにマーカーを引き、そこまでは崩していいがマーカーから下は崩さないように指示した 社員は烈の指揮の元、緻密な取り壊しを行っていた 夜も警備会社に警備を依頼して、現場の保全に尽力した 本当ならお盆過ぎからの着工が早まり、工程も全部狂って来てしまっていた 地上に大型クレーンを置いて上から順番に取り壊して行く 所々穴が開けられたビルは倒壊の危険があり作業も慎重にやらねばならない状態だった マーカーがついてる上まで何とか壊し、穴ぼこのビルはやっと危険性を排除して在るべき存在へとなれた 上から何時倒壊してくるか解らぬ恐怖がなくなると、後は手で彫刻ばりの緻密な作業となり少しずつ削って微調整する 大雑把に壊して良い場所は康太自らハンマーを振り上げて壊した まるでバッティングセンターでホームランでも打つかの様にボロボロ壊していく様は、社員達も目を見張って活気づいていた だがお盆が過ぎると会社も通常業務になり、現場も再開となり、一日中東神奈川にいられる事も出来なくなって来た 自分の担当する現場が再開すれば、そっちが優先となるのは仕方がない事なのだ 休みの間に倒壊の危険性をなくしてもらっただけでも、有り難い話だった それでも差し入れを持って城田、愛染、瀬能達を始めする社員達は、通い続けてイベントを成功させようと協力していた 仕事上がりの職人が手伝ってから帰って行く そんな皆の協力の元、東神奈川のビルは荒廃した世界観のあるビルへと生まれ変わった ビルの微調整が終わると、職人に倒壊しない様に固めて固定してもらう 連日、イベント会場を作る為に烈は心血を注いでいた 新学期が始まっても、それは変わらず 朝学校に行き勉強をする 帰りにその足で栗栖に東神奈川の現場に送って盛らう そして夜になり家に帰りご飯を食べて、気を失ったみたいに寝る、そんな日々だった 飛鳥井の家族も連日打ち合わせや、社員教育をどうやったら良いか、を会議を開いて話し合う 宗右衛門に問おうと想っても東神奈川の現場に出ずっぱりとなっているから、どうしたものか?と思案する 現在の溜まった仕事に、それ以上の問題を抱えて四苦八苦していた 康太と榊原と仕事に行って帰って寝ると謂う、ハードスケジュールを熟していた そしてその合間に愛し合う………が体力がなくて一度で満足して寝る 昔では有り得ない現状に榊原は苦笑した まさか僕がね……忙しさに性欲が負けてしまうなんて……有り得なかった だが連日のスケジュールに辟易しつつも何とか熟していた 翔も五通夜の儀式を正式に執り行う日が決定した レイと椋も三通夜の儀式の日程が決まった レイと椋の儀式には烈が介助人として参加する予定となった その前に竜胆の実力が怠ってはいないか? 覚醒の義が行われた ブッちギリで完遂してその腕は鈍っていないと証明した 儀式はイベントの始まる前に行われる事と決まった それが決まった菩提寺も右往左往の大騒ぎとなった! 準備に取り掛かる 厳しい竜胆の目に、他の寺に行きたいとまで言い出す僧侶も出る程だった 飛鳥井は変わりつつ在った 菩提寺も会社も一族も、全てが変わりつつある中にいた 変革期 果てへ繋ぐ時  更に改善された世界へと逝かねばならない まさにそれだった 翔も忙しく互いの訓練をしつつ、レイや椋の訓練も見る 顔つきの変わった翔はまた逞しくなっていた 兄弟はそれが嬉しくて、少しだけ悲しかった 東神奈川のイベントが告知された 大々的に告知されチケットは即日完売となった 隼人はイベント会場に入り、何をやろうか?と連日考えていた 竜馬が「一度自分がどんなステージに立つのか、映像を見てみます? そしたらイメージも湧くし、ステージに立った時、貴方はどんな姿を見せてくれるのかも解ります!」と言った 隼人はさっぱり想像出来なくて困っていた だが本番さながらのプロジェクションマッピングが隼人の目の前で投影され流された 音はまだ着いてないか、その世界観は隼人が想像していたのよりも遥かに大きくて壮大だった 体が自然に動く 踊りだったりダンスだったり、歌だったり その時の気分でやって良いと謂われた 隼人はそれが嬉しくてに自然に踊りだしていた それに音が加われば、【R&R】の世界観は出来上がるのだ メンバーは「最高の出来だね、一条隼人ってよく知らなかったけど、こんな凄い俳優だんだ!」と賛辞を述べた メンバーとコミニュケーションも取りつつ、自分の想いも伝える 微調整して隼人の意見を取り入れつつ手直しして行く そして音を話し合って入れて行く その出来はため息が出る程に美しく、荒廃した世界観を見事にだしていた メンバーはこんなに仕事が楽しいと想った事はなかった 夢中になりイベントを最高のモノにしようと更に高みを目指す そして迎える9月15日だった そのイベントの一週間前、烈は白い着物を着せて貰い、レイと椋の三通夜の儀式の日を迎えていた レイと椋は相当竜胆に鍛え上げられたのか、顔つきが違っていた 烈はまだ体力がないから、一日目は介助するが、2日目は翔が介助する事となった そして三日目は竜胆が介助して三通夜の儀式は終了となる 三通夜の儀式一日目は魑魅魍魎の殲滅 兎に角力がいる大変な儀式だった 取り漏らした魑魅魍魎は烈が草薙剣で薙ぎ倒し斬り倒していた 烈が「とりのがし おおいにょ!」と檄を飛ばす レイと椋はヘロヘロになりなんとかこの日はやり過ごした 烈の介助はこの日のみで、烈は帰る事となり変わりに翔がやって来た その場には姿こそ出さないが竜之介が二人をサポートして見守っていた 二人に課せられ試練は小さい事もあって2日目、3日目が魂の選別となっていた 二人はヘロヘロになりつつも、何とか熟していた最終日 試練もあと少しとなった、その時 二人の前にヘビーモスの様なモンスターが、姿を現した まるで榊原の儀式の時に現れたモンスター同様の姿だった 竜之介は何故?こんなプログラムはなかった筈なのに……と唖然となり姿を現し二人と竜胆を護る様に立ちはだかった 烈はイベント会場にいたのだが、レイと椋の危機的状況を感じでその場から姿を消した 竜馬は目の前で烈が姿を消してパニックになり、康太に泣きながら電話を入れた 康太は電話に出るなり泣きながら話してくる竜馬の言葉に唖然とした 「康太さん 烈が目の前で消えました どうしよう……俺……どうしたら良いですか?」 と泣きながら訴えてくる 康太は何が起こっているのか解らず 『竜馬、烈はオレが探す だからお前は心配せずにイベントに心血注いでくれ!』 「見つかったら電話して下さい  心配で何も手に付きません!」 『解った!暫し待ってくれ!』 そう言い康太は電話を切った 康太は榊原を見た 榊原も心配した顔して康太見ていた 今 烈が飛んだとしたら、レイと椋何かがあったからなのだ! 榊原は瑛太に「烈が竜馬の前から姿を消した!と竜馬から電話がありました! レイ達に何かあったから烈は姿を消したと想います 直ぐに菩提寺へ行きたいと想います!」と言い会議を中断し菩提寺へ駆け付けた 烈はレイと椋の異変を感じて、その場へ飛んだ もの凄い力を要する事を体力のない烈がやった 飛んだ後ガス欠になるのが解っていても飛ばずにはいられなかった 飛んだ先にはヘビーモスみたいなモンスターが立ち上がり爪を尖らせて二人を狙っていた 自分には二人を護るだけの力はない 竜胆も式神を飛ばして対戦していたが、ヘビーモス相手には太刀打ちできなくて……どうしょうか?思案していた 烈は此処へ飛ぶだけで力を使い果たした 自分では護れないと踏んだ烈は 「ちちじゃ!たしゅけて!」 と父に頼んだ! 渾身の願いを込めて助けを求めた その時、マサカリが飛んで来て、ヘビーモスの体を真っ二つに斬り裂いた ヘビーモスは真っ二つになりドサッと倒れた! 飛ばしたマサカリが手元に戻り、神威はスーツを着たままマサカリを担いだ! 「烈、おめぇ愉快な化け物と遊んでるじゃねぇか!」 「こんにゃの、ぷろぐらむにはいってにゃいのよ」 と烈は泣いていた レイが烈を抱き締める 「プログラムにねぇのは出ねぇだろ? ならば誰かがお前等を殺そうと仕込ませたに決まってるだろうが! 烈、おめぇ何やろうとしてるんだ?」 「あすかいのごぼうせい」 神威は顔色を変えた 「四半世紀やられてねぇのをやる気か?」 「そうなのよ!」 「ならば、今後は動きにくくなる奴が入れたんだろ?」 そこへ康太と榊原が到着して試練の間に強引に押し入った 康太は「何があった?」と訪ねた すると烈が「もんすたーでたのよ!」と母に言った 神威が烈の助けを聞き入れて来た時にはヘビーモスみたいなのが立ち上がり爪を伸ばして襲う所だった、と説明した 烈は「たしゅけたかったけど、かずけつになったのよ……れも、あのてがふろおろされたら……まちがいにゃくけがするか……しぬしかにゃかったのよ」と説明した 康太は顔色を変えた 「ヘビーモス……伊織の試練中に出た奴の再来か? 何でこんな小さい奴の試練にそんなモンスター出すんだよ!」と怒った 試練の間の襖がスパーンと開いた 城之内達は慌てて康太の前に姿を現した 「城之内、獅子身中の虫飼ってるぞ!  お前の先代の住職みたいにな!」と言い捨てた 城之内は顔色を無くして「俺はそんな事はしねぇ……」と唖然となり呟いた 城之内の妻 水萌は「夫は邪心など抱いておらぬ!」と言い捨てた! 康太は「誰も城之内がやったとは言ってねぇよ! 誰よりも信頼出来る存在なのは変わらねぇし、流生の師匠がそんな事をする訳がねぇからな! だから腹心の中に邪心を抱く奴の子飼がいるとしたら?容易いじゃねぇかよ?って事だ」と言った 人間不信になりそうな現状に城之内は頭を抱えた 竜之介が出て「父には荷が重い、なので俺がやりす!」と言った 天真爛漫な城之内に人を疑わせ探るような行為自体、土台無理な話となる 康太は「飛鳥井の五芒星の話、誰も知らねぇよな?」と問い掛けた 城之内は「飛鳥井の五芒星?何よそれ?それが関係あるのか?」と問い掛けた 本当に知らない顔で問い掛ける 康太は烈を見て「誰かに話したか?」と問い掛けた 烈は宗右衛門に変わって 「あの日あの場所で初めて話した! あの日が初めてなのに、こんな手の込んだモンスターを入れて阻止しようとした! と謂う事は既に白馬は筒抜けじゃったのじゃ!」と吐き捨てた だから何故、と意味を問うとても答えなかったのか…と康太は理解した 竜胆は泣いて悔しがった 烈も泣いていた 康太は烈を抱き締めると「お前に何もなくて良かった」と言った 宗右衛門を失う事は、飛鳥井にとってダメージとなるばかりか、独り立ちしてないレイや椋が路頭に迷う事となるのだ 神威はマサカリを仕舞うと「此処からの話は俺の領分を超える事となる! だから俺は帰るとするわ!」と言い烈を抱き締めると、神の道を開き帰って行った 康太はガス欠でヘロヘロの烈の姿を見て、久遠に怒られるな……と感じた 榊原はポケットからカニパンを取り出すと、烈に食べさせた 「取り敢えず烈は東神奈川の現場に行きなさい! 竜馬が泣いていましたからね! 誰かに連れて活かせましょう!」 そう言い榊原は手の空いてそうな奴を思い浮かべた 飛鳥井は今 絶賛人手不足だった 烈はモヨモヨとカニパンを食べると 「とうしゃん ばしゅでいきましゅ!」と言った 「それは出来ません! 途中で誘拐されたら僕はソイツを確実に殺しますよ?父を犯罪者にしたくなくば誰かに送られなさい!」と言った 烈は頷いた 水萌が「ならば我が送って行こう!」と申し出たが、城之内が「ダメだ、お前には手伝って貰わねばならない!」と止めた 康太は城之内に「職員全員を、本殿広間に呼び出せ!掃除のおばちゃんから雑用やお手伝いの奴まで全てだ!」と言った 城之内は総ての人間を本殿広間に集めた 康太は「烈、ガス欠でも人は視えるだろ? コイツ等を見た後に送って行くから、仕事してくれ!」と言った 集められた人間は烈の目線の高さになるように座らされた 烈はカニパンをモヨモヨ食べつつ、竜之介にお茶を入れてもらい飲んでいた そして、食べ終わるとゆったりとした足取りで皆の前を歩き出した 「りゅうのしゅけ、あのおちゃにがいのよ! ぼくは、あのおちゃすきじゃないのよ!」 と関係のない話をする 相手は子供だと油断させて本質を視せる 烈は菩提寺の事務員だけど、先代の住職の頃から働いてくれている事務員の前で足を止めた 「まずひとり」 そして「ふたり」とまた歩き「さんにん」と的確に人を視て足を止める 竜之介は「まさか……その人達が?」と問い掛けた 烈が立ち止まった人間は、どれも事務方の職員だったからだ! 城之内も「間違いなく?」と問い掛けた 宗右衛門の声で「それは儂にモノを申しておるのか?」と凄んだ! ガス欠の烈を康太が止めた ガス欠で宗右衛門を出せば更にガス欠になり熱を出すのだ 竜胆が「事務員か、俺の目は事務員の方には向いてなかったわ!」とボヤいた そして呪符を出して呪縛した! 式神を召喚してその者達を見張らせる! 「危うく俺もレイも椋も殺される所だったぜ! 猛獣なんて呼び出して俺達を殺す気だったのは間違いねぇ!誰の差金よ? 飛鳥井の五芒星を張られたら困る奴等の仕業か?」 と怒りまくって止まらなかった 宗右衛門は「竜胆!少し落ち着け!」と怒鳴った すると竜胆は大人しくなった 火の着いた竜胆は真贋か、宗右衛門でなくば止まらない 康太は「宗右衛門、コイツ等は人間か?傀儡か?反魂か?解るか?」と問い質した 「ぎょめん がすけつなのよ」 「ならばこの者達は廊にいれおくとしよう! 後日、宗右衛門視てくれ!」 「わかっちゃの!」 烈は母の顔を見た、すると康太は頷いた 竜之介は本殿の奥深くにある牢へと三人を連れて行った 烈は竜胆の耳元で何やら謂うと竜胆は頷いた そしてフウッと息を吐いて、何やら飛ばした 「かぁしゃん だれかよんれくらしゃい!」 「おめぇは俺が送って行く!」 と言い城之内に「後は頼めるか?」と問い掛けた 「あぁ、解ってる、慎一が後で迎えに来たら翔達を還すから大丈夫だ!」 と城之内は約束した 康太は烈を連れて榊原の車に乗り込んだ 車内では何も喋る事なく、東神奈川へと向かった そして東神奈川のイベント会場に着くと、烈を下ろして康太と榊原は会社へと戻った 現場に烈が戻ると竜馬は泣いて烈を抱き締めた 「烈!勝手に消えないで下さいよ!」 「すまにゃい、りゅーま きんきゅーじたいらったのよ!」 「俺は烈が永遠に行くなくなったらって考えたら不安で……」 べよべよ泣く竜馬の頭を撫でて烈は「りゅーま!きあい、いれりゅのよ!」と言った 竜馬は涙を拭くと立ち上がった メンバーはリーダーの帰還に活気付き、話し合いは続いた より良いイベントにする為に! 隼人も暇を見つけてはイベント会場に来て、会場に慣れつつあった イベント3日前 この日は観客の座席を入れる為に、飛鳥井の社員達は総動員してくれ協力して座席を入れていた その日城田はイベント会場に来ていて烈に 「ひょっとして【R&R】のリーダーって烈ですか?」と尋ねた 烈はニコッと笑って「ないしょよ!」と言った 頭脳集団を纏め、指揮するのが烈なんしゃないか?って想っていた 喧嘩が始まりそうになると烈がそのメンバーを呼び付けて話をする メンバーはより良いのを作る為に熱くなり過ぎていると、程よく烈がガス抜きさせていた 最終判断は烈が下していた それを見てもしや?と想ったのだ 城田は「メンバーのサイン欲しいんですか?」と謂うと、その場でメンバーにサインさせて城田に渡してくれた 城田は感激した だがそのサインは3枚あって愛染と瀬能の分もちゃっかりあったのだ 協力してくれているお礼なのだと想った 城田は座席を入れ始めて直ぐに、壊れたビルのステージと謂う事だから、周りには当然他のビルもあって、そこからならイベントがタダで見えてしまうんじゃないかって危惧していた 「烈、このままではタダで見えちゃう人も出て来る可能性もあるので何かでガードしますか?」と問い掛けた 烈は「しなくていいのよ」と答えた 竜馬がその続きを謂う 「一条隼人さえ見えなきゃ、我等の作り出す世界だけでは何をやってるかなんて解りません! このビルの半径を計算して烈が崩しているので、タダで見ようにも一条隼人を見るのは不可能となります!なので大丈夫です!」 「一条隼人が立つステージを計算して崩したと謂うのかい?」 「はい、それが我らのリーダーですから!」 と竜馬は誇らしげに言った メンバーも親指を立てて笑っていた 城田は唖然となった どんだけ凄いのよ烈 だが目の前の烈は「きょうはあとひつ、かにぱんたべられる!」と喜んでいた 兄達がカニパンの差し入れに来てくれるのだ 一生か慎一を連れてカニパンを持って来てくれるのだ! 城田は「今度何か買って来ましょうか?」と問い掛けた 烈は首を振った 竜馬は「烈は今 絶賛食事制限中ですから! 一日に2個のカニパンのおやつしか食べられないんですよ! 食い意地張ってましたから…痛いって烈、蹴らないで!」と烈に蹴り上げられトホホな気分で許しを請う 「リンゴジュース薄めますか?」と竜馬が言うと烈は首を振った こんな事は滅多となくて 「烈、ひょっとして熱出てますか?」 と、額に手を当て確かめる 熱が出てるのを確かめると、自分のバックの中から冷えピタを出した 「熱、出てるじゃないですか! あと3日で本番ですよ!解ってます!」 「がすけつ らったからね、でたらけよ」 「本当に無理しないで下さい!」 竜馬はそう謂うと冷えピタをおでこに貼った メンバーが心配してやって来る 烈を抱き締めて泣くメンバー達だった そこへ慎一がお迎えに来て、眉を顰めた 「熱出たのですか?烈」 慎一が言う 竜馬は烈が急に消えた事を告げた 慎一は烈を病院に寄り久遠に見せてから帰る算談をして、烈を連れ帰った 病院に寄り久遠に熱か出てる事を話すと 「無理したのか?」と問い掛けた 「きんきゅーじたいらったのよ」と話した 久遠は注射を打ち、薬を処方した 「本当に無茶しやがるな! そんなんじゃ長生き出来ねぇぞ!」と久遠はボヤいた 烈は「こんせはぼくは……ながいきできにゃいのよ らからね、じかんがたらにゃいのよ」と答えた 久遠は怒りまくって 「んとによぉ!おめぇも康太も無茶しやがる! 俺はお前達を長生きさせると決めている! そんな俺に喧嘩を売ってるのか?烈!」 と目を座らせて謂う 「せんせーぎょめん!」   「なら無茶するな! 明日熱が引かねぇなら点滴な!そんな事を言ったからめちゃくそ痛いのでしてやる!」 「それはいやらぁー!」 烈は泣いて謝った、そして泣き疲れて眠ってしまった 慎一は烈を抱き上げて帰って行った 烈をパジャマに着替えさせベッドに寝かせて、慎一はおかゆの準備をする そして帰った康太に烈が熱が出た事を伝えた そして今世は長生き出来ないと烈が言っていた事を伝えた 「だから時間が足らない! 烈はそう言ってました! 康太は知っていたのですか?」 聞かされた康太は唖然となった 榊原も「何ですか?それは??すみません、話が見えて来ません!」と言った 一旦着替えに寝室へと向かい着替えてキッチンに行くと、家族は全員揃っていた 慎一は「康太は知らないのですか?」と問い掛けた 「知るかよ!本当に烈がそう言ったのかよ? ……オレは全く解らねぇ話だから知らねぇとしか言いようがねぇよ! もしそうだとしても、久遠がそんなに簡単には逝かせる訳ねぇだろうが!」 清隆は「何故烈がそんな事を言ったんですかね?」と疑問を口にした 康太は家族に今日のレイと椋の三通夜の儀式の時にヘビーモスの様なモンスターが乱入した事を告げた 玲香が「誰がそんな事を……」と唖然となった 康太は「多分白馬で烈が飛鳥井の五芒星を引くと言ったから狙われ始めてたんだと思う 絶対に引かせたくない者達が阻止して来たと謂う訳だ!」と伝えた 瑛太は「凛とレイと椋は?」と問い掛けた 慎一が「疲れ果てて寝てます 凛は気丈にしてますが、レイと椋は、あんなモンスターが出た事にショックを受けて今後トラウマにならねば良いのですが…」と心配を口にした 榊原も「今回は飛鳥井の会社も大変で、イベントも切羽詰まっていた なので人手不足だったのもあり竜之介に影でサポートさせ、竜胆任せでやらせてしまった そこを突いて来たのでしょう! 子供のうちに手を下せば容易いと思ったんでしょうね」と説明した 康太は「そうなると……顔見世の時から【その時】を狙っていたと謂うのか?」と独り言ちた 家族は顔色を変えた 「今回は何故難を逃れる事が出来たのですか?」と清隆が問い掛けた 「烈が二人のピンチを察して時を飛んで駆け付けたんだよ! だが、体力がなくなりガス欠となった烈は、遥か昔に父だった人を呼んだ……そしてその人が駆け付けて来てマサカリを投げ飛ばして、モンスターを一刀両断にして倒した その一瞬の判断が遅ければ、レイと椋と竜胆は確実に死んでいた! ヘビーモスは立ち上がり三人を狙って腕を振り下ろそうとしていたらしいからな 烈が飛ばねば間に合わなかった……オレ等は竜馬に烈が消えたと電話を貰い菩提寺に駆け付けたが、既に遅かった あの一瞬のタイミングを詠んで助けを求めた烈に、オレ等は助けたられたんだよ そりゃ熱も出るだろう、限界超えて時を飛べばガス欠になって当たり前だわな!」 榊原は康太に「どうします?」と問い掛けた 「どうも出来ねぇとしか言えねぇよな今は…… 取り敢えず、もう中止は出来ねぇイベントを大成功させねぇと、何ともならねぇからな!」 榊原は「烈を狙う輩がイベントを潰しに掛かったとしたら?どうします?」と不安を口にした 榊原が言うと一生が「そんな事はさせねぇよ!」と言った 「烈があんなに頑張って成功させようてしてるイベントを潰してたまるか!」と叫んた 隼人が「神野が事務所を上げてセキュリティを強化してくれると言ったのだ! 誰にも邪魔などさせないのだ!」と言った 康太は「会社の方針も宗右衛門が敷いたレールに乗らねぇとなんにもならねぇからな、取り敢えず会議は中止にしてイベントを成功させる事に今は心血を注ぐ事にする!」と言った 榊原も「そうしましょう!一つずつ確実に着実に進めて行きましょう!」と言った 「菩提寺もな、根が深い話となるからな……あれでは終わらねぇ!」 康太の話を黙って家族は聞いていた 変革期なのだと肌で感じていた 何もかもが変わっていく それに抵抗して藻掻いて足掻いて反撃に出たと謂う事なのだろう……… 問題は山積して頭を抱える位に大変なのに、更に大変になる予感しかなかった だが賽は投げられた 後は成るようにしか成らない 家族はもどかしさに何か言う事を止めた 9月15日 その日東神奈川でイベントが始まった 『我らが作る世界は    決して同じ時を刻まない       我らは常に進化して明日へ目指す                【R&R】』 をコンセプトに打ち出しイベントが始まる ど派手な花火が一発だけ打ち上げられ始まりを告げた ステージは1時間ずつ2ステージの公演となる チケットを販売して数分でSOLD OUTとなり盛況だった 東神奈川の現場は荒廃した世界が広がっていた ステージと観客100名が座る席を用意する その席は音と連動する椅子で【R&R】の所有する椅子だった どのイベントにでもその特注の椅子を観客に座らせる事により、映像と音と振動が一つになり、【R&R】の世界空間を創り出すのだった だから観客は100人限定となり、それ以上のキャパは無理だったのだ 特設ステージと客席、それを誘導しやすく簡易ゲートを用意されチケットの受付をする その作業は神野の事務所スタッフが総出で仕事をする事となった 一条隼人は何もない瓦礫のステージに立っていた 観客は何が始まるのかドキドキして見ていた その日チケットが買えなかった人で東神奈川の現場の周りは凄い人集りが出来ていた 一目 一条隼人が見たい!とファンやら野次馬が集まり出したから警察が出動して直ぐに取り締まりを強化した 隣のビルには一条隼人見たさに止めても止めても人が入る そんな喧騒を他所に、隼人はリラックスしていた プロジェクションマッピングに荒廃した広大な世界が投影されると、隼人は踊りだした この世界に取り残された最後の一人 とばかりに、必死に【誰か】を探す そして歌う その時の想いを歌にする 総てその日、その時、一条隼人が思いを込めて創り出す世界だった 風がそよぐ 大地の一部のように隼人は立っていた 風に合わせて椅子がそよそよと振動する 踊って歌って涙して、隼人は荒廃した世界で足掻いて藻掻いて【生きていた】 それこそが【R&R】の望むべく世界なのだと、メンバーは涙しながら頑張った 一部のステージは圧巻の出来となり終わりを告げだ 30分のインターバルに入り 隼人は楽屋に向かう その顔は笑顔に満ちていた 2部は全く違う世界を隼人は魅せた 愛を語り 愛する人を探す この世にはもういないと解っていても 隼人は愛する人を探して荒廃した世界で愛するという想いを伝えた 観客は隼人の想いにじぃ~ん となり涙した 1時間と短いステージだが見応えは十分にあった 観客は【R&R】の創り出す世界観に一体となり惹き込まれ息まで止めて魅入っていた この話題は翌日のニュースで流れる程の話題となった 顔を一切明かさぬパフォーマンス集団【R&R】の話題で持ち切りとなった そして詰め掛けたファン達はどこを探しても隼人は見られず落胆していた だがその世界観に触れ、次やるならば必ずチケットを買いたい!と言う人で神野の事務所の電話回線はパンクとなりつつあった 今枝も取材嫌いの【R&R】のホームページに取材の申し出たが断られた 今回は限定一組の新聞社の者に取材を許可したから無理だと返答が来た 滅多と取材を許可しない【R&R】が記者を入れたと、その話は駆け巡り騒然とった 【R&R】が取材を許可したのは熊本日報の紺野と謂う記者を名指しで指名した 紺野は、何故??と指名されてビックリしていた 公演が始まる前に控室に入室が許可された だが写真は撮るなと謂われていた 写真を撮って良いのはステージの上にいる一条隼人のみ!とされた 控室に通されると飛鳥井康太がいた 榊原も一生や聡一郎、慎一も家族達もいた 紺野は【R&R】は康太なのか?と想った だが更に奥へと行かされかなりイケメンの外人が6名、見るからに日本人でイケメンが1人、そして子供が立っていた 竜馬が「ようこそ我等が【R&R】へ!」と謂う そこにいるメンバーこそが【R&R】なのだと理解した 竜馬は「我等は顔は出してないので、顔を晒す事は許可しませんが、リーダーが貴方に世話になったと謂うので、是非にと招待致しました! どうぞ、心置きなくステージを撮って下さい!」 と、言われたがお世話などしていない紺野は困惑していた 烈はゆったりとした足取りで紺野の前に出ると、宗右衛門の声で 「熊本に飛鳥井玲香と榊原真矢が出向いた日、貴殿は祖母達の為に動いてくれた 祖母達は儂を助ける為に熊本まで出向いてくれたのじゃ!だから感謝の意を込めて貴殿を招待させて貰った!」と言った あの日……ヘリを用意した事がこんな大きな恩返として返ってくるなんて想いもしなかった 目の前には子供なのに大人の声で喋る飛鳥井烈がいて、紺野は倒れそうになっていた 紺野はカメラマンと共にステージへ前の席へと案内された 約束通り【R&R】の顔はカメラには収めなかった が、ステージはカメラマンに収めさせ、紺野は必死に記事を書いた この日の記事と写真は翌日の朝刊に大々的に記事にされた 爆発的な売上を叩き出し、新聞社はカラーで写真を別刷りして発売した 話題が話題を呼び、イベントは大成功となり、残り一週間を切った 売上金は手数料だけ引いた分を、会社の口座に振り込んだ 烈は「ついか、やらにゃくて だいじょうび?」と問い掛けた 康太は通帳の金額を見て「何とかなるな!本当に助かった烈!」と礼を述べた 「あとすこしらから!」 乗り切ろう!と心に誓う 「れもね……もんだいはさんせきしてるからね」 「だな、菩提寺も手付かずだし、会社もレールに乗せて貰わねぇとな!」 「それはね、ここらとだめにゃのよ」 「………烈?」 康太は何かを言うのを諦めた イベントを終えたら一度話さねば!と想う イベント最終日 烈はステージの上に立っていた ステージの上に立つと 愛しい人よ と歌い出した 隼人はその歌を聞いて、あの日音弥と同じステージに立った日を思い出していた 康太がその日のために作ってくれた歌だった 隼人も歌い始めた  愛しい人よ 愛しい我が子よ 私は決して忘れはしない 愛した日々を 愛された日々を 私の胸に刻んで生きて逝くの 辛い時も苦しい時も 貴方の想いが私を強くする 私は一人じゃない 私はだから前に進むの 忘れないよ 貴方の事は 愛した日々は確かにあった 貴方との子が育つたび 私は嬉しくて泣きそうになるの 支えてくれる友が 護ってくれる家族が 共に生きてくれる友がいる だから進む どんな道でも 悔いのない日々を私は送ると決めた 生きるたびに強く結ばれる絆 断ち切れる事のない 貴方との絆 二人声が重なり響き紡ぎ上げる歌は、人々の胸を熱くさせ、涙を誘った ファンの子達は何故烈なのか? と想った だって隼人の子は音弥なのを知っているから……… 烈は「はやと、がんばったね!」と労を労った 隼人は「全部出し切ったよ」と言った 「でもね、またすてーじにたてば、はやとはそのさきへいくよ!」 「烈………」 「はやとのせかいは、はてへとつづくから!」 烈はそう言い果てを指さした その時、大地から花々が咲き誇り、甘い匂いが漂って来た 木々は揺れ 花々は歌を歌う 風はそよぎ 隼人は歌った 烈が指を指し、その手を丸く描くと、風が巻き起こり花々が舞い散り 荒廃した世界に色が添えられた この日の為だけに烈は大歳神を呼んた 「はなをどはっーっとさかせてくらさい!」と無理難題言った 竜馬はひたすら頭を下げお願いしまくっていた 「おねぎゃいね!」と烈は頼み事をした 大歳神は「ラスト3分だけなら頑張ってやる!」と約束してくれ実現した最期の大仕掛けだった 全てを終えて一条隼人は深々と頭を下げた その横で烈も深々と頭を下げた 東神奈川のイベントの全日程が終了した 観客は飛ばされた花を拾って、大切にハンカチで包み帰って行った 烈は遣り遂げられてホッと息を吐いた 一生は「お疲れ様!烈」と言い労いの言葉を掛けた 現場を撤収するスタッフが機材を撤去すると、榊原と小鳥遊が打ち上げ会を開く場所を教えた 勿論、小鳥遊や神野も事務所のスタッフもそこへ詰め掛け打ち上げをする 未成年の烈には大きなカニパンにリボンをして、本当に小鳥遊は烈にプレゼントした 烈は喜び笑っていた その夜開かれた打ち上げには飛鳥井建設の社員達も参加した 榊原はイベント準備期間から毎日メンバーに約束通り、お弁当の差し入れをしていた 夜には栄養のある弁当を業者に運ばせ完璧にサポートしていた 榊原はその日の打ち上げはカメラの持ち込み禁止とした 微弱な電波を流しスマホを使えなくして、隠し撮りなどされぬように気を使って、完璧に最期まで仕事をした だが、翌日発売の週刊誌に打ち上げ帰りの【R&R】のメンバー達!とされた写真が掲載された まぁその写真は何処から見ても日本人で、完璧に別人なのだが、打ち上げをした店が割り出されていて、竜馬は怒り狂っていた 神野の事務所を筆頭に新聞各社にも顧問弁護士 飛鳥井神威を通して抗議を入れた 「我等はこの先も顔を売るつもりはない! どれだけ乞われても、表に出るつもりはない! 我等は我等のコンセプトを貫く者 【何者に囚われない    何者にも干渉しない       我等の世界     それが【R&R】で在る】」 と神威を通して声明を出した 榊原は「何故こうも馬鹿げた事が罷り通るんですかね?」とボヤいた 康太もこれ以上掻き回されるのは勘弁だった 康太と榊原は烈、竜胆、レイ、椋を連れて崑崙山へと向かった 総結界を張り、八仙に屋敷を借りて話し合う事にした 康太は烈に「お前の果ては狂ってるか?」と問い掛けた 宗右衛門の声で「これがマトモな筈などなかろうて!」と言い捨てた 竜胆は「飛鳥井の五芒星、張らねぇのかよ?」と問い掛けた 「レイは元は神だが、椋は力量不足は否めぬのは事実じゃろ!」と現実を口にした 椋は「この命賭したとしても……張れます!」と東矢の声で言った 宗右衛門は「なら、東矢、此処で力を付けて参れ!」と信じられない事を口にした 椋は「え?今ですか?」と問い掛けた 「そうじゃ!八仙には話は付けてある!」と謂うと八仙が椋を連れに来た 宗右衛門は竜胆に「菩提寺の事務員はどうじゃった?」と問い掛けた 「自害した!翌日牢を見に行くと舌を噛んで息絶えていた!」 「死人に口無しか?真贋?」と宗右衛門は問い質した 「まさか、あの世に行ったとしても、口は割らせるさ! 死ねばそれで解決なんて甘い事はねぇんだよ! って言いてぇけど、闇に染まってて冥土すら渡せねぇって閻魔はボヤいたからな!手を打たねぇとな!」と現実を伝えた やっとイベントが終わり、解体費用を捻出出来たと謂うのに…… 一難去ってまた一難だった

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