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第96話 偽

翌朝の朝刊に【R&R】ユニセルスタジオJAPANと正式に契約! とのニュースが飛び込んで来た 竜馬の携帯が鳴り止まず電源を落とした程だった 竜馬は烈の所へと急いだ 飛鳥井の家を尋ねると、榊原と康太は出社を取り止めて家にいた 康太は竜馬を見るなり 「この記事には【R&R】のリーダーは三木竜馬とあるけど、おめぇ契約したのかよ?」と問い掛けた 竜馬は「冗談は休み休みにお願いします! 俺は【R&R】の片割れですが、烈が知らぬ契約などする訳がないでしょ!」と怒った 新聞には【R&R】のメンバーの顔写真が乗っていた メンバーは10人のグループだった まるでアイドルバリの容姿に、烈は 「こんにゃきらきらちてにゃいのよ!」と怒った 竜馬は「俺等……こんな風に見られていたんすかね?」と哀しげに言った 榊原は「君達は本物の輝きを持ってます! こんな嘘臭い、作り物の存在なんかじゃないですよ!」と言った テレビを着けると神野が出ていた 「彼等はあんチャラい奴じゃなかった 誰なんだよ?アイツ等は!」と怒っていた 烈は仕方く「にゃら、すがたをだすしかにゃいのね!」と言った 竜馬は「え?顔を出したら明日からの生活が成り立たないぜ!」と謂うと宗右衛門の声で 「この世には狼の姿して歌うグループもおるのじゃ!なれば儂らも二番煎じだが、顔を隠して出るしかなかろうて! ちなみに烈は錆兎のお面でいいにょよ!と申しておった!」と言った 竜馬は「それだと著作権発生しますって!」と慌てた 「ならば何でも被って出るか、始めからモザイクの衝立の前で話すか?しかなかろうて!」と言った 榊原は「この機会にYou Tubeチャンネル作りますか? その中で発言して行けば、顔の加工も出来ます!」と提案した 竜馬が「アイツ等そんなんで大人しくなると想いますか?」と言った 榊原は、なる訳ないか……と黙った 竜馬は「俺は大至急と謂う事で、この事態を仕組んだ奴を調査事務所の所長に依頼しときました!」と言った だからその結果を見て、動いても良いか?と提案した 康太と榊原はそれで納得した 相賀と須賀は暇を見つけては飛鳥井を訪ねて来たり、電話を入れて来る だが烈は一度も姿を現さなかったし、電話も繋がらない 学校には行ってるかと、探りを入れても解らない 会社に出向いているかと思っても解らない お手上げだと相賀と須賀が康太に泣きついて来ていた そんな時にこのニュースだ! 竜馬のPCに調査事務所の所長から調査結果が入ったのは、直ぐの事だった 竜馬が開いたPCを康太と榊原も覗き込み…… 康太は固まった 「岩崎……」とその男の名を呼ぶ 康太は「コイツ何がしてぇんだろ?」と呟いた そして報告書の続きを読む 【岩崎は白金建設の役員にお金を貰って飛鳥井の妨害をしろと!謂われて動いてる だがどうやら、それだけではない 裏ではもっと大きな組織と繋がり、根底から飛鳥井の息を止める為に動いている駒 そして東神奈川の件で【R&R】が出て、飛鳥井を救ったから、ソイツ等を潰す為に動いた とされている ちなみにユニセルスタジオJAPAN事務所との契約金は3億!との事!】 竜馬は「3億……俺等貰ってないのに3億っすか!」と驚いて叫んだ 榊原は「早目に手を打たないとなりませんね!」と言った 康太は「3億好きだよな?上間美鈴の件から3億続いてるよな?」と言った 榊原は顔色を変えてと「それって白金建設の3億から続いてるんですよね? 此の報告書にも白金建設出てるし、どれだけ目の上のたんこぶなんですかね?」と終わってない事件を口にした 竜馬は「俺等も腹を括る事にする! どの道、顔がバレても我等は会社員努めしている訳では無い だから困りはしないが………」と言い淀んだ 「あんなんだよ?言えよ」 「アイツ等はマックにバンバン行くし、立ち食いそば屋とかガード下の屋台で飲んでるからな 目に着かねぇのが一番なんだよ  身バレしたらゆっくり飲んでられない それが嫌で顔出しNGなんです!」とボヤいた 「ならば顔出ししないように工夫して会見を開けば良いんだよ! 【R&R】のリーダーを知らねぇ奴が竜馬の名を好き勝手に使ってるんだからな やはり倍返ししねぇとな烈!」 「そーなのよ!ぼくのふゆやすみ、だいにゃしにされたらいやらもんね!」 とフンフント鼻息荒く言った そして「かぁしゃん したきゃんだ」と訴えた 榊原が烈をあーんとさせお口専用の消毒液を塗る 康太は「烈は人より舌が短いんだよ、だから滑舌が悪いし直ぐに舌を噛む… ガタイが良いから健康優良児かと思われがちだが、皮膚は弱いし、母親の妊娠中に栄養不足だった事が、結構体に出てるんだよ」と伝えた 榊原も「入学前に発声練習とか入れてたんですがね、発音の先生から烈は人よりも舌が短いからこれ以上は本人を傷付けるって謂われて止めたんですよ だから滑舌が悪いが……もう少し大きくなれば口腔内も固くなるから発音も良くなると思うと久遠先生も言ってくれてますから、治ると想うのです それまでは大変だろけど堪えてくださいね」と言った 竜馬は全く聞かされてなくて、滑舌が悪い事弄っちゃったじゃないですかぁ……と想った 竜馬は「どんな烈でも烈ですから!」と言った そして「烈、来てくれ!今後の対策しねぇとならねぇ!」と謂うと立ち上がった 「ふゆやすみ……たのちみなのに……」とボヤいた 榊原が「我等も参加して良いですか?」と問うと 「構いません!」と言い地図を差し出した 「俺と烈を乗せて行って下さい!」 と謂うと榊原は立ち上がり応接間を出て地下駐車場へと向かった 後部座席のドアを開けると、竜馬と烈を乗せて、助手席のドアを開け康太を乗せると、運転席に乗り込んで車を走らせた 竜馬は榊原に「そこにメンバーを集めています!」と言った 康太は「なら手を打たねぇとな!」と言い、神野へ電話を入れた ワンコールで電話に出ると康太は「おっ!オレだけど」と話した 神野は『康太、朝刊見ましたか?』と叫んでいた 「あぁ朝イチで見た、そしてTVでおめぇが文句言っているのも見たぜ! まぁ自分達が【R&R】だと謂ったって仕事すればボロが出るからな、大々的に発表したってどうにもならねぇのは解っているんだけどな、竜馬の名前で契約されちゃ竜馬が3億の違約金取られる可能性もあるからな、手は打たねぇとな」 「俺は全面的に協力します そして須賀ですが、落ち込んでて見てられません…何とかして下さい!」 「須賀か、あればな烈を甘く見たから、手痛い竹箆返しされたんだよ! まぁ何にせよ、須賀も相賀も入れて手を打ってもらわねばならねぇかんな! 今から送る地図に皆を連れて来いよ!」 と言い地図をPDFファイルにして転送した 榊原は竜馬が示した地図へと到着した そこは見るからに貸倉庫みたいな建物だった 車を停めて中へ入るとメンバーは既にいて、竜馬を見ると文句を言った デービットは「3億 己で 稼ぐねん!」と怒っていた 「俺は契約なんてしてねぇ! そしてリーダーは俺じゃねぇ! 知っててイチャモン着けてくるな!」と怒った ダニーも「我等の契約金が3億程度とは! 笑わせるな!」と怒った 竜馬は「10億の契約金出された事もあったからな! だから俺は契約してねぇんだよ!」とボヤいた 烈が前に出ると宗右衛門の声で 「この戯け者!今こそ冷静ならずしてどうする!」 と一喝した メンバーは静かになった 康太と榊原はその光景を笑いながら見ていた 自我強過ぎですがな……と康太は想った 榊原は一歩前に出ると「今後の話をします!」と言った 皆はテーブルの前の椅子に座り、話を聞く体制を取った 静かになった所に神野が相賀と須賀を連れてやって来た 須賀は烈を目にすると深々と頭を下げた 烈は「きにすんにゃ!すぎゃ!」と言った 須賀は「我等は【R&R】の存在を知る者として、偽物は許してはなりません! そして烈、改めてイベントをしませんか? 縛りなど一切ない、だけど皆が楽しめるイベントをしませんか?」と改めて申込みをした 烈は笑って「それいいにょ!」と言った 相賀が「なれば動くとするか!メンバーの皆には変装をして貰う事となる 顔を出したくないとの事なので、それで宜しいか?」と尋ねた メンバーはブンブンと頷いて納得した 神野は「顔のイメージは小物アイテムで変わるとされるスタイリストの公家宮詠子先生が協力して下さる事となった! なのでこのまま来て下さい、そしたらそのまま反撃の会見を致します!」と言った 須賀は「烈はどうします?会見に出ますか?」と問い掛けた 烈は母を見上げた 康太は「学業に支障が出るかな?」と言い榊原を見た 榊原は「烈はそのまま和服でも着て出なさい!」と言った メンバーを護りたいと謂うなれば隠れていてはメンバーは護れはしない!と踏んだ榊原の言葉だった 烈は両親からGoサインを貰ったから、そのまま出てやるつもりでいた 「にゃら、そーえもんのきもにょ、きないと!」と楽しそうに言った 流石とそれは……と榊原は止めようとしたが、康太が 「おっ!それは良いな! おめぇが着れる和服はそれしか許されねぇからな!」と言った 宗右衛門が生涯、袖を通して良い着物は転生者の着物以外は許されてはいなかった 榊原もそれを想い、止めるのをやめた 康太も生涯着れる着物は真贋の着物のみなのだから! 康太は慎一に連絡すると烈の転生者の着物を持ってきてくれ!と頼んだ 須賀は都内のホテルへ移動すると伝えると、ホテル名を告げた 康太は「これから移動するから、ホテルの方へ一生を連れて烈の転生者の着物を持って来てくれ!」と伝えた 慎一は「即時に動きます!」と伝えて動いた 神野、相賀、須賀が連名で夜に記者会見を開く事をマスコミに一斉送信した 小鳥遊が「会見場押さえときました!」と言い現れた 小鳥遊は烈に「年末に想い出作るイベントやるんでしょ?我等も参加させて下さい! それをテレビに流せば縛りもないし、お金の心配せずに好きに君達が描く世界を作れます! その為の顔見世の記者会見だと思ってください!」と言った 烈は瞳を輝かせ「おもいで、できるにょ?」と喜んだ 竜馬は気合を入れた こんな所で挫けていたら、烈の目指す果てへなんか逝けない… 榊原は神野達に竜馬と烈を任せて、康太と共に会社へと向かった 竜馬達が妨害を受けているのだ そんな奴等は会社に何かしたくて手薬練引いているに違いないのだ! 烈は竜馬に抱き着いていた 竜馬は烈を安心させる為に強く抱き締めた こうして見れば年相応の子供だった 心細いに違いない…そう思っていたら違った 竜馬は「烈は今も神経系の蛇毒の毒に苦しめられて、時々手だけじゃなくて体も震えて止まらない時があるんです!」と伝えた 過酷な現実が神野や相賀、須賀に突き付けられていた 「きしゃかいけん、また…ないふもってたら…あうとなのよ、りゅーま」 「本当に飛び道具好きっすもんね! ならば記者会見に入る記者は金属探知機やりますか!」 と簡単に言った 「そーね、でにゃいと、からだがもたにゃいのよ!」 須賀は「ならば金属探知機より身体検査に持ち物検査すれば、良いんじゃないんですか?」と問い掛けた 竜馬は「ならば徹底して下さい!ではなくば記者会見など夢のまた夢と終わります! 烈は上間の件で死にかけた、その時上間が建てようとしていた豪邸が3億で、東神奈川のビルがまともに建たねば3億の損失で、偽物の契約金が3億でした なので本物が出るならば、何としても消しに来るかも知れません!」と現実を口にした 相賀は「何故そこまで飛鳥井が追い込まれているんだい?」と問い掛けた 烈は相賀の瞳を射抜き宗右衛門の声で 「飛鳥井は半径2キロを中心とした五芒星を引いた それには今後何物も妨害出来ぬ鉄壁の結界が要っからじゃ! じゃがそれをさせたくない者に狙われた 始まりは転生者が生を成した時から始まっておった 儂は次代を継ぐ転生者を探し出し、1000年続く果てへと繋ぐ死命をおっておった それで春先の熊本に話は繋がるのじゃ!」 相賀は花柳悦郎の件で康太と連絡を取ったとき、康太は烈が死にそうだから駆け付けねばならぬと言っていた 何処に入院したのかは教えてはくれなかったが…まさか、そこから始まっていたと謂うのか…… 「熊本にいた転生者は死にかけで儂が気を送りやっと息をしていた、そんな感じじゃった 儂も死にかけで心配かけたが、それでも成し遂げねばならぬ死命があった そして次は千葉の爆発に巻き込まれた時じゃ! あれは結界が張ってあったから、途方に暮れて取り敢えず切ったのじゃ、そしたら大爆発となった 儂が結界を斬ると見越して、斬ったら爆発するように仕掛けた 熊本も儂が迎えに行き駆け付けても死んでいない、そんな筋書きを書かれておった そして東神奈川は作業員が仕事せずサボっていた 摘発したらビルをぶっ壊す暴挙に出た あのビルの違約金は3億じゃった 飛鳥井が白金建設の手に入れる筈だった3億を妨害したから、飛鳥井も3億の損失を出せ! とばかりに巧妙な偽造して飛鳥井に入って、仕掛けてきたのじゃ! そして飛鳥井の五芒星、あれは行く前から妨害があった 張り終わったら殺されかけた それで烈は未だに手の痺れや体の痺れに悩まされておるのじゃ! 生半可な体制じゃと、誰かが怪我を負う そしてそれは記者会見を開いた【R&R】の責任としたいのじゃろ!」 宗右衛門の言葉を言葉もなく聞くしかなかった そんな想いをして来たのならば、今年最後に楽しい想い出を作りたいと想っても仕方ない事だと想った 相賀は「ホテルへ移動しましょう! そこで公家宮先生が君達を本人とは違う存在にしてくれます!」と行った 【R&R】のメンバーはメンバーの一人が持つワゴン車を乗って来ていた そよワゴン車に竜馬が乗り込み、烈は須賀の車に相賀と共に乗り込んだ 須賀は烈に「今日はカニパン2個食べちゃいましたか?」と問い掛けた 「まだにゃのよ、はばたばたしてて、あさもたべてにゃいのよ」と答えた 相賀が「ならばホテルへ行ったら朝食を運び込ませよう!」と言った 須賀は信号待ちの時にカニパンを取り出して烈に渡した 烈は宗右衛門の声で「須賀、気にするでない!烈は飛鳥井の明日を背負っておる故、己にも他人にも厳しくしか生きられぬのじゃ!」と言った 須賀は「解ってます、ですがあの時私は利益を計算し算段をしていたのは確かです 君達を使うのですから、最高のイベントを成し遂げたかった ですが現状は費用の捻出となるので、どれだけ折れて……此方の意見を飲んでもらえるか? それを押し通そうとしてしまった 烈は想い出を作りたいと言ったのに、私は盛大なイベントにしようと躍起になった あの後相賀と神野の話し合い、やはり私は気が逸りすぎたと想い謝罪をしようと想いましたが、君は捕まりませんでした」と苦しい胸の内を吐露した 宗右衛門は「烈はお主から謝罪の言葉など聞きたくはなかった、じゃから避け通しておったのじゃ! 烈はお主を好きじゃから、好きなお主から謝罪の言葉など聞きたくはなかったのじゃ、許してやってくれ!」と謝罪され須賀は焦った 「お辞め下され宗右衛門殿! あれは私が悪かったのですから…」 「ならば遺恨は残さずチャラでよいか?」 「はい!チャラでお願い致します!」 「それでよい、ならば烈に変わるかのぉ!」と言い宗右衛門は姿を消した カニパンの袋を剥こうとするが、震える手では向けなくて後部座席に一緒に座っていた相賀が封を開けてやった 相賀は「手の痺れ治らないのですね」と悲しそうに言った 「こんせは どくのたいせいにゃいからね」 と前世は毒を飲んでいた事を暗に謂う モヨモヨとカニパンを食べて相賀に渡された佐衛門を飲む 烈は「さえもん、そういえば むかし、ぼくのらいばるが、さえもんらったのよ」と何気なく言いお茶を飲む 康太からお茶なら制限はないけど、ジュースは糖質計算しねぇと飲めねぇんだよ!と聞いていたからお茶にしたのだが…… 須賀はまるで孫と祖父みたいな会話に笑いながら車を走らせていた ホテルの駐車場に車を停めると【R&R】のメンバーは既に到着して烈を待っていた そこには一生と慎一兄弟の姿もあった 慎一は烈の着物を手にしていた 「烈、今日は病院に行く暇がないみたいなので、久遠先生に薬を出してもらいました」と言った 烈は頷いた 相賀と須賀は皆を連れてホテルの中へ入った すると一足先に到着していた神野と小鳥遊がカードキーを手にしていたから部屋へと向かった 部屋に着くと相賀はルームサービスを頼んだ 部屋に12人分の朝食が運び込まれると、メンバーの皆は礼儀正しく朝食を取っていた こんな所はイギリス紳士然としてるな、と相賀と須賀は想った 烈は朝食を食べていた すると竜馬が烈のジュースを半分飲んで持っていた水で半分薄めた そして慎一を見てこんなものですか?と伺う 慎一はそれを見て頷いた そして薬を竜馬に渡した 竜馬は水を汲んで烈に薬を飲ませた 相賀と須賀と神野は薄められたジュースしか飲めない烈が可哀想になった 朝食を終えると公家宮先生が来て、どの様に変わりたいか?一人一人に聞いて写真を取りイメージを加えてPCを操作して作り上げていく 元はそんなに変えなくても小物と髪型とでイメージは変わる そして何よりメイクで別人にする事も可能だと謂われた メンバーは一人ずつどんな感じになりたいか?聞かれて微調整しながら別人のなる様に意見を述べる 早口になると英語になるメンバーの通訳を竜馬がして、正確に伝えて行く メンバーは皆 公家宮の創り上げるマジックに感嘆とし納得した そしてメイクアップアーティストを呼び出し指示して行く! そして公家宮は烈を見て「君はそのまま出るしかないわね!」と言った 顔を売りすぎたのだ烈は…… だから下手な小細工をすれば逆に悪目立ちしてしまう!と言った 烈は頷き、下手な小細工など元より必要ない!と宗右衛門の声で言った 宗右衛門の着物を公家宮自ら着せて行く そして小物として帯に華やかな組紐を巻いて別物みたいにした メンバーのメイクと髪型が出来上がると眼鏡やホクロを施し、出来上がる頃には別人となっていた 公家宮は「今後も長い付き合いをさせて貰えたら嬉しいわ!イメージを沸かせる君達は本当に貴重な存在だから、此方からお願いしたい!」と言い烈に名刺を渡した 烈は「にゃんでぼく?」と聞くと公家宮は笑って 「リーダーは君でしょ? ならばリーダーに名刺を渡すのは当たり前じゃねぇ?」と言った 言ってないのに、一発で見抜いた事に烈は驚きを隠せなかった 公家宮は烈に手を差し出し 「今後とも宜しく!」と言った 烈はその手を取り「こちらこそ!」と言った 「君のクラスに公家宮涼太っているでしょ? アレ、私の息子なのよ、息子から良く君の名前を聞いてるよ! 怪我ばっかしてる友達の名前は忘れないのよ! 臆病で弱気な息子を仲間に入れてくれてありがとう! いじめっ子から息子を庇って怪我した事もあるんでしょ?お礼と感謝の言葉を言いたかったのよ 君と出会って息子は変わったわ 烈の役に立つ存在になりたいと、目標を持って色んな塾へ通いだした 君と出逢わねば息子は今も臆病で弱気なままだった ありがとう烈君!」 「りょうたのおかあさんにゃのね ぼくのほうこそ、したがみじかくてかつせつわるいのに、いつもちゃんとはなしをきいてくれて、たすかってるにょよ! あすかい の、なまえでよってこない そんなにんげんは、めずらしいからね ほんとうのともだちだよ!りょうたは」 烈の言葉に公家宮はじーぃんと胸が熱くなり、涙ぐんだ 「君の為ならば絶対の協力を約束しよう!」と公家宮は言った 烈は笑って「おねがいちます」と言った 竜馬は既に顔出しをしているから、そんなに弄る事なく、元のベースを生かしてスタイリストが選んだスーツを着ていた 竜馬も記者会見で顔を出してスーツで定着したから、出来る男然として今風のスーツを着こなしていた それを見て烈は「りゅーまはかわらにゃいのね」と言った 須賀が「竜馬は既に君の後ろに立ち顔を出してますからね、下手に弄ると三木竜馬だと解らなくなるので変えてません」と言った 他のメンバーは既に別人となっていた 一番変わったのはヘンリーだった 桜林で英語教師をしてるから、別人に見えるようにしないとならなかった 髭を携えダンディで尚且ワイルドに変身した 皆 眼鏡やホクロ、髭や眉毛を濃くしたりと、パッと見別人で本人だと謂われても解らないレベルで変わっていた そうして迎える記者会見だった 相賀 須賀 神野連名の記者会見で【R&R】メンバーが本人が登場する!と宣言した ユニセルスタジオJAPANとの契約は不履行とする為弁護士も同席すると謂う その為に取材する記者は申告制で許可された者だとし、その者達も荷物検査 所持品検査を会見前には受けて貰う!と書かれていた それに同意した者だけが会見場に入れる事となる と明言されれば、取材する方もそれを飲むしかなかった 神野の事務所の真野が取材する会社や記者を飛鳥井の秘書を借りて選別する 西村沙織は厳しい目で選別し篩いにかけていた 「所持品検査は私も同席するわ!」 と謂われれば聞くしかなかった  「私の可愛い烈に危害など加えさるか!」と気合十分な西村はかなり怖かった 記者会見場は弁護士の飛鳥井神威の意見を取り入れ体育館を借りてやる事にした 体育館なれば出入り口は一つにして、逃げられぬ様に手も打てる シャッター1つで全出入り口は閉鎖する事が出来るのだ 用心に用心を重ねて警備員も配置する そこには【R&R】の企業系調査事務所の社長も立会い、緻密な警備体制の指揮をした ゴキブリ一匹逃がす気はねぇ!と気合が入った社長は怖くて部下達は気合を入れまくっていた 企業系調査事務所の社長は烈を見付けると傍へと近寄って声を掛けた 「烈、狙われたんだろ? その後はどうなんだよ?」と問い掛けた 「てがしびれて、えんぴつももてにゃいのよ! へびのしんけいどくよ、たまったもじゃにゃいのよ!」とボヤいた 「今日の会見は俺の命を賭けて成功させてやる! もう絶対にお前に手は出させねぇよ!」 烈はニコッと笑った 「れきや、せいかあげてりゅのね」 「お前に任された会社を潰したらアイツ等に殺される それに……麻莉亜が妊娠したんだよ 家族も増えるからな、頑張らねぇとな!」 もう孕ませたのか……と烈は成るべくして軌道に収まった星を見上げた だがそうなると、はじき出される運命が一つ…… 「ありすはどうするの?」 「アイツはもぉ俺等の家族に収まってる! どうにもしねぇよ!」 「らけどね、いまにんしんしたとしたら、はらのことはんぱつするがうんめい、ぼくのところにつれてくるにょね!」 「烈……考えさせてくれ!」 「かんがえるのよ!たくしゃんかんがえるのよ」 烈はそう言い暦也の肩を叩いた そうして迎える記者会見だった 慎一と一生は烈の周りを警戒して傍に立っていた 弁護士の飛鳥井神威が国際弁護士を連れて会見場にやって来た 国際弁護士は国際弁護士資格を持つヘンリー、オブライエンからの紹介で出て貰っていた 人も揃い会見場も出来、時間が来るのを待つだけとなった 会見場に入るまでに身体検査をされ持ち物をチェックされた それは【R&R】のイベントに出て貰うスタッフ達だった 皆 それなりの資格を持つスタッフ達だった そんなスタッフ達の目が光る中、チェックを終えた記者や報道人がカメラや機材を持って入り始めていた 午後7時10分前には全員の記者の方の準備が整ったと連絡が入ると、先に相賀、須賀、神野が、会見席に着いた その横に飛鳥井神威、国際弁護士アーノルド、ノートが席に付いた 康太の秘書の西村沙織が「今日は相賀、須賀、神野の共同記者会見にお越し頂き誠にありがとうございます それでは、会見を始めます!」と開始を告げた 相賀はマイクを持つと 「【R&R】のメンバーは朝方発表されたメンバーには非ず! 嘘の発表をされ3億の契約金を交わされたとの情報ですが、それは無効になると想い此処に訂正するためと抗議する為に記者会見を開きました」と言いマイクを置く すると須賀がマイクを持ち 「メンバーのリーダーは三木竜馬とあるりますが、そもそも【R&R】のリーダーは三木竜馬ではない! 【R&R】の片割れではありますが、彼がリーダーではない そして何より(R&R】のメンバーはリーダーと三木竜馬以外は日本人ですらない! 今日我等が記者会見を開いたのは、それらを訴える為!それだけです!」 と言いマイクを置いた 最後に神野がマイクを握ると 「俺は【R&R】のメンバーをこの目で見た! 彼等は自分の信念を持って活動しているイギリス人だ チャラいアイドルばりの日本人ではない! 何故こんな嘘の契約が成立したのか? 彼等が顔出ししてないパフォーマンス集団だとしても、あまりにも詐欺紛いの悪質さが目に付く! 三木竜馬が契約したと謂うのならば、此れより本物の【R&R】に登場して貰えば、全てが解る! 今朝【R&R】だと発表された奴等に映像を作って戦わせても良い! 彼等は本物で己の世界を持った存在なのだから!」 と啖呵を切りマイクを置いた 記者会見のバッグにプロジェクションマッピングのスクリーンを投影出来る様に設置してあり、呼ばれたらそれを起動させ、その場に自分達が立つ 自分達に相応しい舞台は自分で作っていた 音が大音量で鳴らされプロジェクションマッピングには一面を雪が吹きすさぶ寒い景色が投影された 雪国バリの寒い世界が広がっていた、その中に雪の結晶が交じりキラキラと輝いていた その映像の中に7人の大人の男と一人の子供が立った 竜馬が「【R&R】世界にようこそ!」と謂うと、フラッシュがパシャパシャ光り、その世界観をより神秘的にさせていた 竜馬が「我等は偽物と違い絶対的なリーダーが着いてます!リーダーがいてこその【R&R】なのだと、ここに宣言します! そして我らを語った偽物へ! 【我等は何者に囚われない 何者にも干渉しない 我等の世界それが【R&R】で在る】 そのコンセプトで我等はこれからも活動して逝く! だから事務所との契約など皆無だと我がリーダーが、申しております!」と伝えた 他のメンバーも英語でそれを伝える メンバーはリーダーを絶対の存在として話をする 最後に烈が宗右衛門の声でマイクで話すと皆は唖然となった 「【R&R】の片割れであり、リーダーの飛鳥井烈じゃ!我等はどの事務所とも契約などしない! しかも契約金が3億じゃと?巫山戯るな! 世界のヨニーは我等に10億を提示して来たが断った 我等は自由に映像を作り皆と触れ合い楽しみたい それだけを望みに活動しておるから、誰かの指示や縛りのあるスポンサーの仕事はせぬのじゃ! 儂が【R&R】のリーダーで在る限り、契約話など皆無だと思ってくれ! そして三木竜馬は儂の意志を無視して契約などせぬ! 筆跡鑑定して徹底的にやるつもりじゃ! その為に我が弁護士と国際弁護士を用意した!」 徹底的に偽物など許しはしない!と宣言した 圧倒的な存在感を秘めた言葉だった 西村が「それでは【R&R】本人か登場したので、質疑応答となります! 質問のある方は挙手をされて名乗ってから質問して下さい!」と言うと 記者は手を上げて指名を待った それを上から確認していた神威の事務所のフタッフが、手を上げた早い物順に番号を出してその者に番号を持たせた そして番号順に質疑応答へと移る 一番に手を上げたのは東都日報の今枝だった 「東都日報の今枝です! 【R&R】のリーダーは飛鳥井烈だと紹介を受けましたが、その由来を教えて貰えませんか?」 それに答えたのは竜馬だった 「俺は三木竜馬なので頭文字がR そして烈の頭文字もRなので二人の頭文字を重ねて 【R&R】としました!」 今枝は「もう一つ良いですか?何故烈君がリーダーなのですか?」と問い掛けた それも竜馬が答えた 「烈は英才教育を受け、語学に堪能で4ヵ国語なればペラベラです そして何より間違いをズバッと指摘する容赦のない性格にメンバーは絶大な信頼をしてます! なのでリーダーは烈以外は考えられない! メンバー全員その考えです 我等がもし何処かと契約するとしても、リーダーを排除するなれば受ける気は皆無だと申そう! スポンサーとなる企業側から見たら、小さい烈は足手まといと決めて、確実に排除しようとする! ヨニーは契約の際 烈を排除しようとした 我等は気の合う仲間と楽しい時間を刻む! その為だけに活動をするパフォーマンス集団なのだと此処に皆に広く告知する為に出て来ました!」 竜馬の圧倒的な言葉に、質疑応答する者は何も言えなくなってしまっていた その時 チカッと光るモノを視界に感じると神威は 「皆 しゃがんで頭を隠せ!」と叫んだ 神威は咄嗟に飛んで烈を庇って前に出た するとボーガンが神威の脇腹に突き刺さった 女性アナウンサーは悲鳴を上げて震えた 一生は即座に出口の扉を閉めてシャッターを下ろした 体育館の上の窓もシャッターが閉じる 刺客を逃げられなくして、閉じ込めた 慎一は上の通路へ走って行きボーガンを手にした男の鳩尾を蹴り上げて気絶させた 一生は待機させておいた警察に連絡を取り、体育館の中に機動隊を入れた 厳戒態勢となった体育館を撮影する者もいた それでも構わず、警察や機動隊員はその場を制圧すると、1人一人事情聴取を始めた 神威は控えていた久遠に処置されて運び出されていた 即座にボーガンの矢を抜いて、毒が塗ってないか警察に知らぜさせた そして毒が塗ってあるならば血清を頼むと言い、救急車に乗り込み神威を飛鳥井記念病院まで連れて行く 烈は「ちちじゃ……」と心配そうに言った 康太と榊原はテレビで記者会見を見ていて、神威がボーガンの矢で撃ち抜かれるシーンを見て志津子に連絡を取った 「志津子、オメェの弟 ボーガンの矢が刺さった!」と慌てて言うが志津子は比較的に冷静で 「矢カムイですか? それは笑えませんよ真贋」と返した 矢ガモならぬ矢神威…それは笑えねぇわなとは想ったが 「冗談じゃねぇんだよ! 烈を庇って神威がボーガンの矢に貫かれたんだよ!」 その真剣な声に冗談じゃないと気を取り直し 「大変だわ、ならば直ぐに病院に行きます!」と言い電話を切った 烈は震えて泣いていた 「いまえだ……」と名を呼ぶと、今枝が烈の傍に行き抱き締めた 「いまえだ……ぼくねすこしまえまでにゅういんしてたの」 「え、それは知りませんでした」 「そのときね、ないふにしんけいけいのへびどくがぬってあったのよ でね、いまもてがしびれてるのよ」 と言い震える手を今枝に見せた 「いまえだ、かいて、ぼくらあーるあんどあーるのはなしを、そしてあすかいのはなしを! このまえまであすかいもねらわれていたのよ なまえもこせきも、すべてきぞうしてかいしゃにはいり、そんしつだけあたるためにいたしゃいん それであすかいは、さんおくのふさいをだすところだったのよ」 と今枝に訴えた 今枝は「【R&R】と君達の事、書いて良いんですか?」と問い掛けた 「かいて、しんじつをつたえて!」 と言った その間も烈の手の震えは止まる事はなかった 今枝は烈の手を握り締め、止めようとしてくれた 竜馬が烈の傍に来ると、今枝から烈を離した 「烈、取り敢えず今日は会見出来る状況じゃないから、慎一さんが帰ろうと言ってる」と伝えた 烈は今枝に「またね」と言い離れた 今枝は離れていく烈を目にして 「烈君、改めて取材の申込みをします!」と言った、 烈は足を止めて「いまえだしか、できないことだから!」と言い竜馬と共にその場を離れた 竜馬は「神威さんが気になるなら、病院に行きますか?」と問い掛けた 烈は頷いた 竜馬は父を呼び出して、三木の車で飛鳥井記念病院へと向かった 竜馬は「何故規制引いてボーガン持ち込めたんですかね?」と疑問がった 「たぶん、かめらのきざいにまぎれこませたのかにゃ?」    「身体検査や持ち物検査やったのに?」 竜馬は納得いかなくて呟いた 「かめらのきざいまで、ふつうみないのよ らから、ほそいからだならはいれちゃうのよ」 「なら此れからは防弾ガラスの向こうで記者会見しないと駄目ですね!」 「それ、むりじゃにゃい?」 「嫌、それしか烈を護れないなら考えても良いかも…」 三木は飛鳥井記念病院まで竜馬と烈を送り届けると還って行った 病室は何処だろ?とウロウロしてると、烈の体がひょいと持ち上げられた 振り返ると兵藤貴史が烈を抱き上げていた 「ひょーろーきゅん!どうちたにょ?」 「俺は疲れすぎてて久遠に診察して貰ってたんだよ おめぇはどうしたのよ?」 「かむいのおみまい」 「大歳神かよ?あんな元気な奴、病院とは無関係やろ?」 と兵藤は思わず言った 竜馬が神威がボーガンの矢に突き刺さって久遠に連れて行かれたと話した 兵藤は眉を顰め 「烈、春先から何度も何度も狙われて、この前も入院してたんだろ? 俺は日本にいなくて見舞いにいけなかったけど、それでまだ後遺症残ってるって康太に聞いた それなのに、神威がボーガンの矢に突き刺さった? それも烈を狙っていたんだろ?」 兵藤と話をしてると、康太と榊原が烈がそろそろ来るだろう、と下に降りて来ていた 烈の姿を見ると康太は「烈!」と名を呼んだ 烈は兵藤に下におろしてもらうと「かあしゃん!」と泣いて康太に飛び付いた 榊原は「神威は大丈夫です!処置が終わり病室に移りました」と言った 康太は烈と竜馬を連れて神威の病室まで向かった 榊原も兵藤と共にその後に続いた 病室のドアをノックすると志津子がドアを開けた 烈は病室に入ると神威のベッドに走った そして神威の手を震える手で握り締めベッドに突っ伏して泣いていた 「泣くな烈、儂は大丈夫だ!」 と言い烈の手を強く握り返した 志津子も烈を安心させる為に 「烈、大丈夫よ、弟は頑丈だから、矢の1つや2つ弾き飛ばしてくれますって!」 と笑えない事を言って烈を安心させようとした 康太は椅子に座り神威に 「今日の記者会見、身体検査に荷物検査もしたって聞いたけど、カメラの機材とかは検査しなかったんだな ならば、はいりこめちまう現状があったって事か?」と冷静に考えを述べた 神威は「中々機材の中身を確認させてくれ!と徹底的にやっいても抜け道を考える奴らはいる 警察からの調査が上がらねぇと何とも言えねぇが、アイツは烈の頭を狙っていた 完全に息の根を止める気だった!」と怒りに満ちて吐き捨てた 榊原は興奮する神威を落ち着けようと 「怪我に触るので興奮するのは駄目ですよ!」と止めた すると志津子が笑って 「弟はボーガンの矢が刺さる瞬間 腹筋に力を入れて鏃の侵入を阻止しようとしたので、深く刺さる事はなかったのですが、如何せん先に毒が塗ってあったので用心の為に入院しているのです!」と言った 腹筋で鏃を防ぎ止めた……言葉もなかった 兵藤はそれを聞いて「毒好きだな、烈も毒塗られていたんだろ? ならば犯人は違うが差し向けた奴は同じって事じゃねぇか!」と腹立たしげに言った 神威は「儂はフグが好きでな、フグ毒ならば耐性があるんじゃ! 釣っては食べてた時に、あれ?これは?少しヤバいかも……と想う事は幾度もあったからな 義泰に怒鳴られ良く治療を受けたもんじゃ!」とカハハハッと笑い飛ばした 志津子はやんちゃな弟に苦労かけさせられたのが伺えられた 康太は「そう言えば神威って結婚してねぇのか?」と尋ねた 「儂か?儂は愛する妻がおるからな、人の世では結婚はする気はないのじゃ! 儂は倅の為だけに今世は人の世に来ただけじゃからな 人の世で妻を娶れば、それは浮気になるではないか!」と妻を愛する愛妻家は妻だけしか娶らぬと言った 康太は「おめぇは愛妻家だが、おめぇの倅は人の世に堕ちてから誰も愛さず転生を続けた オレが幾度誰か愛してくれ!と言っても聞きゃしねぇんだからな でな、赤龍が来世は誰かを愛させてやる!と息巻いてるんだよ」と良い機会だから口にした 「儂もなそんな寂しい倅に痺れを切らして来たのじゃ 誰も愛さぬのならば、せめて親父の愛は忘れるでない!と教える為だけに来たのじゃから、そんなに簡単にはくたばらんよ!」 大歳神の愛だった 倅の為だけに人の世に堕ちて、教える愛だった そこへ久遠がやって来て 「おめぇは殺しても死なねぇだろうが! 明日にはベッドの無駄だ還って良いぜ! でも一応穴が空いたんだ、消毒には来いよ!」と言った 「儂も患者だぞ、優しくしろや!譲!」と文句を言うが 「いやいや、腹筋の肉で鏃を止める奴なんか治療し甲斐がねぇって親父も言ってたからな」と笑った 「義泰もさ、妻の弟に優しくしてくれねぇかな」とボヤいた そこへ義泰もやって来て 「鏃の先に塗ってあるのが猛毒だったら退院なんてさせないがな、お主が何度も食って運ばれてきたフグ毒じゃからな……ベッドで寝てるよりお主はガード下で飲んでる方が早く治るじゃろ?」と言った 何とも雑な扱われ方に康太はプルプル笑って震えていた 榊原も笑っては駄目だと思いつつ笑っていた 神威は「盲腸よりも扱い悪くないか?」とボヤいた 「アッペの患者は痛がるが、お主は痛がっておらぬではないか!」と義泰がボヤく 康太はもう駄目とばかりに笑い転げていた 兵藤も笑って、神威のベッドに顔を埋めて寝ている烈に目をやった そして「烈は治らねぇな」と問い掛けた 義泰は眉を顰めて黙り、久遠がそれに答えた 「烈は今世は毒の耐性はないからな 今は毒を抜いている治療してる最中だ 少し掛かるが手の痺れは絶対に取ってやるつもりだ 烈は何かに付けて弱いんだよ 舌も人より短いから滑舌が悪くて良く舌を噛む だがすぐに治らないから流動食にして栄養補給する、そうすると数値が途端に悪くなるから食事制限も止められない 後 皮膚の弱さは赤ん坊並に弱くて、老人ばりに治癒が遅い それも母親の腹の中にいた時に栄養不足が原因でな、ガタイ良く生まれてきたからと言っても、健康優良児とはならんのが、現状だ」と説明した こんなに貫禄がある子供なのに、その体は生まれた時から満身創痍だと謂うのか? 康太は「今世は長生き出来ねぇって言ってたもんな」と呟いた 兵藤は「んな事は絶対にさせねぇよ!」と言った 烈は神威の手に齧り付き眠っていた 神威は「烈は腹減りか?さっきから儂の手をカニパンか何かだと思い食っておる」と謂うと榊原は烈を抱き上げた するとよどでデロデロで康太は顔を拭いた 「神威すまん、きっと今日は忙しすぎて食べてなかったんだよ」と謂うと慎一が烈をおぶって 「家に帰りおかゆを食べさせます!」といい竜馬と共に還って行った 康太と榊原は兵藤を連れて 「オレ等も帰るわ 無茶すんなよ神威!」といい還って行った 病室に誰もいなくなると、素盞嗚尊が建御雷神と共に姿を現した 素盞嗚尊は「大丈夫なのか?我が息子よ!」と尋ねた 「親父殿、儂は問題ない だが姿を現したって事は何かあったのか?」と問い掛けた それに答えたのは建御雷神だった 「人の世の悪意は魔界も連鎖しておって、素盞嗚の昔の家が焼き討ちにあい燃え尽きた 今の家には結界が施してあるから、なまじっかな輩ではその敷地内には入れはせぬがな なんと言っても、あのニブルヘイム自ら結界を施し、悪意のある者は近付けさせなくしたのであるからな 新居は無事じゃった だが時を同じくして大歳神がボーガンの矢で撃ち抜かれたと聞いてな 悪意が連動しておることを伝えに参ったのじゃ! まぁ、あのボーガンの矢は聖神を狙っておったのじゃろ? なれば聖神の来世事消し去ろうとする目的があるのかも知れぬ そう想ってな取り急ぎ来たのじゃ!」と伝えた 素盞嗚尊は「お主は昔から怪我しても筋肉で治す!と申しておった通り、鏃さえ筋肉で堰き止めたのじゃな 儂はもうお主の筋肉バカを何も文句は言わぬと決めたわ」と笑って言った 「親父殿、それだと、どんだけ儂は筋肉バカじゃったのだ?となるではないか!」と言ったが建御雷神が 「十分筋肉バカだろうが!」と言った そこへ弥勒が来て「この病室、結界しなくて良いのかよ?」と尋ねた 建御雷神は「明日には退院するのであろうて、必要はないじゃろ!」と答えた 弥勒は「お前、どんだけフグ食らったら耐性つくのよ?」と呆れて言った 「若い頃は釣っては食べて、あれ?やばい?の繰り返しじゃったからな!」 とガハハハハッと笑った そして「今度フグを釣ったらお前に食べさせてやろう! 最近ではあれ?ヤバい?なんて事はなく美味しく食せておるからのぉ!」と言った 弥勒は「それってお前にフグ毒の耐性できただけじゃねぇのか?」とボヤく 「そうなのかな?最近は大丈夫じゃから腕があがったんだと儂は思っておるのじゃが?」 と謂うと建御雷神が笑って 「親子だな、素盞嗚も昔は飛来海月を捕まえては毒に遣られて、諦めればいいのに、何度も何度も飛来海月を食べておったわ! そして調理も上手くなったから食べに来るのじゃ!と、誘われ死ぬ想いをしたよな聖王」とボヤいた 弥勒は思い出し大笑いして 「そうじゃった!料理の腕が上がってもう大丈夫と謂われて食いに行ったら最後、嘔吐と腹痛と下痢で八仙にめちゃくそ不味い薬湯飲まされたんだよな」と言った 神威は父を見上げ 「親父殿……」と謂うと気不味い顔をして素盞嗚尊も 「申すな倅よ……」と言った 似たもの親子は魔界で騒がれていた 容赦も話し方も笑い声すらコピー並の酷似した親子の話題は魔界を駆け巡り、ほのぼのとしたニュースになり騒がれていた 閻魔も魔界に来られた素盞嗚尊の息子で、聖神の父上で在られる、と公表したから、魔界の皆は一目見たいと騒いでいた 弥勒はその噂の火付け役が建御雷神だと知っていた 親子が居心地良く過ごせる魔界で在れ!とばかりにほのぼのとした話題を提供する きっと腹筋で鏃を止めた話も広めるんだろうなと弥勒は想った 波乱を含んだ風はまだ止まらない そんな不安を孕んだ夜は更けて行った

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