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第97話 不協和音

翌朝のニュースは【R&R】の記者会見一色となった 昨日大々的にデビューした者達が偽物で、本物の【R& R】が現れた それだけでも驚愕すべき事態なのだが、突然ボーガンの矢がリーダーが狙って放たれた、それを庇って顧問弁護士が怪我をしたのだ 今回の記者会見は身体検査、所持品検査を念入りにした結果なのにボーガンを紛れ込ませて襲撃した その時の光景が何度も何度も繰り返し流され、神威が烈を庇い矢が刺さるシーンが流れた 今後の報道側としての意識改革が必要だと議論されていた そしてあの【R&R】が偽物だとしたら契約はどうなるのか?と弁護士に話を聞いたりと、どの番組にも専門家の意見が出たが、本人が契約したのでなければ契約は不履行となるとの見解が述べられた そして偽物がもし3億を既に貰ったとしたら、それは3億の契約金を返した上で、違約金も取られることになるだろう! と謂われて大々的にデビューを打ち上げた偽物は報道陣から追いかけ回される存在となった そもそも三木竜馬は三木繁雄議員の長男で、と、竜馬の素性まで出される事となり、それには少し辟易していた ニュースに出ると謂う事は、何処の誰の子で云々を知らされる事となるのか、と竜馬は良く理解した そして烈を庇ってボーガンの矢に撃たれ人は、飛鳥井烈の専属弁護士だと知らされた まるでSPばりに烈を庇って矢を受けるシーンは印象的で今までの弁護士の領域を超えて凄い!と絶賛された 是非弁護されたい!と話題が集中したが、飛鳥井神威は医療系 企業系弁護士として活躍して負け知らずの弁護士ではあるが、個人を弁護するのは滅多とないと伝えられた 昨日の記者会見がボーガンの矢を撃ち込まれた事で中止になり相賀、須賀、神野は怒り狂っていた 神野はマスコミに向けて 「貴方達のせいでもう【R&R】はマスコミの前には姿は現したりしないでしょう! リーダーを狙ったとあれば、彼等は警戒して姿を現す事はなくなる」と言った 【R&R】の活動をずっと追って来たファン達は、パフォーマンス集団のメンバーがあんなにチャラくなくて良かったけ! そして何よりリーダーを挿げ替えて活動しようとするグループじゃなくて本当に良かった! 堂々とそれを謂えるグループは本当に素晴らしい!と絶賛の嵐だった 「我等がもし何処かと契約するとしても、リーダーを排除するなれば受ける気は皆無だと申そう! スポンサーとなる企業側から見たら、小さい烈は足手まといと決めて、確実に排除しようとする! ヨニーは契約の際 烈を排除しようとした 我等は気の合う仲間と楽しい時間を刻む! その為だけに活動をするパフォーマンス集団なのだと此処に皆に広く告知する為に出て来ました!」 この竜馬の発言がブレないと謂われた ヨニーは10億契約金を提示したが、小さなリーダーは足手纏だと排除しようてした結果、契約は成立しなかった話は一瞬で広まった ヨニーは消費者から叩かれる事となった 烈と同じ年齢位の子を持つ親子からは批判の嵐となり、声明を出した程だった ヨニーは長ったらしい声明を大々的に出した、要約すると、烈の様な小さい子がリーダーなんて信じられなかったし、売りに出すとしたら真っ先に篩いにかけるのは我社だけではない! 排除しようとしたのは確かだが、契約にも至らなかったのだから当時の事は本当に申し訳なかったが、我社にはもう関係のない話だ 的な声明は批判を受け、ヨニーは沈黙を護る事にした 烈はそんな喧騒を他所に学園に通い、学校が終わった後は、講習会の準備に余念がなかった そしてそんな合間を縫って、年末のイベントの調整をする 神野、須賀、相賀から連名でイベントが打診されたからだ! 主軸となるメンバーは隼人と真矢と清四郎だが、バックで踊るタレント等 出して年末ならではのイベントにしませんか?との事で縛りはなく好きに構成してくれて良い だがテレビで映す以上は他のタレント等は出さないと、3人のオンステージでは花がないと謂われ飲んだ 別にその場で誰が踊ろうが、構わないからだ 年末に馬鹿騒ぎして想い出を作りたいだけなのだから! だが幾度も狙われている烈を出すならば、身元確認は必須となった また相賀達もそれを遣らねば、不安で烈と同じステージに上げる事は出来ないと想っていた テレビで流されるイベントは一晩限りだが、同じステージとなる場所は3日好きに使って良いと言われているから、テレビ放映の後の2日は好きにやるつもりだった ステージはBBSの特設ステージであり、冬休みのイベントの為に設立されたスケートリンクでやる事となった 烈がウキウキ嬉しそうだから、メンバーも嬉しくてテンションが上がっていた メンバーが持ち寄り案を出し合う 何時もの喧嘩になると宗右衛門に怒鳴られシュンッとなる それでも更に良い案へ向けて話し合われ、最高の出来のステージに出来そうだとメンバー全員が浮かれていた だがその前に飛鳥井の企業講習会を控えていた 烈は全部の講習会に顔を出すと伝えた そんな頃、白金建設が倒産し、逮捕されたとのニュースが入った そこで康太は白金建設の社長が何と岩崎良隆だったと知ったのだ 康太と榊原は声も出なかった 狙われる筈だわ……と康太は想った 岩崎良隆の供述の文面を飛鳥井神威が取り寄せ康太と榊原だけに見せた 岩崎良隆が安曇登紀子と結婚していた時、ヒモみたいに成り下がり登紀子の父に無理矢理離婚させられ生活は一変した 腹いせに息子達に登紀子と祖父の事を悪く言い洗脳して来た 息子達は父に同情して両親の金を岩崎に流していた なのにある日突然、息子達は自分と連絡を断った 調べてみたら飛鳥井家真贋が邪魔して来たと聞いた  その時、飛鳥井家真贋を知った そして邪魔な存在だと想った そこから地を這う想いをして白金建設の娘と結婚して成り上がった 綺麗な事ばかりしてたら仕事なんてしてても金は入って来ない だがら法律スレスレの事もした そして上間美鈴から1億もしない家を3億で建てて下さらない? お礼に半分差し上げますわ! と謂われて話に乗った だが建築は途中でストップし、挙げ句に摘発され倒産も時間の問題となった すると妻も子供も義父だった人も岩崎に全て押し付けて夜逃げ同然に消えた その日から飛鳥井を潰してやると決めた そんな自分の元に協力者が現れ、ソイツの言いなりになり東神奈川に自社の社員を送り込んだ 全ての身元や経歴はその協力者がやってくれた 3億の損失ならば、飛鳥井にもその3億の損失をさせれば良い!と謂われ復讐する為だけに謂う事を聞いた 岩崎は調子の良い話に協力者を調べ上げていた その協力者が【R&R】を潰せと言って来たが聞かずにいると偽物を用意して3億騙し取ると話を持ち掛けて来た だが話が飛鳥井じゃなくなり岩崎は興味をなくし摘発する所だった そんな総てを岩崎は破産と逮捕が決まった時に証拠を提出し言った 岩崎に協力していた男も捕まった だがその男も大金に目が眩み、使い捨ての駒にされていただけの存在だった 男も指示して来た男との会話を全て録音していた 全ての親玉かと捕まえに行ったら、その男は既に死んでいた 迷宮入りしそうな事件として連日ニュースで騒がれていた 康太はその供述を読み終えて、奥歯を噛み締め 「本当に人間を駒か何か位にしか想ってねぇんだな!」と吐き捨てた 神威は「敵とは創造神ばりの力を持つ奴の事じゃろ? 大分力は弱ったと言っても人間を自由に操る力は衰えちゃいねぇんだな!」と吐き捨てた 康太は「詳しいな誰に聞いたのよ?」と聞くと 「弥勒が教えてくれた! 儂ら古来の神は天地創造の時に大地の神として生み出されたからな、力が蘇ったのが良く理解出来ておる」 弥勒、全部教えちゃう程に大歳神を気に入ったのね と康太は想った だが戦力になるのも確かだった 「大歳神よ、おめぇさ烈と共に草薙剣で、闇を剥離してたやんか? お前のマサカリ、ひょっとして闇だけ剥離できたりするのか?」と問い掛けた 「儂はマサカリだけではないぞ! 地面に根付く根さえあれば、それを操り闇を吹き飛ばす事も出来る 原始の力が蘇ったから、今はその制度はかなり上がっておる!」 と答えた 康太は榊原を見た 榊原も康太を見た 「大歳神、烈、いや聖神が狙われてるの知ってるか?」 「知っておる、矢に刺された夜に建御雷神と親父殿と弥勒が姿を現した なんでも親父殿が前に住んでた屋敷が焼かれたそうでな、儂がボーガンの矢に貫かれた時と同じくしてやったそうじゃと教えくれた」 その言葉に今度は康太と榊原が唖然となり 「え?素盞嗚殿の屋敷が焼かれた? それ、僕等は知りません!」と言った 康太も「あんで教えねぇかな!」とボヤいた 「犯人は捕まえた瞬間発火したそうじゃと建御雷神が言っておった」 「もぉな、何処から突っ込んで良いやら? 一度魔界に行かねぇとな…」 康太が言うと神威が「それこそ、向こうの目的だとしたら?」と言った 「それはどう謂う事よ?」 康太は訝しんだ 「いや、建御雷神がそう言っておったのじゃ! 魔界で素盞嗚尊の屋敷を焼き討ちしたら、この年末のクソ忙しい時期でも炎帝と青龍は魔界に来るだろう! だがそれこそが敵の思惑通り通りだとしたら? 残った烈がターゲットにされ殺される! そんな筋書きが透けて見えるそうじゃ! 何故、其処まで烈、嫌、聖神を殺そうとするのか? 閻魔が釈迦や星詠みの婆婆を訪ねて聞いたそうじゃ! すると烈を失えばニブルヘイムが絶望して死んてくれないかな?と謂う希望的筋書きらしい 邪魔なんだとよ、ニブルヘイムの転生者が! その力寸分違わず創世記の力を秘め、嫌 今は原始の力を得てそれ以上になってる存在だからな!」 康太と榊原は絶望した瞳で神威を見て 「やはり……そこを狙うのか……」と康太は呟いた 康太は聖神とニブルヘイムの結び付きを話した 魔界にいた時 どれ程聖神は孤立して一族の者から後から出て来て生意気だと虐め抜かれたかを話した そんな聖神の唯一無二の心の拠り所が世界樹の樹から聞こえる声だけだった ニブルヘイムも自分が闇に侵食され何時消えてなくなってしまう……恐怖の中唯一の救いが聖神だった ニブルヘイムは聖神に自分の眼を託し冥府の地下から消えて転生の道を辿った そして聖神は復讐する事だけ考え失敗した後 人の世に堕とされ初代 宗右衛門として生を成し転生を繰り返した その時 愛する妻と子を二度と巻き込む事は出来ないと手放し以来宗右衛門は黙れも愛さず来た 総べてを聖神の父の大歳神に話した 大歳神は泣いていた 伝え聞き知ってはいたが、改めて聞けば魔界になど行かせるべきではなかったと、後悔する 「ニブルヘイムは今世は烈の為だけに生を成し転生の礎に収まった 此れより1000年続く果てへと転生を繰り返し、聖神の所へ還ると約束された だから消し去りたいんだよ、烈の方を! そしたらニブルヘイムは目的を失う事となるからな……」 康太が姑息な考えを謂う 腹が立って仕方がないが口に出し謂う 神威は「儂が烈を護ろう!それで今世の生を終えても儂は倅の為に生きると決めておる!」と言い切った 康太も「今世はオレが烈の親となる、真矢さんから託された命なんだ、こんな小さいのに命を落とさねぇように頑張らねぇとな!絶対に死なせねぇんだよ! そして聖神を過去へ堕とした者の死命だと想っている! 宗右衛門の果てを狂わせたりしねぇよ!絶対にな!」と言った 榊原も「烈を護る為ならば何としてでも足掻いて、足掻いて、悪足掻きします! そんな簡単には逝かせません! 宗右衛門としてまだ一族を果てへとレールに乗せてませんからね! 僕は日頃から烈に遣りかけで終わるなと口を酸っぱくして言ってますから、遣りかけで終わらせたりなどしません!」と言った 神威は「今 魔界に還ったら………聖神は本体がないから、あの小さいままの体が本体になってしまうではないか! まぁ烈ならば、どの姿も可愛いがな、でもそれはさせたくはないのじゃ!」と言った 榊原も「僕もねそんな簡単には楽にはさせる気は皆無なので大丈夫です!」と言った そして「では対策を話し合いましょうか?」と謂うと場所を崑崙山に繋げて、消えた 季節は12月になっていた 飛鳥井の講習会が開始された 一日 一人 スペシャリストな講師を招いての講習会に社員達は身を引き締めていた だが、勘違いした女が講師にクネクネと色目を使って何かと講習を邪魔してくる! 講師は無視して進めていく 皆は必死に意識改革をせんとばかりに学んでいるが、そうでないのが若干いると気が散る 宗右衛門は「お主等は何しに会社に来ておるのじゃ? 結婚相手を探すなら他でやるがいい! すみやがにお主等は出て逝くかいい!」と言ってのけた すると女はヒステリーに叫んでいた その声を聞き付けて城田が講習会をやってる部屋に顔を出し、女を数名連れて行こうとした 宗右衛門は「その女等は解雇じゃ!社長に申して解雇処分とするがよい!」と言い捨てた 城田は「了解しました!宗右衛門!」と言い女を引き連れて講習会室から出て行った 妨害はあると思っていた だが短絡的な女を懐柔して使って来るとは…… 怒りしかなかった 講師は「time is money」と言い講習を続けた イケメンで見るからに出来る男然とした講師は、冷徹に言い捨てると、貴重な時間を使ってるんだぞ!オーラをこれでもか!と出し怖い程だった 社員は皆あんな馬鹿しかいないと想われたくなくて、必至に喰らいついて、覚えようとした 毎晩毎晩事前に渡されたテキストを頭に叩き込み、挑んだ社員もいるのだ! 講師は次の講習までに宿題を出した それでその日の講習会は終わった 講習を受けた皆は怒っていた 真贋に文句を言いに来る者も絶えずにいた程だった 皆の意識が変わったと想った だからこそ許せぬのだろう……イケメン講師にクネクネ執拗に取り入ろうとした事が…… その社員は解雇となったと会社中に伝令が流れて伝わった 社員達はより気を引き締め、講習に挑んだ 15日間は毎日、違う部署の講習となった 一度目の講習を受けると二度目の講習となり、一つの部署で3回講習を行う、そして宿題を出して篩いにかけ落とす手筈となっていた 飛鳥井の社員は食いついて必至に着いて来ていた 意識改革は出来たと竜馬は想った その日は烈と竜馬が揃って講習の様子を見ていた 総て英語で講習はされるから、竜馬が前もって訳した解説を受講している者達へ流す様にしていた だから皆 ヘッドホンをして聞き入っていた それでも解説が解らない時は烈が、宗右衛門になって講師と直接英語で話し、どう謂う意味だと聞き出す それで皆に解りやすく解説するから、解らない事はなかった 2回の講習を終える頃、12月24日に決定したイベントについて話し合わねばならなく、多忙な日々を送る事となった その日烈は講習を終えると最上階に上がり、副社長室のドアをノックした 榊原がドアを開けると竜馬の姿がなく、烈一人だった 榊原は烈を部屋に招いれて、秘書に薄めたリンゴジュースと脂質のない煎餅を頼んだ それは講習をしている烈の為に買って来たと秘書が話していたから頼んだのだった 康太は「烈、どうしたのよ?」と問い掛けた すると烈は背中に背負ったリュックを下ろすと、中から紙を2枚取り出した 一枚は普通の紙で、もう一枚は透明なセロハンみたいなので描かれていた 烈は紙の方を母に見せた 康太は「これは誰のホロスコープよ?」と問い掛けた 「かあしゃん、これをみて」と言い透明のセロハンをその上に重ねた 康太は言葉を失った 「これね、まりあのはらのなかにいること、ありすのほしなのよ!」と言った 康太は「麻莉亜孕んだのかよ?」と問い掛けた 「れきやがいってた かそくがふえるからって……… すこしまえから、くりすのしゅうへんにふかかいなゆらぎをかんじたの でね、しらべてみたら、ありすがはじかれてでるしかないげんじつがでたのよ」と言った 「暦也めちゃくそ頑張って犯りまくったんだな! まぁ愛されれば許すわな、嫌いな男じゃねぇんだし でもなぁ……有栖が弾かれる星と出ちまったか」 「れきやね、かんがえさせてって、いったけど…… けっかね、かわらにゃいのよ」 烈が言うと榊原が烈の頭を撫でて 「結果は変わらなくとも、悪足掻きしたい想いならば解ります…… 選ぶのは暦也です、見守ってあげましょう」と言った 「かあしゃん…ぼくのほしから……しのかげがとれにゃいの……」 烈の言葉に康太は烈を抱き締めて 「そんなの母ちゃんが吹き飛ばしてやんよ!」と言った 烈を首を振って 「うんめいにゃのね、あすかいのごぼうせいはっても、かわらにゃかった…… いちどはしのかげはとれたにょよ……れもまたかかった」と訴えた 康太と榊原は顔を見合わせ 「伊織!」 「康太!」と言った 烈はキョトンとした顔で両親を見た 康太は「一度は取れたんだろ?影?ならそれは五芒星を張る前の延長線上じゃねぇんだよ!烈!」と救いが見えた様に言った 榊原も「今回のは多分 ニブルヘイムを消したい輩の陰謀なので、僕と康太とで阻止します! 大歳神も素盞嗚殿も協力してくれるって言ってます! そして今後の事は話し合い計画を立てたばかりてす なので君の死の影など、君の父と母が吹き飛ばします!」と言った 「やっぱ…れいたん ねらわれていのね」と言った 康太は「お前知ってるのか?」と問い掛けた すると烈は「しんいちくんもしってるにょよ! れいたん、まいばんうなされているから、そのときはれいたん、かなしばりになったみたいにくろい、もよもよでてるのよ」と訴えた 榊原は「レイは総ての力の開放を急がねばなりませんね」と言った 康太も「毎晩闇に囚われてるって謂うのか?そんなに簡単には飛鳥井の家には入れねぇだろ? 何処で闇に囚われたのよ? まさか前世からの記憶か? 一度探らねぇとならねぇな!」と呟いた 「かあしゃん、ありすどうしましゅか?」 「麻莉亜 何ヶ月が知ってるか?」 「あのだいばくはつのあとじゃにやい? れきや、かえってすくにおしたおして、せっくちゅしたのよ」 「ならば………最低でも5ヶ月は行ってるって事か? 考えねぇと弾かれて出るしかなくなるな その前に手を打たねぇと有栖は傷付くな!」 「かむいがようしにしてもいい、いってくれたのよ」 「男やもめってカビ生えるだろ?  大丈夫かな?伊織…」 康太は神威が聞いていたならば、怒髪天突いて怒るだろう事を榊原にふった 榊原は何とも言えず「いや、彼は志津子の目が光ってるのでカビは…大丈夫かと…」と誤魔化した その時爆笑した声がして振り返ると、兵藤と毘沙門天がいつ秘書に通されたのか?立っていた 毘沙門天は腹を抱えて笑っていた 兵藤は「烈、少しお前と話がしたい!」と謂うと、烈は立ち上がり兵藤の傍へと行った 兵藤は烈を連れて飛鳥井建設の副社長室から出て、地下駐車場へと向かった 地下駐車場に停めた車に乗り込むと兵藤は無言で車を走らせた 兵藤は烈を連れて茅ヶ崎まで車を走らせた そして海が見えるホテルへ入ると、部屋は既に取ってあったのか?キーを渡してもらい部屋へと向かった 兵藤は部屋の中に烈を入れるとソファーに座らせた そして兵藤も座ると 兵藤は烈に深々と頭を下げた 「にゃにしてるにょ?ひょーろーきゅん」 「俺は今まで身勝手で自己中な奴だった アイツ以外はどうでも良い、そんな想いが強くて、本当に俺は現実を何一つ見ては来なかった レイを初めて見た日にお前に詰め寄った時、お前は資料をくれたよな? あれを見て俺は自分が如何に非道な事をして来たかを、この目で確かめようと渡米したんだ あの人に逢った……あの人はすっかり変わっていて、初めて目にした時、誰だか解らなかった あの人は今 人生を再出発する為に必至に生きていると俺に言った あの絶望の中助けてくれた子に、顔向け出来ない人生は送りたくないからね!と言い大学に入り直して苦学生として生きていた 昔の天真爛漫な姿はなくなり、生きてる姿を見せてくれたよ彼女は…… 俺は彼女に謝罪した そして何か償えないか?と問い掛けた そしたら間に合ってると謂われた 毎月毎月、可愛い子が私に生活費とラブレターをくれるの!と言い烈からの手紙を見せてもらったよ 彼女は俺に………壊れた心で私は我が子を殺しかけた それはどれだけ償おうとしても償えない あの子にそう言ったの そしたらあの子は償う暇に幸せだと笑っててよ!って、言ったの レイは別の場所で暮らす事になったけど、笑ってられるように見守るから、貴方は貴方の場所で笑ってて…と謂われたの だから私には過去を悔いる時間も、涙を流す時間もないのよ 私は私らしく生きなきゃ! 日々サポートしてくれているあの子に、顔向け出来ないのよ だから貴方の事なんて忘れたわ!と謂われたよ」と兵藤は言った そして「お金の援助してくれてるんだな 康太に聞いたら、そのお金は烈が稼いで捻出しているお金だと聞いた 康太は知らないから一円たりとも出しちゃいねぇよ!と謂われた 本当にごめん、烈 俺はバカで愚かな奴だった」と頭を深々と下げて謝罪した 「ひょーろーきゅん」 「なんだ?」 「ぼくはね、れいがあすかいのきどうをそれたのをしって、しらべてたらけらから! れいがうまれたのは、あのひとのおかげらから、それらけなにょよ!」 「烈………」 「それにてんせいしゃじゃなきゃ、たすけにゃかった それらけだよ! だから……ひょーろーきゅんはきにしないで!」 「俺は……目の前に自分に酷似した存在を目にするまで、そんなに重く事を受け止めていなかったんだよ だが今回、自分の軽率な行動により人生を狂わせた人を目の当たりにした……… 俺は何時も康太に人をモノみたいに扱う所が嫌だと、言われていた なのに何処かで俺は他人事のように無責任に考えで行動してしまっていた その事に初めて気が付いて現実を突き付けられ…受け止める為にアメリカに行っていた」 「ひょーろーきゅん、さだめはくつがえらにゃいのよ れいはれいのみちをゆくから、ひょーろーきゅんは、じぶんのみちをゆくのよ!」 「烈………すまなかった」 「きにしなくていいにょよ」 「俺なのりケジメだ、烈! 俺に出来る事があったら何でも言ってくれ! 「にゃら、ひょーろーきゅんにたのみがあるの こんせは、ぼくはどうもながいきできにゃいから… そしたられいたんまもってやってね!」 烈の言葉に兵藤は「そんな簡単に行かせるかよ!」と叫んだ 「しのかげがね、とれにゃいのよ れいたん まもれにゃくなったら、ひょーろーきゅんおねがいね!」 「嫌だ!それはレイは望まねぇだろうが! お前は俺が守ってやる! どんな事をしても護ってやる!」 「ひょーろーきゅん……」 ふるふると震える手が未だに治ってない事を告げる 「いまぼくとこうしてあるいてたら、ひょーろーきゅんもころされちゃう……それほどね、きけんにゃのよ」 「あんでそんな事態になってるんだよ!」と兵藤は怒って康太に電話した そして電話で総てを聞いた 康太はまるでゲームが何かを話すように、掻い摘んで端的に話した 「まぁ要するに、最大のラスボスがいるとするやん! ソイツにとって最悪な相性のレイの存在を危惧してて、消し去りてぇんだよ でもな本人を消すには力が足らないから無理だと踏んだラスボスが烈を消してレイに大打撃を与える策略なんだよ 烈を亡くしたレイが絶望して死んでくれれば、泣いて喜ぶ作戦なんだろ!」と伝えた 兵藤は言葉もなくそれを聞いていた 烈は「ひょーろーきゅん、ぼく、りゅーまよぶね」と謂うと、兵藤は「俺が送っていく!」と言った 烈は危惧していた 最近は取り繕う駒も不足してるのか? 闇雲に襲ってくる感が否めないのだ 兵藤は烈を抱き締めた 甘い匂いのする烈の優しさに労られ、兵藤は泣いていた 「竜馬が立派に政治家になるまで傍にいてやれよ! それが共に逝く者の努めだろうが!」と言った 烈は兵藤の頭を撫でて 「そうね、りゅーまをせいかいに、おくりだしゃにゃいとね」と言った 兵藤は部屋にルームサービスを呼ぶと、二人で軽く夕飯を取った そして送って逝く 「ひょーろーきゅん、だいじょうび? ほんとうに、ぼくといると、きけんなのよ」 兵藤にはそれがピンと来なかった 康太といる時はそれはそれは狙われて命の危険に何度も晒された だが今いるのは烈だ 烈がそんなに命の危険に晒されて、狙われていると謂う事が信じられずにいた  だが、何があろうとも烈を護り通す!と決めて送り届けると決めた ホテルから出て横浜に向けて車を走らせる ホテルを出た直ぐから後を執拗に着けて来る車がいた ベタッと兵藤の車に張り付き、幅寄せしたり妨害を仕掛けてくる 「本当に刺客送られてるんだな、烈」 「そーにゃのよ、らから きけんよいったにょに」 「大丈夫だ!烈! 兵藤君は結構な修羅場をおめぇの母ちゃんと共に生き抜いたんだぜ!」 気合を入れてハンドルを握る 後ろの車を振り切ろうとしてもベタッと距離を離さない 兵藤も頑張り走るが、相手は一定の距離を保ち兵藤の車に体当たりを始めた 兵藤の車が衝撃で火花を散らす 「ひょーろーきゅん、らからあぶにゃいっていったのよ」と言った 康太じゃあるまいし、こんなにも烈の生活は脅かされていたのか? 兵藤は人気を避けて海岸側にハンドルを切ると、車は躊躇する事なく、体当りして車をガードレールから押しだそうとする! 兵藤はガードレールを付き破り押し出される車から、烈を抱き締めたままドアを開けた このままじゃ車に押しつぶされて死ぬか 落ちた瞬間車が爆発して死ぬか どちらしかない! と決めて、烈を抱き締めたまま外へ飛び出した なるべく遠くへ飛ぶ様に力を振り出す 飛び降りた先に車が突っ込んでくる 車は破片を撒き散らし、堕ちて行った 兵藤は烈を強く抱き締め、何とか烈を護り通した 飛び交う破片はどうも出来なくて、烈も自分も無惨に傷つくのを感じつつ地面に着地するなり、犯人の目から逃れて隠れた 車が爆発したせいで視界が悪く、立ち上がる火花と黒煙に包まれ酷い匂いに耐えて息を潜めているしか出来なかった 車が去って行くのを確かめてから、携帯を取り出して美緒に「やられた!美緒!烈を巻き込んで事故った! 生きてると解ったら殺しに来た奴が何するか解らねぇ!何とかしてくれ!」と切羽詰まった声で美緒に訴えた 美緒は「解った即座に叔父様に連絡して動いて貰います!なので何としても烈を守り通しなさい!」と言って電話が切れた 兵藤は美緒に非常用に持たされたGPS衛星を使用したボタンを押して居場所を知らせた 美緒は即座に警視総監をしている叔父に連絡を入れて動いて貰った そして三木繁雄を動かして特殊機動隊を派遣して貰えるように頼んだ 美緒は三木に「烈と我が息子が殺されかけているのじゃ!即座に特殊機動隊を派遣を動かすのじゃ繁雄! でなくば、烈が殺されてしまう!」と切羽詰まった声で訴えた 三木は即座に安曇に許可を取り、特殊機動隊を派遣させた ヘリコプターでGPS衛星信号を追って、追跡する いち早く現場に駆け付けた警官達は上からの指示で、規制線を張り不審な人物を一切近付けるな!とお達しを受け規制線を張り巡らせて警戒した 規制線を張り巡らした後は、一般の車は事故処理中だと看板を出し近付けない様にして、現場を守った そこへ特殊機動隊が到着し、血に染まり煤だらけの兵藤と烈を救助して飛鳥井記念病院へと運び込んだ 兵藤も烈も硝子や破片が突き刺さり無傷ではなかった 烈を庇った兵藤はもっと酷く血に染まっていた 緊急連絡を受け取った久遠は兵藤と烈の到着を待った そして運び込まれたら即座に対処出来るように、用意して待っていた そして念の為、竜馬に連絡をして病院まで来て貰った また血を流しているなら輸血を考えねばならないからだ! 久遠は康太と榊原に即座に連絡を入れた 康太と榊原は自宅に還っていた時に久遠からの連絡を受けた 二人は唖然として事態を飲み込めない様だった ほんの数時間前、兵藤が烈を連れて出て行った なのに血だらけで飛鳥井記念病院に運ばれると謂うのか? 「何が起きてるんだよ伊織!」と康太は弱音を吐いた 榊原は康太を抱き締めて「僕にも解りません………また烈が怪我したと家族に伝えねばなりませんね」と言った 烈は春先から幾度となく怪我をして入院した そして今度も無傷ではないだろう烈を想い…それを受け止める家族の事を考えていた そこへ一生がやって来て二人の異変を感じ取ると 「何があったのよ?」と問い掛けた 「烈が……貴史と共に出て行ったんだけど、事故に遭ったと連絡が入った」 一生は「貴史が事故?それは何かの間違いじゃねぇのかよ? アイツは運転はかなりの腕前だぜ? 烈を乗せているなら尚更慎重になるのに?」と訝しんで言った 「腕は良くても事故るように仕向けられた運転ならば、どうしようもねぇんだよ」 と康太は吐き捨てた 榊原は立ち上がると康太と共に烈の部屋に行き、入院の準備をバッグに詰めた そして、フラフラになりながら病院へも向かった 一生も康太と共に病院に向かう 病院には兵藤の母親の美緒と、夫の昭一郎と三木繁雄が康太達を待ち構えていた 美緒は康太を見ると深々と頭を下げた 康太は美緒を止めた 「きっと烈が貴史を巻き込んだんだ オレがもっと気を付けてれば良かったんだよ!」と言った 榊原は「何処で事故ったのですか?」と尋ねた 三木が貴史が押したGPS衛星ボタンを押し信号を発信した地点を地図で見せた 康太は「茅ヶ崎?あの時既に茅ヶ崎にいたのか?」と呟いた 兵藤から電話が入った時、全てを話した あれからそんなに経ってないのに、事故だと? 全く巫山戯すぎている! 康太はここ最近まで兵藤がアメリカに行っているのを知っていた 何をしに言っているのかを知っていて、黙っていた そして何故兵藤が烈を連れて出たのかも知っていた だからこそ、送り出したのだ それがまさか………命を狙われたと謂うのか? 康太は悔いていた まさかこんな暴挙に出て来るとは…… 「こんなに嫌と謂う程に同じ目に遭ってるのを見ると、京極はアイツに操られてたんじゃねぇのかって?想っちまうな……」 榊原もまさに同じ事を考えていた 「君も神野の車で事故してガードレールから追いやられたの、あの場所でしたよね?」 「……あぁ、嫌と謂う程にな知ってる場所だ だがオレは弥勒が吹き飛ばしてくれたから額の傷だけで済んだ……あの時神野と小鳥遊の怪我は酷かったのが良い例じゃねぇかよ! そして貴史と烈には弥勒みてぇな存在はいない 考えただけで状況は最悪だって解るしかねぇじゃねぇか!」 そこへ特殊機動隊の隊員が兵藤と烈を特殊なカバーの中に入れたまま搬送して来た 隊員は二人を久遠に引き渡すと、書類を記入して康太と榊原に会釈して引き上げて行った 久遠は兵藤と烈を即座に処置室に運び込んだ 烈と兵藤の顔………真っ黒で何処が顔か解らなかった それ程に悲惨な事故だったと伺えられた 病院に慎一が一生の後を追って隼人と聡一郎を連れてやって来ると、憔悴しきった康太と榊原を目にした 「何が起こっているのですか?」と慎一が問い掛けると、一生が皆に烈と兵藤が事故り運ばれたと伝えた 「烈?…………また烈ですか? なんでこうも烈ばかり怪我をしないと駄目なんですか?」 慎一は泣いていた 烈に付き添って病院に通っていたのは慎一だったからだ 痺れた手を治す為にリハビリを始めた 毒を抜く為に辛い点滴も毎日受けている烈を傍で見てきたのだ 康太は慎一に個室を取りに行かせた 兵藤と烈の個室を取りに行き戻って来ると、康太は個室へ移動しようと言った 美緒と昭一郎と三木には病室に戻ったら連絡させると言い一旦帰らせた 個室に入ると康太は全部話し始めた 今起こっている事全てを話した そして烈が狙われるのは解っていたが、兵藤と共に出してしまった自分の落度だと、康太は自分を責める様に言った 一生は「おめぇの所為じゃねぇだろ!」と言った だが康太は「確実にトドメを刺しに来るのを解ってて、出したんだからオレの所為なんだよ一生」と言った 一生は「何故貴史は烈を連れて行ったんだよ?」と問い掛けた 「それはレイの顔を見れば解るだろ? アイツは苦しめて捨てた彼女をその目で見に行ったんだよ! そして現実を知り烈と逢って話をした」 「烈と何を話したんだ? 烈は貴史に何を聞かされたんだ?」 話が見えて来ない一生は、問い質した 「レイはオレが隠して育てさせようと考えていた 其れよりも早く烈は動きレイを保護した そしてレイを保護させた後は、彼女の人生を再生させる為に生活の保証をしてやり、人生をやり直しさせる為に学ばせた 自分の足で立てるようになるまではサポートをしてやるつもりだ オレは1円たりとも出しちゃいねぇ! だから烈は宗右衛門を引き継いだ会社だけでは足りず【R&R】を起こしたんだよ! だがそれも目処が立った 彼女は来年大学を卒業したら自分の足で歩くと約束したらしいからな だからこそ、会社に投資として自分の報酬の全てをぶち込み社員教育を始めたんだよ!」 一生は言葉もなかった あまりにも重くて あまりも刹那くて あまりも人の人生を生かして繋げる果ての話なのだから……… そして康太は本題を伝える 「今まで散々人を操り仕掛けて来たアイツはレイの存在を危惧しているんだよ そりゃそうだよな、ニブルヘイムは原始のチカラを獲て更に強大な力を得られた 今遺ってる創世記の神と遜色ない力を秘められている だから邪魔だから消したいが、今の力じゃ負けちゃうから、ならレイがこの世で一番大切にしてる烈を狙って消したら絶望してこの世から消えてくれないかな? って悪意が幾度も幾度も烈を消そうとしてるんだよ!」 聡一郎は「何ですか?それは………そんなセコいヤツの所為で烈は幾度も幾度も死にかけているんですか? そして貴史も巻き込まれたと言うんですか?」と悔しげに言った 一生は「何だよ!それは!なら貴史はそこにいたってだけで巻き込まれて死にそうな目に遭ってるって事なのかよ?なんでそんな狙われてる奴と……」と悔しげに吐き出した 榊原は「貴史は巻き込まれ怪我しました!だけどそれは烈が引き起こした訳ではありません!」とキッパリ言った 一生は「済まなかった…」と謝った 巻き込まれたのは烈も同じなのだ 共に闘って来た友を想うあまり、理不尽な事を言った 榊原は不機嫌そうな顔を隠す事なく 「君は最近烈を軽視する発言が多いですね! 君に取ったら貴史は共に生きて来た盟友でしょうが、烈は飛鳥井の為に何度も命を狙われそれでも闘っている僕の息子です!」 と榊原は吐き捨て、その場を出て行った 康太は榊原の後を追う 一生は「アイツを想う余り俺は何時も烈を軽く言っちまう事がある………」と悔やんで謂う 聡一郎は「君は烈が好きじゃない 他の子との扱いがどうしても烈だと雑になると想う時があります そしてレイが来た時、君は敵意剥き出しで烈を睨み付けていましたよね?」と辛辣な事を言った 「別に俺は烈を軽視してる訳じゃねぇ…… 共に過ごして来た時間が長かった分、貴史が知ったらショックを受けるんじゃねぇかって……想っちまった そして烈より共に過ごして来た分長い貴史の心配をしたのは確かだが、軽視してる訳じゃねぇ」 「君は何処かで烈を軽視していたのを解っていたから、建御雷神とか使って聖神の婚姻を!と動いていたんじゃないんですか?」 「聡一郎………」 「もう君は烈には関わらなくて大丈夫です!」 「何でそんな事を謂うんだよ! 俺はちゃんと烈の面倒を見られる!」 「でも君……気付いてないんですか? 翔や流生達と烈が話しかけて来ると、君は烈の事は大体スルーして他の兄弟の謂う事を先に聞く時多いんですよ 康太もそれに気付いて、一生に烈の事を関わらせる事を減らしていた 皆気付いて、君だけが無自覚で烈を傷付けていた だから君はもう烈の傍に行くのを辞めなさい!」 一生は言葉もなかった 自分が無意識に烈を軽視して無視していたと謂うのか? 一生は頭を抱えた 慎一も「お前は態度に出るんだよ、烈はそれを知っていたからお前と距離取っていた 俺も烈を軽視していたと自覚させられたよ 春先の時 烈が家を出たのも俺は知らなかった そして烈を追って熊本へ行く飛行機の中で俺は自分を悔いた そう言えば俺も烈は手がかからないと後回しにしていた時があった 一度菩提寺に烈を忘れて還った時があった 兄達が怒り俺と口も聞いてくれなくて以来気をつける様にした だが、俺も烈を軽視していたんだよ だから烈は何も言わず家を出てしまった あれ以来、俺にはあまり何も我が儘を謂わない それは聞いてもらえないのを知っているからなんだと今なら想う…   竜馬を傍に置いてからは特に……それは俺が烈を軽視して来てしまった結果なんだよ」と涙ながらに語った その日 烈は病室には還らなかった 榊原により別の病院に移されたと聞き、一生は後悔した 兵藤だけ個室に戻って来た時の衝撃 それだけの事をしたのだと想い知った 康太に烈は何処に入院してるんだよ!と問い掛けても 「お前はもう関わらなくて良い!」と言い渡されてしまって何も言えずにいた どの子も変わりなく康太の子として見てきたつもりだった 烈の瞳が怖かったってのもある 康太の瞳とは違い蒼く光る瞳に総てが見透かされそうで、警戒しちまう それを悟らせない様に距離を置いた 嫌っていた訳では無い 訳では無いが………結果 烈を軽視して扱ってしまっていた 慎一と一生 兄弟に突き付けられた心の澱 やるせない想いは……烈へと向く どんな気持ちで飛鳥井にいた? 兄弟と微妙に差を付けられ傷付かなかった訳がないのだ 無意識だった だが良く考えてみれば慎一や聡一郎が謂う事こそ真実だと知るのだ 己の態度を鑑みれば、烈は小さいから何も解らないだろう 烈は貫禄があるから、放っておいても大丈夫 仕方ない、だから… 諦めて嫌嫌してやる そんな想いで烈を扱っていたのは確かだった 兄弟達と烈が同時に話し掛けたら、必ず兄達を優先して烈の言葉すらろくに聞いてやらなかった そんな時 烈はどんな顔をしていた? 何時も一生と微妙に距離を置いていたのは、そんな一生の態度がさせていたのだろう そしてそんな総てを烈ならば大丈夫だとやり過ごした 何故大丈夫だと想った? 不協和音は鳴り響いていた

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