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RULE №2

「さっきは、ホントごめんっ!!」 浴室から出ると待ち構えていたのは、木内in俺が土下座する姿。 「...は?えっ...ちょ...えっ!?」 突然の事に驚き、動揺する俺in木内。 「急に、どうしたんだよ。  さっきはあんだけ、好き放題しやがった癖に。  つーか顔、挙げろ。  んでもって俺の体で、勝手に五体投地してんじゃねぇよっ!」 その言葉に従いそろりと上を向いたその表情は、もはや半泣き状態。 「...ごめん。  怒ってたから、中々お風呂から出てこなかったんだよね?  ...でもこれ以上俺の事、嫌いにならないで。」 何コイツ、そんな勘違いしてた訳? ...ちげぇよっ! アイツに教えられた通りのやり方で、二回目を楽しんでましただなんてそんな糞みたいな長風呂の理由なんか、死んでも言えねぇけど。 しかし...コイツ、俺に嫌われてるって自覚はあったんだな。 「ちょっとからかうだけの、つもりだったんだよ。  でも大悟があんな反応するから、我慢出来なくなっちゃって...ホント、ごめんね?」 なんだ、それ。 でも余りにも情けないその顔につい噴き出し、そのまま腹を抱えて爆笑した。 「そんな泣きそうな顔するなら、あんなふざけた真似、最初からすんなよ。  ホント、木内はアホだなっ!  もう、怒ってない。  ...それと、嫌いにもなってねぇよ。」 すると今度は木内がポカンとした様子で口を開け...それからめっちゃ嬉しそうに笑った。 その顔は、とてつも無く可愛くて。 同じ顔面を使ってても、中のヤツが変わるとこんなに印象が変わるもんなのかと、衝撃を受けた。 「とりま、立て。  自分が半泣きで土下座してる姿見せられるとか...何プレイだよ、これ。」 ちょっと苦笑して、言った。 するとコイツはバツが悪そうに、またごめんと謝り、ようやく立ち上がった。 「...確かに俺、お前の事嫌いだったよ。」 俺の言葉に、コイツの肩がビクンと震えた。 それを見て、またしても思わず噴き出した。 「よく聞け、木内。  『嫌いだった』っつったよな?  『過去形』だ、『過去形』。」  硬くてごわごわな髪質の、真っ黒な頭をワシワシと撫でて言った。 すると木内は、今度は俺に思いっきりタックルするみたいにして抱き付いてきた。 その勢いで、そのまま床に二人して倒れ込む俺達。 ったく...犬か、コイツは。 でも実際、なんでかは分からないけれど、不思議とコイツの事が嫌いじゃなくなっていた。 好きか、と聞かれたら、正直よくわからないけれど...少なくとも、嫌いじゃない。 「ルール、その②。  やっぱお互いの事をよく知る、ってのは大事かもだな。」 大人しく腕の中におさまったまま、呟いた。 「ん...、そうだね。  俺の事、もっとよく知って。  大悟の事も、もっとよく俺に教えて。  ...そしてお願いだから、少しでも俺の事好きになってよ。」 俺の体を強く抱き締めたまま耳元で、祈るように囁かれた言葉。 一瞬。 ...ほんの一瞬、心臓がドクンと跳ね上がった気がした。

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