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第7話 愛する時
すっかりネコになった野坂が喘ぐ
抱き心地は最高
体躯の相性も最高
手放したくない……
執着がムクムクと顔を出す
「野坂、君を抱いている意味を解ってますか?」
野坂は、トロンっとした顔をして昂揚させた顔で脇坂を見た
「……編集者に戻ったから……」
言って……傷付いた顔をする
何処までバカなんですかね……この子
「解るまでイクの止めようかな……」
「…ぁん……イッて……お願いだからぁ……」
「ちゃんと好きって想い伝わってますか?」
「………え?嘘……」
頭に来た脇坂は野坂の中から抜いた
「此処に座りなさい」
野坂は脇坂の前にちょこんと座った
「野坂、君の公開ラブレター受け取りました……と言いませんでしたか?」
「………言った……」
「あれは君と僕ですよね?」
野坂はコクっと頷いた
「僕は君のラブレターを受け取りました
だから君に逢いに行きました
まさか……元恋人に襲われてるなんて想いませんでしたがね」
「………脇坂……ごめん……」
「許してあげても良いですよ?
此処に住むと約束するならね!」
「……え?良いの?俺住んでも」
「このマンションは君と暮らす日のために作ったと言いませんでしたか?」
「………何かさ夢みたいで……」
「と、言う事で言って下さい」
「……え?何を?」
「篤史、大好きだ
お前だけを愛してる
って言って下さい」
「………わ……脇坂……」
「ほら言ってくれないと始められませんよ?」
野坂はモジモジと動いた
お尻の穴が疼くなんて……
体験したくなかったよ……
「わ…脇坂……好き
昔から大好きだ
……これで良い?」
「愛してる……は?」
「…愛してる……脇坂」
「ムードが足りませんが……
許してあげます」
「俺にムードを求め……わあぁ…いきなりかよ!」
脇坂は野坂を押し倒し、脚を曲げるといきなり挿入した
「……ぁっ……あぁっ……脇坂……脇坂……」
野坂は脇坂の名前を呼んで……
背中を掻き抱いた
欲望が尽きるまで……貪り、眠りについた
野坂は気絶していた
イキ過ぎたのだ
行為の間中イキっぱなしで……
精液が出なくなっても……感覚がイッてしまっていた
脇坂は野坂が気絶しても止まらず貪っていた
明日……腰が立たずに怒るかな?
脇坂はクスッと笑った
「野坂、野坂……おい起きろ……」
ボーッと寝ぼけて目を開けると……
イケメンが目の前にいた
「……ぁ……脇坂だぁ……」
スリスリ擦り寄って、かなり可愛い
もぉ……この子は……
脇坂は野坂の口に口吻を落とした
「…すげぇ……この夢……キスして欲しいって想ったら……キスしてくれた……」
野坂がポッと頬を染めた
「野坂、起きないと……朝から僕の相手する羽目になりますよ?」
「……相手…え?………………………!!!……起きる!起きるから!」
野坂は思い出した様に起きた
脇坂は笑っていた
「………ぃ…………てぇな……」
「……切れました?」
「………そう言うのとは違う……
使わない筋肉が悲鳴を上げてる感じ……」
「昨夜の君はかなり積極的でしたからね」
脇坂は笑った
野坂は真っ赤な顔で脇坂を睨んだ
迫力は皆無
可愛いだけだった
ボーッとしていた野坂は、ハッキリとしてくる意識の中で大変な事実を目の当たりにして‥‥
「………あ……俺……締め切り破ったかも……」
と弱音を吐いた
脇坂は「え?何処の出版社ですか?」と問い掛けた
「………小雑館のエッセイ……落としたわ……」
「小雑館……ですか、担当者は?」
「………親成さん……」
「……親成さんか……何とか話してみます」
脇坂は野坂を起こして浴室に向かうと、野坂を洗った
綺麗にピカピカに洗って、一緒に湯船に浸かった
風呂から出ると野坂の借りていた部屋へと連れて行かれた
クローゼットには野坂に合いそうな服が吊されていた
「クローゼットの中の服は君に合いそうなのを吟味して買った服です
好きなのを着なさい
下着もクローゼットの中の引き出しの中にあります」
「……この服、俺の?」
「ええ。それより君……マンションの荷物どうしたんですか?」
「………全部処分した…PCだけ持って……ばぁちゃんちに転がり込んだ」
何ともアバウトな人なんだ…脇坂は苦笑した
「お前に見捨てられて……お前が来た事のある部屋にはいたくなかったんだよ……」
「……だからって全部処分したの?」
「……俺……PCだけあれば生きて行けるから……」
「………これからは僕だけいれば生きて行けるから……にして下さいね
はい。これ、マンションの鍵です」
「………え?……」
「カードキーです
この部屋には誰も連れて来ないで下さいね!」
「解った!打ち合わせはホテルを用意してもらう!」
余計危ない じゃないですか!
「編集者は良いです
仕事関係は良いです
その……セフレとか恋人とか……です」
「………俺、脇坂のモノになったじゃんか!
俺、他は要らないから誰も入れない」
「………野坂……」
野坂は少し考え込んで‥‥‥覚悟を決めた瞳を脇坂に向けた
「あ!それから……脇坂、頼みがあるんだけど?」
「何ですか?」
「前の担当者に謂ったけど、俺の顔は絶対に出さないで貰いたいんだ」
「………背表紙の作者紹介欄に顔写真とかNGと言う事ですか?」
「それだけじゃない‥‥取材も顔が露見する様なモノは総て‥‥断ってくれ」
「何故ですか?理由を聞いて‥‥納得させてくれたら聞いてあげます」
「………俺の顔……誰かに似てるって想わねぇ?」
「………作家の瀬尾敏利輝?……とかですか?」
「………多分……あの人の不倫相手だった……」
脇坂は瀬尾利輝のデーターを頭の中で思い浮かべてみる
妻と子供がいて……孫もいる
その彼が昔……不倫モノを書いた
ひたすらに愛した物語だった
妻と子を捨てられなかった男は最期には妻の元へ帰る……
そんな話しだった
「………野坂の父は……妻にべた惚れだった……
だから……血液型の違う子供を産ませて……自分の戸籍に入れた……」
野坂は辛そうに過去の話をした
脇坂はそれが堪えられなくて‥‥
「………野坂……辛いなら言わなくても良いです……」と止めた
「……全部知ってて欲しいんだ
俺は……俺にしかなれないから……」
脇坂は野坂を抱き締めた
「慌てなくても、僕はずっと君の傍にいます
離れる気は皆無です
君のスケジュールは僕が管理します
君のマネージメントは総て僕が管理します」
「ん。俺は書ける場所と脇坂がいてくれれば何も要らない」
「本当に君は可愛いですね」
「そんな事言うの脇坂だけだってば」
野坂は笑った
久しぶりに見た野坂の笑顔だった
やっと……捕まえた
野坂……
もう逃がしませんよ
脇坂は愛する存在を手に入れた
「俺の姿は‥‥人を傷付ける‥‥だから俺は‥‥姿を消して生きなきゃダメなんだ」
「それは納得出来ませんよ知輝
君が誰に似ていようが、僕と共に過ごした野坂知輝なのに変わりはありません!
僕は君をもっと輝ける世界に連れて逝くつもりです
ペンネームも本名に戻して、君の作家活動の制限を解いて逝こうと想っています」
「それだと‥‥傷付く人が出て来るから‥‥
迷惑かける人も出て来るから‥‥」
「君がいる事が迷惑だなんて僕は納得出来ませんよ」
「篤史‥‥」
「僕と共に生きると謂ってくれたんじゃないんですか?」
「謂った‥‥けど‥‥」
「だったら出した本の責任位取りなさい!
君が産み出した作中をもっと先へと送り出してやりなさい!」
脇坂はそう言い野坂を優しく抱き締めた
「良いのかな?俺‥‥」
「他の誰が何を謂おうと気にしなくて良い!
知輝は僕の謂う事だけ耳を傾けていれば良い」
野坂はコクッと頷いた
「作家 野坂知輝は、編集者 脇坂篤史の集大成でもあるのです
僕の持てる限りで君を支えます
だから君も踏み出して下さい」
作家として表舞台に立てと背中を押される
そうしても良いのだと、優しく導かれ
野坂は覚悟を決めた
もう一人で生まれて来てごめんなさいと‥‥‥泣いてる子供じゃないのだから‥‥
「知輝」
「何?」
「君が生まれて来た事は君の罪ではありません!
君が生きているのは君の罪ではありません!
ですから息を潜めて暮らすのは止めましょう
君は君にしかなれない
なら野坂知輝を見せれば良いんです!」
「俺は俺でいて良いの?」
「僕の野坂知輝じゃないんですか?」
「お前の野坂知輝だ‥‥」
脇坂は強く野坂を抱き締めた
歩き出そう
一人では無理なら
二人で共に‥‥歩き出そう
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