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第10話 想いの総てを君に捧げん

直木賞を取っても、野坂は受賞前と変わらずマイペースに生きていた 相変わらず朝は弱く…… 寝癖も凄かった 最近は脇坂の方が忙しくて、野坂の世話は疎かになりつつあった 「おはよう知輝」 横で寝ている野坂に、脇坂はキスを落とした 最近は一緒に寝るだけだった 脇坂の寝室に、脇坂が寝ていなければ、野坂は脇坂の部屋には入らなかった 脇坂がベッドで寝てると、そっと潜り込み抱き着いて眠っていた 脇坂の寝室のドアは常に鍵は掛けてなかった 野坂が来たい時に来れば良い と、解放してあった 「……脇坂、おはよう」 眠そうに野坂は目を擦っていた 「原稿は終わったの?」 「………まだ…書けないんだ……」 「無理な設定したとか?」 「プロットは無難だった」 「ならキャラに魅力が ない?」 「…………かも……」 「この世に出した以上は君の子供も同然の主人公です 最期まで送り出す義務が君にはあるんですよ」 「………脇坂……今の……キた……」 脇坂は笑って口吻ようとしたら、野坂は脇坂の腕から擦り抜けて……ベッドを下りた 自分の部屋に戻り……帰っては来なかった 「……僕も……キたんですが…」 脇坂は股間を眺めた 聳え立つ……ソレは最近……活躍していなかった お互いが忙しい過ぎるのだ 脇坂はため息を着いて、浴室に行き……抜いた 熱い野坂の中へ挿れたい 搦め取る腸壁に包まれてイキたい…… 「………この……愚息は……欲求不満ですかね?」 暴走しそうな熱を理性で抑え、脇坂は浴室を出た ベッドを整え、軽く掃除をしてキッチンに行った 仕事に余裕があると野坂と朝食を取れる 締め切りが近付くと……野坂は食事を取らない 脇坂は簡単な朝食を作り、ラップをした そして朝食を取るとスーツに着替えた 出勤前に野坂の部屋をノックして覗き込んだ 野坂は振り返って脇坂を見ていた 「会社に行くのか?」 「朝食は作ってあります ちゃんと食べなさい」 「解った 篤史…最近……構ってくれないね…」 他に誰か出来たの? と言いたげな瞳を向けられた 「部屋から出なかったのは君でしょ?」 「………誰も作るな……」 野坂は立ち上がって脇坂に抱き着いた 「作ってませんよ? 君が僕にお預けを食わしているんですよ?」 「…ごめん……仕事終わらせるから……」 「無理しなくても良いです」 脇坂は野坂にキスして離れた 野坂は名残惜しそうな顔をした 「そんな顔しないの……」 「…………もう二週間……してねぇのに…」 「………欲しいんですか?」 野坂は頷いた 「今、うちの仕事でしたね?」 「……ん……詰まってる……」 脇坂は携帯を取り出すと遅刻すると告げた 野坂がご機嫌斜めなのを告げた 「これで時間が出来ました」 「……ん。……篤史……」 「僕は……バスルームで抜いて来たので……知輝、僕をやる気にさせて下さい」 「……え?………えええ!……」 「早く服を脱いで初めて下さい」 真っ赤な顔をして……躊躇するが、野坂は従順だ 野坂は服を脱ぐとベッドに横たわった そして乳首を摘まみ性器を扱いだ 「……あぁっ……あっ……あっ……」 野坂の体躯も艶めいて薄らと汗を浮かべていた 「こっちのお口は、触らなくて良いんですか?」 脇坂は野坂のお尻の穴に触れた 「……そこは篤史が……」 「我が儘なお姫様だ」 脇坂は笑ってローションを蕾に垂らした そして指を挿れると、野坂は仰け反った 「相変わらずキツいな……」 「ねぇ……篤史が欲しい……」 「もう少し解したらね ほら、頑張って解して…」 野坂はお尻の穴に指を挿れで解していた うずうずと疼いて来ると…… 脇坂を押し倒した 「これで、解しながら挿れる」 脇坂の肉棒を掴むと秘孔に擦り付けた 何度も挿れては出して解して脇坂を翻弄した 脇坂は焦れて…野坂の腰を掴んで引き寄せた 「……ぁっ……待って……んんっ…」 「待てない……何日お預け食わせてると想ってるんだ?」 「………ごめん…… 風呂場で抜いたんだよね?」 「あのままでは会社に行けません」 脇坂は自分の欲望よりも、野坂を優先してくれる 愛されてるな……ってこう言う時に感じれる 「お喋りはもうお終いだ」 脇坂は野坂の中を掻き回す様にグラインドさせて抽挿を早めた 野坂は背を撓らせ快感に震えていた 「……ぁ……そこイイっ……」 「良いでしょう? 君の好きな場所です」 脇坂の声も快感で掠れていた その声に野坂はゾクゾクと来る 自分が脇坂にこの声を出させてるのだと想うと堪らなく興奮した 「……っ……もうイキます…… 知輝……一緒に………」 脇坂は野坂の肩に噛み付いた 「……あぁっ……あっ……あっ……」 野坂も脇坂と同時に射精した 痙攣したみたいに野坂の腸壁が震える 「……篤史……ごめん……我が儘言って……」 野坂は謝った 「謝らなくて良いですよ?」 「………篤史は……俺で良いの?」 脇坂は野坂の頭を叩いた 「何を言い出すかと想えば…… 君は僕が浮気でもしてると想ってるのですか?」 「違うよ……篤史が俺の仕事の管理もしてくれるから……大変なのは解るんだ だから……こんな大変な奴……嫌になったりしないのかなって…」 「嫌になる訳ないでしょ? 君の仕事が上がらないと風呂場で抜かなきゃならないけど……僕は満足してます 君じゃない誰かに使う気なら風呂場で抜いたりしないでしょ?」 「………ごめん……」 「そんな事言うなら締め切りが目前でも犯るしかないですね!」 「……え?………ぁ……硬い…ぁっ……篤史……大きくすんな…」 「無理ですよ…どうやら僕、欲求不満みたいです 相手して下さいね知輝」 「……ぁん……篤史……動け…」 「嫌です、君が上になって動いて下さい 僕は朝から侘しく抜いたと言うのに…… 誘ってくれるなら抜いたりしませんでした……」 どうやら脇坂は拗ねてるらしい…… ゴロンと転がりいつの間にか野坂が脇坂の上に乗せられていた 野坂は腰を動かし、自分のイイ所に擦り付けていた 「………野坂……そんなんじゃ僕はイケません……」 「脇坂……お前動けよ……俺疲れた……」 「………はいはい……我が儘なお姫様ですね…… でもセックスは共同作業なので自分だけ楽しようとしない!」 脇坂は身を起こすと野坂の腰を抱えた 腰を動かし、野坂の腰を掴んで上下して抽挿を始めた 「ほら、もっと頑張って…」 「……俺……気絶しそう……」 「気絶したら起こす ダッチワイフじゃないんだから、起きてなさい」 「クソッ…」 野坂は頑張って脇坂をイカせようと腸壁を締め上げた 脇坂も焦らす限界を迎えて…… 野坂と同時に……射精した 「………疲れた……」 野坂はグテッとベッドに倒れ込んだ 「まだ2回しかイッてないのに?」 「篤史3回目だろ?」 風呂場で抜いたなら……3回目の射精だった筈だ 脇坂のクォーターだけあって、性器は外人バリに長い……そして太い…… 全部食べてイカせようとすると……かなりの重労働だった 「野坂、自己完結してるんじゃありません!」 「………まだ勃つのかよ?」 脇坂は勃起した肉棒で野坂の中を掻き回した まだ抜いてなかったのだ…… 「………篤史……疲れた……」 「僕は二週間分取り立てねばなりません!」 「………そんなSな所が好きなんだけどな……」 「………僕はSではありません 失礼な……こんな優しい男に…」 気絶しても叩き起こして付き合わせる奴が……Sじゃないのか? 野坂はクスクス笑った その刺激に更に脇坂の性器を育てて行った 脇坂は野坂の脚を抱えると、一気に奥まで貫いた 「……あぁ……深いって……んっ……」 「深いの好きでしょ? その場所は僕しか届きませんよ?」 「そーだよ!お前にしか届かない! 俺をこんな体躯にしやがって……」 「仕方ないでしょ? 君を抱きたかったんですから」 「……物好き……」 「……その物好きがいないと死ぬと言ったのは君でしょ?」 「そーだよ!篤史を失ったら……生きていけないからな!」 真っ赤な顔になり、野坂はそっぽを向いた こんな所……堪らなく愛しい 二人は何度も愛を確かめ合った 野坂が起きるのも苦痛になりベッドの中で過ごしたのは…… 言うまでもない 恋すれど 映画の制作発表が行われた 制作発表の場に野坂は出席した この目で見たいんだ…… と言う野坂の意向を制作サイドに伝えると、制作サイドは快く了承してくれた 撮影中、何時見に行っても良いようにパスも貰って来てくれていた 「野坂、お前にとって第一歩になるなら、僕は手助けしようと想っています」 脇坂はそう言った 脇坂に支えられ、野坂は歩き出す 自分の人生を噛み締めて…… 制作発表の席には瀬尾の妻の愛那がいた 野坂は瀬尾が 『君も逢えば解ります』 と言った台詞を思い出した それ程に……愛那は………野坂智恵美にソックリだった 制作発表の記者会見の一番最後に、野坂にマイクが渡された 「今日は制作発表にお集まり下さり本当にありがとうございます 俺の作品ではありますが、活字が現実の存在となり映像になる その行程を俺は今から物凄く楽しみにしています 総て撮り終えた時、俺は何を語るんでしょうか 楽しみで仕方ありません」 野坂は、マイクを置いて深々と頭を下げた 制作発表の記者会見は終了した 瀬尾愛那は野坂の控え室のドアをノックした 脇坂がドアを開けた 「愛那さん、お待ちしておりました」 脇坂が愛那を控え室に招き入れた 「愛那さん、お時間がおありでしたら、野坂の住んでる家に招こうと想ってるのですが、どうですか?」 「………お宅にお邪魔しても宜しいのかしら?」 「構いません。 次に尋ねる時は僕を通して下されば、問題はありません 野坂はインターフォンを鳴らしても出ませんから…」 「……では連れて行って下さい」 「では、ご一緒に」 脇坂は荷物を持つと野坂を促した 愛那はその後ろに着いて、駐車場へと向かった 脇坂のマンションまで、そんなに距離はなかった 脇坂はマンションの駐車場に車を停めると、車から下り 助手席と後部座席のドアを開けた 野坂が車から下りるとドアを閉めた 愛那も車から下りると、脇坂がドアを閉めた ロックしてマンションの中へと入って行く 丁度止まっているエレベーターに乗り込み、最上階まで向かい、エレベーターを下りた 野坂の手が…… 脇坂のスーツの裾を掴んだ その手は震えていた 脇坂は玄関のドアを開けると野坂を先に家に入れた 野坂は来客用のスリッパを出した 「愛那さん、どうぞお入り下さい」 愛那は家の中に入り、出されたスリッパをはいた 脇坂も家の中に入った 「野坂、応接間にお連れして」 言われてやっと野坂は動き出した スタスタ歩き応接間のドアを開けると愛那を招き入れた 脇坂は野坂と愛那を座らせるとお茶を淹れに向かった 野坂は愛那に 「初めまして…」と挨拶した 「知輝さん……前に一度逢ってるの……覚えてない?」 言われて野坂は思い浮かべる 「……あ……編集部で?……ですよね?」 野坂の顔を、ジーッと見ている人がいた その時の人が……目の前の人と一致した 「出会った頃の瀬尾に瓜二つの君の顔を……私は信じられない想いで見てました……」 「……俺……似てますか?」 「………似てるレベルじゃなく……コピーの様にね、ソックリ……憎らしい程に瀬尾に似てる…… 私の子供は……瀬尾というより私に似てる……瓜二つにね  皮肉よね……」 愛那が呟くと脇坂が紅茶と茶菓子をテーブルに置いて、ソファーに座った 「愛那さんの息子さんは瀬尾光輝と言う俳優さんです」 脇坂が説明した 「………俺、テレビ、あんまり見ないから……」 「君の見てる唯一のドラマの主演です」 「……え?あの月9の俳優さん?」 「そうです。彼が愛那さんの息子さんです」 「………そうなんだ……男前だよね」 野坂がそう呟くと、愛那は不思議な顔をした 脇坂がその理由を愛那に教えた 「………この子は自分と言うものを知りません 上手く立ち回れないので回りを拒絶して生きて来たのです なので自分の容姿は……木偶の坊レベルだと想ってるのです」 「………え?……こんなに瀬尾に似ていて…… うちの息子に逢わせたなら…… 羨ましいと言うでしょう……」 「……野坂は親に愛されて育たなかった分疑心暗鬼が強いんです」 「………それ、台本を貰ってひしひしと感じたわ……」 野坂は愛那を見ていた 「………貴方は……そうしていても……『母さん』です 瀬尾先生が逢えば解ると言いました 逢って……解りました……」 野坂の目の前に『母』がいた 愛を貫いた‥‥‥冷たい温もりを持たぬ母がいた 「私は役に入ってるんじゃない これは『私』なのよ…… あの時……瀬尾を挟んで対峙していた女……だと想ってます」 野坂の母も瀬尾の妻も‥‥‥野坂にはもう解らなくなっていた 何年か前に見た母の姿と瀬尾の妻の愛那とが重なり‥‥一つに見える‥‥ 野坂は「………母さん……貴方は誇り高き女だった…… 貴方が泣いた姿など……見た事はない…… だけど……俺を刺した貴方は…… 泣いていた…… 俺を逃がす為に……必死で……鬼になろうとしていた その母さんの泣いた姿が……初めて目にした……母さんの涙だった……」 野坂は目の前の女性を母と愛那と混乱して見ていた 「……知輝……」 「俺の名前に一文字……輝を入れた…… 何故なんだろ? 俺には解らなかった 俺の名前を……父は呼ぶのを拒んだ おい!こら!……誰も俺の名前を呼ばない…… 母は何時も……俺を見ない…… 家にいて他人だった…… 俺は……この名前は要らないと想った…… 俺なんて要らない……と想った」 愛那は野坂を抱きしめた 「貴方の母は愛を貫いた その子供が貴方なの 愛してない訳ないじゃない…… 瀬尾と愛し合った結晶だから……貴方を産み落とした それを貴方に伝えるわ 私がちゃんと伝えてあげる」 愛那は野坂の頬にキスを落とした 母のキスだった 慈愛深き……聖母に抱かれ…… 野坂は泣いた 「………母さん……」 呼びたかった言葉口にする 「……好きだったよ……母さん……」 嗚咽を漏らして野坂は泣いた 泣いて……… 泣いて…… 泣き疲れて……眠りに落ちた 眠る野坂を抱き締めている愛那の手から、 野坂をソファーに寝かせて、ブランケットを掛けた 愛那は眠る野坂の髪を優しく撫でた 「……知輝……自分の母親と……混乱して解らなかったんじゃないかな?」 「………本当に……こんなにも瀬尾に似てるなんてね…… 妻としては複雑でした でも……こんな傷を持ってるなんてね…… 母性本能 を刺激されました 我が子だって……もう抱き締めてやる年じゃない……」 「…時々……逢ってやって下さい」 「良いの? 君も変わったわね 原稿を取りに来る君は本当に容赦のない鬼だと、瀬尾に泣き言吐かせたのに……」 「……僕は今も編集者に戻れば変わりませんよ?」 「……恋すれど……の主人公の横に……何時もいたのは……君なのね……」 「……ええ。野坂の横には僕しかいませんでした 野坂は人と距離を取っていました 総てを拒絶して……自分も拒絶して…… 野坂は何時も一人で寡黙に本を読んでいた あの作品そのままです」 脇坂が話すと愛那は夫を思い出し 「瀬尾がね……話してくれたの 知輝と逢ったよ……って その時、二人の事も教えてくれた 私は瀬尾の血を引く子が……ゲイだと知って……ホッとしたの 酷い女でしょ? 瀬尾の血を引く子は……この先光輝だけだと想うと……安心したの」 と溜め息混じりに吐露した 「酷くないですよ…… 野坂は女も抱けます…… だけど敢えて男を選んだのは……自分の血を残したくないから……なんだと想います 野坂は僕に言いました 俺は普通の生活は望んではいけないんだ……と。 だから男と寝た……それだけです 僕も野坂と過ごして来た時間がなければ、野坂には手は出しません 野坂知輝と過ごして来た時間が…… 忘れられないから…… 始めようと想ったのです 心地良い存在と、自分の未来を掛けて、何処まで行けるか懸けたかったのです」 「……言葉もないわ……」 「………野坂は生まれてはいけない子なんだ…… と、僕に言いました だから単行本の背表紙には写真は入れないでくれ…… この顔が誰かに迷惑を掛けるから この名前が誰かに迷惑を掛けるから…… そうして生きて来たんです その野坂を表舞台に引きずり出したのは僕です 総て背負う覚悟は出来たので、表舞台に立たせました 僕はこの世の誰にも野坂知輝を否定させない! 裏道を歩かせる気は皆無だ この先も野坂は表舞台に立ち続ける それだけです! 邪魔物は取り去れば良い」 「………本当に良い性格してるわ……」 「ありがとう御座います」 「………誉めてないのに……」 愛那はため息を着いた 「私も瀬尾も……敵には回らなくてよ?」 「知ってます! 愛那さん、貴方がこの顔を傷付けるとは想いません」 「………この顔は……傷付けられないわ しかも今回、あの時の当事者として映画に出られて良かったと想ってます 智恵美と言う女を憎んだ 彼女も私を憎んだでしょう…… だけど同じ男を愛した女として…智恵美の想いが知れて本当に良かった 瀬尾との愛が……こんな形で遺っていて…… 良かったと想うのです 私は今……野坂智恵美になりきってます こんなにも同化した役はないわ それは……私自身だから……だと想った 同じ男を愛して……表と裏で愛した その愛は……一途で誰にも負けてない 私はそのつもりで演じてます 愛に優劣などないのにね…… 妻という立場と…… 愛人という立場とになってしまう…… その愛執を……演じられて感謝しています」 「野坂も……母の愛を知れて良かったです」 「………今度……家族で逢って貰えませんか?」 「……野坂に言っておきます」 「……いえ、貴方も… でなくば、その子は了承しないでしょ?」 「僕は野坂の行く所には着いて行くので御心配なく 手放す気は皆無です!」 愛那は苦笑しえ 「………貴方……性格悪いわ…」と今更ながらに口にした 「貴方に似てませんか? 知輝はマザコンだと想うんですよ?」 「………何も言えないわ」 愛那も脇坂も爆笑した その中、野坂はスヤスヤ寝ていた 「普通……起きない? こんなに煩いのに……」 「この子は昔から寝汚いんです…… 学園が工事中でも寝てました……」 「……嘘……工事中は無理でしょう?」 「いえ、ガーガーやってる中寝てました 本当にマイペースで……自分のスタンスは崩さない 頑固で……曲がらない その癖……嫌わないでと泣く……」 「嫌だ……瀨尾にソックリ この子、性格まで酷似してるの?」 「渋茶飲んで新聞読んでる姿は……流石と瀬尾先生と酷似してて……笑っちゃいました」 「……あらま……渋茶飲んで新聞読んでるのね 教えた訳じゃないのに……同じ事するのね 親子って不思議よね……」 「………どうなんでしょうね?」 「……貴方は母親にソックリじゃない! 所で……ルリ子は知ってるの?」 愛那は言いにくそうに脇坂に問い掛けた 愛那と瀬尾の母親、ルリ子は親友だった 「………知ってますよ 同棲を始めた時に会社にも親にも言いました まぁ僕は4男ですから子孫の心配はないし…… あんたみたいな性格で、同棲してくれる人がいるだけでも貴重な存在よ!大切にしなさい!と言われてます」 「なら、ルリ子に瀬尾の子供だと言ってお茶しなきゃ!」 「……どうぞ!して下さい あの人、今暇みたいですよ?」 「そうなの?撮影に本格的に入る前に逢うわ 今日は本当にありがとう」 「いいえ。こちらこそ」 「瀨尾がね、知輝には負けられん……と、頑張ってるの 彼の存在は、生きることに辟易してた瀨尾の起爆剤にもなったわ……」 「瀨尾先生にライバル出現って事ですね?」 「そうみたい 知輝さんが…長年抱いていた…私や瀨尾……そして智恵美さんの……呪縛を解いた 長い悪夢から醒めたみたい…… そして自分達を見つめ直す機会に恵まれた 知輝さんには感謝しても足らない……」 「感謝はしないで下さい 知輝の過ごした日々は…… 無責任な大人のエゴの犠牲ですから……」 「………そうね…… 知輝さんには何も罪はない…」 「否定だけしないであげて下さい」 「ええ。否定はしないわ」 「この作品が貴方の代表作となり名を刻まれる事を願ってます」 「ありがとう」 愛那は立ち上がった 「今度は息子も……逢わせてやってちょうだい 弟……ですものね……」 「ええ。そうして下さい 知輝も喜びます 送りましょうか?」 「良いわ。タクシーを呼ぶ 貴方は知輝に着いていてあげて……」 「解りました」 「………我が子は愛しいわ 今……この子の母になり……智恵美さんの想いを感じた 知輝を泣かせたら……承知しないわよ」 「……また野坂は味方を増やしましたか…… 泣かせないので安心して下さい」 「またね!」 そう言い愛那は部屋を出て行った 脇坂は眠る野坂を何時までも撫でていた

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