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第13話 不安

野坂は俯いていた マンションに帰っても……震えて……ソファーに膝を抱えて座っていた 「知輝……」 名前を呼ぶと……野坂の背がビクッと揺れた 脇坂は野坂の横に座った 「まだ不安?」 「………何か……漠然とした不安に……押し潰されそう……」 「僕がいても?」 「………篤史がいてくれなきゃ……俺……壊れてた」 脇坂は野坂を抱き締めた 「何処かへ行く時はちゃんと連絡入れて下さい」 「………ごめん……」 「僕を通さない仕事の依頼は聞かなくても良いです」 「………ん……ごめん……」 「知輝……不安ですか? 淋しいですか? 淋しいなら……犬でも飼いますか?」 「………良い……犬は散歩に連れて行かないとダメだから…… 俺……散歩に連れて行けない…」 「なら猫とか?」 「………ペットは良い……」 「なら僕の横でちゃんと良い子でいて下さいね」 「………ん……篤史の横にいる…」 「知輝、ベッドに行きましょう」 「………え?……」 脇坂は野坂に手を差し出した 野坂はその手を取った ベッドへ行き、ベッドの上に押し倒された 服を脱がされ脇坂に愛される 体中愛撫を受けて…… 野坂は喘いだ 「……あぁっ……イッちゃう……篤史ぃ……」 「イク時は一緒だと教えませんでしたか?」 「……久しぶりだから……止まらない……」 「久しぶりだから……知輝の中……凄い事になってます」 脇坂に貫かれ……一つに繋がる 脇坂に大切に愛されて抱かれるのが好きだった 脇坂のもたらす快感に悶えて……溺れる 脇坂を無くさなければ…… 生きて行ける…… 野坂は脇坂の背を掻き抱いた 脇坂に新しい携帯を作って貰った 何度も新しい携帯を買わせて悪いなって野坂は想う だが不安になるとパニックになり、野坂はその元を断とうと携帯を幾つも壊してしまっていた 新しい番号を瀬尾に教えた この携帯は瀬尾と脇坂しか知らない 月曜日、瀬尾と共にお出掛けする事になった マンションの下に下りて行くと、瀬尾はベンツに乗って野坂を見かけると手を振った 「知輝、此処です!」 野坂は瀬尾のベンツに近寄った 「知輝、一緒にテレビに出ませんか?」 「………え?……」 「脇坂君は知輝さえ承諾すれば良いと言われた」 「………大丈夫かな?」 「大丈夫です!直木賞作家同士でテレビに出るだけですから!」 瀬尾はお互い直木賞と謂う共通点を口にした すると野坂の警戒心が一気に下がるのを見越しての発言だった 「そっか、俺も瀬尾先生も直木賞作家だもんな」 「そうです!作家仲間として出ましょう!」 「なら出ます」 「嬉しいです!帰りも送って行くからね!」 「……すみません……」 野坂が謝ると瀬尾は楽しそうに野坂の頭を撫でた 野坂は瀬尾と共にテレビに出た 瀬尾は何かにつけて野坂を指名した そして野坂と共にテレビに出ても良いと言われると必ず野坂を誘ってテレビに出た 傍目からは……親子に見えた 瀬尾の「君に捧ぐラブレター」を知る者なら…… 瀬尾に酷似した…… 瀬尾の知らない所で生まれた子………だとアピールしている様なものだった 並べば……何処から見ても親子だった 瀬尾は誇らしげに…… それでいて嬉しそうな顔をしていた こんな瀬尾利輝の顔は珍しく…… 結構評判になった 今や……野坂知輝は…… 名実共に……瀬尾利輝の隠し子だと公言したも同然だった 撮影を終えて、瀬尾に自宅マンションまで送って貰った 「今日は楽しかったよ」 瀬尾は野坂にそう告げた 「俺も……楽しかったです」 「また逢ってくれる?」 「………はい。ご迷惑でなければ……」 「迷惑じゃないよ……迷惑な筈ないじゃないか……」 瀬尾は野坂を強く抱き締めた そして必ず野坂の頭を撫でて……瀬尾は帰って行った 野坂は瀬尾と別れて、自宅マンションへと向かった エレベーターを待ってると、見知らぬ男が近付いてきた 野坂は胸騒ぎを覚えると…… 見知らぬ男は野坂に殴り掛かって来た 頭に……殴られた衝撃を受け…… 野坂は倒れた 管理人が暴行の瞬間を目撃し 倒れた野坂を慌てて……救急車を呼んだ 管理人の証言で暴行を受けていたとされ、警察に通報された 警察は防犯カメラを調べた 防犯カメラには暴行の一部始終が納められていた 緊急配備がしかれ犯人の手配書が警察関係者に配られ捜査網は犯人を追い詰めて逝くだろう 野坂は……救急車で近くの病院に運ばれ、検査をされ検査を終えると入院となりベッドに寝かされていた 目を醒ますと、心配した脇坂の顔が飛び込んで来た 「……篤史……俺……?」 「………意識がもどらなかったので……心配しました…… マンションの管理人が君が暴行を受けて倒れたと救急車を呼んでくれたのです」 「………何か……急に近付いてきた男に……殴られた……」 「警察が防犯カメラから犯人を割り出してます……」 「……俺……命を狙われてるの?」 「………解りません…… 知輝……心配しました……」 野坂を抱き締める脇坂の腕は……震えていた 「……ごめん……篤史……」 「携帯の番号も……誰にも教えてなくても……迷惑電話もメールも凄いです…… 明らかに意図的な何を感じずにはいられません…… 僕は………会社を辞めます」 「……脇坂!それはダメだ…… それは辞めてくれ……」 「………どうして? 君を一人でいさせたくない……」 「………俺は大丈夫だ……」 「………大丈夫……ですか? 君の持ってたPC……ぶっ壊された……と、言っても?」 「……え……どうしょう…… 時代劇の小説入ってたのに…… データ全部消えちゃったのかな……」 「………君……PCより……自分の体躯を心配しましょう……」 「………僕の体躯は治っても…… 消えた作品は戻らない…… もう二度と……同じ事は書けない……」 脇坂は野坂を抱き締めた 「………僕が………どんだけ心配したか……」 脇坂の腕は………震えていた 「………ごめん……篤史……」 脇坂は野坂の枕元のナースコールを押した 暫くすると医者と看護婦が野坂の病室にやって来た 医者が「気が付かれましたか?」と野坂に話し掛けた 「…はい……」 「頭を殴られてます 今日は入院されて様子を見ます 明日何もなければ退院して構いません」 脇坂は立ち上がり医者に頭を下げた 「野坂さんは貧血が出てます お薬を出しておくので、飲んで下さい」 「解りました! 飲ませます」 医者は野坂の血圧と脈を測り、病室を後にした 脇坂は野坂に 「お前が入院してるのは誰にも言ってない……」と告げた 野坂は不安そうな瞳を脇坂に向けた 「……脇坂……俺の存在が邪魔なのかな……」 脇坂は野坂のおでこをピンッと弾いた 「君は僕だけいれば良い……そう言いませんでしたか?」 「うん……脇坂だけいてくれれば良い……そう言った……」 「なら考えなくて良いです 君の横には僕がいます さぁ、愛の囁きでもして下さい」 「………え?……愛の囁き……」 野坂は顔を真っ赤にした 「そうです。僕を愛してるって言いなさい」 「……ぁ……あ……篤史……あ……ぃ……してる……」 野坂は小さな声で脇坂に伝えた 脇坂は笑った 「本当に可愛いですね君は…」 「……そんなの言うの脇坂だけだ……」 「僕しか言わなくても良いでしょ? 他の奴に言われたいんですか?」 「違う!篤史だけで良い……」 「………さぁ……目を閉じて…… 眠りなさい……」 脇坂は野坂を撫でていた 野坂は脇坂の優しい手に擦り寄って…… 安心した顔をして眠りに落ちた 脇坂は野坂が退院したその足で、会社に行き退職届を出した 社長が退職届を止めていて、暫く休職と言うカタチにした 野坂を潰そうとする誰かの策略に乗って…… 野坂を潰されたくない 脇坂はそう言った 警察は野坂に暴行した輩を逮捕した 高村も会社の人間に調査されている 暴行犯も高村も…… 同じ人間の名を……告げていた その他大勢に野坂の連絡先を流した 裏付けの為に警察は隠密に動いていた その犯人は…… 飛鳥井家真贋の言った通りの人間で……… 東城社長は言葉に窮した

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