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第17話 作家だから‥‥顛末
脇坂は編集部に戻るなり、女性編集者に
「脇坂編集長、野坂さんに逢いましたか?」と声をかけられた
脇坂は野坂の姿は目にしていなかった
「え?野坂来てたの?」
脇坂は慌てて野坂を探した
「野坂さん来てましたよ……
バレバレなのに……こっそり隠れて編集長を待ってました
なのに編集長……女性と帰ってくるから……野坂さん誤解したんです!
今頃泣いてますよ…」
女性社員は脇坂を睨み付けた
「………同期と偶然逢っただけなんだけど?」
野坂なら誤解しかねない
脇坂は帰り支度をした
脇坂は野坂がいない部屋には帰りたくなくて……
野坂が泊まってるホテルに泊まっていた
我ながら‥‥‥何をやってるんだと思うが仕方がない
野坂が心配なのだ
少しでも野坂の傍で生活したかったのだ
脇坂は「帰るよ…」と謂い編集部を出て行こうとした
女性編集者達は
「野坂さんの誤解を解いて上げて下さい!」と野坂の心配をしていた
脇坂は頷いて編集部を後にした
ホテルに行く前に野坂の携帯を鳴らした
だが野坂は出なかった
書いてるのかな?
そう想い脇坂はホテルへと急いだ
ホテルに着くとフロントに駆け寄り
「野坂先生は部屋にいますか?」と問い掛けた
フロントの職員は台帳を見て
「お部屋においてですよ」と答えた
脇坂は野坂の部屋へと急いだ
脇坂は、野坂の部屋のベルを鳴らした
だが野坂は部屋から出て来る事はなかった
脇坂はフロントに向かった
「すみません編集部の脇坂と言います
野坂先生の部屋、何度もベルを鳴らしても出ません
一緒に部屋の中を見て戴けませんか?」
と謂い脇坂は会社のiDを見せた
フロントの受付は脇坂の申し入れに、フロントは即座に対応した
ホテルの従業員は野坂の部屋のキーを手にすると、脇坂と共に野坂の部屋へと向かった
脇坂は野坂の部屋のベルを鳴らした
だが何度鳴らしても野坂は出て来なかった
脇坂は「本当にこの部屋で合ってるのですか?」とホテルの従業員に問い質した
「はい、この部屋で合ってます
出られないなら解錠して安否を確かめさせて戴きます!」
ホテルの従業員も何度も呼び掛けた
だが野坂は出て来る気配はなかった
ホテルの従業員がキーを開けて部屋へと入った
部屋に入り野坂を探したが‥‥野坂はいかなかった
浴室を見に行くとシャワーの音が響いていた
脇坂はホテルの従業員と共に浴室のドアを開けた
すると野坂が倒れていた
脇坂はシャワーを止めて、バスタオルを手にすると野坂を包んで抱き上げた
そして寝室へと連れて行き寝かせた
その間も髪や体躯を拭いて世話をしたが、野坂は目を開ける事はなかった
ホテルの従業員は「医者を呼びます」と言い部屋を出て行った
脇坂は野坂をベッドに寝かせた布団を掛けた
ホテルの従業員は医者を連れてやって来た
診察すると湯あたりだった
軽い脱水症状を起こしていて、点滴を打った
その間……野坂は意識を戻す事はなかった
脇坂は部屋を見渡した
部屋は綺麗に片付いていた
何時も散らかった応接間が嘘の様だった
一人だと……何も動かす事もないのか?
寂しい部屋だった
あまりにも寂しすぎる……
点滴が終わるとホテルの従業員と医者は部屋を出て行った
野坂の瞳から涙が溢れて流れた
拭っても拭っても……
涙は……止まらなかった
脇坂は編集部に電話を入れた
「脇坂です
野坂先生が倒れたので明日は会社には顔は出せません」
電話を取った女性社員が大丈夫なんですか?と心配そうに問い掛けた
脇坂は野坂を優先すると言い電話を切った
脇坂はベッドの横に椅子を持って来て座った
野坂、そんなに寂しかったのか?
仕事も手につかなくなる程‥‥
寂しかったのか?
脇坂は淋しがらせてしまったと野坂の頭を撫でた
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