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第18話 互い①
野坂が目を醒ますと、辺りは既に明るかった
あれ?何時ベッドで寝たのかな?
記憶はあやふやで‥‥でも昨日脇坂が女性と帰ってきた記憶は鮮明に在った
野坂は取り敢えず体躯を起こした
体躯を起こすと、ベッドに突っ伏してる脇坂が目に飛び込んで来た
「………篤史……」
野坂は恐る恐る……脇坂に触れた
脇坂の髪に触れると……脇坂は目を醒ました
「野坂、気が付いたのか?」
「………うん……」
「君、会社に来たんですか?」
「……………ん……」
「何で声も掛けずに帰ったんですか?」
野坂は俯いた
脇坂の隣に………
綺麗な女性がいなければ声を掛けた
だけど脇坂は綺麗な女性と共に……帰って来たのだ……
声なんて掛けられなかった
「……………だって……」
「わざわざ来たのに何で声も掛けずに帰ったのですか?
しかもこの部屋に訪ねて来た時、君はバスルームで倒れてました……
誰にも発見されねば命を落としていたかも知れないんですよ?」
脇坂は怒っていた
「………ごめん……」
野坂は歯を食い縛った……
「僕が女性と帰って来たのを見たんですか?」
野坂は驚愕の瞳を脇坂に向けた
「…………うん……」
「勝手にホテルに泊まって
勝手に会社に来て……
君は何がしたいのですか?」
嫌われた……
脇坂は呆れた声をした
完全に嫌われた……
野坂の目の前が……
真っ暗になった
「………脇坂……嫌いになった?」
野坂は問い掛けた
泣きそうな顔で問い掛けた
だが脇坂は「僕は聞いているのです」と本心を話せと促していた
野坂は覚悟を決めて口を開いた
女々しいのは重々承知だ
「………俺……脇坂が帰って来るまで……仕事が手に着かない事があるんだ……
構って欲しい……
そんな想い……脇坂には鬱陶しいだけだと解ってる
でも帰って来るの……待っちゃうんだ……
だけどそれだと流石にヤバイのは解ってた
だから待たない様にホテルを借りた
脇坂のいない所に行けば書けるかと思った……
余計書けなくて……会社まで覗きに行っちゃった
そして昨夜は……泣き明かそうと想ってお風呂に入ってたんだ……
意識がなくなったけど……
泣いて……スッキリ……諦め様と思ったんだ……」
「………で、スッキリ諦められました……」
野坂は答えなかった
「………野坂、聞いてるんです?」
「………俺……妬いた……
でも……あんな綺麗な人なら……
俺負けてる……」
「………馬鹿な子ですね……」
脇坂は野坂を抱き締めた
「………俺……溶けて消えたかった……」
「昨日は意識が戻らないから……心配しました……」
「………ごめん……」
「本当に君は……馬鹿です
誰?その人?って言いに来れば紹介しましたよ?
同期の三田だって……」
「………俺……篤史が女性と帰って来たの見て……テンパってた」
「僕が浮気したと想いましたか?」
「………想ってない……
だけど……聞けなかったんだ…」
脇坂は野坂を強く抱き締めて
「………まだホテルで暮らす気ですか?」と問い掛けた
野坂は脇坂の顔を見て
「帰りたい……篤史のいる部屋に帰りたい……」
と泣いた
泣いて脇坂に縋り付いた
「篤史が帰ってこなくても……俺……あの家が良い……
帰りたい……帰りたいよぉ…」
野坂は泣いた
脇坂は野坂を抱き締めた
「家に帰りますか?
支払いは自分でやりなさい」
「ん……カードで精算する」
「財布は持って来てますか?」
無頓着な野坂の財布の中は何時も脇坂が補充してやっていた
野坂の原稿料とか、映画化やドラマ化の契約料とか諸々のお金も脇坂が管理していた
その代わり野坂に財布の中は常に補充してやっていた
カードも作った
野坂は自分が幾ら稼いでいるのか……知らなかった
元々一人の時も自分が幾ら稼いでいるかは把握はしていなかった
今は脇坂に管理され、財布の中は常に十万円
ピッタリで補充してあった
「お財布持って来たよ」
「中身は?幾ら残ってます?」
「昨日……タクシーに乗ったから……それだけ使った」
「食事は?ルームサービス?」
「………食べてない……」
「君がホテルに移って1週間ですよ?」
「3回位ルームサービスした……後は……食べてない」
脇坂は腹が立って仕方がなかった
「野坂……帰ります
支度をしますよ!」
「……あ……うん……」
野坂は起き上がり、スポーツバックから服を取り出し、着替えた
それで行こうとするから脇坂は、寝癖だらけの髪をセットした
服を整えて、だらしない風体を直した
「荷物は?」
「これだけだよ!」
PCとスポーツバッグ一つだった
野坂にはスポーツバッグを持たせ、脇坂はPCをバッグに入れた
「君はリュックにした方が良いかも知れませんね」
脇坂は野坂にPCを持たせて歩かせるのを何時も不安に想っていた
今はPCを入れられるスペースのあるリュックもあるのだ
編集部の男子社員の多くはリュックだった
野坂もリュックに変えた方が懸命か‥‥‥と脇坂は思案しつつ、部屋の中をチェックする
「忘れ物は?ないみたいですね
フロントに行く前に、寄って貰わねばならない部屋があります」
「……このホテル?」
「そうです。君がホテル移り住んで、僕もこのホテルで過ごしていました」
「………え?……本当に?」
野坂はかなり驚いていた
「ですから僕は自分の精算があります!
君は自分で支払って下さいと、言ってます」
「………ん……同じホテルにいたんだ……勿体なかったな……」
「何がですか?」
「篤史と同じ時間を過ごせなかった」
「家に帰ったらまた一緒の時間を過ごせます」
脇坂が言うと野坂はにぱっと笑った
「今日は僕は休みを取りました
家に戻る前に会社に顔を出します。良いですか?」
野坂は頷いた
脇坂は野坂と共に部屋を出た
そしてフロントへ向かい精算をした
野坂はカードで支払いをした
脇坂は現金で支払った
そして精算が終わると野坂を連れて会社へと顔を出した
脇坂が野坂を編集部に連れて行くと女性社員は喜んで野坂の周りに来た
「野坂先生、紅茶です」
「野坂先生、お茶菓子です」
「野坂先生、昨日は泣いてませんでした?」
と、女性社員が次々に話し掛けて来た
泣き腫らした野坂の顔を見て……女性社員は
「野坂先生、やっぱり泣きましたよね?」と問い掛けた
「……え?……泣いた様に見える?」
見えるから確かめたのに‥‥
解らないと想ってる辺りが野坂で笑えた
「編集長が女性と帰って来たから泣いたんですね……
大丈夫です!野坂先生!
彼女は夫がいます!
今呼びに行ってますから、本人から聞いて下さい!」
女性社員に謂われて野坂は焦った
そんなの困る
「…え?………どうしょう……」
野坂は情けなく呟いた
お菓子を食べてると昨日、脇坂と共に帰って来た女性が野坂の傍にやって来た
「野坂先生!」
美人は笑っても……やはり美人だった
野坂は困った顔を美人に向けた
「脇坂の同期の三田と申します!
いやぁ本当に可愛いわ野坂先生!」
「……脇坂の同期……」
脇坂は同期の三田と言っていた
今、目の前に同期の三田と謂う女性が立っていた
「野坂先生が泣きそうな顔で非常階段の方に消えて行ったので……
私は会社の女性社員をもう少しで敵に回す所でした」
野坂は慌てて「………ゴメンね……」と謝った
「良いです……誤解も解けましたし!」
野坂は脇坂の編集長の椅子に座っていた
大人しくお菓子を食べる様子は、女性社員の間では癒し系とまで言わしめていた
躾の良い犬の様に脇坂を待つ
そして脇坂が帰ると嬉しそうに尻尾を振りまくってる
女性社員には野坂の頭には耳が生えて見えていた
お尻にはフサフサの尻尾が生えて見えていた
………うん……今日も忠犬だわ
感動しつつ、野坂を見ていた
脇坂の同期の三田は、野坂の顎に手をあて……撫でた
「………うちに欲しいかも……忠犬……」
野坂は首を傾げた
「野坂!帰りますよ!」
脇坂に言われると、目の前のお菓子を見つめた
女性社員は野坂の目の前のお菓子を袋に入れて、野坂に持たせた
「ありがとう」
にぱっと笑う野坂は可愛かった
そしてお菓子の袋を手にして、ご主人様脇坂の傍に行く
「帰りますよ」
「うん!」
女性社員の目には……
喜び勇んでる忠犬が見えた
脇坂は野坂を連れて編集部を去って行った
三田は「………良いもの見れたわ……」と呟いた
女性社員は「でしょ!」と嬉しそうに言った
「………あんな忠犬……見たことないわ……」
「そうなのよ!それはそれは編集長を待って良い子にしてるのよ!」
「わが家にも欲しいわ……」
女性社員は皆……忠犬の幸せを願っていた
野坂は車の中で女性社員がくれたお菓子を食べていた
脇坂はそれを見て笑っていた
車を走らせ脇坂は野坂に
「僕といない一週間どうしてたのですか?」と尋ねた
「篤史……俺……何も書けなかった……」
「書きたいかはホテルへ行ったんじゃないのか?」
「俺さ結構女々しい性格してるなって想った
お前の姿が見えねぇと不安で、逢いたくて‥‥何も手につかなくなっちまうんだ」
脇坂にしたら嬉しい告白だった
だが本人にしたら作家生命を脅かす事態になりかねない
「仕事辞めて君のサポータとに当たりますか?」
脇坂はそんなに淋しいなら仕事を辞めても良いと申し入れした
「‥‥‥脇坂‥‥ごめん‥‥俺の我が儘だ‥‥」
野坂は下を向いた
そして悔いた
その台詞を謂わせる気はなかった
なのに謂わせてしまったからだ‥‥
「恋人の我が儘なら幾らでも聞いてあげます
だから淋しいなら淋しいと謂って!
構われたくないなら放っておいてと謂って下さい
口が着いてるのに何も謂わないのなら、何も伝わらないんだよ!って高校時代に謂わなかったか?
以心伝心出来る奴なんていないんだから、想った事は口に出しなさい!と謂いませんでしたか?」
その言葉は高校時代にうるさい程謂われた台詞だった
野坂は何も謂わない
だから脇坂が何時も野坂に
『口が着いてるのに何も謂わないのなら、何も伝わらないんだよ?
以心伝心出来る奴なんていないんだから、想った事は口に出しなさい!』と口うるさく謂うのだ
野坂はそんな脇坂に口下手だけど、話をしてきた筈だ
何で忘れていたんだろ?
何で謂わなかったかんだろう‥‥
意固地になってた自分が‥‥‥口惜しい
脇坂は「何も書かなかったのですか?」と尋ねた
「違うの書いてた‥‥自分でも呆れる位女々しくてさ‥‥‥嫌になる話を書いてた」
「見せて下さい
その作品も君の一部です
陽の目を見せてあげたいですからね」
脇坂の愛だった
「………後で……見せる……
しかし‥‥俺‥‥こんなに女々しかったっけ?」
野坂がトホホっと嘆く
脇坂は笑って
「どんなの書いたんですか?」と問い掛けた
「恋人に会えない……気持ちを……主人公女の子にして書いちゃった……」
「完結してるんですか?」
「………ん……1週間……女々しく未練たらたらに……書いてた」
なんとも野坂らしい……
「………俺さ……最近思うんだけど……女々しいよな?
キャラも変わって来た?」
「僕は昔から知ってるので変わった気はしませんが……
君は昔から目を離すとねじれ曲がってましたからね」
何ともな謂われようだ
野坂はスッキリとして笑った
「………何かさ……お前の編集部の女性社員達……
俺をハチ公と勘違いしてない?」
脇坂は吹き出した
確かに……野坂を忠犬にしか見えない……とか言ってる
「嫌ですか?
嫌なら言っておきますよ?」
「………お菓子くれるから嫌じゃない……」
「すっかり餌付けされちゃいましたね……」
「……お前がダメって言えば食べない……」
「ダメとは言ってません
編集部の子たちのは食べて大丈夫です
食べるな……なんて言ったら恨まれて大変です」
「俺は……篤史がダメって言うなら食べない……」
「本当に可愛いんだから……
後で作品見せて下さいね」
「……ん……その前に…」
野坂は欲情した瞳を脇坂に向けた
「君を食べます
食べて欲しいんでしょ?」
「……残さずに……」
「ええ。食べ尽くしてみせますとも!」
脇坂は笑った
「…篤史……体躯が…熱い……」
「………家まで待って下さいね!」
「篤史を見なきゃ……欲情しないもん」
脇坂はアクセルを踏み込んだ
ったく……誘い文句にイキそうになった
脇坂はマンションの駐車場に車を停めると脇坂を引っ張ってマンションへと進んだ
「荷物は後で取りに来ます」
誰も乗ってないエレベーターの壁に押し付けて……
足を割り込ませて……熱い股間を野坂に押し付け……接吻した
口腔を犯す接吻に野坂は立っていられなくなった……
「………篤史……イッちゃう……」
「……君が逃げてた分……徴収しないとね
今からイッてたらキツいですよ?」
脇坂は意地悪だった
野坂は焦らされて……真っ赤な顔をした
「そんな顔……火に油注いでるのと同じですよ?」
「何でもいい……お前が欲しい……」
野坂は脇坂に抱き着いた
脇坂は首の皮一枚繋がった理性を総動員して……
部屋を目指した
部屋の中に入ると……玄関で野坂を押し倒した
「……んっ……あつ……し……」
野坂が脇坂の背を掻き抱いた
脇坂は野坂のズボンを剥ぎ取った
そして下着を半分だけ下ろして……お尻の穴を解した
使ってない蕾は閉じて硬かった……
それでいて貪欲に蠢いていた
野坂の愛液が滴り落ちて……穴を濡らしていた
脇坂は肉棒を擦り付け……
お尻の穴を解した
亀頭を秘孔に潜らせて何度も何度も出し入れして解す
「……入る……かな?」
脇坂は肉棒を押し込んだ
するとスルッと肉棒が滑って……野坂の中へ入って行った
「……ちょ……待って……」
「文句は後で聞くから……」
脇坂は野坂の脚を抱えて抽挿を早めた
一回目は呆気ない終わりだった
飢えていたのだ……野坂に……
脇坂は野坂の中から抜くと……
野坂を立ち上がらせた
ドロッとお尻の穴から脇坂の放った精液が流れて来て……
身を震わせた
「智輝……寝室に行きましょう…」
「……最初から寝室で……」
してくれたら良かったのに……
野坂はそう言った
「寝室まで持たなかったんです……
何日僕を放ったらかしにしてると想ってるんですか?」
脇坂は忙しいと言っても、2日も開けずに家に帰って野坂を抱いていた
どんだけ忙しくても……
ほんの数時間しか時間が取れなくても……
脇坂は必ず帰って来て野坂を抱いてくれた
たからこんなに何日も……
しなかったのは久し振りだった
「………ごめん……」
「さぁその体躯で僕を慰めて下さい」
野坂は素直に脇坂に従った
野坂はベッドに寝そべり服を脱いだ
脇坂も服を脱ぎながら……野坂の脚を引っ張った
野坂をクルンっと俯きにさせると……腰を抱えた
「……あ………入って………」
来る…
脇坂の熱くて硬い塊が……
野坂の腸壁をかき分けて……
入って来る……
野坂は背を振るわせた
「……あぁっ………熱い……あっ……あぁっ……」
脇坂は熱かった
激しく腰を打ち付け……脇坂は背中に口吻た
赤い跡を散らして……
背中を舐めた
「……篤史イッちまう……」
「イッて良いですよ……僕もイキます……っ……ぅっ……」
脇坂は全部野坂の中に吐き出した
脇坂は野坂の中から抜くと、野坂を仰向きにさせた
少し余裕が出来て来ると……
野坂の体躯に愛撫を始めた
首筋を舐めながら吸う
チクッと刺さる痛みに……野坂は瞳を眇めた
顎を舐め首筋を吸う…
鎖骨のへこみを舐めながら……
脇坂は噛み付いた
「………っ……痛ぇってば……」
脇坂は野坂の前髪を掴んだ
「答えなさい!
君は誰のモノですか?」
「……篤史の……脇坂篤史のモノ……」
「そう…君は僕のモノです
僕以外のモノにはなれない…」
「篤史だけのモノなら……俺は生きて逝ける」
恍惚と野坂は呟いた
「僕の上に乗り食べなさい
好きなだけ食べなさい」
脇坂はベッドの背もたれに、凭れかかり野坂を見た
野坂は脇坂を跨ぐと……
脇坂に口吻た
脇坂は自分の性器を握ると、野坂の秘孔にあてた
「そのまま腰を下ろしなさい」
野坂は腰を下ろし……秘孔に脇坂を食べ始めた
「………俺のだから……」
野坂はそう言い噛み付く様な接吻をした
脇坂に独占欲があるように、野坂にだって独占欲がある
脇坂だけを独り占めしたいのだ……
脇坂は仰け反る野坂に噛み付いた跡を舐めた
ツンッと尖った乳首を舐めて吸うと……
野坂の腸壁はうねって脇坂を搦め取った
「……篤史……イッちまう……」
「好きなだけイッて良いですよ?」
野坂は脇坂の腹を濡らしてイッた
野坂が気絶しても脇坂は野坂を抱いた
野坂の中の精液を掻き出して、脇坂も疲れて野坂を抱き締めて瞳を閉じた
知らないうちに眠りに落ちて……体躯がガビガビになり不愉快な感じに目が醒めた
野坂は起きていて、脇坂の顔を見ていた
「起きてたんですか?」
「篤史の顔……見てた」
「キスして下さい」
野坂は脇坂に口吻た
「お風呂に行きましょう」
「ん……」
「起きれますか?」
「大丈夫」
野坂は怠そうだけど起き上がった
「君を抱き上げて行くには……僕は体力が足りませんからね‥‥」
脇坂はガテン系ではなく、インテリアを醸し出したモヤシ系だった
下手したら野坂の方が力はあるかも知れない
脇坂が開けられない蓋とか軽々開けてしまうから‥‥
「……俺……華奢で小さくないもんな…」
「そうじゃない‥‥
抱き上げて欲しいですか?」
「………それは恥ずかしいから良い……」
「………僕の様な軟弱……で大丈夫か?」
「俺……これ以上……篤史を愛したら……死んじまう……」
野坂はそう言い笑った
脇坂は野坂を抱きしめた
「愛してます知輝
こんなに執着したのは君が初めてなので……
スマートにあしらう事も出来ません……」
「篤史がいてくれれば俺は……
それだけで良い……」
「本当に君は可愛いですね」
「………そんな事言うの篤史だけだってば……」
「………そうじゃないですよ?
君が鈍感で良かったです」
「………?????」
野坂には何が何だか解らなかった
脇坂は笑って野坂をお風呂に連れて行った
野坂は大人しく目を瞑って洗って貰っていた
野坂は体躯を洗っても雑くて、綺麗に洗わないから、ついつい脇坂が世話を焼いているだけなのだが‥‥
泡を流すと、野坂はぷるぷる振って水滴を飛ばした
水滴が脇坂に掛かった
「………本当に君は犬っころみたいですね」と脇坂は言った
「……犬っころじゃねぇもん……」
野坂はそう言い脇坂にキスをした
「僕も犬っころと犯る趣味はありません」
「篤史……腹減った……」
性欲を満たした後は空腹を満たす気か?
脇坂は笑って現実を突き付けた
「…ホテルに僕も連泊していましたからね……
食材がありません……
食べに出ますか?」
野坂は脇坂が作ってくれる食事が大好きだった
外食よりも脇坂が作ってくれたのを欲していた
「………明日からは?」
「ちゃんと作ってあげます」
「ん……食べに行く……」
二人で膝を合わせて風呂に入った
お風呂から出ると脇坂は野坂の髪を乾かした
放っておくと自然乾燥しやがるからだ!
髪を乾かして貰ってる間、トリミングされてる犬よろしく大人しくしているから、脇坂はついつい構ってしまっていた
髪を乾かして貰うと野坂はクローゼットを開けて服を着た
脇坂は自分の髪を乾かし、支度をする
自分の支度を終えると、野坂の服を整える
「では、行きますか?」
「俺、財布要る?」
「僕が持って逝くので大丈夫
ほらサクサク動いかないとご飯食べにいけないよ!」
外出嫌いの野坂を急かして家を出る
地下駐車場までエレベーターに乗り下りていく
車に乗り込むと野坂は
「………腰が怠い……」とボヤいた
「僕も腰が怠い
少し犯り過ぎでしたかね?」
「………かな?でも止まらなかったから……」
「仕方ないよね?」
脇坂は笑って車を運転していた
脇坂はよく行くレストランへと野坂を連れて行った
レストランで食事をしていると、顔見知りがレストランへと入って来た
こっちが気付くと同時に相手も脇坂の存在に気付いた
「よぉ!脇坂!」
「笙、ちょうど良い君に話がありました」
同席しろと謂ってるようなもんで笙は苦笑した
「同席して良い?」
「どうぞ!」
近寄って来たのは榊原 笙だった
脇坂は「お前一人か?」と問い掛けた
レストランに笙一人で入って来た
結婚して妻も子もいるなら一人は何かを勘ぐってもおかしくは、なかった
「今、撮影が終わったので腹ごしらえです」
「離婚の危機とかじゃないのか?」
脇坂は笑って問い掛けた
笙は怒って「失礼な!」と謂っていた
笙が座っても野坂は黙々と食べていた
笙は野坂に「元気でした?」と問い掛けた
野坂はコクッと頷いた
脇坂は笙に良いところでしたと話しかけた
「笙、君の事務所で使って欲しい人材がいるんです、社長に逢わせてくれ!」
単刀直入に謂われて笙は驚いた瞳を脇坂に向けた
「誰ですか?」
「瀬尾光輝」
何故に?
「………野坂と君をはめた人物の名前を聞くとは……
想いもしませんでした……」
脇坂は笑った
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