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第19話 互い ②

笙は野坂は泣き腫らした様な目をして 「………喧嘩したんですか?」と問い掛けた それに答えたのは脇坂だった 「してませんよ?」 ‥‥‥お前サラッと謂ったけど‥‥目腫れてるじゃないですか‥‥と笙は想った 「………野坂……泣いた様な顔してる……」 苛められたのか? そうだろ!そうだろ!!脇坂は性格が悪いから‥‥ なのに脇坂は 「………智輝は妬いて泣いてたんです」と呆れる言葉を放った あぁ‥‥‥‥そう‥‥ 笙は何かを謂うのを諦めた 「………誤解は解けたのか?」 「ええ。誤解なんてしないように念入りにね!」 脇坂が笑って言うと笙は嫌な顔をした 「……君が言うと卑猥です」 「そうですか?」 知っててやる奴なのを改めて想う 「昔からお前の腹は真っ黒けじゃないですか! それより野坂、飛鳥井の家に犬を見に行きませんか?」 「……犬?見たい……」 「なら 事務所に寄った帰りに飛鳥井の家に寄りましょう」 「邪魔じゃない?」 「気にしなくて大丈夫です」 笙は適当に注文をした そして事務所に電話を入れた 神野晟雅は快諾してくれ事務所で待つと謂ってくれた 笙は「瀬尾光輝は来ますか?」と問い掛けた 「呼べば来るでしょう?」 脇坂は携帯を取り出すと瀬尾光輝に電話を入れた 「どうも、脇坂です 光輝さんこれから出て来られます?」 突然だった 光輝の頭は着けていけなかった 『えっと……何処へ?』 「 東栄社の前で待ってて下さい 拾って行きます」 『では今すぐ出ます』 光輝は電話を切った 笙は今日、ロケ地が都内のスタジオと謂う事もあって車で来ていた 「脇坂、僕は車で来てます」 「なら僕の前を走って事務所まで連れて行って下さい」 「仕方ないですね 夜は飲みますか?」 「良いですね 楽しみにしておきます」 食事を終えるとレストランを出た 駐車場へ行き車に乗り込んだ 「………俺……目……腫れてる?」 野坂は脇坂に問い掛けた 「………これからは僕のいない場所で泣かないで下さい…」 野坂は何度も頷いた 東栄社の前に行くと瀬尾光輝は待っていた 脇坂は車から下りて光輝を迎えに行き、後部座席に乗せた 「………あれ?智輝……泣いたの?」 車に乗ると光輝は野坂に問い掛けた 野坂は俯いた 「泣いてない……」 野坂はボソッとそう言った 「………智輝、兄さんに言ってごらん?」 光輝はすっかり野坂に甘い兄と化していた 脇坂は前を走る笙の車の後に続き走った 野坂は怠そうだった 野坂の助手席の椅子を少し倒し、怠そうに凭れていた 後部座席の光輝の瞳には、椅子を倒した野坂の首筋が目に入った 首筋には……赤い跡が散らばって……光輝は目のやり場に困った 暫くするとスースーと寝息が聞こえて来た 野坂は助手席でスヤスヤと眠っていた 乗り心地は相当良いベンツの乗り心地を実証している様なモノだった 笙は事務所へと走って行った 脇坂はその後ろを走った 笙は高速を使って横浜まで向かい、横浜に着いたら高速を下りた 横浜の街並みを走り逝く そして繁華街から離れた静かな住宅地を走り 事務所へ向かうと駐車場に車を停め、車から下りた そして事務所の中へと入って行った 「智輝、起きなさい」 脇坂の起こされると野坂は寝ぼけて脇坂に抱き着いた 自然と回される腕が二人の関係を物語っていた 光輝は車から下りた 脇坂は野坂を揺すった 「智輝、起きなさい!」 「……ここ何処?」 「笙の所属する事務所です 下りますよ?」 野坂は寝惚けながらも車から下りた 笙が「社長が待ってるから!」と呼びに来て一緒に事務所の中へと入って行った 「社長、友人の脇坂と野坂先生と瀬尾光輝さんです」 笙は神野に全員の紹介をした 神野は脇坂を見ると 「久しぶり脇坂」と声をかけた 「晟雅さん、お久しぶりです」 「……あれ?脇坂と神野ってお知り合いなの?」 笙は脇坂に尋ねた 「………うちの兄と晟雅さんは友達でして……」 「篤人は?元気か?」 神野は悪友の健在を問い掛けた 「兄は元気です 元気なんで子供出来すぎてます」 脇坂が言うと神野は爆笑した 「篤人に逢いてぇな…」 「電話すれば出て来ますよ? あの人今、誘ってくれる友もいないと暇そうですからね」 「なら電話するわ! それより、瀬尾光輝を使えって言ってるのはお前か?」 「そうです! 野坂が来月には小説を書き上げるので、その主演を狙って貰います」 「……あ!野坂先生! お逢いしたかった!」 神野は野坂を見付けると声をかけた 野坂は脇坂の背中に隠れた 物凄い早業だった 「野坂先生……何で隠れるんですか?」 「人見知りが激しいので……この子は……」 脇坂は神野に謝った 「……編集部で……殴った事があるんだ……」 野坂は脇坂に話した 「……え?晟雅さんを殴ったんですか?」 「………ん……恋すれどのドラマ化の時、握手されて……困って殴った……」 「………すみません晟雅さん…… この子は悪気はないんですが……ネジが吹っ飛んでるんで……」 脇坂が言うと神野は爆笑した 「野坂先生、恋すれど、本当に号泣しました!」 神野は作品の称賛を述べた 「……ありがとう……」 「で、サインを貰おうと想ったんです……驚かせてしまいましたね」 「サインする……って言うかお詫びにサイン入れた本を脇坂に持って来て貰う……」 野坂は脇坂の背中から顔を出して…ボソッと呟いた 「嬉しいです野坂先生」 神野は嬉しそうに笑った 「さてと、本題に入ります 瀬尾光輝さん、うちの事務所に入りますか?」 「………許されるなら……」 光輝は……深々と頭を下げた 「社会的な制裁は受けた 今は野坂先生とも仲が良いんでしょ?」 「………智輝は可愛い……」 「兄馬鹿ですね!宜しいです うちの事務所入って下さい!」 「……え?良いんですか?」 「君のマネージャーは小鳥遊がなります」 笙はいきなり小鳥遊ですかぁ‥‥‥と想った しごかれる事間違いなしの日々を送るしかない 笙はひっそりと両手を合わせた 小鳥遊がマネージャーなら徹底的に、倒れようとも水をぶっかけられ、立て!と軍隊並みにしごかれまくる事になる 「智輝の書いてくれる作品の主演を張れる日まで、何としてでも生き残り実績を積み上げて行きます!」 小鳥遊はニコッとした笑みを浮かべて 「良い心意気です! では契約を結びましょう そしたらプロフィールを作成してブログを立ち上げます ちょうど、君に合う役が舞い込んできました さぁ、仕事しましょうか!」 「………今からですか?」 「決まってるでしょ?」 小鳥遊は光輝を引っ張って行った 脇坂はそれをにこやかに見ていた 野坂は話に入れなくてPCをポチポチ叩いていた 笙は野坂に「何か書いているのですか?」と問い掛けた 野坂は笙を見て「文が変じゃないか確認だよ」と答えた 「どんな話を書いていたんですか?」 「……物凄く女々しい遠距離恋愛の話‥‥」 それは‥‥‥それは‥‥‥答える言葉をなくした 「榊原君みたいなイケメンがやったらどんな絵になるのかな? 女々しいのも軽減されるかな?」 野坂は脇坂と離れてた時に書いた女々しい話を笙に話した あまりにも女々し過ぎて‥‥想わず口にしてしまった だが脇坂は野坂を咎めた 「野坂……本にもしてないのに無理言わない……」 「……だよね……」 野坂が呟くと神野は 「野坂智輝書き下ろし作品としてドラマにする様に話は持って行けますけど?」 と乗り気だった 「………え?あんな女々しいのは無理だよ……」 野坂はドヨーンとして言った 神野晟雅はかなり乗り気で 「ドラマとタイアップと言う方向なら、話は持って行けます」と番組を押さえる段取りを始めた 「タイアップですか、社内に帰らねば正式な話しは出来ませんが、検討に入りたいと想います」 と脇坂も前向きな話を約束した トントン拍子に話が進められ野坂は慌てた 「……嘘だよ……あんな女々しいの……誰もみないと想う……」 だからダメだよぉ‥‥と呟くと脇坂が 「野坂、口に出したら引けない事があります 君は口に出したんです その作品は息を吹き込み動き出してしまったのです」 と既に遅いと伝えた 野坂はうるうるの瞳を脇坂に向けた 脇坂は「今日は休みなので、明日編集部に戻ってから話を詰めたいと思います」と神野に提示した 「凄く楽しみです 野坂先生の作品にうちの事務所のタレントが出れるなんて凄く誇りに思います」 神野は感激して言った 野坂は照れて赤くなった 笙は「なら話は終わりだね、なら行こうか!」と当初の目的地に移動をしようと謂った 脇坂と野坂は神野に別れを告げて駐車場へと向かった 車に乗り込み飛鳥井の家に向かう 笙は脇坂の車の後部座席に乗り込んだ 「飛鳥井は近いから僕は車は此処に置いて逝きます」 と謂い飛鳥井の家に向かった 笙は飛鳥井に向かう前に電話を入れた 「笙です、これから尋ねても大丈夫ですか?」 申し入れると緑川慎一が飛鳥井康太に問うて快諾を貰った 慎一に地下の駐車場のシャッターを上げてもらい車を停めた 地下の駐車場には、物凄く寡黙なイケメンが立っていた 寡黙なイケメンは野坂の顔をじっと見て 「……ひょっとして野坂先生ですか?」と問い掛けた 野坂は「はい。野坂智輝です」と背筋を正した 「俺、緑川慎一と言います 野坂先生の本は全部読んでます!ファンです」 慎一は野坂に握手を求めた 野坂は慎一の手を取り握手した 「サイン入れる?」 「………感激して……死にそうです…… でもサインしてもうなら新品の本が良いこで……諦めます」 読んだ本にサインして貰うんじゃなく、新品の本にサインが欲しい 慎一はそう言った 「なら新刊出たら脇坂に言ってサインした本を送って貰うよ!」 野坂はニコッと笑った 「夢の様です」 慎一はそう言い笙と脇坂と野坂を応接間へと連れて逝った 応接間に案内され 慎一は「飛鳥井のワン達は此方です」とテラスへと連れられ、野坂は飛鳥井の犬を触らせて貰った 笙達が訪ねて来たと飛鳥井康太に知らされると、康太が榊原と共に応接間に顔を出した 「よぉ!野坂!元気か?」 犬と遊んでた野坂は振り返り、にぱっと笑った 「康太君、元気だよ 伊織君、この間は本当にお世話になりました」 「幸せそうに笑ってるじゃん」 「ん。ありがとう」 康太は野坂を撫でた その親しげな雰囲気に笙は 「康太、野坂知ってるの?」と康太に問い掛けた 康太は何でもない風に「この前拾った」と答えた 笙はすっとんきょうな声で「………拾ったぁ?」と答えた 犬じゃあるまいし‥‥ なのに康太はお構いなしで 「おう!泣きながら歩いてたかんな」と答えた ………野坂は真っ赤な顔をした コオは野坂をペロペロ舐めた イオリも野坂をペロペロ舐めた 『……イオリ……この子……忠犬の匂いする……』 『コオ…この子は忠犬の血筋を引いてるんだよ!』 コオとイオリは嬉しそうに野坂を毛繕いしていた コオとイオリと野坂……が並んでいると…… 犬っころが三匹……並んで見える 笙は目を擦った 野坂の頭に犬の耳が生え お尻にはフサフサの尻尾が見える…… 「野坂!」 脇坂に名を呼ばれると野坂は振り返った 「手を洗っておいで 君の好きなお菓子があります」 脇坂が謂うと野坂は困った顔をして 「………手…何処で洗ったら良い?」と途方に暮れていた 慎一は立ち上がると 「此方へ」へと野坂を案内して洗面所へ行く 野坂は手を綺麗に洗って……脇坂の元に戻ろうとした 手も拭かずそのまま戻ろうとする野坂に 「手を拭かないとダメですよ」 と慎一が世話を焼いた 世話のしがいのある人だ…慎一はそう思った 応接間に戻って脇坂の隣に静かに座りお菓子を食べ始めた 「笙、蒼太はこの家には住んでないんですか?」 「蒼太は神野の事務所の上に住んでます」 「そうですか 今日は逢えませんね」 「………呼べば来ないかな?」 「良いですよ 蒼太も都合がありますから…」 「待てよ!脇坂、こうして時間のある時位逢おうぜ!」 笙は蒼太の携帯に電話を入れた 慎一は脇坂に 「笙さんとお知り合いなのですか?」と問い掛けた 「僕と野坂と笙と蒼太は桜林の同級生です」 「………野坂先生……同級生なんですか?」 どう見ても野坂は若く見えた 笙は慎一に「野坂は脇坂しか懐かな、扱えないんですよ?」と言った 脇坂は笑っていた 野坂は脇坂の横に静かに座っていた 緑川一生が応接間にやって来て……来客に目を止めた 聡一郎は急に立ち止まった一生の背中で顔を打った 「……一生……」 聡一郎の怒った声が背中から聞こえた 一生は「………お客様とは知らなくて……」と恐縮した 康太は「笙の友達だ」と紹介した 笙は「僕の学友の脇坂と、こちらが野坂です」と挨拶した 一生は野坂の顔をまじっと見た 「………作家の野坂智輝?」 一生が聞くと野坂は脇坂の背中に隠れた 変わりに脇坂が「そうてす」と答えた 笙が一生に「人見知りが激しいんです野坂は……」と教えた 「笙の学友なんですか?」 「そうです。野坂は面識はあるけど、親しくした事はないですけど… 脇坂とは生徒会で連んでました 脇坂が生徒会長で、蒼太が執行部 部長をしてました 僕が副会長をして3人で生徒会を乗っ取り遊んでました」 「………野坂さんとは? 仲良くないの?」 一生は笙に問い掛けた 「野坂は脇坂にしか扱えない……昔も今もね…… ここ最近は話をする様になりましたけどね 野坂は何時も脇坂の背中に隠れて話し掛ける事すら至難の技なんですよ」 笙は懐かしいですね、と笑っていた 一生は「恋すれどからファンです。慎一は昔から野坂さんのファンだったんです」と話した 野坂は「ありがとう、とても嬉しいです」と照れて答えた お菓子を食べ終えると野坂は 「脇坂‥‥」と名を呼んだ 脇坂は「良いですよ、ワンちゃんを触ってらっしゃい」と送り出してやった 笙が蒼太を呼んで、蒼太は飛鳥井の家にやって来た 蒼太はご機嫌でお酒を飲み始め、脇坂もチビチビ飲み始めた 野坂は飛鳥井の犬と仲良く並んでいた コオが野坂を毛繕いする イオリが野坂を舐めた 野坂はコオとイオリを撫でた 笙は「………僕……野坂が忠犬に見えるんですけど……」と困った顔をした 蒼太も「……僕も……野坂の頭に耳と……お尻にフサフサの尻尾が見えます……」と呟いた 康太は爆笑した 野坂はコオとイオリに守られて……丸くなって……眠りについた スヤスヤ……眠る顔は……子供の様だった 脇坂はお酒を止めてお茶を飲んでいた 「夜遅くまでお邪魔しちゃいましたね……」 脇坂は康太に謝った 「脇坂、野坂の連載始まったな」 康太は嬉しそうに、話しかけた 「まだラストは書いてません 野坂がどんなラストを用意するのか楽しみです 連載も好評です 単行本の予約も凄い人気で好評です」 「伊織は読んでて夢中になってる すげぇな野坂は…… 野坂の書く小説だからこそ……惹きつけられて止まねぇんだ 伊織はラストまで見届けたら脚本を書きたくなると今から言ってる 伊織はどんな脚本を書くんだろう……と、オレも今から楽しみにしてる」 脇坂は優しい顔をして 「今も少しずつ書いてます ラストに向かって野坂はどんな答えを導き出すか……僕も楽しみなんですよ」と話した 「脇坂………女々しい作品も……んとにお前の愛が詰まってて……笙が主演するんだろ? 笙もその作品で脱皮する」 「………よくご存知で…… 野坂は仕事が手につかないとホテルを借りて暮らしてたので放っておいたんです そしたら……何も手につかなかったみたいで…… 女々しい作品を書いてたみたいです……」 「野坂の愛だ……愛されてるな脇坂」 康太に謂われると、脇坂は嬉しそうに笑った 笙と蒼太は意外な顔して脇坂を見た 「……何ですか?笙、蒼太…」 笙は「いや……お前が……そんな顔するなんて……意外だった」と述べた 蒼太も「ちゃんと野坂を愛してるんですね……」と感想を述べた 「野坂を愛してなきゃ世話は焼きません こんなに自分に無頓着で手の掛かる子を……面倒見ませんよ」 「………脇坂……何処かでお前は本気じゃないんだと想ってた」 笙は呟いた 「僕も……脇坂ですからね…… 何処まで本気なんだろ?と想ってました」 と蒼太も呟いた 康太は二人に 「脇坂は保身に走らず野坂を守ってる この前会社に辞表を出しやがった 東城の所へ社員が談判に来るってボヤいてた 愛してなきゃ保身に走るだろ?」 「そうだよね? 脇坂は保身に走りそうですからね…… それをしない辺り…本気なんですね」 笙は納得した 脇坂は笑っていた 高校時代の時の様な顔をして、笑っていた 酔いが冷めると脇坂は野坂を起こした 「野坂、野坂……起きなさい」 野坂は爆睡していた 本当に寝穢い子で脇坂は手を焼いていた 最終手段とばかりに脇坂は 「………起きないと置いて行きますよ?」と謂った 脇坂が言うと野坂は慌てて起きた 「…それは困る!脇坂…」 んな、知らない場所で置いてきぼりにされたくない 泣きそうな顔で野坂は起きて脇坂の傍に行った 「置いていきませんよ」 「目が醒めた一言だった……」 脇坂は笑った 「早く帰るぞ!脇坂」 「我が儘なお姫様ですね…」 「家に帰ったら俺は寝る…」 「ええ。寝てください その代わり歩いて下さいよ?」 「解ってる……」 脇坂が立ち上がると野坂も立ち上がった 「笙、自宅まで送って行こうか?」 笙の車は事務所に置きっぱなしで、飛鳥井に来た 脇坂が問い掛けると笙は 「蒼太に送って貰うよ! 車は蒼太の家の駐車場に停めてあるからね!」と答えた 「そうですか! 笙、近いうちに仕事の話で逢うと想います」 「野坂の書いた作品でだろ?」 「僕も目を通していませんので、何とも行けません てすが晟雅さんは乗り気なので番組枠を押さえて来ると想います」 「だな!野坂、また逢おうな!」 「榊原君、ゴメンね寝ちゃって…」 「……脇坂にちゃんと家まで連れ帰って貰うんですよ」 「解った……脇坂帰ろう……」 脇坂が帰ろうとすると慎一が 「車、地下駐車場から出られる様にシャッターを開けます」 とシャッターを開けてくれると謂った 「ありがとうございます」 「酔いは冷めてますね?」 「ええ。もう大丈夫です それよりお世話をかけます」 「構いません……車まで野坂さんを背負ってで行きましょうか?」 「良いんですか?」 「寝ぼけて転んだら大変です」 慎一は野坂を背中に背負った 「怖いかも……」 「落としませんので捕まってて下さい」 野坂は慎一に掴まった 地下駐車場まで向かい、助手席に野坂を乗せて貰った そしてシャッターを開けて貰い、脇坂は帰って行った 慎一はシャッターを閉めて応接間に帰った 康太は慎一に「帰った?」と問い掛けた 「はい。帰られました」 と康太に報告した 康太は野坂の幸せそうな顔を思い浮かべ 「連載も順調だしオレも安心したな」 と安心した様に呟いた 慎一は野坂を思い浮かべ 「野坂さんってあんなにお世話が大変な人だとは想いませんでした」と笑みを溢して謂った 「野坂は自分に興味がねぇからな‥‥息を潜めて生きて来たってのもあって、世間から見たらかなりズレている様に見える‥‥‐」 「それでも唯一人の人の謂う事は良く聞くんですね」 「忠犬だろ? コオとイオリが感動する程の忠犬だかんな」 康太は笑った 「………恋すれど……って野坂さんの実話だって言ってましたね…… 生まれて御免なさい…… あれを読んだ日……俺は泣きました……」 「主人公は女になってるけどな、あれは野坂と脇坂の物語だ 野坂が脇坂に贈った公開ラブレターだ」 一生が「野坂って瀬尾利輝の子供なんだよな?」と問い掛けた 「顔を見れば解るよな…… そのせいで受けなくても良い逆恨みを瀬尾の息子から受けた 俺は‥‥‥一時はダメかと想った‥‥ もう二度と野坂は書けなくなるんじゃねぇかって‥‥危惧していた 野坂知輝って作家は危うい綱渡りみてぇな精神状態で生きて来たってのもあって不安定だからな‥ 野坂を引き留めているのは脇坂だ! 脇坂がいれば‥‥野坂は生きて逝けるだろう 瀬尾も……我が子位何とかすれば良いのに……我が子に関しては……無能な作家馬鹿だからな……」 康太は呟いた 榊原も「PCを壊されたと聞かされた時は……どうしょうかと想いました……」と内心を吐露した 「脇坂がバックアップ取ってたからな…… それはオレは心配してなかったけど…… 野坂は何時も生まれた事を悲観してた 誰かが背中を押せば死んでた……オレはそれが心配だった」 刹那いまでに自分を追い詰め……死ぬ理由を探す子供の様に…… 野坂の魂は……穢れを知らない 聡一郎が初めて口を開いた 「脇坂さんって……伊織と同じですか?」 聡一郎が言うと榊原は嫌な顔をした 康太は笑って 「嫌……脇坂の方が伊織の上を行くぜ 伊織はオレを外に出す 脇坂は野坂を閉じ込める…… ズブズブに甘やかして脇坂がいなきゃ生きて行けなくする……それは伊織と同じだけどな」 笙は「………それ笑えませんよ?」と呆れた 「脇坂は自分の方が野坂にズブズブに溺れてると言ってます あの人…オナニーするよりセックスの方が楽だって犯りまくりだったのに…… 今じゃ野坂が忙しいと風呂場で抜いてると言ってましたね 溺れてるのは脇坂の方ですね 何にしても……野坂は忠犬にしか見えませんね」 笙はボヤいた 一生は「魂が綺麗だったな……」と思い出して言った 「だろ?野坂の魂は綺麗だ」 康太は可哀想な子供が幸せそうな顔で笑っていて良かったと想う 夜更けまで康太は笙や蒼太と野坂をつまみに話に花を咲かせていた マンションに帰った野坂は、脇坂の寝室に行きベッドの上に上がり、さっさと寝る準備をした 野坂は脇坂がいなきゃ、脇坂の寝室には入らない 脇坂の寝室の毛布を持ち出す事はあっても…… 入って寝る事はなかった 野坂はマンションに住み始めても、寝室の奥の書斎には一切足を踏み入れなかった この日脇坂は野坂に奥の書斎に入る様に謂った 「智輝、おいで!」 脇坂は寝室の奥の書斎のドアを開けた 野坂はベッドの上に座っていた 「………良いの……」 「おいでと言ったでしょ?」 野坂はベッドから下りて脇坂に近寄った 脇坂は野坂の手を掴むと書斎に入って行った 書斎の机の上にはPCがあった 脇坂の仕事用のPCだった 「智輝、僕のPCを開けて立ち上げて」 野坂は初めて書斎に入った 脇坂の仕事用の机の上には…… 野坂の写真があった 仕事用のPCのふたを開け立ち上げると…… PCの画面に…… 笑った野坂の顔が……待ち受け画面にされていた 「………え?……篤史……」 「このPCは僕が持ち歩いてるPCです、知ってますね?」 野坂は頷いた 「僕は君を愛してます だから愛する人の顔を見たくなるんです そんな時、PCを待ち受け画面にして君の顔を見てます」 「………信じられない……」 「この部屋に入ったらダメだと言いましたか?」 「……言ってない……」 「この家は僕と君の家です どの部屋も好きに使って良いと言いませんでしたか?」 「言った……」 「君は?」 「……え?」 「え?じゃありません! 僕を愛してますか?」 「愛してる!篤史だけを愛してる!」 野坂は叫んだ 「それを何時も口に出して言ってください 君は何も言ってくれません 僕だって不安になる時があります……」 「……ごめん…… 俺……口がうまくないから……」 脇坂は野坂を撫でた 「智輝、僕は君を離したくありません」 「…俺も離れたくない…」 「なので、これをあげます 左手を出して下さい」 野坂は脇坂に左手を差し出した 脇坂は野坂の薬指に指輪をはめた 「……え?……」 野坂は自分の指を見つめた 「君に僕の愛の証をあげます 指輪の後ろに文字が刻んであります それは僕のいない時に見てください……」 「……今はダメ?」 「ダメです……恥ずかしいじゃないですか…… 僕が指輪をプレゼントするのは……君が初めてです」 野坂は真っ赤な顔をした 脇坂も真っ赤な顔になった 「……何で照れるんですか?」 「………篤史が照れてるから……」 脇坂は真っ赤な顔をした 「寝ますか?」 「ん……篤史と寝たい……」 脇坂は真っ赤な顔した野坂の手を引いた 寝室に行きベッドに上がり……野坂を抱き締めて…… 眠りに落ちた 幸せな……眠りだった

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