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第24話 嫉妬

脇坂は野坂を起こして仕事へ行く 「朝食は作ってあります お昼も作ってありますから、ちゃんと食べて下さいね」 野坂は頷いた それを確認して脇坂は仕事へ向かった 野坂はベッドから起き上がりキッチンへ向かった テーブルの上にはサンドイッチが置いてあった 野坂はそれを食べて…… トイレへ走った 食べたモノ総て吐いて……蹲った あの日……脇坂の元恋人を見た日から…… 野坂の胃はキリキリ痛み続けた 脇坂の元恋人はちまっとして綺麗だった 連れ歩いても…… 自慢したくなる美人だった 野坂は顔を洗って……鏡で自分の顔を見た 「………美人とは程遠いよな? ………脇坂は俺で良いのかな?」 脇坂の元恋人は皆…… 小さくて綺麗なんだろう 脇坂は隠していたが…… 桜林時代の脇坂の恋人は皆 小さくて綺麗だった 脇坂に触って欲しいと想った あの恋人の髪を撫でる指て…… 撫でて欲しい…… そう思っていた 「………脇坂……お風呂に抱き上げて連れて行ける恋人欲しいのかな?」 君を抱き上げたら僕の腰は使い物にならなくなります と……言われるもんな 抱き上げて欲しいんじゃない 捨てられたくないんだ でもな……太刀打ち出来ないだろうな…… よりを戻したい なんて言われたら…… 「捨てられるのかな?」 野坂は泣きながら……痛み出す胃を押さえた 「……篤史……篤史………」 野坂は泣いた お前に捨てられたら…… 生きていけるのかな? でも……生きて行かなきゃな…… 俺の死が……脇坂に罪悪感なんて抱かせたくないもんな 落ち出すと…… どんどん落ちる性格は…… そんなに簡単には治らない 脇坂…… 愛してる…… お前の好きな…… ちまっとした大きさになりたい…… 『知輝、ご飯食べに行かない?』 瀬尾光輝から電話があったのは、中々抜け出すにいる時だった その夜は脇坂から 『帰るの遅くなります』 とメールも入っていた 「良いですよ光輝さん」 『本当?ならマンションまで迎えに行く』 光輝は喜び勇んで野坂のマンションへと向かった 『知輝、マンションの下に着いたよ』 光輝からの連絡で野坂はマンションの下に下りて行った 光輝は野坂の姿に……ギョッとした それ程に……痩せていたからだった 「………知輝……どうした?」 車に乗り込むなり光輝は声を掛けた 「……え?……どうもしないよ?」 「………痩せた?」 「………少しね……」 光輝は野坂を抱き締めた 「美味しいの食べに行こう!」 「ん……楽しみ……」 キリキリ痛む胃を黙らせて、野坂は笑った 光輝が連れて行ってくれたレストランは人気のレストランだった 本格的なフレンチを食べれると人気のフレンチレストランだった 野坂はレストランの中へ案内された 席に着くとメニューを出された 「知輝、何食べる?」 メニューを取って店内を見渡した すると窓際の席に……脇坂に似た男が座っていた 向かい側に……綺麗な男の人が座っていた 脇坂だ‥‥それを知るのに、そんな時間は掛からなかった 知らん顔……してなきゃ駄目だよね 脇坂! 名前を呼びたかった だが野坂は……声が出なかった やはり……ちまっとした人が好きなんだね 野坂はキリキリ痛む胃を押さえた 光輝が適当に見繕ってオーダーを頼んだ 野坂はニコニコ笑いながら、食事を取った 「知輝、美味しい?」 「はい!………光輝さんありがとう」 野坂は少しだけ食べた 痛い…… 気持ち悪い…… そんな感情と戦い……野坂は平静を装った 「……光輝さん……誘ってくれたのに……あんまり食べれなくてゴメン……」 「気にしなくて良いよ」 「………光輝さん……帰りたい……」 野坂は青い顔をしていた 「帰るかい?」 「………ん……帰りたい……」 「なら帰りますか?」 「ごめんね……」 「良いよ気にしなくて良い」 光輝は笑顔で野坂を安心させた 帰ろうとしてると「……知輝?」と声が掛かった 野坂は聞こえないフリをした 「光輝さん、デザート食べたい」 「……え?……食べれるの?」 「ん!」 「知輝?」 脇坂は野坂の傍にやって来た 「あ、脇坂…偶然だね 俺は光輝さんと食事の最中だから!」 拒絶するように謂われて脇坂は野坂を心配した だが隣の人物を早く返さねば話が出来ないと 「………そうですか…… 光輝さん、知輝を頼めますか?」と光輝に頼んだ 「ええ。食事が終わったら送って行きます」 「頼みます」 脇坂はそう言い、綺麗な男と共に出て行った 「………脇坂君の……隣にいたの誰?」 光輝は怪訝な声を上げた 「………知らない……」 「………良いの?」 「………良い……」 恋人じゃないの?…… と言う言葉は……言えなかった 野坂は青い顔をしていた 脇坂の車が駐車場から出て行くのを確かめると…… 野坂は机に突っ伏した 「……知輝?……どうした?」 「………脇坂には言わないで……痛い………っ…」 野坂は脂汗を垂らして、痛みに堪えている様な苦悶の顔をしていた 光輝は慌てた 店の人間に救急車を読んで貰った 野坂は痛みのあまり意識朦朧としている風だった 真っ青な顔の野坂の手を握り光輝は救急車を待った 救急車が到着して野坂は緊急搬送された 救急病院に搬送された、待機していたチームが野坂を連れて行った 光輝は……父親に電話を入れた 「………父さん……来てくれよ…… 頼むから………」 光輝は泣いていた 『どうした光輝! 何があったんだ!』 瀬尾の声が響いた 「知輝……倒れた…… 脇坂君には知らせるなと言ってる……どうしたら良い?」 『……知輝……倒れたの? 何処の病院?』 「…………親父が少し前に入ってた総合病院……」 『直ぐに行く!』 瀬尾がハイヤーを飛ばして病院にやって来た 病院のスタッフに案内されて行くと、光輝は泣いた顔を瀬尾に向けた 「……光輝……何があった?」 『……今日……オフだったから知輝を誘ってフレンチレストランへ出掛けたんだ そしたら脇坂君が……綺麗な男と会食していた 僕は背を向けてたけど……知輝は見えたんだね 顔色がなくなって…… 脇坂君が帰るとき声を掛けたんだ 知輝は顔色をなくしていた 脇坂君の車がレストランを出るのを見届けて踞ったんだ 痛みに呻きながらも、……脇坂には言うな……と言ってた……」 「………取り敢えず……脇坂君に連れの人間は誰が聞くしかないね……」 「………恋人だっていったら? ……そんな事聞いたら知輝は生きてないよ……」 「光輝……」 「知輝……苦しそうに胸を押さえていた 脇坂君の顔を泣きそうな顔で見ていた 自分の恋人が……遅くなると言って……見知らぬ誰かといたら……勘ぐるなって言う方が……無理だ!」 「………光輝……」 「………知輝……泣いてた 搬送される時……泣いていた…」 「………光輝……」 「………幸せに……それしか願ってないのに……」 光輝は悔しそうに吐き捨てた 野坂の鞄の中の携帯が鳴り響いた 「………知輝の鞄だ……どうしよう……父さん……」 「………知らせるなと言ったんだよね? でもそんな訳にはいかないよ?」 利輝は野坂の携帯を取った 『知輝、今どこですか?』 「それを聞くなら、今日誰といたか教えなさい!」 『………瀬尾先生?……知輝は?』 「レストランで一緒だった方は誰ですか? 知輝には今日は遅くなるとメールして……誰と逢っていたんですか?」 『………元恋人……です……』 「知輝に説明できますか?」 『出来ます!』 「なら何で元恋人と逢うと言わなかったんですか?」 『………心配させたくなかったのです…』 「事情も話されず……そんな光景を見させられた知輝の気持ちは考えませんでしたか?」 『……まさか……あんな所で逢うとは想いませんでした……』 「知輝は外に出ないから解らないと想いましたか?」 『……そう謂うのでないです』 「なら、どうして元恋人と逢わなければならなかったのか?事情を聞かせて下さい」 『………知輝に話します』 「……知輝……意識をなくす程の痛みに堪えていたそうだよ……』 『……え………何時……』 「君が駐車場から出るのを確認して、光輝に『脇坂には言うな』と残して踞ったそうです… だから君に言うつもりはありませんでした 君は何も知らなかった事にして……来なくて良いです」 『………瀬尾先生……知輝の病院を教えてください!』 「………じゃあ話して下さい 君に疾しい事がなければ話せますよね?」 『逢ってくれなきゃ家に押し掛ける……と言われたのです 流石と家には押し掛けて欲しくないので……外で逢いました 僕に恋人が出来たと広がってて……確かめに来たのです 執拗に会社に電話が来てたので……仕方なく逢いました 瀬尾先生が勘繰る様な事は一切ありません」 「会社の近くの総合病院にいます 知輝はまだオペ室の中にいます……」 『………直ぐに行きます!』 脇坂は電話を切った 瀬尾は光輝に「脇坂君が来ます」と告げた 「………言うなと言われたのに……」 「目を醒まして……一番に見たいのは恋人の顔でしょ?」 「………脇坂君……ちまっと小さい綺麗な男といた 知輝……譫言で……小さい綺麗な男に産まれたかった……って泣いてた……」 「………光輝、脇坂君が来たら帰りますよ」 「………知輝を苦しめる奴は嫌だけど…… 知輝は……篤史篤史……ずっと名前を呼んでた 僕の車……フレンチレストランにあるので……乗せて行って下さい……」 光輝は泣いていた 瀬尾は我が子を抱き締めた 脇坂は顔色をなくして、慌てて飛んできた 「………瀬尾先生…知輝は?……」 瀬尾は駐車場で脇坂を待っていた 「脇坂君、今病室に移された 胃に穴があいてたみたいです 多分、食事を取っても嘔吐していた様です 今夜は様子を観察して、明日穴の開いた部分を塞ぐとの事です」 「………そうですか……」 「……脇坂君……かなり前から知輝……嘔吐を繰り返してなかった?」 「………嘔吐……してたのですか? 家では普通に見えました 最近……少し痩せたから……病院に行こうかと話してた所です」 「……脇坂君」 「何ですか?」 「……その……聞き難い事だけど……最近……知輝抱いてた?」 「抱いてました……昨夜も……」 「気付かなかったの?」 「最近の知輝は目に見えて不安定で、顔色も悪かったです なのに抱いて……と誘って来て……体に悪いからと言うと泣いて……抱きたくないんだろ?と怒るので……朝まで抱き潰す日々でした」 「………君を盗られたくなかったんだね…… 知輝の傍にいてやってくれないかな?」 「そのつもりです!」 瀬尾は野坂の病室に案内した 野坂は青白い顔して寝ていた 野坂は泣いていた 眠りながら……泣いていた 脇坂が涙を拭っても…… 止め処なく涙は溢れ…… 脇坂は野坂の手を握った 「……知輝……愛してます……」 脇坂は言い続けた この涙を止めてあげたい 野坂に下手に心配掛けたくなったのだ 野坂と食事してる時に元恋人の一人に見付かって…… 以来、入れ替わり立ち替わり…… 『脇坂君、恋人出来たの?』 『篤史さん恋人出来たの?』 と確認して来ていた 元恋人は同盟を組んで……報告しあっていた タチの悪いのに見付かった 『篤史さん、ご自宅に招いて下さい! 招いてくれないなら、お昼にでも伺って入れて貰おうかな?』 完全なる脅しだった こうなったら……聞いてくれる相手ではない 脇坂は野坂に遅くなるとメールして、元恋人の要求を飲んだ それが経緯だった まさか……野坂が光輝に連れられて、そのレストランに来るとは想ってもいなかった 帰り間際、野坂を見つけた 顔色が悪いと想った 「知輝」 名前を呼んでも無視された 聞こえないのかともう一度呼ぶと、脇坂は見なかった 拗ねてるのか? 元恋人との事を見せたくなくて…その場は……離れた だが一向に家に帰って来る気配がなくて…… 脇坂は焦った こんなに泣かれて…… 血を吐く程に悩ませるなら…… 言っておけば良かった 知輝…… 知輝…… 僕は傍にいます…… 『ねぇ篤史さん、本気の愛をしてる顔してるね?』 元恋人は言った 『だったら?どうなんですか?』 脇坂は野坂の元に帰りたくてイライラしていた 『篤史さんが本気の愛をしたなら祝福します 僕たちでは……篤史さんを本気にさせられなかった もし篤史さんが本気の愛を手に入れたなら……僕たちは…… 篤史さんからの呪縛から解けるのです』 『………呪縛?何ですか?それは?』 『篤史さん……僕たちは本気で貴方を愛していました でも貴方の愛は……溺れたら狂ってしまう…… だから逃げました 貴方がいなきゃ生きて行けれない生活は……怖かったです でも僕たちは篤史さん…… 貴方の幸せを願ってました 知輝……と言う人……何時も寝てる時に幸せそうに寝言いってましたね…… 貴方が欲しいのは『知輝』と言う人だけ…… 報われないです…… 貴方の傍にいればいる程に……寂しくなって行くんです だから……逃げた…… でも僕たちは貴方の幸せを願ってました だから確かめたかったのです 貴方があの日、優しく名前を呼んでいたのは『野坂』ですね? そして彼のフルネームは『野坂知輝』ですね? と言う事は、貴方は……やっと唯一無二の存在を手に入れたのですね? 僕たちはそれを確かめたかったのです』 『……そうです! 僕が愛してるのは野坂知輝 彼だけを愛してます』 『お祝いさせて下さい! 今度、知輝さんと逢わせて下さい!』 『………本人が了承すれば……』 『……楽しみです』 それて別れた まさか……あのレストランに野坂がいるとは想わなかった 話しておけば良かったのに…… 「知輝……」 脇坂は野崎の手を握り祈り続けた 野坂は夢を見ていた 『脇坂……俺には無理なんだよ……』 弱音を吐いて、バックレようと想う ずっとずーっとそれで通用して来た だから野坂は直ぐにダメだと弱音を吐いた 桜林学園の桜林祭で脇坂と野坂のクラスは演劇を選択した 野坂知輝、脚本 脇坂篤史 演出 その脚本がクラスの特徴を捉えてないからミスマッチな脚本と配役になって連日…… 稽古してもイライラが募っていた 配役の一人がフラストレーションを溜め込みすぎて爆発して……頓挫した すると何時も野坂は弱音を吐いた 『野坂、お前は本当に坂道を持ってくな……』 転がり落ちるしかないギリギリまで持っていく 『……脇坂……』 何故この二人が『坂道コンビ』と呼ばれているかと言うと……野坂の性格に合った 野坂は落ちるのは早い 坂道を転がるように落ちてく それを引きずりあげるのが脇坂の役目だった 『そう簡単に落としますか!』 蹴り入れて 倒れるなと脅迫し 無理矢理 坂道から引きずりあげるのが脇坂だった 『脇坂!野坂が転がってる』 クラスメートは、どよーんとした野坂を発見すると脇坂に言った 『簡単に落としてあげません!』 誰とも関わらず 生きていこうとする野坂を引きずりあげるたのは脇坂だった 脇坂は最終打開案を提示した それで何とかしろとばかりに素晴らしい笑顔で野坂の前に立った 『仕方ないですね! クラスメートの特徴を教えてあげます それで言わせる台詞を考えて合わせなさい!』 『……脇坂……俺……クラスメートとは付き合いねぇもん…』 『だから、君の前に並べてあげます!』 クラスメートを野坂の前に並べた 並んだクラスメートを目にして脇坂は 『さぁ君達、面白い事を言って個性を発揮しなさい!』 と言うのだ クラスメート全員……それは無理だろ? と、思いつつ…… やるしかなかった 榊原 笙は苦笑しながら…… 飛鳥井蒼太は脇坂の無茶ぶりに倒れそうになり クラスメートを纏め……やるのだった 『脇坂…見て……これで良いかな?』 野坂は必死になりクラスメートの特徴を捉えて書いた 脇坂はシナリオを受け取り目を通した 『………野坂……』 『何だよ?』 『この程度で僕を唸らせれると想いましたか?』 フンっと鼻で嗤われ…… 野坂はシナリオを奪い返した 野坂は一晩中、寮にも帰らずシナリオを書き上げた クラスメートも一晩中……家にも帰らず付き合った 『……脇坂……』 フラフラになりシナリオを脇坂に渡した 脇坂はそれに目を通して 『………良いでしょう』 と言い、野坂を膝の上で寝かせた 厳しいけど脇坂は優しかった クラスメートは脇坂と野坂のやりとりを見ていて 編集者と作家みたいだと笑った クラスは優しげな脇坂を見れる瞬間に…… 得した気分になれた イビキをかいて眠る野坂の髪を優しく撫でる脇坂…… 全校生徒が……あの位置に立ちたいと……憧れた場所だったのを……野坂は知らない 野坂は目を醒ました 懐かしい桜林時代の夢を見ていた…… 目を開けた瞬間…… 脇坂が瞳に入って来た 嘘…… 野坂は信じられない想いで脇坂を見ていた 脇坂は野坂が目覚めるのを確かめると 「気が付いた?」と問い掛けた 脇坂は野坂の手を握り締めた 脇坂のぬくもりに包まれる 脇坂は野崎の指輪に口吻を落とした…… 「………脇坂……桜林時代の夢見てた……」 「坂道コンビの頃のですか?」 「うん……」 「知輝……痛い所はないですか?」 「………ないよ………」 「嘘はつかないで下さい」 「………嘘なんてついてねぇ!」 「倒れた時……何で僕には知らせるなと言ったんですか?」 野坂は黙った 脇坂は嘘偽りなく話してと野坂に迫った 「知輝……話して……」 「デートの邪魔はしたくなかった……」 「デートではありません! 聞かれて答えれない事なんてしませんよ?」 「………お前は昔からちまっとした小さな男が趣味だったよな?」 「………僕は君を愛してると言いました……」 「………俺は……お前が今まで付き合った奴らとは違う…… 小さくもないし……可愛くもない……」 「知輝、昨夜の子に逢いますか?」 「………嫌だ!」 「でも君は僕が何を言っても信じない…… 僕と別れる気ですか?」 「別れない! お前がいないと俺は生きていけない! 別れるなら殺してくれって言ったじゃねぇか!」 野坂は叫んだ 脇坂は野坂を抱き締めた 「僕が愛してるのは君だけです」 野坂は泣きながら……脇坂の胸に顔を埋めた 「君の病状も悪化させたくないので、呼びます ちゃんと話を聞いてくれますね?」 「………うん……」 「僕が指輪を贈ったのは君だけです 信じられませんか?」 「……信じるよ…… 脇坂は俺に嘘はつかない…… 昔から嘘や誤魔化しは言わない……」 「そうです! 僕は君に一度たりとも嘘はついてません! 君を軽く扱ったつもりはありません!」 「………篤史………ごめん……」 「 心配しました…… 君が退院するまで僕は会社を休みます」 「………いいよ……そこまでしなくて良い……」 「何言ってるんですか! 僕のいない所で泣かないで……と言いませんでしたか?」 「………ごめん……篤史……」 野坂はポロポロ涙を零した 「僕には知らせるな? 僕は知らなかったら……自分を殺したくなります…… なら君に聞きます…… 僕が倒れて、野坂には知らせるな……と言ったら、どう思いますか?」 脇坂が倒れて…… 自分だけ知らされない…… それは嫌だった それを脇坂にしたのだ……自分は…… 「………ごめん篤史……」 野坂は、もう言わないから許して……と脇坂に泣いて謝った 「胃潰瘍は原因を取り去るしかないのです 僕がちまっとした小さな男が好きだと想ってるみたいですね…… 元恋人を呼びます 彼等も君に逢いたがってました」 ちょうど良いですね! 脇坂は納得して胸ポケットから携帯を取り出した 「僕です!」 第一声が……僕です!…… それで通用するのかよ?と野坂は想った 『僕なんて人と知り合いはいません!』 「なら電話を切ります!」 『わぁ!待ってよ! 何か用があったんだよね?』 本当に性格悪い……と元恋人は想った 「僕の愛する人が悩んで入院しました! 君たちのせいです! お詫びに病院に来て誤解を解いて行きなさい!」 脇坂は病院の名前と病室を告げて、電話を切った 野坂は背筋に冷たいモノを感じた Sだとは想ってた こんなにドSだとは…… 此処まで性格破綻してたとは想わなかった 上から目線の脇坂…… そう言えば生徒会長してる頃の脇坂は、常に上から目線で、皮肉屋で、私情を挟まない冷徹な奴だった 野坂の前の脇坂は、そんな奴じゃなかった 「知輝、何か食べたいのはありますか?」 「………食って良いの?」 「………医者に聞かないと駄目ですね…… 治ったら何が食べたいですか?」 「篤史」 「僕なら今でも食べさせてあげます!」 脇坂はそう言うと強引に接吻してきた 歯列を割って舌を挿し込み……淫靡な接吻をした 「………ぁ……篤史……此処病院……」 「流石、瀬尾先生ですね! 個室にして下さったので出来ない訳じゃないですよ?」 野坂は脇坂の接吻で、グターッなった 「……イキそうになった……」 「飲んであげましょうか?」 「………それは……恥ずかし過ぎる……」 野坂は顔を真っ赤にした 脇坂は野坂の髪を撫でた あの手で……撫でられたい…… 何時も想っていた 野坂は猫のように脇坂の手に擦り寄った ドアがノックされ、脇坂はドアを開けた すると………ちまちました美人さんが……10人程並んでいた 野坂は脇坂の元恋人だと解った 元恋人達は脇坂を押し退けて、野坂のベッドの横に整列した 「野坂知輝さんですね!」 脇坂の元恋人はニコッと笑って問い掛けた 「はい。」 「野坂さんは桜林学園で、篤史さんと一緒にいたんですよね?」 「そうです!」 野坂が答えると、脇坂の元恋人達は「やったー!」と喜んだ 「貴方が脇坂君が何時も呼んでた『知輝』なんですね!」 「……え?……何の事を言ってるの?」 野坂には訳が解らなかった 脇坂の元恋人は野坂の手を取った 「篤史さんは僕達の恋人でした! でも篤史さんはエッチやってる最中と、寝ている時に何時も 『知輝』と呼ぶんです 僕達は『知輝』って子の代わり……だったんです でも篤史さんは格好良いし、恋人としては不満はなかった 傍にいたいと想ってました だけど……彼に愛されると……甘すぎるので……怖くなって来るのです 彼に……『知輝』って子が現れたら……終わる恋なのは解ってる…… だからズブズブに溺れさせられたら……捨てられたら生きていけない…… だから僕達は篤史さんから逃げました 逃げたけど……僕達は篤史さんの呪縛に囚われてます 篤史さんが幸せになってくれた時、初めて僕達は…… 長かった夢から醒めれるんです だから彼に恋人が出来たか確かめたかったのです まさかね……惚気られて……指輪まで贈ってると聞かされるとは想いませんでしたけどね 二時間……惚気ばかり聞かされるとは想いませんでしたけどね……」 野坂は……顔を真っ赤にした 他の脇坂の元恋人も 「脇坂君は……犯ったら後始末もしてくれない人でした こんなに小さくて可愛いのに……抱き上げられた事なんて一度もありません! 酷いと想いませんか? その癖ベタ甘に溺れさせ‥‥本当にタチの悪い人でした」 と愚痴った 野坂は言葉もなかった ちまちました小さいのなら…… お風呂まで抱き上げて行ってると想った 野坂はなんとコメントして良いか解らなかった 脇坂の元恋人は清々しく笑っていた 「篤史さん、この方が、貴方が求めていた『知輝』なんですね?」 「そうだ! 出逢った時から傍にいたい野坂知輝…… 僕は彼しか愛していない」 脇坂はキッパリと言った 「脇坂君!幸せに! それが別れた僕達の願いです!」 元恋人達は脇坂の幸せを願っていたのだった 野坂はそんな光景を見て泣いていた 脇坂は優しい顔をして、野坂の涙を拭いた 「本当に君は泣き虫ですね」 幸せそうな脇坂がいた 恋人だった頃 一度も見せなかった顔をして…… 元恋人達は「お邪魔しました!お幸せに!」と残して病室を出て行った 脇坂は野坂に深い接吻をした 「愛してます」 接吻の合間に……愛の囁きを受けた 体躯が……熱くなっていく 此処が病院だと解っていても… 体躯が引きずられていく 脇坂に愛されていたと思い知らされた ずっと『知輝』と呼ばれていた そんな事を聞かされて…… 止まれなかった 「篤史……イッちまう……」 「君が……僕から離れて行きそうで……怖かったです……」 「篤史の好きなのは……ちまっとした美人だと想っていた…… 俺……小さくなりたかった……」 「君はそのままで良いです」 脇坂は野坂の首筋に吸い付いた 「……あぁん……篤史……ダメ……」 脇坂の指が……野坂のズボンを潜り抜け下着の中へ忍び込んだ ズボンを少しズリ下ろし…… 性器を扱いた 尖った乳首を舐めて……囓った 「……っ……篤史……本当にダメだって……」 「止まれません……君が欲しくて……」 脇坂は野坂の手を取って…… 自分の肉棒を擦り付けた ズボンの前を寛げて……直に触らせると…… 「……っ……熱い……」 と、魘された様に……喘いだ 「……篤史……穴が疼く……」 「見せて……」 パジャマのズボンを下着ごと抜き取ると、俯せて 腰を高く突き出させた 野坂のお尻の穴は……赤く熟れて……妖しい生き物の様に蠢いていた 脇坂は野坂の蕾に舌を這わせた 舌を挿し込むと…… 脇坂の舌を咀嚼しようと蠢いていた 「君の先走りが下のお口をベタベタに濡らしてます…… ローションなくてもイケそうですね 知輝……ベッドから下りて…お尻を付き出して…… 声は少し我慢してね」 野坂は脇坂の言うとおりにした ベッドのシーツを握り……お尻を突き出した 「……ゴム……ないのに中に出して良いですか?」 「ゴムは要らない……篤史の熱が感じられないの嫌…」 「君は本当に可愛いですね」 「そんなことを言うの篤史だけ……あぁっ……熱い……っ…」 脇坂が腸壁を掻き分けて挿入って来た 野坂はシーツを噛んだ でないと……声が漏れちゃうから…… 「……知輝……君の中熱い……っ……」 感じまくっていた 病室だと解ってても止まれなかった 「篤史……抱き着きたい……」 こんな事を言われたら止まれない 脇坂は野坂の中から抜くと、仰向けにした 足を抱えて挿入すると……野坂は仰け反った ぬちゃ……グチュグチュ……湿った音が病室に響き渡る その時……ノックされた 野坂の中が……ビクッと締まった…… 脇坂は野坂の口を接吻で塞いだ 執拗な接吻をして脇坂の腰に足を搦み付け、脇坂を掻き抱く野坂は別の生き物の様に妖艶だった 「……篤史……篤史……」 野坂は脇坂の名前を呼び続けた 艶めかしい光景に……やっとこさ……ドアを閉めた 脇坂の脳裏に誰かに見られたかも…と言う想いはあった それでも止まれなかった 脇坂は野坂の口を接吻で塞ぎ 腰を揺すり続けた ……脇坂は熱を野坂の中に放った 野坂はハンカチの中に……吐き捨てた はぁ…はぁ…… と荒い息が響く 脇坂は野坂の中から抜いた 「………もう良いの?」 脇坂の性器はまだ勃っていた 「………まだ足りないけどね……誰か来たみたいだよ?」 「……え?……見られた?」 「………ん……多分……ゴメンね」 「いい……俺が欲しがったからだから…」 「僕も欲しがったからですよ?」 「……ん……篤史の熱かったから……我を忘れた……」 脇坂は自分の性器をティシュで拭き取ると、ズボンの中にしまった 身なりを整えて、野坂の処理をした ベタつく体躯は……後でオシボリを貰って来るとして…… 野坂の中から精液を掻き出し、後始末した 野坂をベッドに寝かせると、窓を開けて換気した 脇坂は持ってた香水を振りかけた 「……止まれなかったね」 脇坂は苦笑した 「……ん……すげかった……」 脇坂は野坂のパジャマの胸元を、ちゃんと直した 直しても……噛み付いた痕や……キスマークは見えていた 精液の匂いがなくなるのを待って、脇坂はドアを開けた するとドアの横には…… 瀬尾利輝と光輝と愛那が立っていた 脇坂はドアを開けて 「お見舞いですか?」と尋ねた 利輝は真っ赤な顔して 「……ごめんね……まさか……」 と言葉を濁した 光輝も「………脇坂君は理性的な方だと想ってたんで……」と真っ赤な顔をしていた 愛那は「ゴメンナサイね 知輝は病人だから……まさか病人に……手をだしてるとはと思わなかったわ」と爆笑した 「どうぞ!知輝はもう大丈夫です」 脇坂は瀬尾と家族を病室に招き入れた 瀬尾と家族を病室に招き入れると脇坂は少し離れた所に立った 「知輝、会社に電話を入れますね」 脇坂はそう言い編集部に電話を入れた 「お疲れ様です!脇坂です あのですね、副編集長に野坂が入院したので退院するまで休むと伝えて下さい」 『え!野坂先生入院したんですか! お見舞いに行きます! 何処の病院か教えてください!』 「嫌です! 君達が来たら休養にならないじゃないですか! とにかく、副編集長の手に余る場合なら電話して来て良いですと伝えておいて下さい」 『編集長!お願いですから!』 「今、瀬尾先生がご家族でお見舞いに来て下さってるので、電話を切ります」 脇坂は電話を切った そして野坂の傍へと行った 野坂は真っ赤な顔をしていた 見られた……と想うと…… 恥ずかしすぎた 利輝は「知輝、具合は?」と問い掛けた 野坂は真っ赤な顔して…答えられなかった 利輝は笑って 「君達は恋人同士なんだし、場所は少し悪かったけど……気にする事ないよ」 と慰めた 「………見ました?」 野坂は真っ赤な顔で問い掛けた 利輝はそっぽを向いた 光輝は野坂から背を向けた 愛那は「少しね!直ぐにドア閉めたし!脇坂君のケツしか見えてないから大丈夫!」と慰めにもならない台詞を吐いた 野坂はベッドに潜り込み顔を隠した 瀬尾は「愛那!」と妻を怒った 愛那は野坂の布団を捲った 両頬を押さえて言葉を続けた 「知輝、あの脇坂が理性をなくす事があるなんて…… 想ってみなかったんだ 脇坂と言う男は感情も性欲もない顔して瀬尾の担当になった 原稿を取り立てる為なら鬼にでもなる 私は…脇坂は嫌いなキャラではなかった 媚びを売る奴より良い たけど、コイツには人の感情がない 人の心がない……そう想ってた なのに理性も崩壊して、性欲もあった 生身の脇坂の方が、私は好きだけどね」 野坂は愛那を見た 「………脇坂は……昔も今も優しい……」 「それは知輝にだけだ! 脇坂はそんなに甘い男じゃない やられたら倍返しする……冷酷非情になれる男なんだ」 「………なら俺にだけで良い……」 愛那は野坂の頭を撫でた 「良い子だ!」 利輝は昨夜より血色の良い野坂の顔に安堵していた 利輝は光輝に 「ジュースを出しなさい!」と催促した 光輝は慌てて鞄の中からジュースを取り出した 脇坂の携帯はずっとブーブー鳴り響いていた 脇坂は携帯を床に落とすと…… バキッと踏み付けた 「これで静かになります!」 脇坂はニコッと笑って、野坂の頭を撫でた 野坂は……背筋に冷や汗をかいた ………普通……踏み付けるか? 愛那は爆笑していた 「おっ!静かにするのはコレが一番だよな!」 「でしよ?愛那さん!」 「おー!煩い輩は黙らせねぇとな!」 脇坂と愛那は同じような人種だった 光輝は…… 「………僕……母さんに似てると想ってましたが……性格は父さん似ですよね?」 とボヤいた 愛那は腹を抱えた 「光輝、おめぇは少し女々しいからな利輝さんに似てるよな?」 「……愛那さん……地を出さない……」 利輝がボヤいた 光輝は母の地を初めて目にして驚いていた 脇坂と野坂は渡して貰ったジュースを静かに飲んでいた 利輝は「帰りますか?……お邪魔すると馬に蹴られますから‥」とボヤいた 光輝も「知輝、体調が良くなったら今度こそ食事に行こうね!」言い次の約束をした 愛那は「退院したら快気祝い、我が家でやらない? 知輝は私達の子供も同然だ!」と笑顔で提案した 利輝も光輝も賛同した 「また来るよ」と約束して利輝は光輝と愛那を連れて帰って行った 「傍にいるので君は少し寝なさい」 脇坂は野坂の頭を優しく撫でた 野坂は瞳を瞑った 幸せを感じ……眠りに落ちた

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