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第32話 熱き想い

周防玄武は殿の為に生きていた 藩の為だけに……生きていた 武士である自分が誇りだった 惚れぬいた妻を娶り、後継ぎにも恵まれた 幸せだと想う時間を送っていた 満たされる自分がいた この幸せがずっと続けば良いのに‥‥と願っていた そんな周防玄武の元に殿直々に隠密の名が下った 敵の勢力を探るために隠密となって情報を手に入れて来てくれて!と殿は謂った この劣性な領地争いに勝つには情報は最大の武器となる 周防玄武は自分の築いた地位や名声を総て擲って‥‥‥隠密に身を窶した お家を返上して浪人として隠密として日々生きる 世間の目を欺き、隠密に成りきれば成りきる程に‥‥‥ 世間からは爪弾きにされた それでも殿の為だけに生きて情報を手に入れ続けた 妻や子供を泣かせても‥‥‥周防玄武は武士を貫いた 生活が一変した事で内儀と呼ばれた妻は、その日の生活にも窮する事になった 働いた事もない妻が仕事を探し夜は内職に明け暮れた 我が子も妻を手助けして内職を手伝っていた 文句一つ謂わず‥‥妻と子は周防玄武に仕えてくれた 武士の妻や子として生きていたのに…… 今じゃ……日々の生活も大変になった だが殿の為に…… そんな想いだけが周防を支えていた だが裏切りがあり…… 周防の家は永遠にお取り潰しになった 陰謀と策略に踊らされて浪人に身を窶し…… それでも‥‥一縷の夢を見た 殿の為に日々の鍛錬は怠らず生きていた 妻や子供を見ずに…… 過去の名声と恩義だけに縋り付き……生きていかねば……生きては逝けなかった 日々の生活は困窮し、かなり厳しいモノになった そんな周防に妻と子供は泣き言一つ言わず 周防に着いてきた…… だが確実に日々に疲れて果てて逝く 妻は振り向かぬ夫に…… 息子は母を泣かせ苦しめる父親に…… 着いて逝けない距離感を感じずにはいられなかった 埋められぬ……溝が出来ていた お家復興の為 その夢も……裏切られ御家を永久に取り潰し 今は見果てぬ夢となりつつあった そして……気付けば…… 妻や子供は…… 周防に背を向けていた 埋められぬ溝が出来ていた事にやっと気付いた でも……遅かった 何もかも無くした時…… 人はどう生きるか…… 人はどう自分を知るか 周防は…… 1人になっていた 孤独に…… 叫んで 泣いて…… 喚いた 酒に身を窶し…… 飲んだくれた そんな時、周防の生まれ育ち守った国の領地没収 大名席剥奪 ……と言う噂を聞き 周防は捨てた国に帰った 妻や子供は…… 何処で何をしてるか…… 解らなかった 失うモノは何もなくなった 周防はお家復興の為に反乱軍として戦う同士を集めた 乗っ取られた領地を奪回して 過去の華やいだ街にする夢を抱いた 街を昔と同じにしても…… あの時には還れないのは解っていた だが己の愛する国を穢れ踏みにじられ蹂躙された現実を目にして奮起せずにはいられなかった 領地を取り戻す戦に周防は身を投じた 何年も何年も続く戦の指揮に当たったのは周防玄武だった 周防は隠密をして来た時の情報収集を生かして、敵を操作して勝機を導く為に戦った あの人と歩いた、あの城下町を‥‥ 我が子と歩いた、桜並木を‥‥ 取り戻す! 絶対に取り戻す! 周防はその為だけに戦った 想いはあの日へと戻る 幸せだった時を想う 胸を焦がす程に……幸せだった時を想う それだけが周防を奮い立たせていた 周防は共に立ち上がってくれた物達と共に、領地を取り戻す闘いに明け暮れた 同士に加わってくれた中には年若き将校もいた 我が子と同じくらいの将校を目にすれば‥‥ 我が子を想わぬ日などなかった 周防は年若き将校に過去の自分を見ていた 胸を張り生きる姿は美しい矜持に満ちていた 周防は共に立ち上がってくれた者達と共に 愛すべき国を取り戻した 戦で荒れ果てた街を復興する 国は取り戻しただけでは人は暮らせはしない 人が活気に満ちて生きていける街を作らねばならない 周防はお国復興に尽力した 国を取り戻した時、一番の功労者である周防が国の頭になれと謂われたが、周防は頑なに断った 略奪され命を断った、我が主の忘れ形見を領主に据えて、周防は後見人として殿を見守ると誓った 今、周防の目の前に望んでいた光景が映し出されていた 城下は賑わい活気が付いていた 人々が日々を生きる城下町が甦っていた そして心を奪われる桜並木 あの桜の下で…… 誓った お前を幸せにする そう誓った 周防は美しく咲き乱れる桜の花を見上げて 愛した人を想った 城や城下を取り戻し、過去の……賑わいを取り戻したら‥‥ そしたら……あの頃に戻れる気がした そんな筈などないのに‥‥ 周防はそれだけを胸に…… 反乱軍の旗を掲げた 小さな力は…… 大きな力を生み出し 河面に浮かぶ渦紋の様に…… 投石した石の如く揺らいで大きくなった 反乱軍は城下を取り戻した お家断絶を言い渡され浪人に身を窶した周防が‥‥ 地位と名声を手に入れた だけど……周防は孤独だった 活気着く城下町を眺め…… 周防玄武は想う 愛する妻と……子供と過ごした日々を…… 桜を見上げ……周防は目を閉じた 目を瞑れば何時でも…… 心について映る 愛してた妻と子供が…… 戻れない場所 城下町を元に戻しても…… 還れない場所 周防は泣いた 「………愛してました……」 心底……惚れた妻だった 心底愛した子供だった 「誰を愛してらっしゃったのですか?」 不意に声が聞こえた 周防は目を開けた だが……振り返れなかった…… 恐いから…… 「………妻と……我が子を……愛してました……」 「……愛してました……? ました……と言うのは過去形ですか? 今は……愛してらっしゃないのですか?」 「………愛してます……」 「なら………こちらを向けば良いではないですか……」 泣き声が聞こえた 啜り泣く……声は震えていた 「………振り向いて……消えるのは……見たくない 桜の花が見せてくれる幻影だったら……生きては行けぬ……」 「桜の花は……そんな粋な計らいをしてくださるの? なら……振り向くべきよ……消えないから……」 周防は……怖々と……振り向いた 周防の瞳の先には…… 年を重ねた妻と…… 青年になった息子が立っていた 別れた時は……子供だった こんな良い青年になるなんて…… 周防は泣いていた 「………奥方……貴方は今もお美しい…… 倅よ……こんな良い青年になっていたとは知りませんでした 君は……私と闘ってくれた……将校だったとは……」 周防の後ろで……何時も周防を守った年若い将校が立っていた それが我が子だとは…… 想いもしなかった 「………父上……貴方を護れて……私は本当に誇りに想ってます」 「………私も……身を賭してまで護ってくれた将校は誇りでした 君が我が子なら……共に闘って……得た平和だと言えますね 私は隠居します 今後は君が……この国を護って下さい」 周防は妻と息子を抱き締めた あの……焦がれていた風景に…… 妻と息子がいる 周防は泣き出した   涙が止まらず……泣き崩れた 還りたい場所は…もうない 二度と還れる場所はない だけど、今…… その場所に……愛する人がいた 「………私の想いは……受け継がれ……この地に降り注ぐ…… ありがとう…… 今も私の傍にいてくれて……」 妻は何も言わず微笑んでいた 共にいられなかった時間は…… 埋められない訳じゃない この先……ずっと傍にいれば良い…… そしたら離れていた時間も…… 共にいる時間も…… 変わらぬ時間になる 想いは継がれ 築かれていく 熱き想いは この先も継がれて行く 来世も…… 幾年月過ぎようとも…… この熱き想いは…… 決して消えない 作品を総て書き終えて野坂は 「………書き終えた……」と呟いた 野坂は、2年間書き続けた熱き想い の原稿を書き終えた 納得のいく終わりを書けた 思い残す事はない 総てを尽くして野坂は書いた 野坂の横には脇坂がいた 二人して熱き想いのラストを書く為に、旅行に出掛けた 旅行先は何の花か解らないが…… 街ごと咲き乱れていた 何処へ行っても咲き乱れる花の匂いに…… この場所で書こうと想った 脇坂はコテージを借りた ホテルではなく庭の着いたコテージを借りた 野坂は庭に出て書いていた 脇坂の連れてきて街は、まるで夢の中にいる様な街だった 花の匂いに包まれて、野坂は熱き想いのラストを書いた 野坂は脇坂にPCを渡した 脇坂はデーターを保存した そして原稿に目を通した 脇坂が原稿に目を通す間、野坂は紅茶を飲んだ 「野坂先生、文句のないラストです」 「ありがとう脇坂 この作品は……自分の為に書いていたんだ 書き始めた頃は……周防玄武は犬死にさせるつもりだった なのに……自分の中で……どんどん変わって行くんだ…… 自分でも驚くラストだった」 「周防玄武は悔いなく……想いを受け継がれるでしょう……」 「ありがとう脇坂」 「胸が熱くなりました 君の綴る世界が……更に好きになりました」 「編集長、まだ俺は……恋人にキス出来ない?」 「それは失礼 編集長は今、役務を終えました 目の前にいる男は、君の愛する男です」 野坂は脇坂に抱き着いた 「俺のだ……」 野坂は脇坂の胸に顔を埋めた 「篤史…ありがとう…」 脇坂は野坂の頭を撫でた 「知輝、寝室に行きますか?」 「ん、寝室に行ったら俺が篤史を襲う予定だからな」 「………僕……君に襲われるのですか?」 「そう。大人しく襲われてくれ! 大丈夫、お前を犯す訳じゃないからな」 野坂はそう言いクスッと笑った 「心配してませんよ 君になら何をされても僕は受け入れられます」 脇坂はそう言いコテージの部屋へと入り、寝室へと野坂を連れて逝った 寝室に入るなり野坂は、脇坂に執拗な接吻をして、脇坂を押し倒した 服のボタンを外し素肌に触ると…… くすぐったくて脇坂は身を捩った ベルトを外し、ジッパーを口に咥えた 唇でジッパーを咥えそのまま下ろした 手慣れてるよ……この子…… 手際の良さに脇坂は野坂を見ていた 前を寛げ、下着をズリ下ろし……性器を舐めた 先っぽを舐めながら陰嚢を揉んだ ズボンを足から抜き取ると、下着もズリ下ろした 玉を吸いながら……筋に舌を這わせる   男を泣かせ慣れた手管に……脇坂は…… 苦笑した 泣かせた男……多いんだろうな…… その癖自分はテクなしの木偶の坊だと謂う 「……知輝……イキそうです……」 脇坂が言うと野坂は、脇坂の肉棒の根元を握り締めた 「まだイカないで……」 内股を舐められ鳥肌が立つ 感じすぎて敏感になった肌が粟立つ…… 野坂は脇坂の上に乗ると…… お尻の穴に勃起した肉棒を擦り付けた 少しずつ挿れて……肉棒で解していた 「……ぁ……篤史……熱い……んっ……ん…ぅんんっ……」 少しずつ脇坂を飲み込み…… 脇坂は野坂の腸壁に翻弄された 「……篤史……吸って……」 野坂は自分の乳首を摘まむと脇坂を誘った 脇坂は野坂の乳首に吸い付いた ペロペロと舐めて吸うと、野坂の中が蠢いた 「篤史……もっと奥……」 催促され誘惑され狂わされる この妖しい生き物に絆されて夢中になる 「……あぁん……はぁっ……クぅ……」 背を撓らせて濡れた肌を晒し、妖艶に艶めく 「知輝……少し緩めて……食い千切る気ですか……」 締め付けられて……搦められる 纏わり付く腸壁に搦められ……身動き取れなくなる 「……篤史……突いて……激しくしても良いから……」 脇坂は思い切り野坂の中を掻き回した 貫いて……譲った 「……知輝……イッしょに……」 野坂の手を取り強く握り締めた 指が白くなるまで握り締め……イッた 野坂が脇坂に口吻た 「愛してる…篤史…」 甘美な囁きに溺れて次の予感に背を撓らせ……震えた 「僕も愛してます」 互いしか欲しない 互いしかわかない欲望 脇坂は野坂を抱き締めた 野坂も脇坂の背を抱き締めた 許されるなら…… この息が止まる瞬間まで…… この男といさせてください…… 野坂は脇坂の胸に顔を埋めた

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