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第6話
食後は魔の時間である。
要するに眠気との戦いだ。俺でも多少眠くなる時間帯なのだからユキオは更に辛いだろう。案の定、頭がグラグラと揺れる様子が後ろからよく見えた。
どうせ起こしたところで寝るんだろうけど、本当によく眠る。
俺はユキオの分まで真面目に授業に取り組むことにした。
結局無事眠ることなく授業を終えた俺に対して、ユキオはしっかりばっちり眠っていた。
最後の授業では感想文を書くよう指示されたのだが、ユキオは用紙が回ってくるまで起きなかったらしい。前の席の奴が困ったように小さく名前を呼んでいるのが聞こえていた。
さて、授業を終えればあとはホームルームだけである。
しかしその前に俺にはやることが残されていた。さっきの感想文を集めて持ってくるよう先生に頼まれているのだ。
いつもなら日直がその役目を負うのだろうが、何故か今日は俺が当てられてしまった。
ボーっと前を向いていたので先生とばっちり目があったのがいけなかったのか。
とはいえ、学校では割とよくある光景だろう。
まぁ、それが終われば今度こそ学校から解放される。
今日は部活もないので俺の部屋でユキオとゲームでもしようという事になっているのだ。
さっさと先生のところに提出してこよう。
俺はプリントの束を持って立ち上がった。
「終わった終わった」
無事感想文を提出してきた俺は荷物取りに教室へと戻ってきた。
よーし、今度こそ帰れる!
鼻歌でも歌いそうな気分で教室の扉を開ける。
「おー、オツカレ」
声をかけてきたのは同じ柔道部のヤツらだった。
部活がないからか、同じ部活のメンバーで集まってなにやら話し込んでいたらしい。
「おー!お疲れさん!……あれ?ユキオ知らね?」
教室内にいたのは数名だけでその中に当のユキオが見当たらない。
俺の言葉でユキオの席を振り返った面々は首を傾げた。
「あー?さっきまでいたぞ。多分トイレじゃね?」
「そっか」
なら少し待っていよう。
自分の席へ戻ろうとメンバーの横を通り抜けようとするとその内の一人に阻まれた。
「なあなあ!」
「どしたー?」
「これ!タイガも読む?」
これってどれだ?
言われて初めて彼らが何か雑誌を回し読みしていたらしいことを知る。
何を読んでいるのかと視線を向ければばっちりと肌色ばかりのページが目に入った。
あぁ、なるほどな。
所謂ちょっと過激なグラビア雑誌というヤツだった。先生達に見つかれば没収物だろうに堂々と広げる辺り肝が座っている。
俺はというと、ついと眉をひそめながら首を横に振った。
「いらん。俺そーいうの興味ねー」
言った瞬間周りからは盛大なブーイングが飛んだ。
正直そういう雑誌は苦手だ。
勿論抜かないかと聞かれればまぁ抜く訳だがあまりそういった行為自体が好きではない。
むしろ苦手な部類だった。
「はぁー!?」
「付き合い悪りぃぞタイガ!」
「しらん。稽古なら付き合うぞ!」
「出たー、柔道バカ」
それぞれが好き勝手に言う中、一人が小声で囁く。
「ねー、マジでタイガそっちなの?」
なんだかワクワクしたような、落ち着かない様子に首をひねる。
「そっちってどっちよ?」
言っている意味がイマイチ分からない。
純粋に理解出来ない俺が聞き返すとそう返ってくるとは思わなかったのか、相手は言いにくそうにもごもごと言葉を濁す。
「だからぁー……」
それ自体は理解出来なかったが、ちらりとユキオの机がある方を見たことで何となく状況を察した。
要するに、ユキオとの仲を疑われているわけだ。
「違ぇーっての!」
「あー何、藤崎の話?」
「そ!」
思わずしかめっ面を返すが、それだけでユキオのことだと把握した面々が話に食いついてくる。
「あいつ顔だけは滅茶苦茶良いもんなぁ」
俺の彼女よか美人だもん、と付け足す。
わざわざ彼女を落として話すような内容じゃない。俺はそこでまた顔をしかめた。
彼らは同じ部活仲間として勿論大事だと思っているがそれはそれ、これはこれである。
そういう態度はあまり好きじゃない。
つーか比べるようなことして彼女に悪いと思わねーのかよ。
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