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第17話
いつもは澄ました顔が快感で歪んで目元はグズグズに蕩けていて――
「だぁあぁー!!!」
慌てて記憶を消し去ろうとするが上手くいかない。
熱い口の中の温度と真っ赤な舌を思い出す。
ユキオとのキスはめちゃくちゃ気持ちいい。
そのまま溶けてしまいそうで、ずっとそうしていたくなる。
好きなんだな、とその時ばかりは自分の気持ちを素直に認められた。
記憶の中の喘ぎ声と、昼間見たてらてらと光る口元が重なる。
「いやだからと言ってこれはどうなんだ……」
思わず手のひらで顔を覆う。
男の好きと性欲は一致しているとはいえ、こんな分かりやすく反応する愚息が憎い。
――どうしようめっちゃ勃ってるんですけど!
ここまで数日間誤魔化しに誤魔化してきたツケが回ってきたのか、どんなに萎えそうなことを考えて見ても一向に治まらない。
むしろ妄想は酷くなるばかりで、熱い舌の感触を想像してしまう。
――いやいやいや!ダメだろう!
ブンブンと首を振るものの、ユキオの幻影は消えていかない。
今朝起こしに行った時のねっとりと自分の唇を舐める仕草を思い出してカッと身体が熱を持った。
――あー、もー無理かも。
そっとスウェットの隙間から手を入れ、兆し始めているそれに触れる。
既に濡れ始めているのは我慢し過ぎたせいだろうか。
手を上下させるとクチクチと卑猥な音を立てた。
脳裏に浮かぶのはあの抜き合いの時に見たユキオの白く長い指だ。
あの節くれもない細い指が液に濡れて絡み付く様は物凄くいやらしかった。
『……ァ、あ゛……っ!たぃ、が……っ!』
あの懇願するような震えた声を思い出すと思わず息が上がる。
自慰自体はそこまで気持ち良いというでは無い。いつもと同じ筈なのに興奮度が全く違う。
ユキオは裏筋が好きだったなと思うとついそこばかり責めてしまう。
そのうち妄想は一人歩きして自慰しているはずが触れているのはユキオだと錯覚していく。
乱れていくユキオの姿を想像して擦るスピードが上がった。
『あ……!あ゛ぁ……っ!』
もう、そうなったら頭の中はユキオのことでいっぱいだ。
抜き合い以上の快感を得たら、あの顔がどんな風に乱れるのか見てみたい。
ユキオの中にねじ込みたい。
揺すって喘がせたら満足出来るだろうか。
『あ……っ、あ゛……たいがぁ……ぁあ゛――っ!!』
「――は……っ、きお、ゆきお……っ!」
熱が解放され、ハアハアと肩で息をしながらも脳内は急速に冷めていく。
あー、これが賢者タイムってやつかと思いながら胃が痛くなるような罪悪感に駆られていた。
「…………最低だ」
俺は殆ど眠ることが出来ないまま、また朝を迎えた。
あぁ……日差しが眩しい。
もう最近寝不足が板についてきたな。頭痛がするのも割と通常運転になりつつある。
あまり嬉しくない話だ。
いい加減そろそろこの寝不足から脱したい所だがどうにも出来ないままかれこれ2週間以上が経っている。
だって普通に考えて幼馴染みで抜くってアウトだろう……!
しかも恋人にはならないと言ったそばからのこれだ。
手のひら返しにも程がある。
しかももうここまで来てしまえば言い訳のしようがない。
自身の気持ちを誤魔化すのが難しい。
そして最近は寝れない時間を使って男同士のセックスの仕方まで検索し始めてしまった。
いや、参考。ただの参考だとなんだか分からない言い訳を繰り返しながらもじっくりばっちり読み込んだことはユキオには内緒である。
それでは飽き足らず、ローションやら何やら必要なものは色々あるらしいと知った俺は昨日はとうとう購入までしてしまった。
いや参考とか言ってたの誰だよ。
俺だよ……っ!!
参考ってか完全使う気満々じゃねーかと自分で自分にツッコミを入れたい。
それでも好奇心と言う名の期待を捨てきれなかった。
あぁもうユキオの顔見れない。
ただでさえ抜いてしまってからなかなか目を合わせられないと言うのにこんなんじゃ余計に見れない。
当のユキオはというと、何やらこちらも少しよそよそしいというかそわそわしている。
俺と一緒であまりこちらを見ようとしないような気がしたが、こっちもこっちで手一杯というか自身を誤魔化すのでいっぱいっぱいだったので知らないフリをした。
今日もまともにユキオの顔が見れていない。
俺は溜息を吐きながら大きく肩を落とした。
キョロキョロと教室の中を見回すがユキオの姿はない。
あぁ、そういえば昼の時に道場に行く日だと言っていた。
1人で帰るか、と重たいリュックを背負うと1人学校を後にする。
これからどうすればいいんだろうか。
何度も自身に問いかけた問答を飽きもせず続ける。
ユキオの顔が脳裏をよぎった。
うん、可愛い。
………………ダメだ。
確実に寝不足で頭が回ってない。
うんうんと唸っているうちに気がついたら見知った声が聞こえた。
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