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出来損ない_3

side Ω 瞼の裏に眩しさを感じて、微睡みから目を覚ました。 見慣れない天井と、朝を喜ぶ鳥の鳴き声。 「……ここって………」 起こした身体は少し気だるい。 見回した部屋はやっぱり見慣れない。 「……そっか、昨日……」 突然来た初めての発情期…… どうして良いのか分からなくて、気付いたら知らない男に襲われそうになって……それから……。 「――そうだ、アイツは…?」 人の気配がしない部屋の中。 忍び足でベッドを抜けて、ドアへと近付く。 耳を押し当てて様子を窺うも、何の音もしない。 ドアノブに手を掛けて、ゆっくりとそれを開いていく。 隙間から見えるのは大きなテレビとソファーの背凭れ。一般的なリビングの風景だ。 ……誰もいない? 警戒するような動きは解かず、そのまま部屋を抜け出してリビングを見渡した。 広い………。 少しずつ足を伸ばしてソファーへと近付くと、端から足の先が見えた。 もしかして、と更に慎重にソファーへ近付いて背凭れから前を覗くと、案の定男が一人しかめっ面で眠っていた。 見覚えのある顔。 昨日何だかんだと助けてくれた奴に間違いない。 まじまじと見るその顔は、恐ろしいぐらい整っている。 綺麗な顔……芸能人か……? さすがαなだけあるな………でも……。 「………出来損ないの、α……」 「――……何だ?」 「え、うわっ!?」 覗いていた男の目が開いて、鋭い眼光が俺を睨んだ。 「なっ……起きてたのかよ……」 「今の声で起きた。物音がすると眠れない質でな」 起き上がった男は首を回しながら、窓の方へと近付いていく。 「晴れたか。」 「あ、あのさ…アンタ昨日……」 「じゃあさっさと出ていけ」 「……え…………?」 「いつまでもここに居座られちゃ迷惑だ。身体も落ち着いたなら、さっさと出ていけ」 窓の外を眺めたまま、男の物言いは随分なものだ。 「た、確かに迷惑は掛けたけどそんな言い方しなくてもいいだろ」 「………………」 今度は無視かよ……せっかく礼の一つぐらい言ってやろうと思ったのに。 「……嫌だね」 「何?」 「アンタ、αだって言ったよな?」 男はようやく窓から俺の方へと視線を向けた。 「αなのに俺の発情期に流されなかった」 「……………」 「――俺の番になってよ」 一瞬眉尻を動かした男は、溜め息をついて俺の横を通り過ぎていく。 「馬鹿馬鹿しい。さっさと帰れ」 「嫌だね。大体連れてきたのはそっちだろ」 「助けてやったんだ、これ以上面倒を掛けるな」 「頼んだ覚えはないね」 「何だと?」 振り返った男は眉間にシワを寄せ、目を細めた。 「いいか、番なんてものはお前を苦しめるだけだ。それがどれだけ人生を狂わせるか理解もしていないくせに、簡単に口にするなクソガキ」 「分かってるよ!そのぐらい分かってるよ……分かってるから言ってるんだ…」 「……分かったつもりになっているだけだ。だからこんな会ったばかりの男にそんな事が言えるんだ。帰れ」 男は俺が出てきた部屋のドアとは別のドアを開けてリビングから出ていった。 勢いよく閉まったドア、少し経つとその向こうからシャワーの音が聞こえてきた。 ………Ωである俺がこの先幸せな人生なんて歩めるものか。 所詮α共の慰めものになるだけだ。 性の本能には逆らえない。 そんな奴を何人も見てきた。 でもアイツは……… Ωの発情期を前にあんなに冷静でいられるはずがないのに……。 「アイツなら変えられるかもしれない……」

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