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出来損ない_9
side Ω
朝陽が昇りきる前、俺は静かに藍澤の家を出る。
朝刊配達の仕事に行く前に一度家へと戻るため、かなり早い時間だ。
明け方まで仕事をしているアイツを起こすのは忍びないと俺は俺なりに気を遣って、そーっと家を抜け出す。
それにしても欠伸が止まらない。
「ふぁ〜……うーん、やっぱり寝不足かな……」
アイツの言う通り、この一週間殆ど眠ってない。
最初の二、三日は様子を窺うのが目的だった。
何だかんだと一週間経ってしまったのは、正直意地の張り合いからだ。
「でもそろそろ限界かも……」
朝刊配達に、昼間は宅配便の仕事。
仕事が終わる夕方には藍澤の仕事先へと押し掛ける。
合間合間でちょこちょこ寝ているものの、そろそろ纏まった睡眠が取りたい。
「あ……でもアイツ、今日休みだっけ?」
意地の張り合いの果てに手に入れた藍澤のスケジュール。
「じゃあいっか……今日も押し掛けて寝かせてもらお」
グッと身体を伸ばして、徒歩圏内にある自分のアパートへと向かう。
六畳のワンルーム、風呂トイレ付き。
藍澤の部屋と比べれば貧相なもんだけど、稼ぎの少ない俺には十分すぎる部屋だ。
外見はボロいけど中は常に清潔にしているし、大家さんも優しいお爺ちゃんだ。文句なんてない。
十数分ほど歩いて、慣れ親しんだアパートへと帰宅。
仕事までには少し時間があることを確認して、部屋の隅に折り畳まれた布団へと凭れた。
一呼吸おくと、先日の発情期の記憶が頭を掠めた。
26年……生きてきて、初めての発情期だった………。
全身でαを求める……あれが、Ωの本能……。
「…俺本当にΩだったんだな……」
誰に届くでもない呟きは空気に溶けて、俺は自嘲気味に笑った。
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