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出来損ない_10

自分の第二の性を知ったのは第二次性徴期に入る中学生の時。入学直後に全員が受ける性診断での事だった。 白い紙に書かれた無機質な文字の羅列によって、俺の将来は真っ黒に塗り潰された。 母は泣き崩れ、父は何も言わなかった。 唯一救いだったのは親友、永岡 郁弥(ながおか いくや)が同じΩ性だったこと。 「僕達劣等種なんだね」と寂しそうに笑った顔を今でも覚えている。そんな郁弥に「気にすることなんてない」と笑い掛けたことも。 あの頃の俺は何も分かってなかった。 Ωだから何なのだと周りの哀れむ視線に腹を立てていた。 「………郁弥」 Ωの悲しき本質を垣間見たのは、郁弥に訪れた発情期。 怖かった。 誘発されるαも、まるで別人のように泣きじゃくりながら喘ぐ郁弥も、それから何も出来なかった自分自身も……全てが怖かった。 楽しかった思い出もあるはずなのに、脳裏に浮かぶのはあの時のことばかりで…… ずっと、ずっと発情期なんて来なければ良いと、そう思っていたのに…。 「……所詮、Ωか」 俺もあの時の郁弥と同じ顔をして、αに抱かれることを悦ぶのか?喘ぎ泣きじゃくるんだろうか? 嫌だ。 「そんなのは、嫌だ………。αの慰めものになんてなって堪るか……」 だから絶対、アイツの番になってやるんだ。 不能アルファ、俺が唯一手に入れられる自由はアイツしかいない。 自然と手を握り締めていたことに、スマホのアラームで気が付く。掌には爪痕がくっきりと浮かんでいた。 仕事の時間だ。 着替えを済ませて、部屋を出る。 また一つ、欠伸を溢した。

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