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出来損ない_12
まあ、俺が気にしたって仕方ないか。
すっかり人気が無くなった廊下で藍澤の部屋のインターフォンを鳴らす。
一度の呼び鈴では部屋の主は顔を出さない。
それにも慣れっこで、続けて二回呼び鈴を鳴らした。
少ししてカメラつきのインターフォンから盛大な舌打ちが聞こえてきて、無言で切れた後は部屋の鍵が回る音がする。
俺は勝ち誇った気分でドアノブを回した。
「本当にしつこい奴だな、お前は。毎日毎日……」
「でも何だかんだ部屋入れてくれるじゃん」
「どっかの馬鹿が開けるまでインターフォン鳴らし続けるからだ」
「俺の粘り勝ちーぃ」
ピースサインを見せつけてやれば、藍澤はこめかみを押さえてリビングへと向かっていく。
その背中を追っていくと、藍澤が肩越しに振り向き、怪訝そうにこちらを窺う。
「何だ、その袋?」
「あ、これね。カレーの材料!」
「………まさかここで作る気じゃないだろうな?」
「作るってか、作ってもらう。はい」
スーパーの袋を無理矢理押し付けて、俺はソファーへと移動する。
「ふざけるな、何で俺が作らなきゃならないんだ」
「だってカレー食べたいし。アンタ、料理出来るって言ってたろ?俺が作っても良いけど……キッチンぐちゃぐちゃにするかもよ?」
挑発的に笑うと、苦虫を噛み潰したような表情が返ってきた。
「……よーく分かった。お前が疫病神だってことがな」
「材料代は払ってんじゃん」
文句を言いながらキッチンへ向かう背中に思いっきり舌を出す。
「仮にも惚れさせるとか言うなら、それなりの事しろってんだ」
「えー、何?期待した?」
「そう言うことを言ってるんじゃない」
呆れた溜め息は俺の悪戯心を擽る。
寛いでいたソファーから立ち上がり、キッチンに立つ藍澤へと近付いた。
「何だ?」
迷惑そうに睨んだ首もとに腕を回す。
「色仕掛けでもした方が良かった?」
「…………」
「ね、司?」
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