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出来損ない_13
名前を口にした瞬間、目に見えて藍澤の表情が変わった。
「つーかーさ?へへ、ビックリした?実はさっき昨日の男の人に会って――」
「――…ぶな」
「え……?」
「……名前で、呼ぶな」
瞬間、何が起こったのか分からなかった。
ガシャンっと大きな音を立てたのは恐らく食器棚で、俺の背中はそれに強く打ち付けたようだった。
状況を理解すれば痛みを伴ってくる。
「痛っ………」
両手を取られ、縫い付けるように手首を抑え込まれてしまえば、身動きが取れない。
「何すんだよ、いきなり!」
苛立ちを顕にして声を荒げたけれど、目の前の男はそれ以上の怒りを瞳に秘めていた。
ゾッとするほどのそれを見て、身の毛もよだつと言う言葉の意味を知った。
何だ、これ……背中がゾクゾクする……。
「あ……な、に………?なにっ……これ……」
背中を走った悪寒は全身に回りきると、同時に下腹部が熱を持ち始めた。
何で発情期は来たばっかなのに……これじゃ………。
「身体が疼くか?」
「な、に…これ…?」
「お前は今俺のフェロモンにあてられて、身体が発情期と同じ状態になってる」
「フェロ……モン……?」
「そうだ。αのフェロモンにはΩを誘発する作用がある。まあ、尤もα性の中でも出来る奴は限られているがな」
足が震えて力は入らないし、息も徐々に上がっていく。
「くそ……やめ、ろよ……!」
「言っても分からないようだから身体に教えてやる。俺が不能だろうが、お前の運命は変わらない。そのΩの性からは逃げられない」
腰が落ちていく……身体は押さえつけられた腕だけで支えられている状態だ。
「モノが勃たなくても、俺はお前を犯せる」
甘く痺れる匂いがした。
鼻を擽られ、まるで電気が流れたような刺激が脳に伝わる。
「あ………ぅあ…………っ……や、だ……」
下腹部に溜まった熱がじわじわと広がって、落とした視線の先では俺の昂りが布を押し上げていた。
「見てみろ。お前の本能はαのフェロモンを悦んでる」
「う……っ………だ、やだ……見んなよぉ……!」
嫌だ、嫌だと首を振ると、拘束されていた腕が突然離されて身体が床へ崩れ落ちていく。
「αである俺がΩであるお前の運命を変えるなんて出来やしない。さっさと帰れ」
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