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出来損ない_14

吐き捨てるように頭上から降ってきた言葉。 悔しさに唇を噛み締めた。 立ち去ろうとする足が視界の端に映って、伸ばした手で裾を掴んだ。 「ハァ……ハァ……っンタが、言ったんだ……」 「………………」 「αは、完璧じゃないって……ぅ……っ………αもβも、Ωも……同じ普通の人間だって……!」 「………………」 「……っから…だから、……俺はっ………」 掴んだ裾をこれでもかと握り締めた。 Ωだから可哀想、Ωだから不幸だ。周りはいつもそう言った。俺もそう思ってた。 初めてだったんだ。嬉しかったんだ。 同じ普通の人間だと言われたことが。 「ぅして……どうして……好きでっ……Ωに生まれたわけじゃないのに……」 「…………………」 「Ωだから、幸せを諦めろなんて……っ……あんまりだ………!」 「…………………」 鼻を擽っていた甘い香りが、ふと消え去った。 それから裾を掴んでいた手がやんわりと外される。 見れば藍澤がその場にしゃがみ込み、無表情で俺の顔を覗いていた。 何を言うでもなく、無言のまま藍澤の手が俺の身体を抱え起こす。 「え……うわっ!?」 膝の裏と脇に差し込まれた腕、横抱きにされた身体は何も告げられることなく運ばれる。 「ちょっ、何だよ!?離せ!」 「…………悪かった」 全然意味がないと分かりながらバタつかせていた手足は、藍澤の小さな謝罪で動きを止めた。 「……んだよ、それ」 「……………悪かった」 余計な言葉はなかった。 ただ静かな謝罪。顔を見ても無表情で、視線は前を向いたままこっちを見ようとしない。 足取りは風呂場に向かってるみたいだ。 「そのままじゃ帰るにも帰れないだろ」 そう示すのは依然として布を押し上げている俺の昂りのことだろう。 フェロモンが消えても身体は興奮したまま。 「アンタのせいだ……」 「……………悪かった」 それ以外言うことないのかよ、と胸元を小突いた。 返ってきた言葉は、変わらず「悪かった」だけだった。

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