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出来損ない_21
買い物から戻ると奏輔の姿はなくなっていた。
一先ずは胸を撫で下ろして静かにドアを開ける。
なるべく音を立てないようにキッチンへと荷物を置いて、寝室を覗くと、行きと同じように寝息を立てたままの七瀬がベッドに転がっていた。
中に入ることはせず、そのままキッチンに戻る。
カレーの食材を準備しながら、何をしているんだと幾度と自身に突っ込んだが、少なからず俺にも負は合ったと言い聞かせて手を進める。
食事はいつも一人だから、手軽に済ませるパンばかりだ。
料理なんていつ以来だろうか…。
案外腕は鈍っていないらしい。
玉ねぎ、人参、じゃがいも、鳥モモ肉、具材はシンプルに。
取り掛かって数十分後にはカレーの香りが鼻を擽った。
一口分を小皿に取って味見をする。
なかなか悪くない。
火を止めたところで寝室のドアが開いた。
「……んー……いい匂いする……」
眠たそうに目を擦りながら姿を見せた七瀬。
「…お腹すいた………」
「凄い食い意地だな……。座ってろ」
まだ寝惚け半分なのか俺の言葉に素直に従ってダイニングへと腰掛けた七瀬は、首をうつらうつらとさせている。
数分前に炊き上がった米を皿に盛って、出来立てのカレールーを掛ければ我ながら旨そうなカレーライスの出来上がりだ。
二人分のカレーライスをダイニングへと運んで席につく頃、ようやく七瀬も目が覚めてきたようで嬉しそうに目の前の皿を見つめていた。
「マジで作ってくれたんだ?優しいじゃん」
「材料を腐らせるのは勿体無いからな」
「照れ屋だなぁ…ツンデレ?」
「食わせないぞ?」
「あー、ごめんって。いただきます」
丁寧に両手を合わせた後、勢いよくスプーンを口へと運んで、その目を輝かせた。
「うまっ!!!!」
大袈裟なリアクションだと思う。
「これ作りたて?二日目のカレーみたいなコクあるんだけど!」
「残念だが出来立てほやほやだな」
「へぇ……な!なあ!今度はさ、一緒に作っていい?」
無邪気な提案に思わず動かしていたスプーンを止めた。
「え……ダメ?もしかして作り方企業秘密的な?」
「いや……お前、あんな事されてまだ俺の所に来る気か?」
見据えた先もまた動かしていたスプーンを止めて、俺を見た。
「来るよ。言ったじゃん、落とすって。俺を好きになってもらうって」
「………それはお前がαの慰めものになるのが嫌だからだろ。例え俺のモノが勃たなくても、慰めものに出来るって十分分かったんじゃないか?」
そうかも、と逸らした目が笑う。
「でもアンタは俺を慰めものにしようとした訳じゃない」
「………………」
「謝ってくれたのがその証拠だろ?」
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