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出来損ない_26
「よし、あと一件」
小さめの小包、これを配達すれば今日の業務は完了だ。
配達先へと向かいながら、今日は何のカクテルを飲もうかと言う考えでいっぱいだった。
運転すること二十分弱で目的の場所へと到着する。
「うーわ、めちゃくちゃ高ぇな………」
見上げるのは高層マンション。
藍澤の家もデカいけど、ここはそれ以上だな。
さぞ金持ちが住んでることだろうよ。
「えっと……702号室ね」
少しだけ浮き足立ちながらもマンションのエントランスへ入り、カメラつきの共用インターフォンに部屋番号を打ち込む。
呼び出し音のすぐ後には落ち着いた男性の声が聴こえてきた。
配達の主旨を伝えるとオートロックが解除され、エレベーターホールへと通される。
平日の昼間、稼働していなかったエレベーターはすぐに俺を七階フロアへと運んでくれた。
「702……702……あ、ここか」
下のエントランスよりも簡易的なインターフォンを押すと、少しして部屋のドアがゆっくりと開かれた。
「お届け物です」
「はい、ご苦労様で――あれ、君……」
「え?あ、アンタ確か……」
部屋の主は驚きに目を丸くしている。
その顔には見覚えがあった。
先日藍澤の部屋の前で会った男だ。
「この前の……藍澤の知り合いっぽい人じゃん」
「ぽいって……一応親友だと思ってるんだけどなぁ…」
「え!?アイツに親友なんて親しい間柄の人間がいるんだ……驚き。でもアンタのこと嫌ってたみたいだったけど」
「はは、痛いとこつくね」
頬を掻いた男にとりあえずと荷物を受け渡した。
「じゃ、ありがとうございましたーぁ」
「あ、待って、待って!」
「何?」
「君、司の友人なんだよね?」
そう言われると正直悩むところではある。
「うーん……どうなんだろ……」
「え、違うの?もしかして恋人、とか………?」
「いや、さしずめストーカーってところかな」
「………え!?」
「冗談だって」
まあ、藍澤はそう思ってるだろうから半分本当か。
「何だ、ビックリした」
ホッと胸を撫で下ろした様子を見て、つくづく思う。
「アンタ、騙されやすそう。間違っても壺とか買うなよ?」
「はは、良く言われる……。あのさ、少しだけ君と話がしたいんだ。今すぐが無理なら後日でも構わないから」
言わずとも藍澤の話がしたいんだと言うことは分かる。
「話なら本人とすれば良いだろ?」
「そうなんだけど……その、なかなか出来なくて……」
眉尻を下げた男は、寂しそうに笑った。
まあ、この前の感じだと完全拒否だったもんなぁ…。
「………いいよ、ちょうど仕事終わりだし」
「本当?ありがとう!」
「家、上がらせてもらっていい?」
「ああ、待って。近くに喫茶店があるんだ、そこでもいいかな?」
「え、うん……まあいいけど」
「君、Ωだろう?そう簡単にαの家に上がり込むものじゃないよ」
「嘘、アンタαなの?見えな!」
「はは、それも良く言われるよ」
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