27 / 152

出来損ない_27

平日だと言うのにそこそこ混んでる店内は、老若男女が談話を楽しんでいた。 「好きなもの頼んでいいよ」 と言う言葉に甘えてミルクコーヒーとティラミスを、男はブレンドティーを頼んだ。 「ええっと名前、訊いても?」 「七瀬 陽翔だよ、末松 奏輔さん」 「あれ…俺、名乗ったっけ?」 「いや荷物に書いてたから」 「あ、そっか」 恥ずかしそうに笑った末松さんはますますαには見えない。 何かこう………鈍そう……。 「七瀬くんは甘いの好きなんだね」 「うん、めちゃくちゃ甘党」 「司とは正反対だね」 「そ。ぶっちゃけ何もかも正反対なんだけどさ。でも……なんか変に落ち着くんだよな」 「ああ、何となく分かるよ。根は優しいからね、司は」 「良く知ってんだ、さすが自称親友」 「自称って…」と末松さんが苦笑いを浮かべると同時に注文した品がテーブルへと運ばれてきた。 「ここのティラミス美味しいって評判なんだよ」 そう言われると期待せざるを得ない。 意気揚々とティラミスを口へ。 「ん!旨っ!!」 とろけるようなマスカルポーネ、しっとりとした下生地、甘過ぎず後味はスッキリしている。 「これめちゃくちゃ美味しい!」 「良かった。そうだ、甘いものが好きなら司に苺のババロアお願いしてみるといいよ。絶品だから」 「え!藍澤ってお菓子も作れるんだ⁉今度頼もっと」 これは良いことを訊いたな。 アイツ絶対教えてくれなさそうだもん。 「で?」 「え?」 「アンタは俺に藍澤の何を訊きたいわけ?」 回りくどいのは無し、どうせ共通の話題なんてそれしかない。 「訊きたいこと……は特にないかな」 「はぁ?」 「でも聞いて欲しいことはある」 「聞くだけで良いの?」 「うん」 「ふーん……」 てっきり根掘り葉掘り問い質されるもんだと思ってたのにな。 紅茶を一口啜ってポツリポツリと語りだした言葉に耳を傾ける。 「俺と司はね、小学生の頃からの付き合いで小中高と同じ学校に通ってたんだ」 「幼馴染み?」 「そうだね。それからもう一人、俺達には幼馴染みが居た」

ともだちにシェアしよう!