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出来損ない_28

過去形なんだと言う言葉はあえて飲み込んだ。 「俺達はとても仲が良くてね。周りから羨ましがられることもあるぐらいだったんだ。俺はこんなだし、司も昔からあんな感じだからね……彼女の明るさにいつも引っ張られていたんだと思う」 ふーん、と気のない相槌を打ったけどもう一人の幼馴染みが女であることには驚きと興味が湧いた。 「美人さん?」 「……うん、とっても。高校の頃は文化祭のミスコンに選ばれてたかな」 少し頬を赤らめた末松さんから察するに好意を寄せていたんだと勝手に推測する。 「でも彼女、数年前に亡くなっていてね…。来週が命日なんだ」 何となく想定していた展開には何も言わない。 人が人を過去形で語るのなら、それは今はもう会えないと言うことで。 ある程度選択は絞られる。 「薄情って言われるかもしれないけど、気持ちに踏ん切りがつかなくてさ、ずっと墓参りに行けないままだったんだけど……今年こそは顔を見せようと思ってて――」 「――藍澤も一緒にって?」 「うん、まあ断られちゃったけどね」 「何でだろって訊いたら困る?」 半分ほど減ったティラミスをスプーンでつつきながら、頬杖をついて末松さんに問う。 相手は困った表情を見せて、小さく「そうだね」と呟いた。 「司は彼女が亡くなったのは自分のせいだって思ってる」 「なーんか、良くある展開っぽい」 「確かにね……。彼女の死は司だけのせいじゃない。俺にだって非があった。結局俺達は………運命に翻弄された。この第二の性に弄ばれたんだ」 運命…………。 「……その人ってΩだった?」 湯気が見えなくなったブレンドティーに手を掛けながら、末松さんは小さく頷いた。 「それってさ、俺がΩだから話したの?藍澤に近付くなって警告?」 空っぽになったティラミスの皿にスプーンを置いて、わざとらしく笑って見せた。 「話をしたのは君がΩだから。でも警告じゃない、むしろ逆さ。」

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