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出来損ない_29

俺の心中を察してか、ゆったりとした動きでブレンドティーを口へ流し込んでいく。 「嬉しかったんだ。司の近くにΩである君が居てくれて」 波打つブレンドティーを見つめながら、末松さんは慈しむように笑った。 頭では“彼女”を思い浮かべているんだろうな、きっと。 「……何で?」 「え?」 「アンタと藍澤の口振りからして会うのは久し振りだったんだろ?何で今更一緒に墓参りなんて言い出したの?」 「ああ、うん……。俺達はずっと同じところで立ち止まってたと思うんだ。でも俺はそろそろ前に進もうと思ってる。だから、司も………」 「ふーん……末松さんってさ、よくお節介って言われるでしょ?」 目を丸くした末松さんは、どうして分かったんだい?と首を傾げた。 「いやいや、分かるって」 「そんなに?はは、何か恥ずかしいな」 「まあ、でも俺は嫌いじゃないよ」 すっかり冷めたミルクコーヒーを飲み干して、ジーンズのポケットからスマホを取り出す。 「ね、連絡先交換しない?」 「え?うん、別に構わないけど……」 「アンタのこと気に入ったからさ、俺も協力してやるよ。って言っても出来ることなんて限られてるけどね」 「ううん、気持ちだけでも嬉しいよ!ありがとう。これ、俺の番号」 差し出されたスマホを受け取って番号交換を済ませた後、会計は任せてくれと言う末松さんに甘えて俺は先に店を出た。 外はすっかり日が落ちていて、思ったよりも時間が経っていたのだと知る。 今から帰ってシャワー浴びてってなると、藍澤のとこ行くの遅くなりそー……まあ、上がりまでに行ければいっか。 歩を進めながら昔の藍澤を想像してみた。 俺の前では仏頂面だけど、昔は笑ってたりしたのかな。 授業とかサボりそうだけど、案外真面目に受けてたりして。 末松さんとはどんな話をして、幼馴染みの“彼女”にはどんな気持ちを持っていたんだろうか。 どんな想像をしても、結局は想像で、本当のところは訊いてみないと分からない。 「分かんないと知りたくなるもんだよな、人間って」

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