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出来損ない_33

これは自分に言い聞かせ続けている言葉だ。 何年経とうと忘れないように。いつまでも、ずっと。 それから黙り込んだ静寂を破ったのは、七瀬の方だった。 「あー……うん。ぶっちゃけ全っ然話読めないんだけどさ、とりあえず分かったことは――」 「?」 何だ、と逸らしていた視線を七瀬へと向けた視界が伸びてきた腕で遮られ、それは首の後ろへと回される。 「おい、何する――」 「アンタはやっぱり思い込みが激しくて、自惚れ野郎だってことだな」 「はぁ?んだと、てか離れろ」 「でも、それってさ臆病の裏返しなんだと思うよ」 「…………………」 思わぬ単語が耳に届いて、力尽くで引き剥がそうとしていた手を止めてしまった。 臆病……?俺が………? 「俺には詳しい事情は分からないけど、アンタはずっと後悔して生きてきたんだな」 「………………」 「アンタの運命ってやつにも、抱いたΩ達にも……だから俺に触れる藍澤の手はいつも優しかったんだ」 「………やめろ、離せ」 「やっぱりさ、アンタって悪い奴じゃないと思うよ」 いつだったか聞いた台詞だ。 「俺がアンタのフェロモンにあてられた時さ、ほら……シてくれたろ?アンタは俺の様子を気遣いながら、反応見て安堵してた」 「それは……」 「気付かない振りしたけど、本当は知ってた。俺の様子を探るアンタの手が少しだけ震えてたこと。Ωである俺を傷付けることが怖かったんだよな?」 「………違う。そんなんじゃない。お前こそ自惚れてるんじゃないのか?俺は……」 いい加減にしろと手に力を込めれば、抵抗するように俺の方へと体重を寄せてくる。 いくら細身とは言え成人男性の体重を一気に掛けられれば、足元がふらつく。 「危ないだろ」 「………アンタは優しいよ。少なくとも俺にとっては。じゃなかったら、襲われてる俺を助けたりなんかしないじゃん」

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