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出来損ない_37
「薬どれがいいか分かんなくて何か良さげなの買ったから好きなだけ飲んでいいぜ」
ゼリーを食い終えた俺に向けて広げられた袋の中に散乱する薬の山を見て、溜め息をつかない奴はいない。
「もういい……何でもいいから寄越せ」
「おっけー!」
七瀬なりの吟味の結果小さいカプセル型の薬が二粒手渡され、それを口に流し込んだ。
「え!?水は!?」
「なくても飲める」
俺には無理だと言う七瀬を横目に俺はベッドへと潜り込む。
「俺の献身的な看病どうだった?ときめいた?」
「……どの辺が献身的なんだか……薬と食い物買ってきただけだろ。馬鹿げたこと訊くなら手作り粥でも作ってみろ」
「うっ………そ、そのぐらいなら作れるし……」
「ほーう………」
向けた疑いの眼差しを受け流すように視線を泳がせ、ベッドに落ちていたタオルを手に慌てて部屋を出ていった。
すぐに戻ってきたその手には濡らし直したタオルが握られていて、俺の額へ乗せられる。
「さっきよりキツく絞ったぞ」
どうだとふんぞり返る馬鹿には、空返事をして俺は瞼を下ろした。
「……お前、何で来た?」
眠る前にそれだけは訊いておこうと口だけを動かす。
「昨日の今日で……正直来ないと思ってた」
「………手、振り払われるのって結構傷付くんだな」
問いと答えが合ってない気がするのも熱のせいか?
「だから何で来たんだって訊いて――」
「俺もさ、同じ事をしたことあるんだ。しかも親友の手を振り払っちゃったんだよ。あの時、凄い傷付いた顔してた。こんな気持ちだったのかなって何か身に沁みた」
「……………………」
「だからする方の気持ちも分かるんだ。俺は怖くてあの手を払った。………アンタも何か怖かったのかなって思って……」
きっとバカ真面目な面が俺を見下げているんだろうが、生憎と重たい瞼は持ち上がらない。
「…俺は……な、にも……」
「嘘つき。……おやすみ、治ったらアンタのこともっと教えてよ。好きになってもらうには、まず藍澤のこと知らなきゃなって思うから」
そんな言葉が遠く聞こえて、意識は深い深い微睡みへと沈んでいった。
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