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出来損ない_38

side Ω 郁弥は助けを求めていたはずなのに、俺は伸ばされた手が怖くて怖くて……まるでΩの運命に引き摺られていってしまうのではと、ただ恐怖して……無情にも払い除けてしまったんだ。 「………っ……」 眠りについた藍澤はずっと魘されたまま。 熱が高いのか拭いても拭いても汗が滲んでくる。 「………頑張れ」 投げ出された手を取れば、その熱の高さが分かる。 ……辛いだろうな、これ。 「………――た」 「え?」 「わ、るか……った……」 意識はない。 たどたどしい寝言は、ひたすら謝罪を繰り返した。 「………ずっと苦しんでるんだね、アンタは」 夢に見るほど想っていたんだ……。 ぎゅっと胸が苦しくなるのは同情してしまうからだろうか。 「悪い……っ……悪かっ……た……」 浅い呼吸の合間から、溢れ落ちる言葉は想い人には届かない。それが悲しくて、切なくて………きっとこれは同情なんだ。 流れ伝う汗に混じって目尻を微かに濡らす水滴。 泣いてる……? それに触れようと手を伸ばした瞬間、ドクッと心臓が大きく跳ねた。 あ………これって………。 そう思う頃には既に身体は火照り始めていて、慌てて藍澤の手を離した。 知ってる、これ、ダメなやつだ……。 「あっつ………」 速くなる鼓動と上がっていく体温。 風邪が移った訳じゃない。これは………。 「αのフェロモン…………」 藍澤は依然として寝たままのはず……でもこの感覚は間違いない。あの時と同じだ。 熱のせいで制御出来てないんだ……。 このままじゃダメだと部屋を出ようとして駆け出したが、一歩遅く、ドアノブに手が掛かる直前で腰が抜けて床へとへたり込んでしまう。 「あ……どうしよ………」 力入んない……。 立ち上がろうとしても全然ダメで……下腹部には熱が溜まっていく。 下ろした視界には布を押し上げる昂りが見えて息を飲んだ。 気恥ずかしくて握り込めば脈打ちが伝わる。 「くそ……っ……」 これ、もう収まんないやつじゃん……。

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