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出来損ない_39
唇を噛み締めても熱は溜まる一方で、吐き出したいという欲求が高まっていく。
一回……一回だけ…………そしたら収まるはずだから。
これ以上力が抜けきる前に出してスッキリしよう。
チラリと窺い見た藍澤は変わらず苦しそうにベッドに横たわっていて、起きる様子はない。
「〜〜ッ……ごめん」
フェロモンのせいとは言え、病人の側で自慰に耽ることに罪悪感を感じて小さく謝った。
そろそろと伸ばした手でベルトを外し、前を寛げる。
まだ触れていないそこは形を変えて興奮を見せていた。
軽く握り込むだけで身体は悦び、無意識に手は上下し始める。
「ぅ………ぁ………」
あっという間に濡れ滴った昂りは手の滑りを良くしていく。
もともと自慰行為自体頻繁にする方じゃない。
気持ち良さよりも、郁弥が犯されるあの光景が脳裏に浮かんで気持ち悪くなるから。
それなのに、今は………ただ達したいと思うだけで。
手が止められない。
「……っこ、れ……だめ……ぁ…」
気持ちいい……気持ちいい……気持ちいい………でも足りない……。
身体はもっと気持ちいいことを知ってる……。
あの手が、忘れられない。
大きくて、熱くて、優しい、藍澤の手。
ベッドに投げ出されたそれを見て思わず喉を鳴らす。
「……はっ……だめだろ、それは……」
飛びそうになる理性を保とうと頭を振りかぶると、仄かに甘い香りが鼻を擽った。
なに、これ………?
深く吸えば香りはより強く、そして頭がボーッとする。
これってもしかして藍澤のフェロモンの匂い……?
嘘……αのフェロモンも匂い、すんの……?
「……………なぁ…んだ、アンタの方が……花の匂い、じゃん……」
一段と濃くなったフェロモンのせいか腹の奥が切ない。後ろの窄まりがじわじわと濡れ始めてきているのも分かる。
「……違う…………俺は違う…………っ…」
それでも知らない振りをして前の昂りを扱き続けた。
「……欲しくなんか、ないっ………」
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