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出来損ない_40
本能と理性が分離していく。
ダメなのに欲しくて堪らない。
前を扱く手は無意識のうちに記憶に残る藍澤の手の動きを真似ていた。
同じようにしてるのに満たされない。
もどかしくて、出したくて、目には生理的な涙が浮かぶ。
「……ふ……っ……ぁ……」
部屋には昂りを扱く水音と自身の詰めた息、それから藍澤の呻くような吐息だけが響いた。
耳は藍澤の息遣いを拾い上げて、それに呼応するように昂りは脈を打つ。
「……っ…だ……や、だ……こんな、気持ちいい……の…や……っぁ」
馬鹿みたいだと笑う自分がいる。
藍澤に泣き縋りたい自分がいる。
俺は今、どんな表情 をしているんだろう……?
「ぅあ……だめ、イキそ…っ…」
手の欲望は爆ぜたいと限界を訴えて、ドクンと跳ねた。自然と揺れる腰を止める術はない。
「あ……ッ……」
「――……っ……紗奈…」
「え………」
吐き出した欲望と同時に耳に届いた単語は、急激に俺の心臓を締め付けた。
今のって……名前………?
「紗奈………ごめ……っ…な…」
もちろん藍澤が目覚める気配なんてない。
手の上の精液が冷めていくように、身体もまた冷たくなる。
「はは、何ショック受けてんだろ、俺」
別に藍澤が誰を想おうと正直構わない。
心が欲しい訳じゃない。形だけ好きだと思わせればいいんだ。
俺はただ、番になれればいいだけなんだから。
「ショック受けたことにショックだわ。馬鹿みてーじゃん…マジで」
手を汚したこの欲が誰を想って吐き出したのかなんて、水に流してしまえばきっと誰も気付かずに済むんだ。
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