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出来損ない_42

裏口から姿を見せた藍澤はそれはそれはご機嫌が悪い。 「藍澤さーぁん?そんなに怖い顔しないで。愛しの七瀬くんはここに居るよぉ?」 「………殴られたいか?」 ギロリと鋭い眼光が俺を睨み付けてくるので冗談だと笑って返す。 「全く照れ屋なんだから…」 「何か言ったか?」 「なーんにも言ってませーん。あの長谷さん?だっけ?気さくでいい人だね。仲良いの?」 スタスタと歩いていく背中を追い掛けながら世間話程度に話題に上げる。 「ただの同僚だ。特別仲が良い訳でも悪い訳でもない」 「へぇー。仮面しててあんまりよく分かんなかったけど、絶対イケメンだと思うんだよなぁ、アンタに負けず劣らず。藍澤は素顔見たことあるんだろ?どんな感じ?」 僅かな思案の末、返ってきた言葉は普通だと言う。 「普通って……まあ、そもそもアンタの顔面偏差値が高いしな……」 「顔面偏差値……?………前から訊きたかったんだが…」 藍澤からの問い掛けなんて珍しいなと隣を見上げると、思ったよりも近い距離で視線が交わった。 「お前、そんなに俺の顔が好みなのか?」 「…………え?」 覗き込まれる真顔を前に俺は固まる。 いや……いやいやいや、俺が言ってるのは世間一般的にイケメンだって事であって、決して俺の好みって訳では……。 ただ男の俺から見ても格好良いって思えるのは羨ましいし…待てよ、でもそもそも好みじゃなかったら格好良いとか思わないのか?てことは、つまり……それは藍澤の顔が好みだってことに……なる、のか? 「………おい、聞いてるか?」 気付けば真顔だった表情は怪訝な顔付きになり、眉間には皺が寄っている。 「ち、違う………けど、好みなのかも……?」 「はぁ?何だ、それ」 「いや正直、素直に言えばすげー顔は良いって思うんだよ。これって好みって事?」 「俺が知るか」 「あー!でも素直に好みって言うのは何か癪に障る!から好みじゃない!」 一人心地に頷いてぶちかました宣言を呆けた顔で聞き届けた藍澤は、小刻みに肩を震わせた。 「ふっ、くく……何だ、それ。訳分かんねぇな、お前」 「え、何それ。めっちゃ笑うじゃん。てか初めて見た。そんな笑えんだ…」 「……笑ってない。気のせいだ」 「いやいやいや!めちゃくちゃ笑ってたから!てか俺の想像より遥かに自然に笑ってたわ…」 今度は俺の方が可笑しくなってきて、「ああ、でも…」と笑いながら言葉を溢す。 「アンタの笑った顔は、素直に好みって言ってもいいかな」

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