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出来損ない_43
姿見をこんなに睨んだのは買って以来初めてかもしれない。
「ちょっと子供っぽいかな…」
裏返しになったパーカーのフードを直しながら映る自分を見る。
約束のデート当日となった今日。
一緒に行けばいいだろうと言う藍澤を振り切って一度帰宅した俺は、服装に悩んでいた。
デートと言えば待ち合わせってのが定番なイメージだし。
何だかんだと服装に悩むぐらいには楽しみにしてる自分。何か良いな、こういうの。
すげーワクワクする。
それに………。
とスマホを取り出してメッセージを確認した。
今日のデートにはいくつか目的がある。
目を通したメッセージには了解、と短く返しスマホをパーカーのポケットに仕舞い込んだ。
よしっと鏡の前の自分をもう一度一瞥して、家を出る。
どこでもいいと言うので待ち合わせは俺の最寄り駅にした。
徒歩十数分の最寄りは平日の昼間だからか閑散としている。辺りを見回したけど藍澤の姿はない。
指定時間にはまだあるしな……。
見つけた自販機でココアを買って、ベンチに腰掛けた。
まあそのうち来るだろうと思ってたけど、藍澤の姿は時刻を過ぎても現れなかった。
まさか……すっぽかすつもり…とか…?
十分に有り得る。
素直に待ち合わせ時間とか場所とかに頷いてたから、何の心配もしてなかったけど考えてみれば藍澤には何の利点もない。
この前の看病をした礼だと言ったって、藍澤が必ずしも俺に恩義を感じてる訳じゃない。
楽しみに高揚していた気分が急降下していく。
「……あーあ、そりゃそうか………」
空っぽになったココアの缶に視線を落として帰ろうと独りでに呟いた瞬間、視界が陰り、肩に重みがのし掛かった。
「――え、何!?」
驚きに顔を上げる。両肩に伸ばされた手と呼吸を荒げた藍澤が視界に飛び込んできて、瞬きを数回繰り返した。
「え、あ、藍澤?」
「ハァ……ハァ……あー、くそ…しんど……」
文句を吐き出したかと思えば、空いていた俺の隣にドカッと腰を下ろした。
「え、何、走ったの?」
「まあ……時間過ぎてたしな」
「あ、そう……」
「何だ、怒ってるのか?」
「え、全然!てか来ないかと思ってた…」
だったら昨日断ってる、と呆れたように言われた。
「何で遅れたの?寝坊?」
「いや……割りと早めに家は出た」
「じゃあ何で?」
「………急行乗ったらこの駅停まらなかったんだよ」
「…………ふっ、はははははは、嘘!何その可愛い理由!」
「可愛くないし、笑いすぎだ馬鹿」
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