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出来損ない_45

試着室のカーテンを開いて、待ち構えていた仏頂面に腕を通したシャツを見せる。 「ど?似合う?」 店先に並んでいた藍澤が着ているものと似たようなシャツを試着してみた。 仏頂面はまじまじと俺を一瞥し、「全然似合ってない」と遠慮の無い言葉を寄越してくる。 「もうちょっとオブラートに包んでよ…」 「似合ってないものは似合ってない。お前童顔だから服が浮いてる」 「うっ……人が気にしてることを……」 童顔、つまり子供っぽい顔つきが実はコンプレックスだったりする。 試着室に飾られた鏡で自分と睨めっこ。 「そんなに童顔かなぁ?」 「どう見ても。最初高校生かと思った」 「げっ……マジ?結構傷付くわ……」 肩を落として落胆すると、鏡越しの藍澤は呆れ眼に俺を見る。 「別に老けて見えてるわけじゃないんだからいいだろ」 「いやいやこれでも立派な成人男性だぜ?そこは格好良いスマートな大人の男に憧れるじゃん?」 「…………そうか?」 心底分からないと顔に書いてある無駄なイケメンには分かるまい。 深い深い溜め息をついてカーテンを閉ざし、名残惜しくも着替えを済ませた。 それから二、三店舗店を回って先に根を上げたのは藍澤の方だった。 「おい、まだ見るのか?」 げんなりとした藍澤に一息入れるかと提案する。 「どの店にする?」 「座れるなら何処でもいい」 「だーめ、選んで。今日はとことん藍澤の好みを暴いてやる」 またそれか、と口走りながらも視線は辺りを見回して店の目星を付け始めた。 「……ん」 と顎で示された店は大きいパンケーキの看板を立て掛けたカフェ。 「おお!いいじゃん!」 店頭に駆け寄った俺はメニューが書かれた看板に釘付けだ。 その後をゆったりと追ってきた藍澤は看板には目もくれず、流れるように入店していく。 「あ、待って待って!」 藍澤が開いた扉に体を滑り込ませて、迎えてくれた愛想のいい店員にテーブル席を案内される。 置かれていたメニュー表と格闘すること数分…。 「よし、決まった!」 掲げていたメニュー表をテーブルへと置いたのを合図に、藍澤はベルに手を伸ばす。 パンケーキとフルーツティーを注文する俺に続いて、藍澤は珈琲を一つ頼んだ。 「パンケーキ良かったの?」 「俺は甘党じゃない」 「あ、そっか。え、でもじゃあ何でここ選んだの?」 てっきりあのデカいパンケーキの看板に惹かれたのだと思ったのに。 「あ!もしかして甘党の俺を配慮し――」 「珈琲飲めれば何処でも良かった」 「ですよねー」

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