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出来損ない_50

押し退けられた手をすり抜けて、距離を詰め寄る。 「どんなところが好きだった?」 その問いには直ぐに答えず、横顔は思案してるようだった。 「………分からない。ずっと一緒にいて、好きでいることが当たり前だった」 「幼馴染み?」 「まあな」 脳裏には末松さんの話と、藍澤がうわ言のように呟いていた“紗奈”と言う名前が浮かんだ。 なーんだ、やっぱそう言うことか。 つまりは、幼馴染みの紗奈さんが藍澤の想い人だったわけだ。 んでもって末松さんの様子から察するに彼も紗奈さんが好き………。ドロドロ三角関係ってか? 「うーわ……」 「何だ?」 「いやいや、何でも」 「………ああ、あったな。一つだけお前との共通点」 「え、マジ?どこ?」 まさか同じバース性だとか言うんじゃ……。 「ふっ、馬鹿」 「………え?」 「馬鹿さ加減が似てる」 「………はぁ〜〜!?何それ、ムカつく」 ガランとした車内にやたらと声が響いて藍澤は顔をしかめた。 「うるさい」 「アンタが失礼だからじゃん」 数人の視線を感じて、一層声を潜めながら隣を肘で小突いた。 そうこうしている内に、電車は目的の駅へと到着する。 「着いた、着いた。降りるよ」 「………ここ」 「いいから、早く」 早速何かに勘づいた藍澤の手を取り、扉が閉まる寸前でホームへと降り立った。 「お前どういうつもりだ?」 「なーんのことでしょう?」 惚けてみるも、誤魔化すことは出来ないらしい。 「帰る」 「だーめ。まだデート中だろ。行き先を決める権利は俺にあるはずだけど?」 逃がさないと掴んでいた手に更に力を込めた。 「逃げるなよ、藍澤。怖がってないって言うなら、ここから逃げるな」

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