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出来損ない_51

細められた目が冷たく俺を射抜く。 正直目を逸らしたいぐらい怖いけど、ここで引くわけにはいかない。 誰も居なくなった駅のホームで、音のない時間が過ぎていく。ほんの数分、俺にとっては永遠にも似た時間。 先に目を逸らしたのは藍澤だ。 「……やっぱり馬鹿だ」 掴んだ手も脱力していくのが分かる。 「そして阿保だな」 「なんか増えてっし」 逃げないから離せと言うので、大人しく手を離す。 すっかりと肩を落とした藍澤の足は改札へと向かった。 小さな駅の改札を抜けて俺は藍澤を先導。 無言の後ろは怖かったけど、足音はちゃんと聞こえてる。 スマホに映る地図を頼りに向かうのは藍澤が察してる通り墓地。“紗奈さん”が眠る場所。 「うーんと……こっち、いやこっちかな」 「………馬鹿、こっちだ」 大きな手が頭を掴んで軌道修正する雑さだけど、ちょっと嬉しかったりする自分がいる。 …………いや、今のはちょっと乙女思考過ぎ。 「あ、この先だ……ってすげー階段なんですけど」 目の前に聳え立つ石段は先を見通す程にげんなりする。 「………アイツ高いとこ好きだったからな」 ボソッと独り言のような呟きだけど、ハッキリと耳に届いて……慈しむような声音は今まで聴いたどんな声よりも柔らかで、何だか心臓が痛かった。 「どうした?止めるか?」 「や、止めない!行く!」 隙あらば帰ろうと言う魂胆だろうが、そうはいかない。 意気込んで足を踏み入れる隣では、やれやれと肩を竦めて仕方なしに踏み入れる足。 それでも歩調は一緒だった。 正直、自分でも大きなお世話だと思う。 何でこんなことしてんだろ。馬鹿みたいだ。 人の事情に首突っ込んで、自分のことだけでも精一杯のくせに。 でもしょうがない。 面倒だとか、馬鹿馬鹿しいとか、そんな理性がどうでもよくなるぐらい、知りたいと思ってしまったんだ。 もっと笑ってほしいと、思ってしまったんだ。

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