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出来損ない_53
「……そうか…………お前が…」
「司……」
「ふっ、はは、そうか………何だ、そうか」
目を覆った藍澤は、何を思っているんだろう。
「………馬鹿は、俺か」
弧を描いた口元が弱々しく吐き捨てて、藍澤の足はこちらへと歩みを始める。
「あ、藍澤っ!」
通り過ぎていこうとする腕を取った。
「…何だ?」
俺を見た顔はいつもの不機嫌そうな表情で、ホッと胸を撫で下ろした。
「泣いてんのかと思ったから…」
「何で俺が泣くんだ。むしろ怒ってるんだが?」
「そ、そりゃそっか………」
言われて離した手で頬を掻いた。
それから更に歩を進めた藍澤は背中越しにこちらを見やる。
「早くしろ、行くんだろ……墓参り」
隣に並んだ末松さんと思わず目を合わせて、笑い合う。
「――行く!」
声高らかに返事をした俺にいつもの調子で「うるさい」と文句が返ってきた。
程なくして見えてきた墓地、前を歩く藍澤は一つの墓石の前で足を止めた。
「…………久しぶりだな」
懐かしむ言葉に「そうだね」と末松さんが応える。
それを合図に二人は手を合わせ、目を閉じた。
俺も倣うように目を閉じた。
って言っても俺面識ないし、事情も詳しくないからなぁ………。
初めまして、紗奈さん。
藍澤の友人………ではないか、うーん……番を狙ってるストーカーです。………なんつー間抜けな自己紹介……。
自らツッコミを入れつつ、頃合いを見て目を開ける。
末松さんも同じように目を開けて、俺にありがとうと告げた。
藍澤は未だ目を瞑ったまま、微動だにしない。
「………あのさ、詳しい話知りたいって言ったらダメかな?」
末松さんは正しく微笑むと「そうだね」と口を開く。
「君になら話してもいいかな。ねえ、司?」
「………勝手にしろ」
藍澤は依然として目を開けることはない。
「じゃあ勝手に話そう、思い出話をね」
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