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出来損ない_54

俺達の関係は以前話したよね?と問われ、頷きを返した。 「俺達はずっと仲の良い幼馴染みだった。中学生のときに診断されたバース性で彼女……紗奈だけがΩだと分かっても俺達の関係が変わることはなかった。それは彼女の振る舞いがΩだと感じさせなかったからなのかもしれない」 末松さんの視線は墓石の方へと移って、目を細めた。 「高校に入学する頃、少しだけ関係性に変化があった。俺が紗奈に恋心を抱いたんだ。正直、望み薄だと思ってた。紗奈は司の事が好きだと思っていたからね。司の心境は訊いたことなかったけれど、二人は両想いだと思ってた」 チラッと藍澤に視線を寄越したけれど反応は何もない。 「だからダメ元で告白したんだ。振られて諦めて、二人を応援しようって。でも紗奈の返事は予想を裏切ってイエスだった。驚きすぎてその場から走り去って司に泣きついちゃったよ。紗奈には後で怒られたし」 肩を竦めた末松さんに思わず頬が緩んだ。 「紗奈と付き合い始めて、司との距離感が変わってしまうと不安だったけど、そんな事もなくて。俺は凄く幸せな時間だと思ってた。…………あの運命を知るまではね」 陰る表情。分かってる、この話の最後は決して笑えるものではないんだって。 「高校二年の夏、紗奈に初めての発情期が訪れた」 発情期…………嫌な言葉の響きだな………。 「いつも通りに三人で過ごしていた放課後、居合わせたのはもちろん俺と司だった。噂に聞いていたΩの発情期を目の当たりにするのは、これが初めてだった。理性を持っていかれそうになっても、俺は何とか意識を保ったけれど………司は違った。同じαだってのに、司は誰の声も聞かず暴走した」 「………それって…………」 「そう。二人は運命の番ってやつだった。二人ともはっきり口にはしなかったけど、俺はすぐに分かったよ」 いつの間にか祈りを終えていた藍澤は真っ直ぐ墓石を見つめ、口を開こうとはしない。 「だから俺は身を引こうとした。けれど紗奈は絶対に嫌だと言って、司も紗奈を愛さないと言った。そして俺はそれに甘えた。頭で分かってはいても、やっぱり彼女が好きだったから。……それがどれだけの負担なのかも知らずに」

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