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出来損ない_55
後悔してる、そう言う声は微かに震えていた。
「君は知ってるかな?番になったΩがαに愛されなくなったら、どうなってしまうか」
「…………ううん」
「………衰弱していくんだ、精神的にね。二人は番関係じゃなかった。でも運命に愛されなかったΩもまた同じ症状を発症した」
末松さんの話を聞きながら、一つの記憶が頭を掠めた。
そうか、だからあの時……。
“αに愛されないΩがどれだけ惨めな思いをするのか、お前は全然分かってない”
藍澤は、そう言ったのか……。
「目に見えて衰弱していくのに彼女は頑なに俺と別れないと言った。俺と結ばれたいのだと、そう言ってくれた」
「……だったらアンタが番にしてやれば良かったんじゃ――」
「無理だよ。運命が近くにいて、勝てるわけがない。紗奈の本能はずっと司を求める。それだけ強い繋がりなんだよ」
「…………………」
「でもね、やっぱり俺には耐えられなくて………笑うことも無くなってしまった彼女を見ていられなくて………司に泣き縋った。彼女を番にしてやってほしいって、助けてくれって」
ね?と末松さんが藍澤に目配せをしても反応はない。
「あの時も司は何も言わなかったな…。でも泣き続ける俺に、最後は分かったって言ってくれた。ホッとした反面、もちろん嫉妬もして、でもこれで良かったんだって頭では分かってた」
「え、じゃあなんで………」
「………次の日にね、彼女は自ら命を絶ったんだ。彼女の精神は既に限界だった。……もっと早く手を離してあげてれば良かったんだ」
俺の話はこれで全部。と向けられた目が寂しそうに笑った。
「そうだったんだ………」
「司は何かない?」
それまで黙りを決め込んでいた藍澤が漸く口を開く。
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