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遅咲き_1
そんな怒涛のデートから二日後、藍澤の仕事先にて……俺は何故か末松さんと席を並べ酒を飲んでいる。
「……何でいる?」
俺の心と同調する藍澤の言葉は怖いほど冷たい。
「えー?だってさぁ、せっかく和解したんだしぃ、また昔みたいに仲良くしよーよぉ」
藍澤の態度などお構いなしに末松さんはニコニコと笑う。
この人……めちゃくちゃ酒癖悪いな………。
すっかり酔っ払って陽気になっているみたいだけど、まだ一杯目だし何なら半分も減ってない。
呆れて溢した溜め息に反応した酔っ払い…いや末松さんは上機嫌で俺の肩に腕を回した。
「ふふーん、司はさ俺みたいのが好みなんだってぇ」
「はいはい、そりゃ良かったですね」
あーもう、酔っ払いめんどくさ!
てか藍澤の顔、般若みたいになってるんだけど……。
そんなハラハラする状況に拍車を掛けるのは、藍澤の隣に立つ長谷さんだった。
「え、何々?藍澤くんの好きな人?」
ああ、火に油…………。
「……昔の話だ」
「へぇー!あ、初めまして、同僚の長谷です」
人の良さそうな笑みに案の定末松さんは秒で懐いていく。
俺から離れるとカウンターへと身を乗り出して、誇らしげに藍澤の同級生だと自己紹介を始めた。
そんな様子を横目で見ながら、グラスを傾けると突然話の矛先が俺へと向いた。
「ねえ、ずっと気になっていたんだけど」
長谷さんの色素の薄い瞳が俺を映して、微かに細められた。
「もしかして君と藍澤くん、番になった?」
「――ゴホッ……ゴホッ……え、な、は!?」
突拍子もない言葉に飲んでいた酒が気管に入って、危うく噴き出すところだった。
「あれ?違った?」
「違うって!」
何を言い出すんだと否定するけど、長谷さんは首を傾げて「おかしいなぁ」と口にする。
「だって君から藍澤くんの匂いがするよ?」
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