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遅咲き_9
side α
傍迷惑な酔っ払いを吐く寸前で家のトイレに押し込んだ。
「うぅ……気持ち、わるっ………」
「弱いくせに呑むからだろ」
「だってぇ…司のカクテル美味しかったし……ウッ……」
「俺は帰るからな」
「そんな…冷たい……」
「送ってやっただけ感謝しろ」
便器に突っ伏した奏輔をそのままに俺は帰路についた。
道中はいつものコンビニに立ち寄る。
陳列した梅のおにぎりに手を伸ばしかけて、隣に並んだツナマヨの文字が目に入った。
「……………」
………別にアイツに感化されたからじゃない。たまには違う味も悪くないってだけだ。
誰に問われる訳でもないのに、無駄な言い訳を心中で呟く。
いくつかの商品をカゴに放って会計を済ませて、家へと急いだ。
ドアの鍵は当然開いていて、七瀬が眠っている可能性も踏まえて音を立てないように中へと入る。
廊下の先のリビングからは光が見えて、短く溜め息をついた。
顔を覗かせたリビングではやっぱり七瀬は起きていて、ソファーに膝を抱えながら腰掛け、スマホを熱心に見つめていた。
「……寝てろって言ったろ」
「――うわっ!?びっ……くりしたぁ」
絵に描いたように跳び跳ねた七瀬は、俺の姿を確認すると直ぐに傍へと寄ってくる。
「おかえり!」
「ああ……」
「何?何か買ったの?」
目敏いな……。
手提げたコンビニの袋をそのまま手渡すと、七瀬は楽しそうに中を覗いた。
「あ!ツナマヨじゃん!しかも二個!え、何、もしかして一個俺の分?」
「買ってこないと俺の分食うだろ」
「分かってんね。でも藍澤もツナマヨなんて珍しくない?いっつも梅じゃん?」
他の中身を確認しながら七瀬は疑問を口にする。
「………たまには悪くないと思っただけだ」
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