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遅咲き_19
藍澤が優しい。
正直ちょっと気持ち悪いぐらい………。
「うどん作った。食欲あるか?」
うどんが入った器を乗せたお盆を手にして、藍澤はベッドの傍らへと腰掛けた。
「ん、ふつーに腹減った」
「自分で食えるか?」
「無理って言ったら食わせてくれんの?」
もちろん冗談のつもりで言ったんだけど、藍澤が何も言わずに箸を手にしたもんだから慌てて止めた。
「ストップ!嘘!食えます。全然食えます!」
そうか、と差し出されたお盆を受け取って、うどんを口に運ぶ。
調子狂うなぁ……。
いや優しいのはいいことなんだけど、優しすぎてマジで気持ち悪い………。
「旨いか?」
「ん?うん、めっちゃ旨いよ。てか藍澤の料理で不味かったことないし」
あ、ちょっと嬉しそうな顔に見える。
「体調は?」
「うーん……昨日より熱っぽい気するけど、前みたいに息苦しい感じはないかな?二日目でこれなら俺、発情期そんなに重たくない方なんじゃないかな?」
「薬も効きやすいのかもな。だからって変に油断するなよ。少しずつ症状は出てきてるんだ」
「はいはい」
俺の返事を合図に藍澤は立ち上がる。
「仕事に行く。お前は大人しくしとけよ」
「大丈夫だって。昨日も大人しくしてたじゃん?」
「薬も飲めよ。食べ終わったらそこのサイドボードに置いとけ」
「はーい。いってらっしゃーい」
ヒラヒラと片手を振って、出ていく背中を見送った。
心配性…………。
絶対末松さんの影響だな、あれは。
湯気立っていたうどんを平らげて、用意された薬を飲む。
サイドボードでいいと言われたけど、空になった器をキッチンへと下げて、ベッドに潜り込んだ。
想像よりはしんどくないけど、やっぱ身体はダルい。
あとちょっとムラムラはする………。でも我慢出来ない程じゃないし、眠れば何とかなるだろ。
ダルさとムラムラと、ほんの少しの寂しさを紛らすために俺は夢の中へと意識を沈ませた。
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