83 / 152

遅咲き_24

ぎゅっと手を握り締めると、急に足が地面から浮いた。 何事かと思えば男が俺の身体を抱え上げたようで、肩に担がれてしまえば手足をバタつかせても意味を為さない。 「や、やだ……降ろせ、離せ!」 「うるせぇな。今この場で犯されてぇのか?露出趣味でもあんのかぁ?」 「違っ、どこ連れてく気だよ⁉」 「そりゃイイコト出来る場所だろ」 歩き始めてしまった男が数歩でその足を止めたのは、行く手に郁弥か立ち塞がったからだ。 「待って!止めてください。僕が、ちゃんと相手しますから……だから……」 「はあ?今更なんだよ、もう興味ねぇからさっさと消えな」 振り払って通りすぎようとする男に、それでも郁弥は縋った。 「お、お願いします!もう逆らいませんから!お願いだから、巻き込まないで!」 「あー、うるせぇな!黙ってろ!」 しがみついていた郁弥の身体が、咳き込みながら濡れた地面に転がった。 男の拳が頬に直撃して、上げた顔は赤く腫れ上がっている。 「――郁弥!」 「お前も暴れんじゃねぇよ」 思考が溶けてしまいそうなほど濃さを増してくαのフェロモンにまるで身体の力が入らない。 「あ……ぅ……あ……っ……」 気を抜けば理性なんて簡単に消えていきそうで怖い。 「やっと大人しくなったな。おーおー、振るえちゃって。そんなに耐えたって最後は孕むことしか考えられなくなる。性の奴隷が。Ωがαに勝てるわけねぇだろ」 蔑んだ笑いが耳に届いて、歯を食い縛った。 勝てない、αには………所詮、Ωだから…………。 でも………。 『αだからとか、そんな事は関係ない』 『どんな性を持っていようが同じ人間だろう?』 アイツは、そう言ってくれたから。 「…………っそ、………ぃ………に」 「あ?」 「………ぁ…っンタこそ、………そんな、事しか……頭にない……性の、奴隷のくせに」

ともだちにシェアしよう!