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遅咲き_24
ぎゅっと手を握り締めると、急に足が地面から浮いた。
何事かと思えば男が俺の身体を抱え上げたようで、肩に担がれてしまえば手足をバタつかせても意味を為さない。
「や、やだ……降ろせ、離せ!」
「うるせぇな。今この場で犯されてぇのか?露出趣味でもあんのかぁ?」
「違っ、どこ連れてく気だよ⁉」
「そりゃイイコト出来る場所だろ」
歩き始めてしまった男が数歩でその足を止めたのは、行く手に郁弥か立ち塞がったからだ。
「待って!止めてください。僕が、ちゃんと相手しますから……だから……」
「はあ?今更なんだよ、もう興味ねぇからさっさと消えな」
振り払って通りすぎようとする男に、それでも郁弥は縋った。
「お、お願いします!もう逆らいませんから!お願いだから、巻き込まないで!」
「あー、うるせぇな!黙ってろ!」
しがみついていた郁弥の身体が、咳き込みながら濡れた地面に転がった。
男の拳が頬に直撃して、上げた顔は赤く腫れ上がっている。
「――郁弥!」
「お前も暴れんじゃねぇよ」
思考が溶けてしまいそうなほど濃さを増してくαのフェロモンにまるで身体の力が入らない。
「あ……ぅ……あ……っ……」
気を抜けば理性なんて簡単に消えていきそうで怖い。
「やっと大人しくなったな。おーおー、振るえちゃって。そんなに耐えたって最後は孕むことしか考えられなくなる。性の奴隷が。Ωがαに勝てるわけねぇだろ」
蔑んだ笑いが耳に届いて、歯を食い縛った。
勝てない、αには………所詮、Ωだから…………。
でも………。
『αだからとか、そんな事は関係ない』
『どんな性を持っていようが同じ人間だろう?』
アイツは、そう言ってくれたから。
「…………っそ、………ぃ………に」
「あ?」
「………ぁ…っンタこそ、………そんな、事しか……頭にない……性の、奴隷のくせに」
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