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遅咲き_30
そう言うと藍澤自身も着ていた服を脱ぎ捨てて、後ろから抱え込まれるように抱き締められる。
藍澤の身体、冷たい……。
雨に当たったから……。
「発情期のおかげか体温は下がってないな」
「うっ、ん……あつ、ぃ……から………」
密着させた身体で体温を確かめた後、キュッと蛇口の捻る音がしてシャワーが止まった。
同時に藍澤が身体を離して立ち上がる。
そのまま出ていこうとする背中に寂しさが込み上げて、反射的に口から言葉が溢れていた。
「待っ……あ………」
伸ばし掛けた手で自分の口を塞ぐ。
その様子を見た藍澤は踵を返して、傍らへ跪いた。
「タオル取ったら戻る」
短い言葉と頭に乗せられた手に馬鹿みたいに安心して、また泣きたくなる。
俺、どうしちゃったんだろ……何でこんな泣きたくなるんだろ……不安で、寂しくて、どうしようもない。
藍澤は浴室から出ていくと、言った通りバスタオルを片手にすぐに戻ってきてくれる。
頭と身体を軽く拭いて、それを肩へ掛けられるまでの一連の動作を見つめた。
藍澤も同じように水気を拭くと、運ばれた時と同様に身体を抱えあげられて、その足取りが赴いたのは寝室。
俺が寝ていたベッドは少し乱れていた。
ゆっくりと身体を降ろされながら、藍澤の横顔を見つめる。
綺麗な顔………格好良い…………あ、心臓、うるさい………。
ドキドキして、胸が苦しい……。
「七瀬?」
もっと触りたい……触れられたい…………。
「どうした?息苦しいか?」
藍澤の手が頬に触れた瞬間、下腹部が疼いて、後孔の濡れる感触がした。
「……ぁ、いざ、わ…………」
藍澤に、藍澤だけに………。
「ん?」
「…………っと、して………触って、ほし…………」
――触れられていたい。
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